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おとなになって、いち
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雪兎の泣き声が聞こえなくなり、雪風の胸に顔を埋めているだけになる。俺はそっと雪兎の頭を撫で、次に雪風の頬を撫でた。
「……つーか、家訓的に息子と旅行ってかなりやばいんだよな。前の旅行も親父に予定ぶっ込まれたし……今回は極秘で進めたからなんとかなったけど雪兎にヘリ出したってことはもう知ってるだろうし、帰ったら殺される」
俺の手に甘えるように頭を傾け、心配事を並べる。
「親戚の集まりでギリギリセーフだからな、前の休暇もめちゃくちゃ怒られたし……マジでやばい。まひろぉー……助けて」
「その親父さんも同じようなアレってことは?」
家訓だから仕方なく恨まれるように接してきた、それは雪風の父親もそうなのかもしれない。でなければ息子に嫌われても平気だなんて父親はそうそう居ないはずだ。
「会う度に俺の脛蹴って「無意味に背ぇばっかり伸ばしやがって」って怒鳴ってくるんだぞ……?」
そうそう居ない──居ないとは言ってない。雪風の父親は少数に当てはまってしまったようだ。
「……おじいちゃんそんなことするの?」
「お、起きてたのかユキ……いや、えっとな」
「……ゆきには優しいよ?」
「…………多分身長同じくらいだからだろうな、それ以上大きくなったら足蹴られるぞ」
随分低身長なんだな。しかもコンプレックスにしているタイプだ、面倒臭い。
「もうおじいちゃんより大きいと思うけど」
「え? 嘘……立って」
雪風と雪兎は立ち上がり、雪風は何かを思い出すような仕草をした。
「親父より絶対高い! え、じゃあ何あのショタジジイ孫は可愛いの……!?」
「さ、最近会ってないから分かんないよ?」
「……今度会う時は厚めのズボン履いとけ」
まさか孫まで蹴ることはないと思いたいけれど、もし雪兎が目の前で蹴られたら雪兎の祖父でも殴りかかってしまいそうで怖い。
「ま、親父対策は帰りの船で考えるか。今は可愛い息子達と戯れていたい」
「人はそれを現実逃避と呼ぶ」
「ナレーションっぽく言うのやめろ」
飛びついてきた雪兎を抱きとめて寝転がると、横に雪風が寝転がる。目を閉じた二人にそのまま眠るつもりなのだろうと俺も目を閉じる。少し前に目を覚ましたばかりの俺が眠れる訳もなく、ただただ目を閉じて時を過ごす。
「ん……喉乾いた」
もぞもぞと雪兎が動いていたかと思えば布団を抜け出して部屋を出ていった。開け放たれた扉から夕飯の匂いが漂ってくる。そういえば今日は昼を食べていないな、なんて思いつつ雪風を揺り起こす。
「そろそろ飯みたいだぞ」
「そうか…………なぁ、真尋。ありがとうな、色々……おかげで雪兎と仲良くなれた」
まだ眠気が残っているのかどこかぼうっとしたままの微笑みが艶やかに見えて、肩に腕を回して抱き寄せた。
「お前には辛いことだったかもしれないが、俺達はお前が来てくれて幸せになれた」
「……俺としては引き取ってもらえてからはずっと幸せだった。もう一度家族を手に入れられるなんて……思ってなかったから」
雪風の頬を撫でながら彼に覆い被さると、赤い寝ぼけ眼が見開かれた。
「ま、真尋……? 待てよ、ユキに見られたら……また」
「大丈夫……もうちょっと時間あるから」
まだ雪兎の足音も聞こえていない。耳を澄ませておいて、ドアノブを捻る音が聞こえたら雪風から離れればいいだけだ。
「んっ……ぅ、ダメ、だって……真尋ぉ」
キスの最中も雪風は俺の肩や胸をぐいぐいと押してくる。これでは俺が無理矢理押し倒したようになってしまう。
「真尋っ、ダメ、ぃや……離れ、ろ、よっ……!」
