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やはり君は神だ

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鍵穴がパテで埋められた屋上への扉に背を預けて、シンヤは白いシャツのボタンを一つずつ外していく。その手は震えており、ボタンを外す速度はとても遅い。

「す、すぐ……脱ぐから、もうちょい待って」

「ゆっくりでいいよ」

焦らされるのは嫌いじゃないし、焦るシンヤは可愛らしい。彼の泣きそうな顔は本当に最高だ……一枚撮っておこう。

「……まだ脱いでないけど?」

なんで撮ったの? と首を傾げるシンヤは自分の可愛さが分かっていない。まぁ、高身長の不良もどきに可愛さなんてないと思い込むのは普通なのかな。

「ボタン全部外れたね。ほら、肌着めくって」

いつもと大して変わらない無地の白い肌着を見るに、肌着の柄がダサくて恥ずかしいなんて理由ではない。何がそんなに恥ずかしいのだろう。

「…………わ、笑ったりとか」

「しないしない」

笑う? 腹にラクガキでもしてあるのか? だとしたら笑いかねない。
表情筋に気を配る僕の前でシンヤは肌着をゆっくりのたくし上げた。

「………………え?」

いつも通りの綺麗なお腹、舐めたくなる縦長の臍、そして胸──ピンク色の乳首はまだ見えない。絆創膏が両胸のそれぞれの真ん中に貼られていた。

「シ、シシ、シンヤ……くんっ、シンヤくん、シンヤくんっ!?」

「な、何? 何! 怖い! なんで連写……今剥がすから待っててよっ、恥ずかしいっ、恥ずかしいから……そんなに、撮ったり見たり……嫌だ」

「ちくばんは反則だろ吉良深夜ぁ!」

「ひっ……な、何? ってか……俺のフルネーム覚えてたんだ」

逆にどうして覚えられていないと思うんだ? いや、今はそんなことどうだっていい。

「シンヤくん……どうして、絆創膏貼ってるの?」

深呼吸をして何度も瞬きをして、ざわめき立った心を落ち着かせてから尋ねた。

「…………服に擦れて気持ちよくなるから、だけど……」

「シンヤくん……エロいっ! エロいよ、エロ可愛い、なんでそんなに可愛いの、なんでこんなエロ可愛い子が僕の彼氏なの…………シンヤくん、僕多分……前世で世界救ってる。世界救ったけど功績を理解されず非業の死を遂げたんだ。その分のお詫びとご褒美でこんなエロ可愛い彼氏が……」

「ヒロくん……? 何ブツブツ言ってるの? やっぱり変だと思うよな……だからこっそり剥がそうと思ったのに。普通に服着れないようになったのヒロくんのせいだし、無理矢理見たのもヒロくんなんだから、あんまり変なリアクションしないでよ」

えっちな体になっちゃった責任取って、だって? もちろんだ。取るに決まっている。

「……ちょい待ってて、剥がすから」

「剥がさないで! ぁ、いや、やっぱり剥がして……いや剥がさないで、剥がしたい、僕が剥がしたいでも剥がしたくない」

「え? 剥がしちゃダメなの?」

「剥がさなきゃダメなんだけどさ、乳首に絆創膏が貼ってあるっていうエロい状態を保ちたいってのもあるしさ、剥がすために貼ってるものだから剥がすのが正解なんだけど……」

シンヤは首を傾げている。

「きょとん顔可愛い。えっと、例えるなら……ほら、可愛いキャラの顔したスイーツとかあるじゃん? 食べるのもったいないけど、食べないのは当然もったいないし、みたいな」

「えっと、つまり……ヒロくんは絆創膏が好きなの?」

「絆創膏が好きなんじゃないよ、ちくばんのエロさ知らずに天然で乳首に絆創膏貼ってるシンヤくんが好きなんだよ」

「………………俺もヒロくん好き♡♡」

シンヤくんが好き、の部分しか理解できなかったんだろうな。

「剥がさないと撮れないし、剥がすね」

「待って……! 僕剥がしたい、いやでもシンヤくんが自分で剥がすのも見たい!」

「……俺、左剥がすから、シンヤくん右剥がして」

「そもそも剥がして欲しくない……!」

「替えの絆創膏あるから終わったら貼り直すよ、貼らないと服擦れて授業集中出来ないし」

僕の葛藤をシンヤはあっという間に解決してみせた。

「シンヤくん……今、君への愛の中に敬愛が増えたよ、君は神だ」

首を傾げながらも僕からの愛が増えたことはしっかり認識し、頬を緩める。そんな可愛いシンヤは僕の彼氏だ。
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