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お願いの聞き愛
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恋人が好きなことをしていいと言ったら、性的なことをしてしまうと思う。それも普段はしない変態的なことをすると思う。少なくとも僕はそうだ。
けれど、シンヤは手を握り、写真を撮っただけだ。なんて純粋な子だろう。
「次は何しようか」
「ヒロくん何した……ぁっ、これダメなんだった……ごめん」
「いいよ、可愛いよ」
「ヒロくん……♡」
困ったような、呆れたような声。嬉しそうな照れた顔。強面というほどでもないのだが、高身長で金髪の彼の見た目は少々威圧的だ。そんな彼のふにゃふにゃの笑顔は可愛くて、何でも言うことを聞いてあげたくなる。
「シンヤくん、何して欲しい?」
「んー……考えんの苦手…………あっ、そうだ髪! 髪梳かせて、ヒロくん」
さっき僕が彼の髪を触ったから思い付いたのだろう。髪をいじりたいなんて女児っぽい純粋で可愛いお願いを却下する理由はない、僕は二つ返事で了承した。
「クシ取ってくるから待ってて!」
シンヤは走って部屋を出ていき、クシを持ってくると僕の真正面に座り、僕の髪を梳かし始めた。
「前からなんだ……まぁ、顔見れるしいいけど」
普通、髪をいじるなら後ろからやらないか? まぁそれはいい、どうしてニコニコ笑っているんだろう。
「…………楽しい?」
「うん♡」
目元を隠すため、一般的な男子高校生よりは少し長めの僕の髪。何の面白みもない真っ黒で真っ直ぐな髪、それの何が面白いのかシンヤは楽しそうにクシを通す。
「ヒロくん髪の毛ツヤツヤ~♡ シャンプー何? あ、待って当てる」
シンヤは僕の耳の上あたりの髪の匂いを嗅ぎ、僕が使っているシャンプーを見事に言い当てた。
「すごいねシンヤくん、警察犬みたい」
警察犬がシャンプーのブランドを当てているところなんて見たことないけど。
「えへへー……♡ わん♡」
「あはっ、可愛いワンちゃん。よしよし」
「くーん……♡」
そんなおふざけを挟みながらシンヤは僕の髪を梳かしきった。髪の手入れをあまり念入りにするタイプではないので、普段以上にサラサラになった髪に高揚した。
「ありがとう、シンヤくん。でも、お願いこんなのでいいの?」
シンヤの遠慮を心配する僕を他所に、シンヤは保存用のファスナー付きポリ袋をポケットから取り出した。小さなそれに入れるものは思い付かない、手芸好きな人ならスパンコールとかビーズとか入れるのかな?
「シンヤくん、その袋何するの?」
「こうするの♡」
シンヤはクシに絡まった僕の抜け毛を丁寧に外し、ポリ袋に詰めた。全て入れ終わると目をキラキラと輝かせてポリ袋入り抜け毛を見つめ、頬擦りまで始めた。
「シンヤくん……よかった、遠慮してないね。ふふ……そうやって好きなことしていいからね」
もう僕ではなくなったゴミのくせに頬擦りされるなんて羨ましい。
自分の抜け毛に嫉妬した僕はシンヤの頬に手を向かわせた。するとシンヤはあっさりと抜け毛から僕の手の方へやってきてくれたので、僕は抜け毛に勝ち誇った顔を向けた。
「シンヤくんの髪ゲット~♡ えへへっ♡ ね、シンヤくん。爪は伸びて……ないね」
「ヒロくんにしよっちゅう触るのに伸ばしたりしないよ。最近は爪切りも使ってない、ヤスリでやってるよ」
「ふーん……じゃあ、次する時は僕の家来て♡ 削ったの欲しい♡」
「分かった、ヤスリ持ってくるよ」
好きな人の髪や爪を集める、そんな内容の話を読んだことはある。大抵その相手はドン引きしていたし、僕も読んでいた時はドン引きしていた。
「それどうするの? お腹壊しそうだし食べたりしないでよ?」
「食べないよもったいない! ヒロくんアルバムに入れるんだ♡」
実際見るとどうだ、満面の笑みで自分の抜け毛が入ったポリ袋をアルバムに貼り付ける姿、なんて可愛らしいんだろう、僕は胸が温かくなるばかりだ。
「爪はこの辺に貼ってー♡ 後はー、まつ毛とか手に入んないかなぁ……それと、あっ、大事なの忘れてた!」
ドン引きしていたラノベの登場人物は愛が足りない。
フィクションの者に愛情マウントを取っていると口元に空のポリ袋が突き出された。
「はーってしてヒロくん。ヒロくんの息も挟むから♡」
「……アルバムに挟むならあんまり入れない方がいいかな?」
