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おやこ、さん
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そもそも実の父親の首を絞めるような凶行に走るまで追い詰めたのは誰だ? どうして雪兎はそこまで雪風を敵対視した?
「ポチっ……ポチ、居てくれる? ここに居てくれる? 僕のこと嫌ってない?」
俺だ。全て俺が悪い。俺が怒鳴ったのは逆ギレのようなものなのだ。お前が言うな……となってしまう。
「……嫌ってませんよ。ユキ様があんなことして驚いて、ちょっと声大きくしちゃっただけです。俺もごめんなさいですね」
いや、そもそもを辿っていけば俺に手を出した雪風が悪いのではないだろうか。
「ユキ……大丈夫か? ごめんな……」
……応えた俺が悪いか。
「…………うぅん、僕が酷いことしちゃったから。だから……ポチも怒ったんだし……そうだよね? ごめんなさい、雪風……でも、早く、出てって……ポチの視界に入らないで! 出てって、出てけよっ!」
「ちょっ……ユキ様!」
しおらしく謝っていた雪兎は話しているうちに怒りを思い出したのか、俺の腕の中で暴れ出した。
「何!? ポチやっぱり雪風が好きなの!?」
「違います! 落ち着いてくださいよ……俺はただ、父親への態度じゃないでしょって」
「こんな奴父親じゃないもん!」
また怒鳴ってしまいそうになったが、何とか堪えて何も言わずに抱き締める。そうしていると雪兎も落ち着いて、またすすり泣く。
「…………ごめんな、ユキ。出てくからもう泣くなよ、瞼腫れたらせっかくの可愛い顔が台無しだろ。まひ……お前の犬にももう近付かないから、な? 泣くなって」
雪兎は身体をよじって俺の胸元に顔を埋める。雪風の方に視線をやると、いつも通りの微笑みがあった。
「……じゃあな真尋、ここ数日楽しかったぜ」
俺にだけ聞こえるようにそう囁いて、手を振る。
「ばいばーい」
そして部屋を出て行った。ばいばい……それは何に対して? 部屋を出て行くことに、雪兎に対しての別れの言葉だったのか? 俺へのものではないのか、もう近寄らないと、もう体を重ねることはないと、そういった旨の別れの言葉ではないのか。
「…………ポチぃ、ごめんなさい」
「……ぁ、いえ、俺は別に」
雪風が好きなのかと言われて、雪兎を宥めるためについ違うと叫んでしまった。また傷付けた? いや、きっと分かってくれる……訳が無い。雪風はきっと最悪の受け取り方をして、部屋で泣いているだろう。自惚れかもしれないが、先程の別れの言葉と虚ろな瞳を合わせれば自殺を図る可能性だってある。
「……ね、ユキ様。雪風様と仲直りしましょう? 父親じゃないは酷いですよ。首絞められたのに、泣いてるユキ様をずっと心配してたんですよ? ぁ、誤解のないように言っておきますけど俺は雪風様の方が大切とかじゃなくて、ただ…………せっかく、生きて……近くに居るんだから、もったいないな……って」
どうして雪兎の父親への態度にあんなに苛立ったのか自分で理解してしまった。俺の両親が死んでしまっているからだ、もう二度と会えないから、会えるくせに蔑ろにするのが妬ましくて許せなかったのだ。雪兎の生育環境も気持ちも考えずに、何の正義感もなく、ただ自分勝手な嫉妬で怒鳴った……最悪だな。
「……仲直り」
「はい、俺は待ってますから」
雪風が自殺を図ったりしていないか、それを確認するために仲直りを提案した。だが、俺が近くに居ては雪兎がまた不安定になるかもしれない。
「……一緒に来て」
「いいんですか? 視界に入ったり近寄ったりはダメなんでしょ?」
「…………部屋の前で待ってて」
俺は余計なことを言ったのだろうか。何も言わず一緒に行けば雪風の部屋の前で待たされることはなかったのだろうか。
犬を模した淫猥な格好で扉の前で佇んで、通り過ぎていく使用人の視線に身を縮ませずに済んだのだろうか。
「ポチっ……ポチ、居てくれる? ここに居てくれる? 僕のこと嫌ってない?」
俺だ。全て俺が悪い。俺が怒鳴ったのは逆ギレのようなものなのだ。お前が言うな……となってしまう。
「……嫌ってませんよ。ユキ様があんなことして驚いて、ちょっと声大きくしちゃっただけです。俺もごめんなさいですね」
いや、そもそもを辿っていけば俺に手を出した雪風が悪いのではないだろうか。
「ユキ……大丈夫か? ごめんな……」
……応えた俺が悪いか。
「…………うぅん、僕が酷いことしちゃったから。だから……ポチも怒ったんだし……そうだよね? ごめんなさい、雪風……でも、早く、出てって……ポチの視界に入らないで! 出てって、出てけよっ!」
「ちょっ……ユキ様!」
しおらしく謝っていた雪兎は話しているうちに怒りを思い出したのか、俺の腕の中で暴れ出した。
「何!? ポチやっぱり雪風が好きなの!?」
「違います! 落ち着いてくださいよ……俺はただ、父親への態度じゃないでしょって」
「こんな奴父親じゃないもん!」
また怒鳴ってしまいそうになったが、何とか堪えて何も言わずに抱き締める。そうしていると雪兎も落ち着いて、またすすり泣く。
「…………ごめんな、ユキ。出てくからもう泣くなよ、瞼腫れたらせっかくの可愛い顔が台無しだろ。まひ……お前の犬にももう近付かないから、な? 泣くなって」
雪兎は身体をよじって俺の胸元に顔を埋める。雪風の方に視線をやると、いつも通りの微笑みがあった。
「……じゃあな真尋、ここ数日楽しかったぜ」
俺にだけ聞こえるようにそう囁いて、手を振る。
「ばいばーい」
そして部屋を出て行った。ばいばい……それは何に対して? 部屋を出て行くことに、雪兎に対しての別れの言葉だったのか? 俺へのものではないのか、もう近寄らないと、もう体を重ねることはないと、そういった旨の別れの言葉ではないのか。
「…………ポチぃ、ごめんなさい」
「……ぁ、いえ、俺は別に」
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「……ね、ユキ様。雪風様と仲直りしましょう? 父親じゃないは酷いですよ。首絞められたのに、泣いてるユキ様をずっと心配してたんですよ? ぁ、誤解のないように言っておきますけど俺は雪風様の方が大切とかじゃなくて、ただ…………せっかく、生きて……近くに居るんだから、もったいないな……って」
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「……仲直り」
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「いいんですか? 視界に入ったり近寄ったりはダメなんでしょ?」
「…………部屋の前で待ってて」
俺は余計なことを言ったのだろうか。何も言わず一緒に行けば雪風の部屋の前で待たされることはなかったのだろうか。
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