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君は僕にとって太陽だから

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どうやらシンヤは自身の見た目だけが僕に好まれていると勘違いしているようなので、僕は彼の中身も好きだと説明することにした。しかし言葉が思い付かない。

「……どうしたの? ヒロくん。難しい顔して……♡ あぁ、考え込んでるヒロくんカッコイイ……♡♡ 目元見えないのがミステリアスさ出してるぅ♡」

僕の目は前髪に隠れている。自分の視線が他人に分からないと安心するし、視界が狭いと他人の顔を見にくくなるから活用している。僕の髪型に言及する人は鬱陶しいと言うばかりだが、シンヤは好んでくれているらしい。

「…………あの、さ」

「うん♡」

外見だけでなく中身も好き──なのか? 僕はシンヤの外見が好きなだけ、いや、言ってしまえば今現在の彼のファッションが好きなだけで、彼自身の顔が好みというわけではない。泣き顔は可愛いし大人しくしていれば綺麗な顔立ちだとは思うけれど、特別好みというわけでもない。

「僕はね、シンヤくんのこと……」

制服の着崩し方とプリン頭が推しと似ていて好きなだけ。理想の少年だから気に入っているだけ。

「シンヤくんのこと、好きだよ」

「嬉しい……♡♡ 俺もヒロくん大好き♡♡♡」

シンヤが僕の理想の見た目をしているのは何故か。その理由は先程説明された、俺の好みに合わせたのだと。

「そ、その好きはっ、心からのものだから……」

ラノベの表紙一枚をただの一瞬見ただけ、ただそれだけで俺の好みだと確信して周りの目もあるだろうに髪を染めた。
それほどまでに僕を愛してくれたことと、思い切りの良さが彼の魅力だ。

「見た目だけとかじゃなくて、ちゃんと中身も好き……君に一生触れられないとしても! 僕は、君のこと好きだって言う。君が髪を黒く染め直したって、僕は!」

僕なんかをここまで愛してくれる人がこの先現れるだろうか? ありえない。シンヤは僕に訪れた生涯一度の奇跡だ。

「……本当? ヒロくん……嬉しい♡ 嬉しすぎて死んじゃいそう♡♡」

「君のその一途さ……本当に嬉しい、大好きだよ」

好きになってもらえたから好き、なんて、あまりいいことではない気もするけれど。シンヤの満面の笑顔の輝かしさに自己嫌悪も罪悪感も影の中に隠れてしまう。

「じゃ、学校行こっか♡」

「……うん」

見た目に反して真面目なシンヤの手を握り、空席が目立つ電車に乗る。ニコニコと笑ってご機嫌なシンヤは眩しい、金髪だからとかではなく人として輝いている。性根の腐った陰キャの僕とはやはり違う生き物なのだろう。

「…………ねぇシンヤくん。イカロスの話知ってる? 太陽に近付いて死んじゃった人」

「ギリシャ神話? 蝋で羽作った人だよね。羽が溶けて落っこちた……それが何?」

「いや……子供の頃にその人の歌聞いて、なんで太陽に近寄っちゃうんだよって思ってたんだけど……なんか、今は、気持ち分かるなーって」

ぽすん、と僕の太陽の胸元に頭を預ける。

「成長して共感力上がった感じかな、ヒロくん優しいもんね♡」

「そんなことないよ……」

「あはっ♡ 顔真っ赤。照れなくていいじゃん、ほんとにヒロくん優しーもん♡ 俺のヒーローだよ、大好き♡♡」

体が熱い。やっぱり近付き過ぎたかな。でも、蝋の羽なんて作っていない僕は墜落死なんてしない。灰すらも残さず焼き尽くされるまで太陽にしがみついてみせる。
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