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ふで、はち

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カシャ、とカメラの音で目を覚ます。目を覚ますと言っても眠っていた訳では──いや、一瞬だけ意識を失っていたのか。最近よく失神するが、健康に影響はないのだろうか。

「んー……思ったより見えない。いや光の反射で……ライト付けよ」

雪兎が携帯端末のカメラ機能を使って俺を撮影している。思考が止まっていた俺はその様子をじっと見ていたが、突然の眩い光に目を硬く閉じ顔を背けた。

「おっ、この角度なら見え……ちょっとポチ、こっち向いてよー。笑顔笑顔!」

「むちゃ、言わないでください。まぶしぃ……」

「眩しい?  でもライト付けないと文字見えにくいし……んー、仕方ないなぁ。下向いてていいよ」

また電子的なシャッター音が何度か鳴る。満足のいく写真が撮れたのか、雪兎は俺の隣に座って笑顔を浮かべた。

「見てほら、僕の名前書けてる」

見せられた画面には撮ったばかりの俺の写真があった。両腕を頭の上で留められ、膝を曲げて開脚した状態で固定され、犬耳カチューシャを付けて尻尾飾りを入れて──胸に精液で「ゆきと」と書かれて、そんな姿が映っていた。

「ポチ、色黒だからもっと見えると思ってたんだけど微妙だったや。だから光の反射でなんとか文字に見えるように撮ってるんだよ、凄いでしょ」

「……字、下手ですね」

「うるさいな!  人に書いたのなんて初めてなんだから仕方ないだろ!」

改めて写真を見る。全く情けない姿だ。
下手くそな「ゆきと」の文字、てらてらと照明を反射する精液で書かれた雪兎の名前。
…………タトゥーでも彫ろうか、なんて考えたり。

「この筆はよく洗ってそこの棚にでもしまっておくから、使いたかったら使ってね」

「使いたい時なんてありませんよ」

「一人でする時に物足りない時とか」

「……流石に自分で突っ込む勇気はありません」

後ろの穴ならまだしも、前は怖い。怪我でもしたらトイレの度に射精の度に激痛を味わうことになるのだ。トイレについては後ろも同じ話?  ははっ。

「じゃあこの写真は雪風に送ってー……あ、ポチはご飯とかお風呂とか入りたいよね、準備するから待って」

「えっ、送るんですか?」

ピロン、と電子音が鳴る。

「送った。雪風忙しいし返信は遅くなるよ」

そう言いながら携帯端末を机に置き、雪兎は俺を拘束していたリングを外す。久しぶりの自由だと立ち上がる──立ち上がろうとしたが、足に力が入らず転んでしまった。

「……ところでユキ様、この耳と尻尾は?」

「…………ポチ、犬でしょ?」

「付けておくんですね」

耳はどうでもいいが、尻尾はまずい。雪兎のものより小さいとはいえ、これはしっかりと気持ちいいところに当たる。不用意に座れないし、歩くのだって困難だ、四つん這いで移動したとしても足に力を入れれば──

「服どうする?  部屋の中だし着なくていいかな」

「……寒いですよ」

「設定温度高めだよ?」

「だからって裸はないでしょ!  シャツくらい下さいよ」

雪兎はしぶしぶといった顔で白いシャツを持ってきた、だが、これから風呂に入れるからと着させてはもらえず、代わりにと首輪を着けられた。
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