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ゆだんだめぜったい

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ベッドの傍に屈んで叔父を睨みつける──が、何も見えていない叔父は何の反応も見せないので睨むのをやめた。

「何してるんだよお前」

「監禁されてる」

「……どういうことだ?」

叔父は人の好意を利用して最低な行為を繰り返すクズだったはずだ。彼の恋人も愛情につけ込まれて叔父の性欲や暴力欲のはけ口にされているはずなのに──俺の予想が間違っていた?

「君のせいだろ? 君のせいで俺が雪風と浮気するかもしれないとか言われて、これだよ」

「……解かせないのか?」

「言っても無駄だよ。それに、これはこれで楽しいんだよ」

言っても無駄? 彼は叔父の言うことは何でも聞くんじゃないのか? 楽しい? 拘束される方なんて叔父の趣味の真逆じゃないのか?

「楽しいってなんだよ……」

「俺のこと大好きな涼斗さんが俺が自分から離れるって思い込んで、可愛く激しく嫉妬して、俺が絶対に離れられないようにしたんだよ? 楽しいよそりゃ……! 今まで仕事があるからとか言ってセックス断られることもあったのに、俺の心も縛りたいのか毎晩毎晩必死で俺の上で腰振るんだよ? 本当に可愛い……顔が見れないのが残念で仕方ないよ」

なんなんだこいつ……いや、こいつら。

「あぁ……思い出すなぁ、聞いてよ犬なんとかさん。これ、俺達が初めてセックスした時と同じなんだよ? 俺に一目惚れした涼斗さんは俺の隣に引っ越してきて、ポスト漁ったりカメラと盗聴器仕掛けたりして、とうとう寝てる俺をこうやって拘束して逆レイプしたんだよ! たまんないよもうっ……思い出すだけで、ぁあ……勃ってきた。本当に可愛いんだよ涼斗さん……」

俺の中で築かれていた叔父とその恋人の関係が崩れた。叔父が一方的に彼を利用していると思っていた。違った、こいつらは異常者同士仲良く対等な関係を築いていたんだ。

「……俺は、お前が雪風に手を出すから……殺してやろうかって思って来たんだよ」

「雪風? ぁー、もう興味無いよ。犬に寝盗られたのが気に入らなくて取り返そうとしたけどさ、涼斗さんの方が可愛いもん……俺にはやっぱり涼斗さんだけだね」

その言い方は気に入らないが、訂正させても意味はない。

「…………雪風にはもう二度と手を出さないって誓え」

「誓う誓う……ブラフもダメ?」

「ダメに決まってるだろ、二度と関わるな」

「いいよ、分かった。縁なんかとっくに切ってるしね」

想像以上に楽に片付いた。本当に殺す気でいたが、本当に殺したなら後処理が面倒だし、雪風や雪兎にバレたらどう思われるか分からない。これでよかったのだ。

「それじゃ、俺はもう行くよ。監禁生活楽しんでろ」

開けたままの扉から出ようとしたが、俺の名前を呼ぶ声と階段を上ってくる音を聞いて慌てて静かに扉を閉めた。

「……ベッドの下」

隠れ場所を探す俺に叔父が呟いた。他に場所はない、俺は助言に従った。

「…………涼斗さん?」

「……凪さん。誰か、来ませんでした?」

告げ口なんてしないだろうな。隠れさせて希望を与えておいて……なんて、叔父ならやりかねない。いや、叔父の恋人は細身だ、取っ組み合いになっても勝てる自信がある、大丈夫、大丈夫だ。

「誰も? 誰か来てるんですか?」

「……雪凪さんからの依頼で、少し……来てないならいいです」

部屋を出ていった。俺は慎重に扉を開け、彼がパソコンなどがある部屋に入ったのを見た。足音を殺しつつも急いで階段を下り、リビングに向かった。

「犬、ちょうどよかった。氷頼む」

ソファに座っている祖父が振り向き、空のコップを揺らす。彼の顔を見て安堵した俺は冷蔵庫の位置を視線で確認し、コップを受け取ろうと祖父に近付いた。

「……雪也、避けろっ!」

一歩踏み出した瞬間、ゴッと鈍い音が響き、脳が揺れ、自分の意思に関係なく床に倒れた。
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