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ねんいりに
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ベッドの中で目を覚ます。部屋は明るいが雪兎は居ない。ゆっくりと起き上がってみれば寝間着を着ており、体や頭皮には風呂上がりのスッキリとした感覚があった。
「……ユキ様?」
まだ体はだるいが体力はかなり回復した。軽く伸びをしてまた倒れると枕元に携帯端末が置かれているのに気付く。タオルケットを肩まで上げてそれを持ち上げてみれば、俺の物だと分かる。
「あれ……雪風から着信来てたんだ」
数時間前に雪風から着信があったようだ、三回ほどかけて諦めたらしく、用件はメッセージで伝えられている。
『お前、雪兎の学校行ったんだってな』
『そこでお前何した? いや、言わなくていい』
『理由があるんだよな、大丈夫、信じてる』
『お前の工作のおかげで楽に事故で片付いた』
『今度からは行動を起こす前に俺に言え』
何のことかすぐに分かった。雪兎の学校のトイレでの行為だ、父兄の一人が不運にも転んでしまったアレだ。
俺は雪風が何らかの理由で明言を避けていることを察し、「ありがとうございます」とだけ返信した。
「ただいま……ぁ、ポチ、起きた? 大丈夫?」
「おかえりなさいユキ様、どこへ行かれてたんですか?」
雪兎が帰ってきたので携帯端末を置いて起き上がれば、雪兎が料理を盛った皿を乗せた盆を持っていることに気付く。
「ご飯、もらってきたんだよ」
ベッドから下りて折り畳み式の机を広げ、雪兎が盆をそこに置くのを待つ。
「……何、机の前に座ってるの?」
「え……? ご飯……」
「犬が主人と同じように机で食べるの?」
優しい微笑みをたたえたままの言葉は俺の背骨に電撃のような寒気を与え、下腹を疼かせる。
「いえ……床で食べます」
俺の分の皿を受け取り、床に置く。その前に四つん這いになると雪兎は嬉しそうに微笑んで俺の頭を撫でた。
「ポチ、どう? 美味しい?」
デミグラスソースがかかった半熟のオムライス。手を使わず、顔を皿に押し付けるように、とろっとしたそれを啜るように下品に食べる。
「……わんっ」
汚れた顔を上げて微笑みながら鳴けば雪兎は目を丸くし、それから頬を紅潮させて微笑み返した。
「よく分かってるね、ポチ、可愛いよ」
「わんっ、わん……わふ……くぅん……」
「撫でられるの好き?」
「わんっ!」
「そっかそっか、可愛い可愛い」
俺を一通り撫でた後、スプーンを持ち直したのを確認し、俺は再びオムライスに口元を埋めた。
「相変わらず鳴き真似は下手だよね」
「……あれでも頑張ったんですよ」
「下手なのに頑張ってるってのも可愛いよ、大丈夫」
ぽふぽふと頭を撫でられるだけで拗ねる気もなくして再び犬の鳴き真似をして甘える、そんな俺は鳴くのは下手でも精神性は犬よりも犬らしい、自分でそう思う。
「ごちそうさま、ポチも……ごちそうさましてるね」
空っぽの皿が机の上の盆に乗せられる。
「ごちそうさまでした、美味しかったです」
そう言いながら起き上がると寝間着の首元を掴まれ、引っ張られる。戸惑いながらも素直に顔を寄せると雪兎の下が顎から頬までを舐めた。
「……汚れてるからご主人様が綺麗にしてあげるね」
「…………わんっ」
口の周りを舐め回された後は唇同士を短く重ね合い、どちらからともなく口を開け、互いの舌を絡ませ合う。雪兎は俺の服を掴み、俺は雪兎を抱き締め、深い深いキスを夜が更けるまで続けた。
「……ユキ様?」
まだ体はだるいが体力はかなり回復した。軽く伸びをしてまた倒れると枕元に携帯端末が置かれているのに気付く。タオルケットを肩まで上げてそれを持ち上げてみれば、俺の物だと分かる。
「あれ……雪風から着信来てたんだ」
数時間前に雪風から着信があったようだ、三回ほどかけて諦めたらしく、用件はメッセージで伝えられている。
『お前、雪兎の学校行ったんだってな』
『そこでお前何した? いや、言わなくていい』
『理由があるんだよな、大丈夫、信じてる』
『お前の工作のおかげで楽に事故で片付いた』
『今度からは行動を起こす前に俺に言え』
何のことかすぐに分かった。雪兎の学校のトイレでの行為だ、父兄の一人が不運にも転んでしまったアレだ。
俺は雪風が何らかの理由で明言を避けていることを察し、「ありがとうございます」とだけ返信した。
「ただいま……ぁ、ポチ、起きた? 大丈夫?」
「おかえりなさいユキ様、どこへ行かれてたんですか?」
雪兎が帰ってきたので携帯端末を置いて起き上がれば、雪兎が料理を盛った皿を乗せた盆を持っていることに気付く。
「ご飯、もらってきたんだよ」
ベッドから下りて折り畳み式の机を広げ、雪兎が盆をそこに置くのを待つ。
「……何、机の前に座ってるの?」
「え……? ご飯……」
「犬が主人と同じように机で食べるの?」
優しい微笑みをたたえたままの言葉は俺の背骨に電撃のような寒気を与え、下腹を疼かせる。
「いえ……床で食べます」
俺の分の皿を受け取り、床に置く。その前に四つん這いになると雪兎は嬉しそうに微笑んで俺の頭を撫でた。
「ポチ、どう? 美味しい?」
デミグラスソースがかかった半熟のオムライス。手を使わず、顔を皿に押し付けるように、とろっとしたそれを啜るように下品に食べる。
「……わんっ」
汚れた顔を上げて微笑みながら鳴けば雪兎は目を丸くし、それから頬を紅潮させて微笑み返した。
「よく分かってるね、ポチ、可愛いよ」
「わんっ、わん……わふ……くぅん……」
「撫でられるの好き?」
「わんっ!」
「そっかそっか、可愛い可愛い」
俺を一通り撫でた後、スプーンを持ち直したのを確認し、俺は再びオムライスに口元を埋めた。
「相変わらず鳴き真似は下手だよね」
「……あれでも頑張ったんですよ」
「下手なのに頑張ってるってのも可愛いよ、大丈夫」
ぽふぽふと頭を撫でられるだけで拗ねる気もなくして再び犬の鳴き真似をして甘える、そんな俺は鳴くのは下手でも精神性は犬よりも犬らしい、自分でそう思う。
「ごちそうさま、ポチも……ごちそうさましてるね」
空っぽの皿が机の上の盆に乗せられる。
「ごちそうさまでした、美味しかったです」
そう言いながら起き上がると寝間着の首元を掴まれ、引っ張られる。戸惑いながらも素直に顔を寄せると雪兎の下が顎から頬までを舐めた。
「……汚れてるからご主人様が綺麗にしてあげるね」
「…………わんっ」
口の周りを舐め回された後は唇同士を短く重ね合い、どちらからともなく口を開け、互いの舌を絡ませ合う。雪兎は俺の服を掴み、俺は雪兎を抱き締め、深い深いキスを夜が更けるまで続けた。
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