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あなただけの
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別荘の庭に下ろされ、芝生のチクチクという感触に敏感な身体が反応して立ち上がれなくなる。雪兎は暗い顔のまま使用人を見送って鞄を漁りだした。
「……ポチ、保護区で僕と別行動したよね」
個別に袋に包まれた玩具をぽいぽいと出しながら俺の方を向かずに話す。
「はい、ペンギン見たくて……」
まさかそれで機嫌が悪いのか?
「でも、ペンギンよりユキ様の方が可愛いですよ」
それならこの言葉で機嫌が治らないだろうか。
「随分服が乱れてたよねぇー……」
「……ぁ、あぁ……それは……」
「何かあったの? あったんだよね? 僕はそれに腹立ってんの」
職員に襲われたと言っていいのだろうか。あれは国境が産んだ悲しい勘違いによる未遂事件なのだ、俺も腹は立っているが彼らに処罰が下るのは可哀想だと思う。
「……とりあえずいえすって言ってたんですけど、どうやら誘われてたみたいで……ちゃんと逃げましたし、貞操は守れましたよ」
自分より背が高く力も強い大人から逃げられたのだ、それだけで褒めて欲しい。
「そんなことだろうと思ったよ、語学教育するべきかな。ポチって旅行すると襲われる体質なのかな?」
それは正月の時の雪風の件を言っているのだろうか。
「でも……ダメだね、ポチに落ち度がなくても……いや、落ち度はあるね、適当な返事してたっていう」
確かに分からないからと肯定し続けたのは問題だと思う。
「……とにかく、ムカつくんだよ。ポチが僕以外の奴に触られたんだって……」
雪兎の苛立ちや自分の落ち度より、俺は地面に散らばった玩具に気を取られていた。おそらくこれから雪兎は俺を清めるだとか言ってお仕置きを始める、それにこれが使われるのだ、強力な媚薬を盛られたこの身体に。
「ポチったら淫乱だからさぁ、逃げる前に結構感じちゃってたんじゃないかなって。声出したのかなーとか、可愛い顔してたんだろうなーとか、まぁ……嫉妬だよねー」
鼓動がうるさい、雪兎の話が聞こえない。
何を使われるだろう、どこを攻められるだろう、何回絶頂させられるだろう、何時間続くのだろう、そう考えるだけで先走りは溢れてしまう。
「最初は本当にペットのつもりだったのに……どうして、こんな……恋人みたいな…………ポチ? 聞いてるの?」
雪兎が俺の顔を覗き込む。俺はようやく視線を雪兎に戻した。
「す、すいません……玩具、早く使われたいなって……」
「…………変態」
「ごめんなさい……って、半分くらいは媚薬のせいですよ! 多分!」
「…………脱げ」
「え?」
「脱いで。早く、全部脱いで」
背の高い垣根があるとはいえ、ここは屋外だ。流石に屋外で全裸になるなんて──
「うん、全部脱いだね。えらいえらい、僕の言うことは聞くよねー。知らない人からは逃げるよねー。うん……よしよし、ちゃんと僕のポチだね」
どうやらほとんど無意識に命令を聞いてしまったらしい。犬だと言われても反論出来ないし、する気すらとっくの昔になくなった。
「……これ付けて、座って」
渡されたのは犬耳カチューシャ。俺はそれを躊躇いなく頭につけてチクチクと皮膚を突く芝生の上に座った。
「ユキ様……ちょっと、ここ……痛いんですけど」
「気持ちいい?」
「……これ自体はそんなに。でもっ……ユキ様に強制させられてるって……そう思うと、かなり」
「…………変態」
ようやく雪兎に笑顔が戻り始めた。命令を聞き続けた甲斐があるというもの。
雪兎は散らばった玩具の一つを拾い、俺に投げ渡した。
「……これで一人でしてごらん。見ててあげる」
木製のチェアをウッドデッキから持ってきて、俺の前でそれに座る。
俺は地面に座っているということと、自然と見下される形になるということ、俺は全裸で雪兎は服を着ているということ──あらゆる差が上下関係を表している。
雪兎にされるのではないという重大事項を覗けば俺好みの展開だ。
「……ポチ、保護区で僕と別行動したよね」
個別に袋に包まれた玩具をぽいぽいと出しながら俺の方を向かずに話す。
「はい、ペンギン見たくて……」
まさかそれで機嫌が悪いのか?
