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第三章 羊を愛し蜂蜜を飲み文明を忌避すること
トライ・アンド・エラー
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鍵に触れていないのにセーブポイントに戻ってきたということは、僕は出血多量で死んだということ。いや、意識を失っている間に殺されたという線もあるか……ま、どっちでもいい。
「……ユウ、俺は」
「ジャック、行くよ。途中までは同じで」
軽く手首を回してから同じように走っていく。ジャックは一歩遅れたが、問題なく見張りを排除した。
「ユウ……まさか死ぬのに慣れてはいないよな?」
「慣れるわけないだろ、でも……ぐだぐだしてても時間を食うだけだ。さっきのは途中で意識飛んだからそこまで辛くもなかったし」
出血多量は初めての経験だが、意識を失うのは現実世界でもよくあることだ。ショックがないと言えば嘘になるが、熊に食われたのよりはマシだ。
「……あの黄色いヤツはとりあえず神って呼んでおくね。これからは神が出てくる条件を探ろうと思うんだ。羊殺しに違法採掘……アレは多分、島全体を見張ってて悪いヤツが出たら向かう……とかじゃない。ジャックと同じ、出現そのものはプログラムだと思うんだ」
「俺と……? そう、だな、俺はプログラムで動いているに過ぎない……」
「うん、じゃなかったら羊を殺される前に止めるはずだし、違法採掘やったヤツを僕だと間違えたりしない」
これはあくまでも仮定だ。だから調べなければならない。
「さっき出たのが見張りを殴ったことだと仮定すると、出るのが遅すぎる。羊関連だとしても遅い、魔樹に傷をつけた……でも微妙に遅いけど、紋章を見ててとか言ってたし…………っていうかアイツ、何か……この鍵に反応してたよね」
鍵を出してみたが、神は来ない。やはり常に見張っている訳ではなさそうだ。
「ジャック、この鍵何か知ってる?」
「チートコードCheap Silver Keyとしか聞いていない」
「シルバーキーは銀の鍵だよね、見たまんま。チープって何?」
「安い、安っぽい……だな」
英語は習い始めたばかりだが、その程度の英単語なら日常生活の中で覚えられる。別にcheapの意味を聞きたかった訳じゃない、そう名付けた意図を聞きたいんだ。
「何がどうチープなの? 安っぽい鍵……安っぽい? 安い? セーブロードが出来るのに? 何なのコレ」
「……女神は潤沢な神力さえあれば全能だと言っていた。今の全力を注いで作ったアイテムがその程度、安っぽい……自虐なんじゃないか?」
今のはジャックに入っているデータではなく、人工知能が考えた結果の言葉だ。女神がプログラムした人工知能が考えて出せるような意図なのだろうか? そりゃ名付けの由来なんてデータとして入れないとは思うし、考えても出ないようロックをかける意味もないと思う。
「女神…………本当に信用していいのかな」
「何を言うユウ! 女神の力は知っているだろう?」
信用出来ないのは力じゃなく人間性だ。
「まぁ……うん、幸運はあったよ。でもさ、運なんか証明出来ない」
「神の力を証明したいと思うのは古今東西悪辣なことだ」
情報源を探る、正当な証拠を探る、情報過多な時代に生きる僕には必要なスキルだ。
「…………まぁ、考えても出ないよね。現実世界に戻ってから女神に聞くよ。今はアイツの出現条件を探る、魔樹に近付くのは条件じゃない……なら、魔樹を傷つけるとか?」
魔樹にナイフを突き立てた。紋章は彫らない。
「違う……みたいだね」
「羊はっ……来てるぞ!」
「そのまま引き付けておいて」
次はどうしよう、紋章を彫るしかないのか? 考えながらナイフで垂れてきた樹液を何気なく掬った。その瞬間、視界の端に黄色いモノが見えた。
「……っ! ジャック、来た!」
『樹液欲しいの~?』
条件は魔樹を傷付けることではなく、樹液を採取することだ。おそらくこの予想は正しい。
『勝手に取らないでよ~、見張りも殴ったでしょ~? めっ、だよ~』
神は素足をしっかりと地面につけ、腰に手を当て、もう片方の手の人差し指を立てて僕に向けている。殺されはしないようだ。
『ここまでするなんてさ~、相当欲しいんだね~? 何かあった~?』
僕に走り寄ったジャックを追いかけてきた羊は神が手を翳すと大人しくなり、見張りの方へと向かった。やはり彼らに可愛がられていて、彼らを殴った僕達に怒っていたようだ。
『ちゃんと理由言ってくれたら~、そんなに怒らないから~』
「……ごめんなさい。大した理由じゃないんです、ただ……その、取っちゃダメって知らなくて。どこに言えばよかったんですか?」
『ガーちゃん経由で僕を呼んでくれれば~……ん? 待って、君達大した理由じゃないのに人殴ってまで取りに来たの?』
まずい、もう言い訳が思いつかない。有益な情報は手に入れたし、もうロードしてもいいだろう。
神はやはり鍵を見ると手を伸ばしてきたが、ジャックが壁になってくれて今度は掴まれる前にロード出来た。
「……ふぅっ、よし、見張りを倒さず魔樹に近付く方法は分かったね。樹液取るフリして紋章を彫る、これが最善だよ」
不安材料は神が紋章に反応することだ。樹液の採取を感知するのなら、ジャックが許可を取って採取している間に僕が紋章を彫る……いや、どうやって気付かれないように彫るのかは解決しない。
「とりあえずガザニアさんに交渉に行こうか」
アンから連絡があったら伝えると約束していたこともあって僕達は簡単にガザニアに会うことが出来た。
『ディエゴの話ではないのですね……』
「ええ……すいません、それで……その、樹液が欲しいんです」
『理由次第ですね』
「……僕、旅をしていて。他の大陸では樹液が高く売れるので」
閉鎖的な地域ゆえか、牧羊の大陸では樹液の買い取りはしてくれない。
『ダメです。神聖な木なんですよ、他の大陸に行くなら他の大陸で大きくない魔樹を探してください』
交渉失敗だ。僕は鍵を回し、ロードした。ガザニアは鍵に反応しなかった。
「ユウ……? 今、ロードの必要はあったか?」
「別の理由立ててもアレ言ったあとじゃ怪しまれるだろ? だから何か……別の理由作らないと。そうだ、僕が大怪我したからってのはどう?」
「おそらく無理だ、人の怪我は樹液で治らない」
樹液が治療薬になるのは魔物だけ……なら、魔物が怪我をしたなら?
「仲間の魔物が怪我した、とかは?」
「いいんじゃないか? でも、そんな仲間は居ない」
「……ガザニアさん魔物だよね、どうにかしてガザニアさん怪我させて、樹液持ってきますってのは?」
「怪我をさせた時点で人を呼ばれ、リンチだ。事故を装ったとしても難しいだろう」
住人の狂信っぷりならガザニアが許しても私刑を加えられる恐れはある。
「でも他に魔物なんて……そうだ、チビ助、師匠が連れてるチビ助!」
「……ドラゴンの鱗は俺の剣には裂けないぞ?」
何も切りかかれなんて言っていない。
「今朝、チビ助は果物食べてたよね?」
カタラに教えを受けている間、あの赤いドラゴンは彼の背後で果物を大量に貪っていた。
「……あの果物の中に、大きな釘を刺しておけば、どうなるかな」
「口か喉に刺さるだろうな」
「そう。昼は多分もう食べたから、夕飯を狙おう。僕が師匠の気を引いてる間に、チビ助の夕飯に細工をする。夕飯ご一緒するとか言ってチビ助が怪我をするのを待って、焦る師匠にこう言うんだ「僕達が樹液をもらってきます」ってね」
「…………なるほど、中々いいな」
まだ樹液を採取中にどうやって紋章を彫るかのアイディアは出ていないが、樹液を採取出来るようになった時点でセーブをしておけばいい。そこからまた何度かやり直し、最善を見つけるのだ。
「チビ助に怪我させるのは罪悪感あるけどさ……一番被害は少ないと思うんだ」
「……だな、やるか」
いくら師匠の気を引くとは言っても彼の近くにある果物に釘などを刺すのは悪手だ。予め細工をした果物を混ぜるのがいい。僕は釘を買い、ジャックは果物を買った。
「…………よし、完璧に釘は隠れるね」
「頭は見えているが……まぁ気付かないだろう」
細工をしたのはリンゴ五つ、一つにつき三本の釘を角度を変えて刺した。
セーブをして夕方を待ち、師匠の元へ行く。もちろん自分の食事は持参して。
「師匠、夕飯ご一緒しても?」
「…………別にいいけど、飯は分けねぇぞ」
師匠は昨日と同じくパンを食べている。僕は彼の正面に腰掛け、寄ってきた羊を追っ払うようジャックに伝えた。
「チビ助、おかえり。ほら、晩飯だぞ」
空を飛んでいたチビ助が戻ってくると師匠は夕飯の手を止め、傍に置いていた果物が詰まった麻袋を持っていった。
「チビ助のご飯どこで買ったんですか?」
「そこの店」
「師匠のは?」
「サクの手作りだ。いいだろ? 羨ましいだろ? 絶対分けてやんねぇ!」
別に要らないと正直に伝えたら怒るかな? 羨ましいと言えば調子に乗って語るだろうか。
「ふぅ……羊は追い払ったぞ、ユウ。すまないチビ助、前を通る……」
師匠の後ろにチビ助は居て、その前に麻袋は置かれている。ジャックはチビ助に気付かれないよう自らの体を影にして細工したリンゴを通りすがりに混ぜた。パンについて聞いていたのが功を奏し、師匠は後ろを向かなかった。
「隣に座るぞ、ユウ」
「ん」
サンドイッチを頬張りながらチビ助の様子を伺う。
「ジャック、お前飯は?」
「昼に食べ過ぎてな」
チビ助は前足で器用にリンゴを掴んだ。異常に気付く様子はない。
「つーかお前素顔どんななの? 見せてくれよ」
「いや、それは……」
『ぎゃうっ!?』
チビ助が悲鳴を上げた。慌てて振り向く師匠の目を盗み、僕はジャックと共に親指を立て合った。
「……ユウ、俺は」
「ジャック、行くよ。途中までは同じで」
軽く手首を回してから同じように走っていく。ジャックは一歩遅れたが、問題なく見張りを排除した。
「ユウ……まさか死ぬのに慣れてはいないよな?」
「慣れるわけないだろ、でも……ぐだぐだしてても時間を食うだけだ。さっきのは途中で意識飛んだからそこまで辛くもなかったし」
出血多量は初めての経験だが、意識を失うのは現実世界でもよくあることだ。ショックがないと言えば嘘になるが、熊に食われたのよりはマシだ。
「……あの黄色いヤツはとりあえず神って呼んでおくね。これからは神が出てくる条件を探ろうと思うんだ。羊殺しに違法採掘……アレは多分、島全体を見張ってて悪いヤツが出たら向かう……とかじゃない。ジャックと同じ、出現そのものはプログラムだと思うんだ」
「俺と……? そう、だな、俺はプログラムで動いているに過ぎない……」
「うん、じゃなかったら羊を殺される前に止めるはずだし、違法採掘やったヤツを僕だと間違えたりしない」
これはあくまでも仮定だ。だから調べなければならない。
「さっき出たのが見張りを殴ったことだと仮定すると、出るのが遅すぎる。羊関連だとしても遅い、魔樹に傷をつけた……でも微妙に遅いけど、紋章を見ててとか言ってたし…………っていうかアイツ、何か……この鍵に反応してたよね」
鍵を出してみたが、神は来ない。やはり常に見張っている訳ではなさそうだ。
「ジャック、この鍵何か知ってる?」
「チートコードCheap Silver Keyとしか聞いていない」
「シルバーキーは銀の鍵だよね、見たまんま。チープって何?」
「安い、安っぽい……だな」
英語は習い始めたばかりだが、その程度の英単語なら日常生活の中で覚えられる。別にcheapの意味を聞きたかった訳じゃない、そう名付けた意図を聞きたいんだ。
「何がどうチープなの? 安っぽい鍵……安っぽい? 安い? セーブロードが出来るのに? 何なのコレ」
