上 下
12 / 298

君が思うより君が好き

しおりを挟む
駅のトイレの個室で便器に座らず、壁にもたれてしゃがんで虚ろな目をする金髪少年。開いたままの口からは白濁液が垂れ、頬はほんのりと赤らんでいる。

「ねぇ……シンヤくんっ、写真撮っていい? いいなら、そのままで……瞬き二回して」

恐る恐るスマホを構えるとシンヤは表情を一切変えずに瞼だけを動かした。

「ほんとごめん……個人で楽しむだけだから」

数秒間連写し、カメラロールを確認した後で生のシンヤを見る。頬にうっすらと見える涙の跡は写真に残っただろうか。

「ん……」

「あっ、待ってシンヤくん。動画もお願い。もちろんネットとかには絶対上げないし念のためクラウドにも保存しないしこのスマホ二度と公共WiFiに繋げないからっ……」

言いながらスマホを構え、息を殺して動画を撮る。

「…………動いていいの?」

僕の音が入らないように慎重に頷く。シンヤは僕を見上げて微かに笑い、喉にまで垂れた僕の精液を手のひらで拭う。指ですくうのではなく、手首近くで拭うのだ。何故シンヤは僕のフェチを理解しているんだ?

「ん、ん……シンヤくん、いっぱい出たな♡ 溜まってた? あはっ♡」

まだ白い汚れの目立つ赤い舌を見せつけるように大きく口を開けて笑う。

「また俺の口に出したくなったらいつでも言えよ♡ ヒ、ロ、くんっ♡♡」

そう言うとシンヤは手や指についた精液を舐め、ごくんと動く喉仏で僕を挑発する。指をしゃぶってちゅぽんっと離す仕草も僕の股間に効く。

「あはっ♡ にっが……♡ 濃いなぁ♡ 何日分? 他に出させてくれる人居ない感じ? お手手が恋人? これからは俺が搾ってやるから感謝しろよー?」

まずい、呼吸が荒くなってきた。動画に音を入れてはいけない、息を止めよう。

「んー? 顔真っ赤だぞヒロくぅん♡♡ いつまで撮ってんだよ、スマホなんか持ってないでさぁ……俺に触ったら?」

もう動画に撮らせてくれる仕草のネタがない、と示しているのだろうか? ならもう撮影をやめよう。

「……ありがとう、シンヤくん。絶対個人用にするから」

「うん♡ そんなに言わなくっても俺ヒロくん信じてるよ♡♡」

唇を舐めたシンヤは真剣な顔をする。思わず身構えたが、外の様子を伺っているだけだったようで無人を悟るとすぐに外に出た。

「早く行こ♡ 遅刻確定だけど」

「……ちょっと待って、その前に」

昂った感情をどうにかしたい。しゃぶるどころか喉を犯すことも許容してくれたシンヤの僕への気持ちを確かめたい。その二つの衝動のまま僕はシンヤの頬に触れた。

「ヒロくん……♡ なぁに?」

下を向いてくれたシンヤの唇を目指して背伸びをする。ぎゅっと目を閉じて口を突き出して、生まれて初めてのキスを試みた僕の唇はシンヤの手の甲に触れた。

「シ、シンヤくん……?」

キスを嫌がられた? 僕のことが好きだと言うからキスしてみたくなったのに……しゃぶったのは痴漢されたことへの口止めか何かだったのか?

「ごめん、シンヤくん……今のめちゃくちゃ嬉しかった♡ でも、今は、その……シンヤくんの、したばっかりだから…………俺なら、自分の咥えて飲ませた後の口……ちょっとやだし」

「え……ぁ、フェラの直後だから嫌ってだけ? 僕とのキスが嫌なわけじゃないの?」

「へっ? そ、そう見えた? 違うよっ、キスはしたい……すごく、したい……♡ でも……あっ、ヒロくんのが汚いとかっ、そういう意味じゃないから。俺はヒロくんのどこ舐めても平気だけど、ヒロくんは……どうかなって」

確かについさっきまで自分の陰茎をしゃぶっていた口だと思うとキスしたくなくなってきたな。

「…………そ、それじゃあ、キスは……改めて?」

「う、うんっ♡ また……♡ ちゃんと綺麗にしておくし、お尻も使えるようにしておくから♡ 俺のどこでも使いたくなったらいつでも言ってね♡♡」

「……そんな言い方しないで」

「へっ? 何……?」

「使うとかやめてよ……僕もシンヤくんのこと好きだって言ったよね?」

好きだと言い合って様々な過程をすっ飛ばして口淫をしてくれたのだ、もう恋人同士だと思っていいだろう。それなのに「使う」なんて言わないで欲しい。

「うん♡♡♡ めちゃくちゃ嬉しかったよ♡♡」

「……なら、君のことを僕が使うとか、そういうのじゃないでしょ?」

「…………ごほうし?」

「ちっ、ちがうよぉっ……」

ちょっとキュンときてしまった。それでいいよなんて言わないように気を付けなければ。

「……ほら、君は僕の何?」

「…………せい、どれい? ってやつ」

「は……? な、なんでそうなるのっ? 僕、君のこと好きって言ったよね!」

「え? うん♡♡ めちゃくちゃ嬉しかった♡♡ もっと言って……♡」

性奴隷の言葉の意味が分かっていないだけだろうか。俺はヒロくんの彼氏♡ とか言って欲しかっただけなのに妙なことになってきた。

「好き、なんだよ。僕は君が、好き。好き同士なんだから……ね、あるでしょ」

「うん♡ 俺はヒロくんに惚れてるよ♡♡ 頑張ってヒロくんの好みの見た目になったから、ヒロくん俺を好きになってくれて……♡ 俺のこと、性欲処理に使ってくれるんでしょ? めちゃくちゃ嬉しい♡♡♡」

「え……?」

僕ってそんな男に見られていたのか? いや、僕がシンヤの見た目だけが好きだと捉えられているからだ。きっとそうだ。ちゃんと話せば恋人同士になれるだろう、遅刻上等、今日はシンヤと付き合う日だ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて── ※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。 ※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。 ※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...