上 下
607 / 667

ふたまた、に

しおりを挟む
画面越しにも分かるくらいに胸を大きく上下させる荒い呼吸、そんなにも苦しい状態だというのに口を手で覆っている。
仰け反った雪風の状況は彼の部下達は正しく理解出来ないだろう。聞こえるのは体調を心配する声だけだ。

「……っ、ん……ぅ…………いや、えっと……虫、デカい虫が出てな。おーい誰かー……」

そんな言い訳が通用するものだろうか。

『虫……ですか? はぁ……』
『どうせまた誰か連れ込んでるんじゃないんですか』

勘のいい奴が居るな。

「いやいや、誰も連れ込んでない。俺最近会社にも誰も連れ込んでなかったろ?」

姿勢を戻した雪風は息を荒くしているが、冷静に返した。賢者タイムか? いや違う、雪風は中だけで絶頂を迎えて射精は出来ていない。パンパンに張った陰茎は相当苦しいはずだ、まだ彼の熱は冷めていない。

『そういえば社長最近大人しかったような……』
『こんな話やめましょうよ、仕事中ですよ』

雪風は嘘はついていない。俺はこの家に住んでいるのだから「連れ込んだ」とは言わない。仕事部屋には連れ込んだだろ……と反論されたなら「俺は自分の意思でここに入った、雪風に連れ込まれたんじゃない」とでも言おうか。

「俺もそろそろ歳だからな、落ち着かないと」

一人に絞る、という意味だろう? 絶世の美男の最後の恋人に選ばれるなんて、なんて光栄なことだろう。

「いやまだ四十にはなって、なっ……い……けどな」

雪風は真面目に働いている。俺も恋人の務めを果たさなければ。
俺は苦しそうに張った陰茎をそっと握り、全体に広がり毛布にまで滴っていた先走りの汁のぬめりを利用し、優しく扱いた。

「……く、ぅっ…………ふっ、ちょっ、と……待てよっ……」

あまり刺激を与えないように優しく優しく扱いていると、雪風は俺の手を掴んで止めた。

『え? ぁ、は、はい。おい、スライド一旦止めろ』
『社長、やっぱり体調が優れないのでは?』

「ぁ、いやっ……お前らは、続けろ……」

『え……じゃあ、誰に?』
『説明再開しますが、よろしいですか?』

俺の手を引っ張っても快感のせいで力が抜けて引き剥がせないと悟った雪風は、俺の手に手を重ね、俺の手越しに陰茎を握った。

「……んっ、ん……ふ、んっ……ぅ…………」

俺の手を使って自慰をしている。俺の手はオナホじゃないんだ、俺は俺の意思で自分の手を動かす。

「ふっ、ふ……ぅ…………んぅっ!?」

雪風に上下させられていた手に力を込め、亀頭をぎゅっと握った。親指の腹で鈴口を弄ってやると、雪風は口を押さえて額を机の端に乗せ、快楽に呻いた。

『えっ、ちょ、社長! 社長!? 大変……』
『やっべぇマジで倒れた!? おい誰か電話! 社長の側近さんに電話!』

貧血か何かで意識を朦朧とさせていると思われたようだ。手を止めても雪風は起き上がらず、休憩を堪能するだけだ。
結局リモートワークは中断され、部下に連絡を受けてやってきた雪風の側仕えの使用人が雪風をベッドに運んだという演技をして、会議用のアプリを落としてくれた。

「…………すいません」

「当主様の望みだったのならポチさんに落ち度はありませんよ」

流石にやり過ぎたと素直に反省し頭を下げると、使用人はにこやかに許してくれた。

「……しかし当主様、家に住んだ途端に仕事に身が入らなくなったとなれば、せっかく前当主様が許してくださった坊っちゃまとの同居が白紙撤回となるのでは?」

「……っ!? それはまずい! 雪成には報告しないでくれ、頼む……!」

「そう言われましても……仕事の進捗を誤魔化すのは難しいかと。真面目に仕事した方がコストパフォーマンスがよろしいかと」

雪風は激しく首を縦に振り、貧血だと部下に誤解された今日はとりあえずメールの確認などをすると伝えた。使用人は部屋を去り、雪風は宣言通りにメールフォルダを開いた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

処理中です...