俺の名前は今日からポチです

ムーン

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綺麗に整えられていたはずのシーツは掴んで引っ張ったり蹴って押したりでくしゃくしゃになっていた。その上何なのかも分からない液体で湿っている。

「…………雪風」

舌と指だけで胸だけを愛撫し尽くして、離れた今も僅かに震えて呼吸も荒い雪風を眺める。支配欲が満たされる悦びは例えようもないもので、触れてもいないのに先走りが溢れ出した。

「まだいけますよね? 俺はまだまだ元気ですよ」

失神させてやるとは言ったが本当に失神されては困る。せめて入れてからにして欲しい。
雪風が落ち着くのを待とうかとも思ったが何もしないのも暇だ。俺はそっと雪風の首に舌を這わせた。汗ばんだ白い肌は触れても舐めても非常に気持ちのいいもので、俺をどんどんと興奮させてくれる。

「……痕つけていいですか? いいですよね、前に俺にやりましたし。正月の時のはただの怪我でしたけど、バレンタインの時のはなかなかよかったですよ、雪兎には大不評でしたけど」

口を離し、唾液で濡れた首筋を指で撫でながら、虚ろな瞳に話しかける。雪風は胡乱な意識ながらも僅かに首を傾け、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「なぁ、真尋。こうしないか? ポチは雪兎の犬、真尋は俺の恋人、互いの時の話はしない、お前は完璧に演じ分ける」

「俺の負担重すぎません?」

「……嫌なんだよ、こういう時にユキの話されるの。普段なら聞きたいんだけどな? それに、俺の希望通りにされるのもちょっとムカつくんだよ。お前なりの恋人への対応をして欲しいんだよ」

「んなこと言われても困りますよ……ちゃんと希望通り優しくしてあげますから、それで我慢してください」

「それが嫌なんだよ! 虚しい……なぁ、真尋。ユキには真尋なんて呼ばれないだろ? 俺は二度とお前を犬だのポチだの言わないから、俺の提案飲んでくれよ。コスプレだとかと思えばいいんだ、俺を抱く時にだけ真尋になってくれればいい」

よくもまぁ全裸でこれだけ物を考えられるな。演じ分けろだとか人格を作れだとかなら困るけれど──そうだな、コスプレだとかと思えば出来るかもしれない。いつまでも雪兎に重ねて雪風を抱くのは両方に失礼だし……

「……分かりました。じゃあ、そんな感じでやってみますね。でも出来なくても怒らないでくださいよ?」

「いいのか? 割と冗談半分だったんだが」

そんなようには聞こえなかった。だから了承してやったのに今更躊躇わないでもらいたい。

「……じゃ、ぁ……さ、敬語やめろよ。真尋は敬語キャラじゃないだろ?」

「いや、今俺別にキャラ作ってる訳じゃないんですけど」

まぁポチと名付けられる前は明確な目上なんて居なかったから、しっかりとした敬語は今でも使えないのだけれど。

「……じゃあとりあえずタメ口で試しますか」

「ます言ってるぞ」

「…………で? キスマークは?」

「お前が恋人に付けたいタイプなら付けろよ。俺が言ってるのはそういうことだぞ」

「欲しいのか、って聞いてんだよ雪風。俺のもんだって証拠、欲しいのか?」

「……っ!? な、何お前……急に。え? 嘘だろ、真尋? 真尋ってそういう奴なの?」

せっかくポチ以前の俺と言うべきか、素を出してやったのに困惑されてはこちらが困る。
そういう奴……か。真尋は……俺は、どんな奴だったんだか。自分では分からないし、中学時代の記憶は特にあやふやだ。
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