俺の名前は今日からポチです

ムーン

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さんにんでおんせん、きゅう

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湯船の温度はきっと快適なものなのだろう。しかし火照った身体には微妙に思えるし、鞭の痕に沁みて興奮してしまって温泉らしい気分にならない。
特に酷く打たれた内腿の蚯蚓脹れを指で軽くなぞり、ビクンと身体を跳ねさせる。

「……っ、ん……」

声が漏れて思わず顔を上げたが、俺を湯船に入れてすぐに引き返し、自分の身体を洗っている二人はこちらを見ていない。俺は続けて内腿の鞭の痕に指を滑らせた。線状にぷくっと膨らんだ皮膚、膨らんだ先の裂けた部分や裂けかけた部分に何かしらの効能がありそうな湯が沁みる。湯治なんて言葉もあるし、案外早く治るかもしれないな。

「は、ぁっ……」

「おい、風呂の中でするな。排水溝詰まるだろ」

俯いてほとんど目を閉じてしまっていたから雪風の接近に気付かなかった。

「水で流さなきゃ固まるんだ、知ってるだろ?」

「……べ、別に……そういうこと、してないし」

「嘘つけシコってたくせに」

「俺が触ってたのは太腿だよ! 鞭の痕!」

まぁ、内腿を撫で回す手の動きは自慰に見えるだろうし、痛くて興奮するから触っていたのだから理由も似たようなものだ。

「隣入るぜ、まーひろっ」

「話聞いたか? 太腿だからな?」

「はいはい、分かった分かった……いっ、た……たたっ……」

隣に座った雪風は一瞬前の笑顔を崩し、苦痛に顔を歪める。原因は分かりきっている。全身の傷だ、俺の足や腰なんて比にならない酷い傷……打撲に爪の痕に……あぁ、もう、件の家庭教師は百回殺しても足りないな。

「…………大丈夫か?」

「……っ、あぁ、いや……ほ、骨身に染みるなぁ……? いい湯だ……」

「沁みてるのは皮だろ……」

触れるべきではないと分かっていながらも手を伸ばそうとしてしまう。手で触れるのは当然痛みを増させるだけだが、水流を作ることもよくないのに、行き場に迷う手で湯をかき混ぜてしまう。

「……よっ、ユキ、真尋の隣はもらったぜ」

「いいよ? 僕の席ここだもん」

少し遅れて身体を洗い終えた雪兎は俺の上に座った。胡座をかいていた上だ、内腿に思い切り体重がかかっている。しかし、タオル一枚すらない雪兎の尻の生の感触は多少の痛みを吹っ飛ばす。

「ね、ポチ?」

「ユキ様の生尻っ……! ぁ、な、なんですか? すいませんよく聞こえなくて」

「…………お尻触っちゃ嫌だよ?」

「触りません触りません」

笑って誤魔化しつつ雪兎が体を冷やさないように肩まで沈め、カラスの行水を体現する彼が逃げ出さないように後ろから抱き締める。赤子のようにすべすべとした肌を身体の前面で味わい、ふにふにと柔らかいお腹を手のひらで堪能する。

「……お腹ならいいよ、なんて言ってないよ」

「お腹ダメなんですか?」

「………………いいよ」

なら遠慮なく。
陶器、餅、赤子、どれもしっくりこない。陶器や赤子に触れた覚えはないし、餅なんて口に放り込むもので──あぁ、なら口に入れれば分かるかな。

「ひぁっ……!? ゃっ……何すんの! お腹撫でてもいいよって言ったの、耳食べていいなんて一言も言ってない!」

「ごめんなさい、犬って目に入ったものなんでも口に入れちゃうんです」

耳じゃ軟骨があって餅らしさは感じられないな、凹凸があるから肌の滑らかさもよく分からない。

「わっ……! もぉっ……」

頬なら分かりやすいかと唇を押し当ててみると雪兎はこれまでとは違って拒絶しなかった。調子に乗って舌を這わせ、唇ではむはむと挟んでみた。

「んー……」

ちゅうーっ……と吸ってみる。

「ゃ……」

頬を擦り寄せてみる。

「ふふ……」

短いキスを繰り返してみる。

「…………楽しい?」

「もちもちふにふにすべすべ……全然飽きませんね」

「……そう」

唇に触れる頬の温度が上がる。雪兎は頬ならあまり怒らないというのは覚えておくと今後役に立ちそうだ。
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