俺の名前は今日からポチです

ムーン

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びょういん、に

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雪成が吐き気を催して病室を去ってから五分ほど経っただろうか、勢いよくカーテンが開き、雪成にそっくりな美青年が現れた。

「よぉ、まーひろぉー! お見舞いだ!」

真っ白な髪と肌は白い病院内に溶け込んで、真っ赤な瞳だけがシグナルレッドという言葉を思い出すほど目立っている。

「飯もう食ったか? 親父に肉食わせたんだってな、酷いことするなーまひろー」

「雪風、来てくれてありがと。知らなかったんだよ、肉食っちゃダメなんて……アレルギーとかあるのか?」

「ただの思い込みだよ、汚ぇと思ってるもん食うとああだ。汚ぇと思ってるから食わないんはずなんだけどな……お前口にねじ込みでもしたのか?」

普通に食べてくれたのは俺が孫だからだろうか? それとも無茶な要求に素直に納得したのか?

「ま、ゲロ親父なんかどうでもいいから……ヤろうぜ、真尋。揺らしちゃダメなのは頭だけだろ?」

雪風は毛布をどかしてベッドに乗り、俺の太腿に跨った。上体を起こさせてくれているベッドに背を押し付けられ、頬にキスをされた。

「腰振ったら頭も揺れるだろ、雪風だけ動くにしても振動は来るし、運動はNGなんだよ」

「ゆっくりするから! ゆっくりするからぁ! もう何日も真尋とセックスしてないんだぞ? 真尋が嫌がるからセフレ呼んでないし一人でするのも後ろ弄ってないのに! 二時間も空けてきたのに!」

相変わらずブラックな環境で働いているな。社長ならもう少し融通を効かせても何も言われないだろうに。

「大きな声出すなよ、頭に響く……ったく、仕方ないな……」

「とか何とか言って俺がベッド乗る前から勃起してたよなお前」

雪風を見た瞬間に今から彼を抱けるのだと確信して体は準備を進めていた。

「……入院中にシコれないだろ」

「意外と気にするタイプだよな、ぁ、ちょっと待ってろよ」

俺は入院着を脱ごうとしていたのに、雪風はベッドを下りてどこかへ行ってしまった。部屋は出ていないようだが、俺は見回しても天井やカーテンしか見えないのだ。

「ただいまー、どうよこのカッコ」

「……ナース?」

「そうそう、もはやフィクションのミニスカナースだ」

白衣の天使という言葉がここまで似合う者も居ない。この病院にいる看護師は青っぽい作業着のような姿で、全然白衣の天使ではないのだ。元々天使っぽかった雪風がミニスカナース姿になれば完璧な天使だ。

「天使っ……! 雪風さんマジ天使……!」

「だろー? コスプレ衣装だからペラッペラだけど、雪風さん美人だから補正効いて普通に可愛いだろ?」

「可愛いっ、美人っ、綺麗、美しい、天使!」

「もっと褒めて……!」

今度は足を閉じたまま俺の太腿の上に乗った雪風を抱き寄せ、白いニーハイソックスとミニスカに挟まれた太腿にそっと手を乗せた。

「最近聞かないけど、こういうの絶対領域って言うんだってな」

「何人にも侵されない聖なる領域……!」

「今お前が侵してんだよ、そして犯すんだよ」

「心の光、心の壁…………そういえば雪風って八角形のバリア張れそうな目してるよな」

「……なんかアニメか? 俺お前のオタク趣味にはついていけないぞ」

その割に妙に勘がいい。すぐに脳を趣味から肉欲に切り替え、すべすべの太腿をさすりつつ雪風の目を見つめる。

「…………色んなキャラのコスプレ似合いそうだよな」

目と髪の色が珍しいからとかではなく、顔が整い過ぎていて三次元より二次元の方が近いと思えてしまう。

「教えてくれたらやってやるぞ?」

「んー……でもなぁ……解釈違いすごそうだし……俺男キャラはエロい目で見ないタイプだし……女装はキャラとなるとキツいし……コスプレだと言い聞かせてもアレだし……撮影会止まりだな」

「相変わらずめんどくさい奴だな……」

少し趣味を語ると雪風はすぐにそう言うが、俺は全くそんな感覚はない。いつか雪兎が言っていた「雪風は仕事とセックスだけ」なんてのは的を得ていると今頃思えてきた。
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