陰キャな僕がエセヤンキーに攻略された話

ムーン

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学校行事も一緒に

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床に座り直したシンヤの腹を整えたばかりの服の上から撫でる。

「ん……♡ 服の上からでいいの?」

不思議そうに僕を見つめるシンヤの唇に目が向いてしまう。一生忘れられないようなファーストキスを想像していたのに、スーパーへ行く道中でついやってしまった。
ついって何だ、童貞のくせに、キスしたことないくせに、どうして「つい」で出来るんだ。

「……ヒロくん?」

ぷるんとした艶やかな薄ピンク色の唇。こんな魅惑の唇、いつ通りすがりの変質者に奪われてもおかしくない。

「シンヤくん、唇めちゃくちゃエロいから毎日マスクつけてた方がいいよ」

「ヒロくんが言うなら♡」

意識せずにキスをしてしまったから、シンヤの唇の感触は覚えていない。僕は本当にバカだ、初めてと二度目では天と地ほどの差があると言うのにあんな雑に奪って、最低だ。せめて感触を思い出そう。

「ん♡ なぁに……?」

シンヤの顎に手を添え、親指の腹をそうっと唇に触れさせる。ふにっ……と柔らかな感触が指に伝わり、右手から脳まで真っ直ぐに電流が走った。

「……口触って楽しい?」

シンヤは僕の右手首をそっと握り、唇をふにふにと弄っていた親指を口に含んだ。歯を使わずにあむあむと噛まれ、僕は脳内ですら言葉を忘れる。

「ふぉぉ……」

奇声が大声でなかっただけよく耐えたと褒めて欲しい。

「あ、そういえばさヒロくん。明日、宿泊学習の班決めじゃん。俺と一緒に行こーな♡」

「……えっ? ぁ、あぁ、宿泊学習……そういえばそんなのもあったね」

毎日シンヤのことばかり考えているせいだろう、授業中はまだしもホームルーム中の教師の話なんて聞いていない。

「山登りと、川遊びと、キャンプファイヤー。二日目はアスレチック……だっけ」

「なんかガキっぽいラインナップだよね、中学生みたい」

「……ヒロくん、そういうの嫌い?」

「アウトドア全般嫌いだよ」

エロラノベを常に持ち歩いている前髪の長い暗い男がアウトドア派なわけがない。宿泊学習だって憂鬱だ。

「そっか……俺、結構楽しみだったんだけど……」

「あ、そ、そうなの? なんかごめんね」

シンヤという可愛い彼氏がいなければ仮病を使っていたかもしれない。

「バスとか色々、隣がいいな♡」

「それはもちろん。こっちで決められる分は全部シンヤくんと一緒にいるよ」

しかし、宿泊学習となれば入浴は大浴場などになるだろう。不特定多数の男子生徒、少なくともクラスメイトにはシンヤの裸を晒すことになる。

「……シンヤくん、一ついいかな」

「なぁに?」

「キスマークつけさせて」

シンヤの裸を見て欲情する男子生徒が居るかもしれない、いや居る。牽制のためにも僕のものだと主張しておかなければ。

「大人数を敵と見るのは大変だし、馬鹿らしいもんね。所有を主張してるのに狙ってくる奴に対応した方が効率がいい……これが専守防衛の精神だよ」

「専守防衛はちょっと違うと思うけど……キスマークって何?」

「シンヤくんは僕のものだよってみんなに教えるんだ」

「クマが木を引っ掻く感じ?」

それは……何だ? マーキングと言いたいのか? 面倒臭いから肯定しておこう。

「分かった。マークつけて♡ ヒロくんのものになりたい♡」

「うん……じゃあ、首……ちょっと、いや待てよ、首は目立ち過ぎかな」

女子や教師に見つかって騒がれないように見えにくい位置に、思春期男子が「キスマークだー!」なんて騒げないように圧力のある位置に──
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