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わんわん! きゅう
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風呂を上がり、適当に身体を拭いて、用意されていたシャツを着る。髪のついでに犬飾りも乾かされ、俺はベッドの横で正座して待っていた。
誰を? 雪兎に決まっている。雪兎は風呂を出て着替えた直後、食事を持ってくると部屋を出たのだ。
「……首輪ふっかーつ。ははっ、あると落ち着くな……」
ベッドの足に括りつけられた首輪に繋がる紐の先。食事だからと緩く締められた首輪。髪と同じ色の犬耳飾りに、同色の尻尾飾り。
「四つん這いで芸でも覚えりゃ完璧だな」
お手、お代わり、お座り、伏せ、なーんて……雪兎ならやりかねないから、言葉には気を付けよう。芸を連想する言葉も考えておかなければ。
「ただいまポチー、寂しかった?」
雪兎がトレーを持って帰ってきた。食事はサラダとステーキとスープ、プリンまである。雪兎はそれらが乗ったトレーを床に置き、俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ご飯、食べていいよ」
「……あの、机は?」
「ないよ?」
折り畳み式の机があったはずだ、部屋で食べる時には出してくれていた。けれど、今は何故か出してくれない。
まぁ、ピクニックの時のようなものだと考えれば問題無い。黙ってトレーの前に正座のまま拳をついて移動した。
「…………あの、スプーンとかフォークとか、箸とか」
トレーの上にはどこを探しても食器は見当たらない。持ってくるのを忘れたのだろうか。
「ないよ?」
「な、何で……」
「犬はそんなの使わないでしょ」
「はっ……? 何言ってるんですか、今まで、そんなこと……」
雪兎はいつの間にか手に絡めていた首輪の紐を思いっきり引っ張った。
「犬はそんな文句言わないの」
「ユキ様……俺は」
「犬でしょ?」
尻尾飾りが震え出し、俺は雪兎の腰に縋りつく。腰が勝手に浮いて、正座の姿勢が崩れ、俺は雪兎の腹に顔を擦り付けた。
「ユキ様ぁっ……だめ、ゃあっ……ゃ、いや……」
「よしよし、僕の可愛いペット。駄々こねてないで早くご飯食べなよ、お腹空いてるでしょ?」
確かに腹は減っている。けれど、食器を使わずに床で食えだなんて──
嫌だ、と首を振ると雪兎は俺の陰茎を踏みつけた。何の警告もなく、ごく自然に。
「んっ! ぁ、あぁ、ユキ様っ……」
「耳も尻尾もあって、首輪付けられてて、年下の僕に様付けして、こんなとこ踏まれて気持ちよくなって…………これで、人間だって言うの?」
「ゆき、さまぁっ……!」
「……お腹空いてるでしょ? 食べなよ」
足が離れ、振動も止まる。雪兎は首輪の紐を放し、その手で俺の頭を撫でる。
呼吸を落ち着かせ、俺は冷静になって食事を見る。いつも通り豪華で、いつもより量が多い。見ているだけで、匂いを嗅いでいるだけで、唾液が溢れてくる。
唾を飲み込み、熱い息を吐く。
「お腹、空いてるでしょ?」
「……はい」
「犬はね、お皿から直接食べるんだよ。大丈夫、熱くはないから」
「…………はい」
雪兎はトレーの向こう側に座り、無邪気な笑顔を浮かべて俺を見つめている。その手には携帯端末があり、カメラが起動されている。
俺はそっとトレーの両隣に手を置いて、四つん這いになって食事を眺めた。自然と腹が鳴り、俺はゆっくりと肘を折って食事に顔を近付けた。
誰を? 雪兎に決まっている。雪兎は風呂を出て着替えた直後、食事を持ってくると部屋を出たのだ。
「……首輪ふっかーつ。ははっ、あると落ち着くな……」
ベッドの足に括りつけられた首輪に繋がる紐の先。食事だからと緩く締められた首輪。髪と同じ色の犬耳飾りに、同色の尻尾飾り。
「四つん這いで芸でも覚えりゃ完璧だな」
お手、お代わり、お座り、伏せ、なーんて……雪兎ならやりかねないから、言葉には気を付けよう。芸を連想する言葉も考えておかなければ。
「ただいまポチー、寂しかった?」
雪兎がトレーを持って帰ってきた。食事はサラダとステーキとスープ、プリンまである。雪兎はそれらが乗ったトレーを床に置き、俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ご飯、食べていいよ」
「……あの、机は?」
「ないよ?」
折り畳み式の机があったはずだ、部屋で食べる時には出してくれていた。けれど、今は何故か出してくれない。
まぁ、ピクニックの時のようなものだと考えれば問題無い。黙ってトレーの前に正座のまま拳をついて移動した。
「…………あの、スプーンとかフォークとか、箸とか」
トレーの上にはどこを探しても食器は見当たらない。持ってくるのを忘れたのだろうか。
「ないよ?」
「な、何で……」
「犬はそんなの使わないでしょ」
「はっ……? 何言ってるんですか、今まで、そんなこと……」
雪兎はいつの間にか手に絡めていた首輪の紐を思いっきり引っ張った。
「犬はそんな文句言わないの」
「ユキ様……俺は」
「犬でしょ?」
尻尾飾りが震え出し、俺は雪兎の腰に縋りつく。腰が勝手に浮いて、正座の姿勢が崩れ、俺は雪兎の腹に顔を擦り付けた。
「ユキ様ぁっ……だめ、ゃあっ……ゃ、いや……」
「よしよし、僕の可愛いペット。駄々こねてないで早くご飯食べなよ、お腹空いてるでしょ?」
確かに腹は減っている。けれど、食器を使わずに床で食えだなんて──
嫌だ、と首を振ると雪兎は俺の陰茎を踏みつけた。何の警告もなく、ごく自然に。
「んっ! ぁ、あぁ、ユキ様っ……」
「耳も尻尾もあって、首輪付けられてて、年下の僕に様付けして、こんなとこ踏まれて気持ちよくなって…………これで、人間だって言うの?」
「ゆき、さまぁっ……!」
「……お腹空いてるでしょ? 食べなよ」
足が離れ、振動も止まる。雪兎は首輪の紐を放し、その手で俺の頭を撫でる。
呼吸を落ち着かせ、俺は冷静になって食事を見る。いつも通り豪華で、いつもより量が多い。見ているだけで、匂いを嗅いでいるだけで、唾液が溢れてくる。
唾を飲み込み、熱い息を吐く。
「お腹、空いてるでしょ?」
「……はい」
「犬はね、お皿から直接食べるんだよ。大丈夫、熱くはないから」
「…………はい」
雪兎はトレーの向こう側に座り、無邪気な笑顔を浮かべて俺を見つめている。その手には携帯端末があり、カメラが起動されている。
俺はそっとトレーの両隣に手を置いて、四つん這いになって食事を眺めた。自然と腹が鳴り、俺はゆっくりと肘を折って食事に顔を近付けた。
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