279 / 667
でじゃゔゅ
しおりを挟む
叔父に絡まれたり雪風を抱いたり雪兎に全く構われなかった日は終わり、雪兎が登校し二度寝を楽しんでいると、腹の上に何かが乗った。雪兎よりも重いが成人男性としては軽すぎる、この体重には覚えがあった。
「……おはよう、犬なんとかさん」
眼前で微笑む眼帯をした色素の薄い男。
「…………叔父さん、何か用ですか? 降りてください」
「うん、ちょっと見て欲しいものがあってね。来てくれる?」
首の後ろに手を回され、カチャカチャと軽い金属音が響く。面倒臭さと眠たさでぼうっとしていた俺は目の前に掲げられた紐が首輪に繋がっていた物だとすぐには気付かなかった。
「……ちょっ、首輪……」
「来てくれる?」
「降りろ」
この男の言うことには従いたくない。たとえどんなにくだらないことだろうと。雪風に向ける嫌悪とは毛色が違う、本当に人として許せない部類の人間だと思っている、問題にならないのなら殴りたい。
「……来てくれる? って聞いてるんだけどな」
「…………降りろちゃ言いよんやろがドクズ」
「ふふ、怖い怖い……相変わらずだね、君。ちっとも丸くなってない」
「……あぁ? きさんなんて知らんわダボが。ど、け、クズ」
「…………これ見て」
叔父は携帯端末を俺の目の前に持ってきた。
「分かる? 昨日俺が帰った後、君と風がよろしくヤってるところ。カメラ仕掛けてたんだよね、気が付かなかった?」
雪兎に見せるぞとでも脅すつもりか? 確かに、かなり仲良くしているように映っている、見ようによっては恋人だ、これを見られるのは些かまずい。
「名前付きでネットとマスコミに流そうと思ってるんだけど」
叔父の考えは俺の想像を容易く超えた。
「……来てくれるよね?」
「…………どこ行きゃいいんでしょうか、叔父様?」
雪風の社会的地位と俺の状態から考えて、とんでもないスキャンダルになるのは目に見えている。
携帯を奪うという手もあるが、この男なら別の端末にもあるなんてことになりかねない。
叔父は俺の心底嫌そうな顔を青い右眼に映し、満足そうに笑うと俺の上から降りて部屋の扉を開け、その向こうから手招きした。
家の中を歩き回った経験は無い。常に雪兎か使用人が一緒で、行く場所も俺は選べなかった。今も選べてはいないけれど、首輪が無いことで自由だと思える。
「誰も居ないね、失礼しちゃうよ」
扉の向こうや柱の影に人の気配はするものの姿は見えない。叔父を避けているのだろう、それを叔父も分かっているのだろう。
しばらく歩いて豪奢な扉の前で止まる。雪風の部屋らしいが、家具などに特に不審な点はない。
「これこれ」
叔父は机の上に置かれていたノートパソコンを立ち上げ、俺にヘッドフォンを渡し、雪風に呼び出されて行った仕事場でも見た椅子に座らされる。予想以上の座り心地だ。
「……なんですか? 動画?」
「うん、能力の高いクズな家庭教師が気の弱い可愛い男の子を調教する動画」
「…………それ、まさか……雪風の」
「ネタばらしは後で。全部言ったらつまんないだろ?」
再生が始まった動画は手持ちのカメラで撮っているものらしく、揺れがある。
しばらくカメラをぐるぐると回す映像が続き、止まったかと思うと机に向かう白い髪の子供の後ろ姿が目を引いた。
「……おはよう、犬なんとかさん」
眼前で微笑む眼帯をした色素の薄い男。
「…………叔父さん、何か用ですか? 降りてください」
「うん、ちょっと見て欲しいものがあってね。来てくれる?」
首の後ろに手を回され、カチャカチャと軽い金属音が響く。面倒臭さと眠たさでぼうっとしていた俺は目の前に掲げられた紐が首輪に繋がっていた物だとすぐには気付かなかった。
「……ちょっ、首輪……」
「来てくれる?」
「降りろ」
この男の言うことには従いたくない。たとえどんなにくだらないことだろうと。雪風に向ける嫌悪とは毛色が違う、本当に人として許せない部類の人間だと思っている、問題にならないのなら殴りたい。
「……来てくれる? って聞いてるんだけどな」
「…………降りろちゃ言いよんやろがドクズ」
「ふふ、怖い怖い……相変わらずだね、君。ちっとも丸くなってない」
「……あぁ? きさんなんて知らんわダボが。ど、け、クズ」
「…………これ見て」
叔父は携帯端末を俺の目の前に持ってきた。
「分かる? 昨日俺が帰った後、君と風がよろしくヤってるところ。カメラ仕掛けてたんだよね、気が付かなかった?」
雪兎に見せるぞとでも脅すつもりか? 確かに、かなり仲良くしているように映っている、見ようによっては恋人だ、これを見られるのは些かまずい。
「名前付きでネットとマスコミに流そうと思ってるんだけど」
叔父の考えは俺の想像を容易く超えた。
「……来てくれるよね?」
「…………どこ行きゃいいんでしょうか、叔父様?」
雪風の社会的地位と俺の状態から考えて、とんでもないスキャンダルになるのは目に見えている。
携帯を奪うという手もあるが、この男なら別の端末にもあるなんてことになりかねない。
叔父は俺の心底嫌そうな顔を青い右眼に映し、満足そうに笑うと俺の上から降りて部屋の扉を開け、その向こうから手招きした。
家の中を歩き回った経験は無い。常に雪兎か使用人が一緒で、行く場所も俺は選べなかった。今も選べてはいないけれど、首輪が無いことで自由だと思える。
「誰も居ないね、失礼しちゃうよ」
扉の向こうや柱の影に人の気配はするものの姿は見えない。叔父を避けているのだろう、それを叔父も分かっているのだろう。
しばらく歩いて豪奢な扉の前で止まる。雪風の部屋らしいが、家具などに特に不審な点はない。
「これこれ」
叔父は机の上に置かれていたノートパソコンを立ち上げ、俺にヘッドフォンを渡し、雪風に呼び出されて行った仕事場でも見た椅子に座らされる。予想以上の座り心地だ。
「……なんですか? 動画?」
「うん、能力の高いクズな家庭教師が気の弱い可愛い男の子を調教する動画」
「…………それ、まさか……雪風の」
「ネタばらしは後で。全部言ったらつまんないだろ?」
再生が始まった動画は手持ちのカメラで撮っているものらしく、揺れがある。
しばらくカメラをぐるぐると回す映像が続き、止まったかと思うと机に向かう白い髪の子供の後ろ姿が目を引いた。
0
お気に入りに追加
1,424
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる