俺の名前は今日からポチです

ムーン

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わんわん! はち

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雪兎と抱き合い、俺はゆっくりと呼吸を整える。雪兎の身体が離れる頃には俺はすっかり落ち着いていた。

「……洗えたね。じゃ、流すよ」

シャワーの温度を確認し、丁度良いと認識した雪兎はまず俺の肩から流し始めた。軽く手で擦りながら、泡を落としていく。

「ふっ……ん、ぅ……」

優しく当たっていく水滴も、乱雑に肌を擦る雪兎の手も、絶頂を迎えたばかりの俺には刺激が強すぎる。

「ぁ、ゆきっ……そこ、だめ……」

性器周りを重点的に流され、俺はシャワーヘッドを掴む。雪兎は笑みをたたえたまま首を傾げ、次に足を流した。

「立って。背中も」

雪兎は俺を立ち上がらせると椅子の上に立って俺の背を流し始めた。
しばらくして終わったとの声に振り返る。雪兎は椅子に乗ったままシャワーヘッドを壁の留め具にかけていた。

「よ……っと、届いた。よし、ポチ、もう出る?  それとも湯船に……あっ」

シャワーを戻して気が抜けたのか、雪兎は足を滑らせる。このまま倒れれば、浴槽に背を打ち付けてしまう。
一瞬で雪兎がどんな怪我をするか、それを考えられた訳ではない。手を伸ばして、雪兎を抱き締め、浴槽に膝をぶつけながら雪兎を壁に押し付けた。

「危なっ……痛っ!?」

片手は壁につき、もう片方の手は雪兎をしっかりと抱き締めている。咄嗟の動きにしては優秀だ、これで自分の膝を強打していなければ完璧だった。

「…………ポ、ポチ?」

「……ユキ様、無事ですか?」

俺は足の痛みを押し隠し、姿勢を戻し、柔らかい表情を作って雪兎に尋ねた。

「頭打ったりしてません?  背中は?  どこか打ってませんか?」

「平気……ポチが、抱っこしてくれたから……」

「それはよかった。椅子に立ったりしちゃ危ないですよ」

俺に屈めと言えばよかったのに。降りてからシャワーを戻せばよかったのに。
そうしていれば、俺の膝は無事だったのに。

「うん……えへへっ、ポチかっこいいね」

「へ?  何ですか急に……いつも可愛い可愛い言ってるくせに」

「かっこよかった。ありがと、ポチ」

「そうですか……?  どうも」

俺は困惑しながらも雪兎の変化に気が付いた。
頬が、紅潮している──!?
これはまさか、俺に惚れた?  惚れたのでは?  ペット扱いの乱暴なプレイから、新婚初夜のような優しい触れ合いが楽しめるチャンスだ。

「じゃ、じゃあ雪兎。かっこいい俺と……」

「雪兎?」

「…………ユキ様」

「うん、なぁに?  かっこいいポチ」

睨まれて敬称を付けてしまう俺のどこが格好いいのだろう。

「…………冷えちゃうから、上がってから聞くよ。ほら、行こ」

雪兎は俺の腕の中からするりと抜け出し、浴室の扉を開ける。
格好付かない自分に呆れて、深い深いため息を吐いた。
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