足音は近付いてきたが、扉はまだ開けられていない。まぁ念の為そろそろ離れておこう。そう考えつつ扉の方を向いた俺は、雪兎はそもそも扉を閉めていかなかったことを思い出し、驚愕に見開かれた赤紫の瞳を見た。
「……つーか、家訓的に息子と旅行ってかなりやばいんだよな。前の旅行も親父に予定ぶっ込まれたし……今回は極秘で進めたからなんとかなったけど雪兎にヘリ出したってことはもう知ってるだろうし、帰ったら殺される」
俺の手に甘えるように頭を傾け、心配事を並べる。
「親戚の集まりでギリギリセーフだからな、前の休暇もめちゃくちゃ怒られたし……マジでやばい。まひろぉー……助けて」
「その親父さんも同じようなアレってことは?」
家訓だから仕方なく恨まれるように接してきた、それは雪風の父親もそうなのかもしれない。でなければ息子に嫌われても平気だなんて父親はそうそう居ないはずだ。
「会う度に俺の脛蹴って「無意味に背ぇばっかり伸ばしやがって」って怒鳴ってくるんだぞ……?」
そうそう居ない──居ないとは言ってない。雪風の父親は少数に当てはまってしまったようだ。
「……おじいちゃんそんなことするの?」
「お、起きてたのかユキ……いや、えっとな」
「……ゆきには優しいよ?」
「…………多分身長同じくらいだからだろうな、それ以上大きくなったら足蹴られるぞ」
随分低身長なんだな。しかもコンプレックスにしているタイプだ、面倒臭い。
「もうおじいちゃんより大きいと思うけど」
「え? 嘘……立って」
雪風と雪兎は立ち上がり、雪風は何かを思い出すような仕草をした。
「親父より絶対高い! え、じゃあ何あのショタジジイ孫は可愛いの……!?」
「さ、最近会ってないから分かんないよ?」
「……今度会う時は厚めのズボン履いとけ」
まさか孫まで蹴ることはないと思いたいけれど、もし雪兎が目の前で蹴られたら雪兎の祖父でも殴りかかってしまいそうで怖い。
「ま、親父対策は帰りの船で考えるか。今は可愛い息子達と戯れていたい」
「人はそれを現実逃避と呼ぶ」
「ナレーションっぽく言うのやめろ」
飛びついてきた雪兎を抱きとめて寝転がると、横に雪風が寝転がる。目を閉じた二人にそのまま眠るつもりなのだろうと俺も目を閉じる。少し前に目を覚ましたばかりの俺が眠れる訳もなく、ただただ目を閉じて時を過ごす。
「ん……喉乾いた」
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「そろそろ飯みたいだぞ」
「そうか…………なぁ、真尋。ありがとうな、色々……おかげで雪兎と仲良くなれた」
まだ眠気が残っているのかどこかぼうっとしたままの微笑みが艶やかに見えて、肩に腕を回して抱き寄せた。
「お前には辛いことだったかもしれないが、俺達はお前が来てくれて幸せになれた」
「……俺としては引き取ってもらえてからはずっと幸せだった。もう一度家族を手に入れられるなんて……思ってなかったから」
雪風の頬を撫でながら彼に覆い被さると、赤い寝ぼけ眼が見開かれた。
「ま、真尋……? 待てよ、ユキに見られたら……また」
「大丈夫……もうちょっと時間あるから」
まだ雪兎の足音も聞こえていない。耳を澄ませておいて、ドアノブを捻る音が聞こえたら雪風から離れればいいだけだ。
「んっ……ぅ、ダメ、だって……真尋ぉ」
キスの最中も雪風は俺の肩や胸をぐいぐいと押してくる。これでは俺が無理矢理押し倒したようになってしまう。
「真尋っ、ダメ、ぃや……離れ、ろ、よっ……!」
足音は近付いてきたが、扉はまだ開けられていない。まぁ念の為そろそろ離れておこう。そう考えつつ扉の方を向いた俺は、雪兎はそもそも扉を閉めていかなかったことを思い出し、驚愕に見開かれた赤紫の瞳を見た。
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