47 / 298
いつか
しおりを挟む
夕飯を食べ終えて食器を片付け、皿洗いで冷えた手で熱くなった頬を冷やす。
僕の性的嗜好が母にモロバレだったのはとてもとても恥ずかしいことだが、致命傷ではあるのだが、交際を受け入れられたのはよかった。
「はぁ……ん? メッセきてる……」
ソファに移った母の隣に座り、テレビを横目にスマホを弄る。
「あら、早速彼氏とメール?」
「の、覗かないでよっ!」
母からスマホ画面を隠しつつ、シンヤからのメッセージを読む。僕が教えた料理が上手く作れて美味しかったと、感想と感謝の言葉が可愛らしく綴られていた。
「ふへへ……」
「ニヤついちゃって」
「……っ!」
クッションで顔を隠し、どういたしましてのメッセージを送る。顔の熱がある程度引いたら元の体勢に戻る。
「彼氏はもういいの?」
「も、もう夜だし……」
「寝落ちするまでメール送りあったり電話しちゃったりするのが青春じゃないの~。ふふ、元カレ思い出しちゃう」
「嘘でも父さんって言ってくれよ息子の前だぞ……!」
「だってあの人と会ったの会社なんだもの。学生時代の話はみんな元カレよぉ。母さん嬉しいのよ? ヒロ友達もいないから、子供との恋バナは出来ないんだーって諦めかけてたのよ」
母の調子に呆れているとスマホが通知音を鳴らす。慌てて見てみたが、企業アカウントからの広告メッセージだった。
「……覗かないでよ」
僕とほぼ同時に僕のスマホ画面を覗いた母を睨む。
「ふふっ、ねぇ、シンヤくんってどんな子なの? 写真とかある? もっと話聞かせて」
母に見せられる健全な写真なんてあっただろうか、出会ってすぐの頃の写真なら大丈夫かな。
「……こ、この子」
「あら……! ヒロの持ってる本の表紙の子みたい。これじゃ好きになって当然ね」
「本については言わないでってば!」
制服を着崩した金髪少年という世のお母様方は嫌いそうな格好だが、シンヤが不良ではないと説明しておかなければ。
「シンヤくんは、えっと……こんなカッコしてるけどすごく真面目で、頭もいいんだよ」
「へぇー……こんなに顔がいいのに頭も……ねぇ、今度家連れてきてよ、母さん会いたくなっちゃった」
「え……うん、出来たらね。へ、変なこと言わないでよ?」
「変なことって? 本のこととか?」
「やめてってば!」
今後数日はエロ本イジりがあるんだろうな、ほとぼりが冷めるまで引きこもろうかな……
「と、とにかく……僕の恥ずかしい話とかやめてよ。シンヤくんは僕のことカッコイイって思ってるんだから」
「目は悪いのね……」
「母さん!? 息子をなんだと……あっ」
今度こそシンヤからメッセージが来た。受話器を持ったアザラシと「電話していい?」の文字の可愛らしいスタンプだ、シンヤらしい。
「いいじゃない、話して話して」
「母さんは聞かないで!」
もちろんと返信をしてすぐに電話がかかってくる。母から逃げてリビングの隅で応答ボタンをタップする。
「……も、もしもし、シンヤくん?」
『もしもしヒロくん? ヒロくん……♡ ごめんねこんな時間に』
「う、ううんっ、全然いいよ。どうしたの?」
『……どうってわけじゃないんだ、ただ……声聞きたくて♡ 迷惑だった?』
「全然っ! 僕もちょうど話したいと……ぅわあっ!?」
母が背後に迫っていたことに気付き、腰を抜かす。
『ヒロくん? 何?』
「な、なんでもない! ちょっと虫が……ちょっと待ってて…………やめてよ母さんっ! 僕もう部屋帰る!」
自室に逃げ込んで扉を背に座り、シンヤと話す。
「ごめんごめん。えっと、ちょうど僕も話したかったんだ」
『ほんと? 嬉しい♡』
「うん……ぁ、宿題やった? まだ? うん、僕もまだ……やりながら話そうよ、僕ちょっとこの教科苦手でさ、教えて欲しいな」
スマホを机に置いてシンヤと話しながら宿題を進める。当然のように話に夢中になり、宿題は夜遅くまでかかった。人生で一番楽しい夜更かしだったねなんて笑い合い、また明日と名残惜しく別れを告げ、通話を切る。
「はぁ……好きだなぁ」
胸の高鳴りと温かさを反芻するために胸に手を当て、シンヤも同じ気持ちだと嬉しいななんて考えた。
僕の性的嗜好が母にモロバレだったのはとてもとても恥ずかしいことだが、致命傷ではあるのだが、交際を受け入れられたのはよかった。
「はぁ……ん? メッセきてる……」
ソファに移った母の隣に座り、テレビを横目にスマホを弄る。
「あら、早速彼氏とメール?」
「の、覗かないでよっ!」