「……女神は潤沢な神力さえあれば全能だと言っていた。今の全力を注いで作ったアイテムがその程度、安っぽい……自虐なんじゃないか?」
今のはジャックに入っているデータではなく、人工知能が考えた結果の言葉だ。女神がプログラムした人工知能が考えて出せるような意図なのだろうか? そりゃ名付けの由来なんてデータとして入れないとは思うし、考えても出ないようロックをかける意味もないと思う。
「女神…………本当に信用していいのかな」
「何を言うユウ! 女神の力は知っているだろう?」
信用出来ないのは力じゃなく人間性だ。
「まぁ……うん、幸運はあったよ。でもさ、運なんか証明出来ない」
「神の力を証明したいと思うのは古今東西悪辣なことだ」
情報源を探る、正当な証拠を探る、情報過多な時代に生きる僕には必要なスキルだ。
「…………まぁ、考えても出ないよね。現実世界に戻ってから女神に聞くよ。今はアイツの出現条件を探る、魔樹に近付くのは条件じゃない……なら、魔樹を傷つけるとか?」
魔樹にナイフを突き立てた。紋章は彫らない。
「違う……みたいだね」
「羊はっ……来てるぞ!」
「そのまま引き付けておいて」
次はどうしよう、紋章を彫るしかないのか? 考えながらナイフで垂れてきた樹液を何気なく掬った。その瞬間、視界の端に黄色いモノが見えた。
「……っ! ジャック、来た!」
『樹液欲しいの~?』
条件は魔樹を傷付けることではなく、樹液を採取することだ。おそらくこの予想は正しい。
『勝手に取らないでよ~、見張りも殴ったでしょ~? めっ、だよ~』
神は素足をしっかりと地面につけ、腰に手を当て、もう片方の手の人差し指を立てて僕に向けている。殺されはしないようだ。
『ここまでするなんてさ~、相当欲しいんだね~? 何かあった~?』
僕に走り寄ったジャックを追いかけてきた羊は神が手を翳すと大人しくなり、見張りの方へと向かった。やはり彼らに可愛がられていて、彼らを殴った僕達に怒っていたようだ。
『ちゃんと理由言ってくれたら~、そんなに怒らないから~』
「……ごめんなさい。大した理由じゃないんです、ただ……その、取っちゃダメって知らなくて。どこに言えばよかったんですか?」
『ガーちゃん経由で僕を呼んでくれれば~……ん? 待って、君達大した理由じゃないのに人殴ってまで取りに来たの?』
まずい、もう言い訳が思いつかない。有益な情報は手に入れたし、もうロードしてもいいだろう。
神はやはり鍵を見ると手を伸ばしてきたが、ジャックが壁になってくれて今度は掴まれる前にロード出来た。
「……ふぅっ、よし、見張りを倒さず魔樹に近付く方法は分かったね。樹液取るフリして紋章を彫る、これが最善だよ」
不安材料は神が紋章に反応することだ。樹液の採取を感知するのなら、ジャックが許可を取って採取している間に僕が紋章を彫る……いや、どうやって気付かれないように彫るのかは解決しない。
「とりあえずガザニアさんに交渉に行こうか」
アンから連絡があったら伝えると約束していたこともあって僕達は簡単にガザニアに会うことが出来た。
『ディエゴの話ではないのですね……』
「ええ……すいません、それで……その、樹液が欲しいんです」
『理由次第ですね』
「……僕、旅をしていて。他の大陸では樹液が高く売れるので」
閉鎖的な地域ゆえか、牧羊の大陸では樹液の買い取りはしてくれない。
『ダメです。神聖な木なんですよ、他の大陸に行くなら他の大陸で大きくない魔樹を探してください』
交渉失敗だ。僕は鍵を回し、ロードした。ガザニアは鍵に反応しなかった。
「ユウ……? 今、ロードの必要はあったか?」
「別の理由立ててもアレ言ったあとじゃ怪しまれるだろ? だから何か……別の理由作らないと。そうだ、僕が大怪我したからってのはどう?」
「おそらく無理だ、人の怪我は樹液で治らない」
樹液が治療薬になるのは魔物だけ……なら、魔物が怪我をしたなら?
