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くるーざー、よん
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雪兎と同じ陶器のような白い肌。自分で痒みを訴えて引っ掻いているだけでも止めたくなる、傷なんて許されない美しい肌。触れる時は極限まで気を使って優しく優しく愛撫しなければならない。
そんな肌にできた無数の痣。まだ赤いものも、紫色のものも、青っぽくなっているものもある。血が滲んでいるものまである。
「…………ゆ、き……かぜ? これ、何だよ、何だよこれっ! 誰に何されたんだよっ!」
「もう、番号変わってると思ってたけど、ダメ元で連絡したら出てくれた。もう俺の方が背が高くなってたけど、まだ……叱ってくれた」
雪風は泣きながらも本当に嬉しそうな顔をしている。先生……あの家庭教師だ。この家のことだからどうせワニの餌にしていると思っていたのに、のうのうと生きていたのか。
「…………真尋は結局殴ってくれなかったよな」
「殴れるわけないだろ! 好きなんだよ!」
「……殴って、押さえつけて、犯して……縛って、殴って、蹴って…………真尋がしてくれなかったこと、せんせ、全部してくれた」
「そんなの嬉しくないだろ? 雪風、頼むから……」
「息子の物を盗ったり、恋人が居る兄弟にねだったり、息子に要らないって言われるような俺は……そういう扱い受けるべきだろ?」
どうやって育てられたらこんな思考になるんだ。どうしてこんなになるまで誰も優しく出来なかったんだ。
「…………雪風」
「真尋……ぶって」
雪風は俺の手を取って頬に添える。指を曲げさせて、拳を握らせて、殴れとねだる。
「真尋…………好き」
拳に頬擦りをしながら満面の笑みを浮かべた。俺が拳を解いて恐る恐る頬を撫でると不安そうな顔に変わる、愛撫から逃げようとする。
「嫌……真尋、ぶって。優しくしないで、殴って……罵りながら、乱暴に……」
ネクタイを解いてシャツを脱がせても抵抗はない。優しく触れると弱々しく逃げようとするけれど、手を押し返したりはしない。
「んっ……ふ、ぁっ……まひろぉ、好きぃ……」
軽くキスをしても逃げる以外の抵抗はない。ベルトを外すと腰を上げてスラックスを脱ぐ手伝いまでした。剥き出しの肢体を見て思わず口を抑える。足にまで痣がある。内腿にあるのは……爪の跡だ。わざと引っ掻いた後。抓って皮膚を毟った跡もある。
「真尋っ、好き……ごめんなさい、好き……好きで、ごめんなさい……」
「……雪風、謝らなくていいから。好きなんだろ? もうちょっと甘えてくれよ」
「だ、め……雪兎に……」
「大丈夫。大丈夫だから、素直になってくれ、一瞬でいいから、本音聞かせてくれよ」
雪風は弱々しく手を上げて顔を隠す。手首より上、服に隠れる場所には無数の傷がある。どうやって生きてきたらこんなに美しい生き物を嬲れるんだ? 興奮のあまり……ならまだ分かる、どうしてわざと痛めつけられるんだ?
「……真尋」
目を腕で隠したまま、少し明瞭になった声色で俺を呼ぶ。
「父さんは雪凪の補助に俺を作った。母さんは顔も名前も知らない。雪凪は自分より俺が優秀なのが気に入らなくてずっと俺を虐めてた、家庭教師に俺を調教させた。家庭教師の気持ち悪ぃ太いごつごつした指で穴拡げられて、雪凪に犯された。それから何年も家では二人の便器やってた。学校でも雪凪に言われてやってた、男も女も生徒も先生も関係なく、まわされてた。家庭教師も雪凪も居なくなって、社長継がされて、急に自由になったんだ」
今顔を見ようとしてはいけないのだろう。声をかけても、触れてもいけない。
「……何すればよかったんだ? いつも通り、誰彼構わずヤってて良かったのか? 二人が居なくなって誰も殴ってくれなくなって、何も分からなくなって、やっと叩いてくれた人見つけたのに、結婚したら叩いてくれなくなって……それ言ったら、今のお前みたいに……撫でられて」
淡々とした声色に涙が滲み始める。
「生まれてから覚えてること全部話したら、もっと優しくなって……気持ち悪いって殴ってくれるはずだったのに、撫でられて、抱き締められて…………そんなの求めてなかったのに、嬉しくて」
そっと手を伸ばして頭を撫でた。
「……っ、分かってきた……のに。普通の、生き方……教えてもらえて、分かってきたのにぃ……家族、増える……はずだったのに、人数、変わらなかった」
恐る恐る抱き締めると顔を隠していた手が離れて俺の背に回された。
「な、んで? どうして……死ん、で……これからだったのに……また、分からなくなって……雪兎にも、接し方分からなくて……」
「……雪風」