母からスマホ画面を隠しつつ、シンヤからのメッセージを読む。僕が教えた料理が上手く作れて美味しかったと、感想と感謝の言葉が可愛らしく綴られていた。
「ふへへ……」
「ニヤついちゃって」
「……っ!」
クッションで顔を隠し、どういたしましてのメッセージを送る。顔の熱がある程度引いたら元の体勢に戻る。
「彼氏はもういいの?」
「も、もう夜だし……」
「寝落ちするまでメール送りあったり電話しちゃったりするのが青春じゃないの~。ふふ、元カレ思い出しちゃう」
「嘘でも父さんって言ってくれよ息子の前だぞ……!」
「だってあの人と会ったの会社なんだもの。学生時代の話はみんな元カレよぉ。母さん嬉しいのよ? ヒロ友達もいないから、子供との恋バナは出来ないんだーって諦めかけてたのよ」
母の調子に呆れているとスマホが通知音を鳴らす。慌てて見てみたが、企業アカウントからの広告メッセージだった。
「……覗かないでよ」
僕とほぼ同時に僕のスマホ画面を覗いた母を睨む。
「ふふっ、ねぇ、シンヤくんってどんな子なの? 写真とかある? もっと話聞かせて」
母に見せられる健全な写真なんてあっただろうか、出会ってすぐの頃の写真なら大丈夫かな。
「……こ、この子」
「あら……! ヒロの持ってる本の表紙の子みたい。これじゃ好きになって当然ね」
「本については言わないでってば!」
制服を着崩した金髪少年という世のお母様方は嫌いそうな格好だが、シンヤが不良ではないと説明しておかなければ。
「シンヤくんは、えっと……こんなカッコしてるけどすごく真面目で、頭もいいんだよ」
「へぇー……こんなに顔がいいのに頭も……ねぇ、今度家連れてきてよ、母さん会いたくなっちゃった」
「え……うん、出来たらね。へ、変なこと言わないでよ?」
「変なことって? 本のこととか?」
「やめてってば!」
今後数日はエロ本イジりがあるんだろうな、ほとぼりが冷めるまで引きこもろうかな……
「と、とにかく……僕の恥ずかしい話とかやめてよ。シンヤくんは僕のことカッコイイって思ってるんだから」
「目は悪いのね……」
「母さん!? 息子をなんだと……あっ」
今度こそシンヤからメッセージが来た。受話器を持ったアザラシと「電話していい?」の文字の可愛らしいスタンプだ、シンヤらしい。
「いいじゃない、話して話して」
「母さんは聞かないで!」
もちろんと返信をしてすぐに電話がかかってくる。母から逃げてリビングの隅で応答ボタンをタップする。
「……も、もしもし、シンヤくん?」
『もしもしヒロくん? ヒロくん……♡ ごめんねこんな時間に』
「う、ううんっ、全然いいよ。どうしたの?」
『……どうってわけじゃないんだ、ただ……声聞きたくて♡ 迷惑だった?』
「全然っ! 僕もちょうど話したいと……ぅわあっ!?」
母が背後に迫っていたことに気付き、腰を抜かす。
『ヒロくん? 何?』
「な、なんでもない! ちょっと虫が……ちょっと待ってて…………やめてよ母さんっ! 僕もう部屋帰る!」
自室に逃げ込んで扉を背に座り、シンヤと話す。
「ごめんごめん。えっと、ちょうど僕も話したかったんだ」
『ほんと? 嬉しい♡』
「うん……ぁ、宿題やった? まだ? うん、僕もまだ……やりながら話そうよ、僕ちょっとこの教科苦手でさ、教えて欲しいな」
スマホを机に置いてシンヤと話しながら宿題を進める。当然のように話に夢中になり、宿題は夜遅くまでかかった。人生で一番楽しい夜更かしだったねなんて笑い合い、また明日と名残惜しく別れを告げ、通話を切る。
「はぁ……好きだなぁ」
胸の高鳴りと温かさを反芻するために胸に手を当て、シンヤも同じ気持ちだと嬉しいななんて考えた。
10
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
就職するところがない俺は男用のアダルトグッズの会社に就職しました
柊香
BL
倒産で職を失った俺はアダルトグッズ開発会社に就職!?
しかも男用!?
好条件だから仕方なく入った会社だが慣れるとだんだん良くなってきて…
二作目です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ダメリーマンにダメにされちゃう高校生
タタミ
BL
高校3年生の古賀栄智は、同じシェアハウスに住む会社員・宮城旭に恋している。
ギャンブル好きで特定の恋人を作らないダメ男の旭に、栄智は実らない想いを募らせていくが──
ダメリーマンにダメにされる男子高校生の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる