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ひとばんじゅう

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目の前に座った使用人の視線を感じながらも、蕩けた顔を見せないように、俺を見ても無表情のままの彼の顔を見ないように、首が絞まるのも構わずに俯く。俯いて絞まる程度なら危険はないから使用人は何も言ってこない。

「……っ、ふっ……ぅ、んっ……!」

唇を噛み締めていても漏れる甘い吐息。身を捩らせて縄を軋ませる音。ぐちゅぐちゅと中を掻き回す淫猥な水音。感情なく俺を蹂躙する機械の駆動音。
雪風が居た時は、雪風の手で嬌声を上げていた時は、こんな音気にならなかった。なのに今は泣きたくなるほどよく聞こえる。

「…………ぇ、と……いい天気ですね」

どうして話しかけてくるんだ? 無言は気まずいというのは分かるが今の俺に話しかけるか?

「知っ……ら、んっ……!」

「洗濯物がよく乾いたんですよ……」

「知るかっ……黙れ、ぇっ……ぁ、ぁっ……んっ! ふっ……ぐ、ぅううっ!」

機械は俺の都合や腸壁の過敏さを考慮せずめちゃくちゃに掻き回す。絶頂したばかりの穴を掻き回して、前立腺や精嚢を押し潰して、コックリングに締められた性器に射精を要求してくる。

「……だ、大丈夫ですか……?」

「見りゃっ、分かるやろ……! 黙れぇっ!」

「す、すいません……」

「ふっ、ふぅーっ、ふー…………はぁっ、ん…………怒鳴って、すいません……」

首振りの角度が変わってまともに言葉を紡げるようになり、苛立ちに任せた暴言を謝罪する──しかし、安堵した俺を嘲笑うかのように玩具は再び前立腺を抉って擦り、震えさせ、俺に声を出すことすら許さない深い絶頂を叩きつけた。

「たっだいまー。おつかれ、戻っていいぞ」

「はい、失礼します。おやすみなさい、当主様」

襖が開く音に勝手に視線が動く。涙でぼやけた視界に雪風が映った、風呂から帰ってきたのだ。俺は使用人が深々と頭を下げる前で反り返った身体を痙攣させ、突き上げに合わせて声を漏らす姿を見せていると認識しながらも、格好良く振る舞ってやろうと考えることすら出来ない。

「大丈夫か? 真尋。ぷるっぷる震えて……だいぶ深ぁーくイっちゃった感じ?」

先程まで使用人が正座をしていた場所に雪風がどかっと座り、太腿の間に手を入れられたかと思えば、玩具は首振りをやめて上下運動を緩やかに変えた。

「あっ、ぁーっ……はっ、ぁんっ! ゆ、ゆき……あんっ! ゆき、かぜぇ……ひんっ!」

「えー、ランダムくねり停止、ピストン速度低下、距離延長……シンプルに深々とぶっ挿さるって感じだな、どうだ?」

「イっ……イくっ! 一突き、ごとにぃっ……イくぅっ!」

「じゃあちょうどいいな」

どこが? そう聞ける思考能力は残っておらず、ただただ快楽に染まった意味のない声を上げる。

「あーっ、ぁーっ……あっ、んんんっ……!」

「ゆっくり寝ろよ、明日はユキが来るんだ。もっとめちゃくちゃに弄ばれるんだろ? しっかり英気養わないとな」

「はっ、ひぁっ、ひぃっ……んんっ! ふぁあっ」

「ちゃんと見ておいてやるから、寝てる間に首吊りってオチはないからな、安心して寝ろよ」

灯りはそのまま、優しく話しかけてくれる好きな人が居て、暗闇や悪夢に怯えることなく眠れる環境──緊縛と玩具がなければ。

「イくっ、イくぅっ……ひ、ィ、くぅぅんっ……」

「蕩けた顔しやがって……可愛いぞ、真尋」

「ゆっ、ゆ……ゆきっ、ひっ、ゆ、ぅうっ……!」

「ちゃんと居るから。そんな声出すなよ。気持ちいいことだけに集中してろ」

撫でられて、抱き締められて、喪失への恐怖が快楽と安心に塗り潰されていく。いつも心の真ん中近辺をさまよっていた不安が完全に消えると、俺は絶頂し続けながら眠りに落ちた。
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