「うんっ! 流石ヒロくん……♡」
あぁ、可愛いなぁ。欲しがるもの何でもあげるから、もっともっと欲しがって欲しいな。
けれど、シンヤは手を握り、写真を撮っただけだ。なんて純粋な子だろう。
「次は何しようか」
「ヒロくん何した……ぁっ、これダメなんだった……ごめん」
「いいよ、可愛いよ」
「ヒロくん……♡」
困ったような、呆れたような声。嬉しそうな照れた顔。強面というほどでもないのだが、高身長で金髪の彼の見た目は少々威圧的だ。そんな彼のふにゃふにゃの笑顔は可愛くて、何でも言うことを聞いてあげたくなる。
「シンヤくん、何して欲しい?」
「んー……考えんの苦手…………あっ、そうだ髪! 髪梳かせて、ヒロくん」
さっき僕が彼の髪を触ったから思い付いたのだろう。髪をいじりたいなんて女児っぽい純粋で可愛いお願いを却下する理由はない、僕は二つ返事で了承した。
「クシ取ってくるから待ってて!」
シンヤは走って部屋を出ていき、クシを持ってくると僕の真正面に座り、僕の髪を梳かし始めた。
「前からなんだ……まぁ、顔見れるしいいけど」
普通、髪をいじるなら後ろからやらないか? まぁそれはいい、どうしてニコニコ笑っているんだろう。
「…………楽しい?」
「うん♡」
目元を隠すため、一般的な男子高校生よりは少し長めの僕の髪。何の面白みもない真っ黒で真っ直ぐな髪、それの何が面白いのかシンヤは楽しそうにクシを通す。
「ヒロくん髪の毛ツヤツヤ~♡ シャンプー何? あ、待って当てる」
シンヤは僕の耳の上あたりの髪の匂いを嗅ぎ、僕が使っているシャンプーを見事に言い当てた。
「すごいねシンヤくん、警察犬みたい」
警察犬がシャンプーのブランドを当てているところなんて見たことないけど。
「えへへー……♡ わん♡」
「あはっ、可愛いワンちゃん。よしよし」
「くーん……♡」
そんなおふざけを挟みながらシンヤは僕の髪を梳かしきった。髪の手入れをあまり念入りにするタイプではないので、普段以上にサラサラになった髪に高揚した。
「ありがとう、シンヤくん。でも、お願いこんなのでいいの?」
シンヤの遠慮を心配する僕を他所に、シンヤは保存用のファスナー付きポリ袋をポケットから取り出した。小さなそれに入れるものは思い付かない、手芸好きな人ならスパンコールとかビーズとか入れるのかな?
「シンヤくん、その袋何するの?」
「こうするの♡」
シンヤはクシに絡まった僕の抜け毛を丁寧に外し、ポリ袋に詰めた。全て入れ終わると目をキラキラと輝かせてポリ袋入り抜け毛を見つめ、頬擦りまで始めた。
「シンヤくん……よかった、遠慮してないね。ふふ……そうやって好きなことしていいからね」
もう僕ではなくなったゴミのくせに頬擦りされるなんて羨ましい。
自分の抜け毛に嫉妬した僕はシンヤの頬に手を向かわせた。するとシンヤはあっさりと抜け毛から僕の手の方へやってきてくれたので、僕は抜け毛に勝ち誇った顔を向けた。
「シンヤくんの髪ゲット~♡ えへへっ♡ ね、シンヤくん。爪は伸びて……ないね」
「ヒロくんにしよっちゅう触るのに伸ばしたりしないよ。最近は爪切りも使ってない、ヤスリでやってるよ」
「ふーん……じゃあ、次する時は僕の家来て♡ 削ったの欲しい♡」
「分かった、ヤスリ持ってくるよ」
好きな人の髪や爪を集める、そんな内容の話を読んだことはある。大抵その相手はドン引きしていたし、僕も読んでいた時はドン引きしていた。
「それどうするの? お腹壊しそうだし食べたりしないでよ?」
「食べないよもったいない! ヒロくんアルバムに入れるんだ♡」
実際見るとどうだ、満面の笑みで自分の抜け毛が入ったポリ袋をアルバムに貼り付ける姿、なんて可愛らしいんだろう、僕は胸が温かくなるばかりだ。
「爪はこの辺に貼ってー♡ 後はー、まつ毛とか手に入んないかなぁ……それと、あっ、大事なの忘れてた!」
ドン引きしていたラノベの登場人物は愛が足りない。
フィクションの者に愛情マウントを取っていると口元に空のポリ袋が突き出された。
「はーってしてヒロくん。ヒロくんの息も挟むから♡」
「……アルバムに挟むならあんまり入れない方がいいかな?」
「うんっ! 流石ヒロくん……♡」
あぁ、可愛いなぁ。欲しがるもの何でもあげるから、もっともっと欲しがって欲しいな。
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