「でも、ペンギンよりユキ様の方が可愛いですよ」
それならこの言葉で機嫌が治らないだろうか。
「随分服が乱れてたよねぇー……」
「……ぁ、あぁ……それは……」
「何かあったの? あったんだよね? 僕はそれに腹立ってんの」
職員に襲われたと言っていいのだろうか。あれは国境が産んだ悲しい勘違いによる未遂事件なのだ、俺も腹は立っているが彼らに処罰が下るのは可哀想だと思う。
「……とりあえずいえすって言ってたんですけど、どうやら誘われてたみたいで……ちゃんと逃げましたし、貞操は守れましたよ」
自分より背が高く力も強い大人から逃げられたのだ、それだけで褒めて欲しい。
「そんなことだろうと思ったよ、語学教育するべきかな。ポチって旅行すると襲われる体質なのかな?」
それは正月の時の雪風の件を言っているのだろうか。
「でも……ダメだね、ポチに落ち度がなくても……いや、落ち度はあるね、適当な返事してたっていう」
確かに分からないからと肯定し続けたのは問題だと思う。
「……とにかく、ムカつくんだよ。ポチが僕以外の奴に触られたんだって……」
雪兎の苛立ちや自分の落ち度より、俺は地面に散らばった玩具に気を取られていた。おそらくこれから雪兎は俺を清めるだとか言ってお仕置きを始める、それにこれが使われるのだ、強力な媚薬を盛られたこの身体に。
「ポチったら淫乱だからさぁ、逃げる前に結構感じちゃってたんじゃないかなって。声出したのかなーとか、可愛い顔してたんだろうなーとか、まぁ……嫉妬だよねー」
鼓動がうるさい、雪兎の話が聞こえない。
何を使われるだろう、どこを攻められるだろう、何回絶頂させられるだろう、何時間続くのだろう、そう考えるだけで先走りは溢れてしまう。
「最初は本当にペットのつもりだったのに……どうして、こんな……恋人みたいな…………ポチ? 聞いてるの?」
雪兎が俺の顔を覗き込む。俺はようやく視線を雪兎に戻した。
「す、すいません……玩具、早く使われたいなって……」
「…………変態」
「ごめんなさい……って、半分くらいは媚薬のせいですよ! 多分!」
「…………脱げ」
「え?」
「脱いで。早く、全部脱いで」
背の高い垣根があるとはいえ、ここは屋外だ。流石に屋外で全裸になるなんて──
「うん、全部脱いだね。えらいえらい、僕の言うことは聞くよねー。知らない人からは逃げるよねー。うん……よしよし、ちゃんと僕のポチだね」
どうやらほとんど無意識に命令を聞いてしまったらしい。犬だと言われても反論出来ないし、する気すらとっくの昔になくなった。
「……これ付けて、座って」
渡されたのは犬耳カチューシャ。俺はそれを躊躇いなく頭につけてチクチクと皮膚を突く芝生の上に座った。
「ユキ様……ちょっと、ここ……痛いんですけど」
「気持ちいい?」
「……これ自体はそんなに。でもっ……ユキ様に強制させられてるって……そう思うと、かなり」
「…………変態」
ようやく雪兎に笑顔が戻り始めた。命令を聞き続けた甲斐があるというもの。
雪兎は散らばった玩具の一つを拾い、俺に投げ渡した。
「……これで一人でしてごらん。見ててあげる」
木製のチェアをウッドデッキから持ってきて、俺の前でそれに座る。
俺は地面に座っているということと、自然と見下される形になるということ、俺は全裸で雪兎は服を着ているということ──あらゆる差が上下関係を表している。
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