「教えて……まひろ、もう一回……最後まで、教えて」
背にもあるだろう傷痕が気になって抱き締めた腕に力を入れられない。触れているのも怖い。それでもやらなければならない。
俺は雪風が漏らすだろう痛みに喘ぐ声を聞き漏らさないように聴覚を研ぎ澄ませ、ゆっくりと抱き締める力を強めていった。
そんな肌にできた無数の痣。まだ赤いものも、紫色のものも、青っぽくなっているものもある。血が滲んでいるものまである。
「…………ゆ、き……かぜ? これ、何だよ、何だよこれっ! 誰に何されたんだよっ!」
「もう、番号変わってると思ってたけど、ダメ元で連絡したら出てくれた。もう俺の方が背が高くなってたけど、まだ……叱ってくれた」
雪風は泣きながらも本当に嬉しそうな顔をしている。先生……あの家庭教師だ。この家のことだからどうせワニの餌にしていると思っていたのに、のうのうと生きていたのか。
「…………真尋は結局殴ってくれなかったよな」
「殴れるわけないだろ! 好きなんだよ!」
「……殴って、押さえつけて、犯して……縛って、殴って、蹴って…………真尋がしてくれなかったこと、せんせ、全部してくれた」
「そんなの嬉しくないだろ? 雪風、頼むから……」
「息子の物を盗ったり、恋人が居る兄弟にねだったり、息子に要らないって言われるような俺は……そういう扱い受けるべきだろ?」
どうやって育てられたらこんな思考になるんだ。どうしてこんなになるまで誰も優しく出来なかったんだ。
「…………雪風」
「真尋……ぶって」
雪風は俺の手を取って頬に添える。指を曲げさせて、拳を握らせて、殴れとねだる。
「真尋…………好き」
拳に頬擦りをしながら満面の笑みを浮かべた。俺が拳を解いて恐る恐る頬を撫でると不安そうな顔に変わる、愛撫から逃げようとする。
「嫌……真尋、ぶって。優しくしないで、殴って……罵りながら、乱暴に……」
ネクタイを解いてシャツを脱がせても抵抗はない。優しく触れると弱々しく逃げようとするけれど、手を押し返したりはしない。
「んっ……ふ、ぁっ……まひろぉ、好きぃ……」
軽くキスをしても逃げる以外の抵抗はない。ベルトを外すと腰を上げてスラックスを脱ぐ手伝いまでした。剥き出しの肢体を見て思わず口を抑える。足にまで痣がある。内腿にあるのは……爪の跡だ。わざと引っ掻いた後。抓って皮膚を毟った跡もある。
「真尋っ、好き……ごめんなさい、好き……好きで、ごめんなさい……」
「……雪風、謝らなくていいから。好きなんだろ? もうちょっと甘えてくれよ」
「だ、め……雪兎に……」
「大丈夫。大丈夫だから、素直になってくれ、一瞬でいいから、本音聞かせてくれよ」
雪風は弱々しく手を上げて顔を隠す。手首より上、服に隠れる場所には無数の傷がある。どうやって生きてきたらこんなに美しい生き物を嬲れるんだ? 興奮のあまり……ならまだ分かる、どうしてわざと痛めつけられるんだ?
「……真尋」
目を腕で隠したまま、少し明瞭になった声色で俺を呼ぶ。
「父さんは雪凪の補助に俺を作った。母さんは顔も名前も知らない。雪凪は自分より俺が優秀なのが気に入らなくてずっと俺を虐めてた、家庭教師に俺を調教させた。家庭教師の気持ち悪ぃ太いごつごつした指で穴拡げられて、雪凪に犯された。それから何年も家では二人の便器やってた。学校でも雪凪に言われてやってた、男も女も生徒も先生も関係なく、まわされてた。家庭教師も雪凪も居なくなって、社長継がされて、急に自由になったんだ」
今顔を見ようとしてはいけないのだろう。声をかけても、触れてもいけない。
「……何すればよかったんだ? いつも通り、誰彼構わずヤってて良かったのか? 二人が居なくなって誰も殴ってくれなくなって、何も分からなくなって、やっと叩いてくれた人見つけたのに、結婚したら叩いてくれなくなって……それ言ったら、今のお前みたいに……撫でられて」
淡々とした声色に涙が滲み始める。
「生まれてから覚えてること全部話したら、もっと優しくなって……気持ち悪いって殴ってくれるはずだったのに、撫でられて、抱き締められて…………そんなの求めてなかったのに、嬉しくて」
そっと手を伸ばして頭を撫でた。
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「な、んで? どうして……死ん、で……これからだったのに……また、分からなくなって……雪兎にも、接し方分からなくて……」
「……雪風」
「教えて……まひろ、もう一回……最後まで、教えて」
背にもあるだろう傷痕が気になって抱き締めた腕に力を入れられない。触れているのも怖い。それでもやらなければならない。
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