俺の名前は今日からポチです

ムーン

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あなたにだけ

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頭を掴んだり、シャツをこれ以上引っ張ったりするなら引き離すつもりだったが、雪風は心配になるほど大人しくしていた。舌もあまり絡ませてこない。

「ん……雪風様? 大丈夫ですか?」

歳が一回り違う男が可愛く見えるなんて、そんな馬鹿なことはありえない。雪兎に似ているから重ねてしまっているだけだ。

「真尋……」

きゅ、とシャツを掴む仕草に胸が苦しくなったりしていない。

「お願い、真尋」

「……ヤりませんよ」

「ぶって」

雪風は俺の手を掴み、手の甲に頬を擦る。

「この手で……殴って」

その仕草のいじらしさと意図の見えない言葉の奇妙な調和が俺を狂わせる。俺が触れていいのは、触れられていいのは、主人である雪兎だけのはずなのに、雪風なんて鬱陶しいだけのはずなのに、抱き締めたくなる。

「真尋っ、真尋……お願い、早く……早く殴って、お願い……」

涙目で「殴って」と願われたらどう動くのが人としての正解なのだろう。言われた通りに殴る? 落ち着かせて話を聞く? 無視する?

「……ぁ、はぁっ……真尋、違う……」

俺は落ち着かせて話を聞く選択をした。背を撫でて、気分が落ち着いたら話を聞くつもりだったんだ。

「違う……あっ、ん……真尋ぉ……」

シャツを脱がすつもりなんて、耳を舌で愛撫するつもりなんて、なかったんだ。

「……何が違うんですか。そんな声出して……夜這いならぬ朝這いに来たんでしょ? こういうことしたくて来たんでしょ? なら、これでいいじゃないですか」

指の腹だけが微かに触れるようにして中指で背筋をなぞると雪風の身体はびくんと跳ねた。

「ぶって、お願い、殴って……」

「…………やめてくださいよ、それ」

「真尋……殴って」

「やめろって言ってんだろ! 何なんだよそれっ……何で殴られたがるんだよ!」

ビンタしてきた女に求婚するくらいだ、殺すぞと脅した俺に執着するくらいだ、多少は妙な趣味だと思っていたが、もう趣味だと割り切れる範囲を超えている。
新鮮な態度が面白くて突っ撥ねる相手につきまとうのだと思っていた、違った。

「……すいません怒鳴ったりして。ほら、雪風様……キスでも何でもしてあげますから、もっと平和なおねだりください」

「…………嫌いだって、言って」

俺は雪風が嫌いだ、それは事実だ。けれど言えと言われて言えるような言葉ではない。それも想い人にそっくりな泣きかけの義父になんて。
俺は何も言わずに首筋を甘噛みし、スラックスの上から形と肉付きの良い尻を揉んだ。

「ふ……ぅ、んっ…………真尋ぉ、もっと、乱暴に……」

首から口を離し、丁寧に耳を舐る。ベルトを外し、スラックスの中に手を入れ、下着の上から手の甲で尻を撫でる。

「真尋……もっと、強く……物みたいに、して」

俺は覚悟を決め、雪風をベッドに押し倒した。
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