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油性ペンでマーキング
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また不安にして泣かせてしまった。後悔も反省も後、今は対応を考えろ。
「シンヤくん……ごめん、僕なんて言ったかな」
僕はシンヤにとって泣いてしまうようなことを言ったはずだが、思い出せない。繊細なシンヤの感情の機微は大雑把な僕には難しい。
「シンヤくん、教えて?」
シンヤは激しく首を横に振る。
「……僕は君を傷付けた僕が許せないよ、改善したいんだ」
「かいぜっ、するの……俺。今の、俺が悪かった……俺がわがまま言って、シンヤくん困らせてっ……勝手にこんな、泣いて、ごめ……ごめんなさいぃ……」
僕よりも背が高い男が子供のように泣きじゃくっている……ダメだ、今だけはときめくな。考えるんだ、数分前の会話を思い出せ。
「シンヤくんワガママなんて言ってない……ぁ」
シンヤが僕にキスマークをつけたいと可愛く言ってくれた後、僕はなんて言った? 僕は発想を飛躍させて「困る」と呟いてしまった。
「ち……違う、違うっ、そんなつもりじゃ……」
僕の思考なんて知らないシンヤはきっと、僕がキスマークをつけられるのを嫌がったと思っただろう。
「シンヤくん聞いて! シンヤくんっ……違うんだよ、あの……ぁ、待って。確認させて。シンヤくんは僕が困るって言っちゃったから自分がワガママ言ったって思ってるんだよね?」
「…………ちがうの? 俺はヒロくんのだけど……ヒロくんは、俺のじゃ……嫌、で」
「嫌じゃない! 僕は君のものだよ、彼氏なんだから。ごめんね、違うんだ、嬉しかったんだよ、キスマークつけたいって言ってくれたの嬉しかった」
どう説明しよう? 困ると言った本当の理由は酷いものだ。シンヤとの関係がバレたくない、目立ちたくない……身勝手な理由だ。シンヤにはキスマークを大量につけて目立たせるつもりのくせして、自分だけは安全圏? 最低だ。
「じゃあ……何が、困るの?」
「あ、の……いや、えっと……」
「……やっぱり」
「違うっ! ほら、シンヤくんは可愛いしカッコイイから狙われるから、マークつけて狙っちゃダメって示さなきゃだけど、僕は狙われないからマークつけると逆に目立って、そのっ……」
シンヤは首を傾げている。
「……ヒロくん可愛いよ。絶対ヒロくんのが狙われるっ……ちっちゃくて可愛くて、中身男らしくてカッコイイ……ヒロくん♡」
「チビでメカクレのド陰キャなんて誰も狙わないよっ!」
叫んだ瞬間、肩を掴まれてベッドに押し付けられた。僕はベッドを背にしたシンヤの正面に回っていたはずなのに、一瞬でひっくり返されてしまった。
「シ、シンヤくん……?」
掴まれた肩が痛い。力を込めているからか筋の浮いたシンヤの腕がカッコイイ。僕を簡単に組み敷けるシンヤとの力の差が怖い、同時にその力強さに惹かれる。
「……ヒロくんは可愛いよ♡」
僕の太腿の上に跨って体重をかけ、僕の肩をベッドの縁に押し付けて動きを封じ、ふにゃんと笑う。力強さと表情の可愛さのギャップが凄まじい。
「ヒロくんは自分の魅力分かってないからマークつけなくてもいいって思ってるんだよな、俺にマークつけられんの嫌なんじゃないんだよな」
「う、うん……シンヤくんがああ言ってくれたの、すごく嬉しかったよ」
シンヤは嬉しそうに笑い、ベッドに立てかけてあった通学カバンから筆箱を取り出した。黒っぽい筒状の袋のそれから油性ペンを出し、筆箱を置く。
「あの……何する気?」
「確認だけど、俺はヒロくんのもので、ヒロくんは俺のもの……で、いい?」
「うんっ、僕は君のものだよ」
きゅぽんっ、と油性ペンの蓋が外される。
「嬉しい……♡ 動かないでな♡」
顎を掴まれて頬を突き出すようにされる。動くなも何も、シンヤの力が強くて動かせない。
「ヒロくん♡ ヒロくん♡ ヒーローくぅーん♡ 好き♡ 好き♡ だーいすきー♡」
顔に油性ペンで何か書かれている。
「出来た♡」
数分間押さえつけられ、両頬に何か書かれた。油性ペンを片付けたシンヤは僕が何も言わずとも手鏡を渡してくれて、頬に書かれた『吉良』『深夜』の文字を見ることが出来た。
「シンヤくん……ごめん、僕なんて言ったかな」
僕はシンヤにとって泣いてしまうようなことを言ったはずだが、思い出せない。繊細なシンヤの感情の機微は大雑把な僕には難しい。
「シンヤくん、教えて?」
シンヤは激しく首を横に振る。
「……僕は君を傷付けた僕が許せないよ、改善したいんだ」
「かいぜっ、するの……俺。今の、俺が悪かった……俺がわがまま言って、シンヤくん困らせてっ……勝手にこんな、泣いて、ごめ……ごめんなさいぃ……」
僕よりも背が高い男が子供のように泣きじゃくっている……ダメだ、今だけはときめくな。考えるんだ、数分前の会話を思い出せ。
「シンヤくんワガママなんて言ってない……ぁ」
シンヤが僕にキスマークをつけたいと可愛く言ってくれた後、僕はなんて言った? 僕は発想を飛躍させて「困る」と呟いてしまった。
「ち……違う、違うっ、そんなつもりじゃ……」
僕の思考なんて知らないシンヤはきっと、僕がキスマークをつけられるのを嫌がったと思っただろう。
「シンヤくん聞いて! シンヤくんっ……違うんだよ、あの……ぁ、待って。確認させて。シンヤくんは僕が困るって言っちゃったから自分がワガママ言ったって思ってるんだよね?」
「…………ちがうの? 俺はヒロくんのだけど……ヒロくんは、俺のじゃ……嫌、で」
「嫌じゃない! 僕は君のものだよ、彼氏なんだから。ごめんね、違うんだ、嬉しかったんだよ、キスマークつけたいって言ってくれたの嬉しかった」
どう説明しよう? 困ると言った本当の理由は酷いものだ。シンヤとの関係がバレたくない、目立ちたくない……身勝手な理由だ。シンヤにはキスマークを大量につけて目立たせるつもりのくせして、自分だけは安全圏? 最低だ。
「じゃあ……何が、困るの?」
「あ、の……いや、えっと……」
「……やっぱり」
「違うっ! ほら、シンヤくんは可愛いしカッコイイから狙われるから、マークつけて狙っちゃダメって示さなきゃだけど、僕は狙われないからマークつけると逆に目立って、そのっ……」
シンヤは首を傾げている。
「……ヒロくん可愛いよ。絶対ヒロくんのが狙われるっ……ちっちゃくて可愛くて、中身男らしくてカッコイイ……ヒロくん♡」
「チビでメカクレのド陰キャなんて誰も狙わないよっ!」
叫んだ瞬間、肩を掴まれてベッドに押し付けられた。僕はベッドを背にしたシンヤの正面に回っていたはずなのに、一瞬でひっくり返されてしまった。
「シ、シンヤくん……?」
掴まれた肩が痛い。力を込めているからか筋の浮いたシンヤの腕がカッコイイ。僕を簡単に組み敷けるシンヤとの力の差が怖い、同時にその力強さに惹かれる。
「……ヒロくんは可愛いよ♡」
僕の太腿の上に跨って体重をかけ、僕の肩をベッドの縁に押し付けて動きを封じ、ふにゃんと笑う。力強さと表情の可愛さのギャップが凄まじい。
「ヒロくんは自分の魅力分かってないからマークつけなくてもいいって思ってるんだよな、俺にマークつけられんの嫌なんじゃないんだよな」
「う、うん……シンヤくんがああ言ってくれたの、すごく嬉しかったよ」
シンヤは嬉しそうに笑い、ベッドに立てかけてあった通学カバンから筆箱を取り出した。黒っぽい筒状の袋のそれから油性ペンを出し、筆箱を置く。
「あの……何する気?」
「確認だけど、俺はヒロくんのもので、ヒロくんは俺のもの……で、いい?」
「うんっ、僕は君のものだよ」
きゅぽんっ、と油性ペンの蓋が外される。
「嬉しい……♡ 動かないでな♡」
顎を掴まれて頬を突き出すようにされる。動くなも何も、シンヤの力が強くて動かせない。
「ヒロくん♡ ヒロくん♡ ヒーローくぅーん♡ 好き♡ 好き♡ だーいすきー♡」
顔に油性ペンで何か書かれている。
「出来た♡」
数分間押さえつけられ、両頬に何か書かれた。油性ペンを片付けたシンヤは僕が何も言わずとも手鏡を渡してくれて、頬に書かれた『吉良』『深夜』の文字を見ることが出来た。
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