「仲間の魔物が怪我した、とかは?」
「いいんじゃないか? でも、そんな仲間は居ない」
「……ガザニアさん魔物だよね、どうにかしてガザニアさん怪我させて、樹液持ってきますってのは?」
「怪我をさせた時点で人を呼ばれ、リンチだ。事故を装ったとしても難しいだろう」
住人の狂信っぷりならガザニアが許しても私刑を加えられる恐れはある。
「でも他に魔物なんて……そうだ、チビ助、師匠が連れてるチビ助!」
「……ドラゴンの鱗は俺の剣には裂けないぞ?」
何も切りかかれなんて言っていない。
「今朝、チビ助は果物食べてたよね?」
カタラに教えを受けている間、あの赤いドラゴンは彼の背後で果物を大量に貪っていた。
「……あの果物の中に、大きな釘を刺しておけば、どうなるかな」
「口か喉に刺さるだろうな」
「そう。昼は多分もう食べたから、夕飯を狙おう。僕が師匠の気を引いてる間に、チビ助の夕飯に細工をする。夕飯ご一緒するとか言ってチビ助が怪我をするのを待って、焦る師匠にこう言うんだ「僕達が樹液をもらってきます」ってね」
「…………なるほど、中々いいな」
まだ樹液を採取中にどうやって紋章を彫るかのアイディアは出ていないが、樹液を採取出来るようになった時点でセーブをしておけばいい。そこからまた何度かやり直し、最善を見つけるのだ。
「チビ助に怪我させるのは罪悪感あるけどさ……一番被害は少ないと思うんだ」
「……だな、やるか」
いくら師匠の気を引くとは言っても彼の近くにある果物に釘などを刺すのは悪手だ。予め細工をした果物を混ぜるのがいい。僕は釘を買い、ジャックは果物を買った。
「…………よし、完璧に釘は隠れるね」
「頭は見えているが……まぁ気付かないだろう」
細工をしたのはリンゴ五つ、一つにつき三本の釘を角度を変えて刺した。
セーブをして夕方を待ち、師匠の元へ行く。もちろん自分の食事は持参して。
「師匠、夕飯ご一緒しても?」
「…………別にいいけど、飯は分けねぇぞ」
師匠は昨日と同じくパンを食べている。僕は彼の正面に腰掛け、寄ってきた羊を追っ払うようジャックに伝えた。
「チビ助、おかえり。ほら、晩飯だぞ」
空を飛んでいたチビ助が戻ってくると師匠は夕飯の手を止め、傍に置いていた果物が詰まった麻袋を持っていった。
「チビ助のご飯どこで買ったんですか?」
「そこの店」
「師匠のは?」
「サクの手作りだ。いいだろ? 羨ましいだろ? 絶対分けてやんねぇ!」
別に要らないと正直に伝えたら怒るかな? 羨ましいと言えば調子に乗って語るだろうか。
「ふぅ……羊は追い払ったぞ、ユウ。すまないチビ助、前を通る……」
師匠の後ろにチビ助は居て、その前に麻袋は置かれている。ジャックはチビ助に気付かれないよう自らの体を影にして細工したリンゴを通りすがりに混ぜた。パンについて聞いていたのが功を奏し、師匠は後ろを向かなかった。
「隣に座るぞ、ユウ」
「ん」
サンドイッチを頬張りながらチビ助の様子を伺う。
「ジャック、お前飯は?」
「昼に食べ過ぎてな」
チビ助は前足で器用にリンゴを掴んだ。異常に気付く様子はない。
「つーかお前素顔どんななの? 見せてくれよ」
「いや、それは……」
『ぎゃうっ!?』
チビ助が悲鳴を上げた。慌てて振り向く師匠の目を盗み、僕はジャックと共に親指を立て合った。
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