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少しずつ糸を弱らせて
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どのような手段だったかは考えたくないが、シンヤの両親はシンヤを操り人形にした。彼らが過干渉なタイプではなく、ただ成績優秀な子にしたいだけの育児に怠惰な者だったのは、僕にとってとてつもない幸運だ。
「ヒロくん……?」
操り人形の糸を切り、自分で動いてもらおう。僕は彼を操る糸ではなく彼の手を握りたいのだ。
「何?」
「……なんかしないの?」
「したいよ。いっつも僕からだからさ、今日は趣向を変えようと思って。君から来るの待ってるんだ」
あくまでもただの恋人らしく、彼の自我の膨らみを促していると気付かれないように。
「……? えっと、隣座っていい?」
僕はベッドを背に床に座ってシンヤの方に首を回している。シンヤはベッドに寝転がったままだ。
「いちいち聞かなくてもいいよ、君の好きなようにして」
「そういうの苦手なのに……」
シンヤはむくれた顔でベッドから這い出て僕の隣に腰を下ろした。
「ヒロくん俺に何かしたいんだよね?」
「うん、でもシンヤくんがしたいって言わないならしない」
シンヤは首を傾げて目を丸くしている。はてなマークを彼の頭上に幻視してしまいそうな可愛さだ。
「何したいの?」
「さぁ? なんだと思う?」
「当てればいいの?」
「ううん、シンヤ君が好きなことをして。当たったら僕は勝手にラッキーって思っておくよ」
戸惑うシンヤは可愛らしい。全く自我を出せないわけではないのは今までの経験で知っている、彼にも欲望はある。ただ僕の欲望を優先させようとし過ぎるだけだ。
「んー……さっきしたばっかだから、えっちなのはしばらくいいし……ヒロくん何したい? ぁ、違う違う俺のしたいことしないと……えっと」
混乱しながらもシンヤは僕の手を握った。
「…………ヒロくん手おっきい♡ ぁ、そうだ、写真撮らせてヒロくん。いっつも俺の写真ばっか撮られてるし、私服ヒロくんの写真欲しい♡」
「うん、ポーズは?」
「座ったまんまでいいよ、笑って」
シンヤは僕の真正面に移動してスマホを構える。証明写真を撮るような気分になりながら、愛おしいシンヤを前にした自然な笑顔を撮ってもらった。
「ありがと♡」
「うん……顔ほとんど前髪で隠れてるけどいい?」
「あっ、うーん……かき上げてくれる?」
僕は笑顔で了承して前髪をかき上げた。
「ひっ……や、やっぱ顔怖いねヒロくん。前髪下ろしてると可愛いのに……なんか、なんだろ、一石二鳥って言うんだっけ」
他人を怯えさせてしまう鋭い目はあまり好きではなかったけれど、シンヤは怖がりながらもイメージ変化を楽しんでくれているようなので、彼と居れば自分の目を少しは好きになれそうな気がした。
「メガネはどうしよっか」
「あっ、そのバージョンもあるんだ。ヒロくんバージョン豊富~♡」
「あはは……それ、いいことかな?」
「いいことだよ、俺バージョンこれ一個だけだからさー」
メガネを外した写真まで撮って満足したシンヤが僕の隣に戻ってくる。
「……シンヤくんも髪留めとかヘアゴムとか使えば十分イメチェン出来るよ」
僕好みに染まった金髪、プリン頭のプリンらしさを保つためか耳を隠す程度には長いそれを指をヘアゴムに見立ててまとめる。
「なんか変わった?」
「うん。ゴムとかピンは似合いそうだね、家に使ってないのあるからあげるよ」
髪飾りと言うと女性っぽさがどうしても付きまといがちだが、黒いヘアピンだとかなら金髪不良の彼には普通に似合うのではないだろうか。
「ほんとっ? やった♡ バージョン増やした方がヒロくん飽きが来なくていいよね♡」
「飽きるなんてありえないけどね」
「嬉しい♡♡ 明日にでも持ってきてくれよヒロくん♡」
