俺の名前は今日からポチです

ムーン

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へやでゆっくり、さん

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部屋の隅に姿見を見つけ、その前に行って一旦性器を抜き、足の力が入らないらしい雪風を支えてひっくり返し、姿見と向かい合わせる。

「雪風、ほら、十七のガキに好き勝手されてふらっふらだぞ」

自分が映らないように雪風の影に隠れ、色の濃い手で顎を支えて鏡が見えるようにする。反応がないので腹に回した手を上げて胸元をまさぐる。

「当主様がガキに胸弄られて喘いで……」

「やめ、て……」

その声色に手を止め、虚ろな瞳を覗き込む。

「さっきは……煽って、悪かったな。でも、こういうのは嫌だ。な、恋人みたいにしてくれよ。約束だろ? 真尋って呼んだら恋人演じてくれるんだろ?」

「………………ごめん」

「ん、悪いのは俺だ。埋め合わせは身体でしてくれ」

再び細い身体をひっくり返し、向かい合って短くキスをして、背中と膝の裏に手を回して横抱きにする。

「……お姫様抱っこー」

「されたことは?」

「あるんだよなー、それが。悪いな。お前が初めてってのは、多分無いぞ」

ぷらぷら揺れる白く細長い足に欲情しつつ、扉を開けて見覚えのあるベッドに雪風を投げる。

「……無いのか?」

「ぁー……でも、男に惚れたのはお前が初かな」

惚れたのは……ではないのなら、初恋は雪兎の母親か。

「ふふ…………でも、お前に惚れたのは……多分、似てたから……その目付きとか、態度とか……」

「…………嫁に?」

「そ。めちゃくちゃ目付き悪くてさ。知ってるか? あの……動かない鳥、名前忘れた。あだ名アレだった」

覆い被さったまま何もせず、ただ頬を撫でられる。しかし、似ていたから惚れたなんてハッキリ言われると案外腹が立つものだな。

「……死んだんだよな」

「…………うん」

「理由、聞いていいか?」

「出産、かな。医者は大丈夫だって言ってて……実際安産だったらしい。でも、ユキが生まれたって聞いて向かってる途中で、あいつが死んだって電話入った」

そうなると雪兎は母親の顔を知らないのか。いや、写真で見たりはしたのか? だが覚えていることはないだろう。

「…………似てるんだよなぁ」

「……俺に似てる女なんか居てたまるか。欲目だよ」

「…………かなぁ? どっちでもいいや……真尋、もっかい抱いて……今は泣きたくない、思い出したくない……」

亡き妻を忘れるために俺に抱かれたいなんて、よくそんなことを堂々と言えたものだ。親ではないが不孝者と呼べるだろう。絆されて抱こうとしている俺も俺だ。どっちもどっちのダメな奴だから、人間未満な求め合いにも正当性が持てるというもの。

「…………人間になったな、お前も」

だからこんな台詞を吐かれては困るのだ。
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