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とりたち
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雪兎は玩具をビニール袋に入れ、鞄の底に押し込んだ。俺はトイレットペーパーで便器や自分の足に垂れた精液を拭い、匂い以外の痕跡を消す。
「……ユキ様、あの……下着あります?」
後片付けの間にトイレに人気は無くなった。今なら会話も可能だ。
「ないよ?」
「じゃあ、さっきの……貞操帯をもう一回?」
「外してあげるって言ったでしょ? 床に置いちゃったから汚いし」
雪兎は俺を立ち上がらせるとズボンを引き上げ、早くベルトを巻けと当然のように言った。
「……ま、待ってください。下着……は?」
「ないってば」
「…………のーぱん?」
「わぁ、ポチったら変態。ジーパンの下は素肌なんて……擦れて痛くなったりしないのかなぁ? 感じちゃって大っきくしたりして? もしそうなったら会う人会う人全員にポチが外で勃たせちゃうような変態だってバレちゃうね!」
外に人が居るのに手つきを激しくしたり、下着を取り上げたり──海外だからか? それとも元々の趣味か? 雪兎は随分とスリルがお好みのようだ。
だが、まぁ、さっき出したばかりだし、何の玩具も仕込まれていない。雪兎が妙な触り方をしてきたりしない限り勃起するなんてことはないだろう。
「……意地悪ですね、ユキ様は」
「あはっ、もっと褒めて」
注意深く外を確認してからトイレを出る。通路にも人は居らず、案内人の元まで誰ともすれ違うことなく戻ることが出来た。人が少ないのは観光の面でも俺の下半身的な理由でも良いことだ。
「ポチ! 僕ハシビロコウ見たい! あっちに居るんだって、行こうよ!」
「……あんなもんパネルで十分でしょ、動かないんだから。それより俺はペンギンの雛見たいんですけど」
「あんな親より大きいのどこが可愛いの!」
「もっこもこ可愛いでしょ! それを言うならハシビロコウのどこが可愛いんですか眼光半端ないでしょアイツ!」
「目付き悪くて大っきいの可愛いじゃん!」
格好良いだとか、好奇心だとかならまだ理解出来るがその特徴を上げて起きながら「可愛い」と言い切るのは雪兎の趣味が悪いとしか言いようがない。
俺と雪兎は丁字路の真ん中で言い争っていた。それを見兼ねた案内人が雪兎に何かを話している──何語なんだろう。
「えー、でも……うん、分かった」
「ユキ様? 何言ってるんですか?」
「ポチ、ここでお別れだよ……三十分後にまた会お!」
「三十分であの鳥が動くとお思いで?」
それぞれ見たいものを見てこよう、という訳か。観光としては最適解だろうけど、俺はこれを一種のデートとして見ていた。だからこんな提案を雪兎にされたこと自体がショックだ。
もこもこ可愛い雛を諦めて動かない鳥を三十分見つめ続けるか? いや、もう拗ねてやろう。三十分経っても雛から離れず雪兎の嫉妬を誘おう。
俺はそう決めてわざとらしい笑顔で手を振った。
「……ユキ様、あの……下着あります?」
後片付けの間にトイレに人気は無くなった。今なら会話も可能だ。
「ないよ?」
「じゃあ、さっきの……貞操帯をもう一回?」
「外してあげるって言ったでしょ? 床に置いちゃったから汚いし」
雪兎は俺を立ち上がらせるとズボンを引き上げ、早くベルトを巻けと当然のように言った。
「……ま、待ってください。下着……は?」
「ないってば」
「…………のーぱん?」
「わぁ、ポチったら変態。ジーパンの下は素肌なんて……擦れて痛くなったりしないのかなぁ? 感じちゃって大っきくしたりして? もしそうなったら会う人会う人全員にポチが外で勃たせちゃうような変態だってバレちゃうね!」
外に人が居るのに手つきを激しくしたり、下着を取り上げたり──海外だからか? それとも元々の趣味か? 雪兎は随分とスリルがお好みのようだ。
だが、まぁ、さっき出したばかりだし、何の玩具も仕込まれていない。雪兎が妙な触り方をしてきたりしない限り勃起するなんてことはないだろう。
「……意地悪ですね、ユキ様は」
「あはっ、もっと褒めて」
注意深く外を確認してからトイレを出る。通路にも人は居らず、案内人の元まで誰ともすれ違うことなく戻ることが出来た。人が少ないのは観光の面でも俺の下半身的な理由でも良いことだ。
「ポチ! 僕ハシビロコウ見たい! あっちに居るんだって、行こうよ!」
「……あんなもんパネルで十分でしょ、動かないんだから。それより俺はペンギンの雛見たいんですけど」
「あんな親より大きいのどこが可愛いの!」
「もっこもこ可愛いでしょ! それを言うならハシビロコウのどこが可愛いんですか眼光半端ないでしょアイツ!」
「目付き悪くて大っきいの可愛いじゃん!」
格好良いだとか、好奇心だとかならまだ理解出来るがその特徴を上げて起きながら「可愛い」と言い切るのは雪兎の趣味が悪いとしか言いようがない。
俺と雪兎は丁字路の真ん中で言い争っていた。それを見兼ねた案内人が雪兎に何かを話している──何語なんだろう。
「えー、でも……うん、分かった」
「ユキ様? 何言ってるんですか?」
「ポチ、ここでお別れだよ……三十分後にまた会お!」
「三十分であの鳥が動くとお思いで?」
それぞれ見たいものを見てこよう、という訳か。観光としては最適解だろうけど、俺はこれを一種のデートとして見ていた。だからこんな提案を雪兎にされたこと自体がショックだ。
もこもこ可愛い雛を諦めて動かない鳥を三十分見つめ続けるか? いや、もう拗ねてやろう。三十分経っても雛から離れず雪兎の嫉妬を誘おう。
俺はそう決めてわざとらしい笑顔で手を振った。
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