母さんも父さんも短髪で、僕も使わないのに髪関連のものなんて家にあるわけない。今日の帰りにでもシンヤの髪に合いそうな髪留めやヘアゴムを買いに行かないとな。
せっかくシンヤが自我を出したお願いだ、すぐに叶えてやらなければ。
「ヒロくん……?」
操り人形の糸を切り、自分で動いてもらおう。僕は彼を操る糸ではなく彼の手を握りたいのだ。
「何?」
「……なんかしないの?」
「したいよ。いっつも僕からだからさ、今日は趣向を変えようと思って。君から来るの待ってるんだ」
あくまでもただの恋人らしく、彼の自我の膨らみを促していると気付かれないように。
「……? えっと、隣座っていい?」
僕はベッドを背に床に座ってシンヤの方に首を回している。シンヤはベッドに寝転がったままだ。
「いちいち聞かなくてもいいよ、君の好きなようにして」
「そういうの苦手なのに……」
シンヤはむくれた顔でベッドから這い出て僕の隣に腰を下ろした。
「ヒロくん俺に何かしたいんだよね?」
「うん、でもシンヤくんがしたいって言わないならしない」
シンヤは首を傾げて目を丸くしている。はてなマークを彼の頭上に幻視してしまいそうな可愛さだ。
「何したいの?」
「さぁ? なんだと思う?」
「当てればいいの?」
「ううん、シンヤ君が好きなことをして。当たったら僕は勝手にラッキーって思っておくよ」
戸惑うシンヤは可愛らしい。全く自我を出せないわけではないのは今までの経験で知っている、彼にも欲望はある。ただ僕の欲望を優先させようとし過ぎるだけだ。
「んー……さっきしたばっかだから、えっちなのはしばらくいいし……ヒロくん何したい? ぁ、違う違う俺のしたいことしないと……えっと」
混乱しながらもシンヤは僕の手を握った。
「…………ヒロくん手おっきい♡ ぁ、そうだ、写真撮らせてヒロくん。いっつも俺の写真ばっか撮られてるし、私服ヒロくんの写真欲しい♡」
「うん、ポーズは?」
「座ったまんまでいいよ、笑って」
シンヤは僕の真正面に移動してスマホを構える。証明写真を撮るような気分になりながら、愛おしいシンヤを前にした自然な笑顔を撮ってもらった。
「ありがと♡」
「うん……顔ほとんど前髪で隠れてるけどいい?」
「あっ、うーん……かき上げてくれる?」
僕は笑顔で了承して前髪をかき上げた。
「ひっ……や、やっぱ顔怖いねヒロくん。前髪下ろしてると可愛いのに……なんか、なんだろ、一石二鳥って言うんだっけ」
他人を怯えさせてしまう鋭い目はあまり好きではなかったけれど、シンヤは怖がりながらもイメージ変化を楽しんでくれているようなので、彼と居れば自分の目を少しは好きになれそうな気がした。
「メガネはどうしよっか」
「あっ、そのバージョンもあるんだ。ヒロくんバージョン豊富~♡」
「あはは……それ、いいことかな?」
「いいことだよ、俺バージョンこれ一個だけだからさー」
メガネを外した写真まで撮って満足したシンヤが僕の隣に戻ってくる。
「……シンヤくんも髪留めとかヘアゴムとか使えば十分イメチェン出来るよ」
僕好みに染まった金髪、プリン頭のプリンらしさを保つためか耳を隠す程度には長いそれを指をヘアゴムに見立ててまとめる。
「なんか変わった?」
「うん。ゴムとかピンは似合いそうだね、家に使ってないのあるからあげるよ」
髪飾りと言うと女性っぽさがどうしても付きまといがちだが、黒いヘアピンだとかなら金髪不良の彼には普通に似合うのではないだろうか。
「ほんとっ? やった♡ バージョン増やした方がヒロくん飽きが来なくていいよね♡」
「飽きるなんてありえないけどね」
「嬉しい♡♡ 明日にでも持ってきてくれよヒロくん♡」
母さんも父さんも短髪で、僕も使わないのに髪関連のものなんて家にあるわけない。今日の帰りにでもシンヤの髪に合いそうな髪留めやヘアゴムを買いに行かないとな。
せっかくシンヤが自我を出したお願いだ、すぐに叶えてやらなければ。
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