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第四十五章 消えていく少年だった証拠
掻き鳴らせ
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再生を進めているラミエルの身体は紫電を纏っている。これは攻撃として放っている訳ではないのでアイギスの盾は反応しない、ラミエルに触れれば感電してしまうだろう。
ウェナトリアは今ラミエルに触れてはいけないと理解していた。触れないようにぎゅっと剣を握り、起き上がってくるのを待つ──つもりだ。
「……えっと、王様? 大丈夫? 居るよね?」
弾けるような静電気の音でウェナトリアの呼吸音が聞こえないヘルメスは彼の返事を求めている、しかしそれは応えられない。ウェナトリアは唾液を拭う自らの手首に噛み付いていたからだ。
久々に十本の真剣を振るって強敵を倒した。血が吹き出る肉の切れ目を見た。戦闘特化の肉食の蜘蛛としての本能と人間としての理性が彼の中でせめぎ合っていた。
「……っ!? な、なんだ……?」
「王様? やっぱ居た、よかった。どったの?」
ラミエルの体から細い雷撃が放たれた。それは攻撃ではなく連絡だ。開きっぱなしの竜の里への門から攻め入ってこいと部下に連絡したのだ。
空の穴から降り注ぐようにやってくる陶器製の天使達──ウェナトリアは天使の群れに向かって跳躍した。
『…………へへっ、やっぱり……な』
陶器が砕け散る音が響く中、ラミエルがゆっくりと起き上がる。ヘルメスは盾を構えたがラミエルは攻撃をする様子はない。
『アシダカグモには……食事中だろうと、目の前を走る獲物を追いかけちまう習性があんのよ。人間混じって知的に振る舞おうが、所詮、虫だな……』
傍に降りてきた陶器製の天使に支えられて立ち上がり、陶器製の天使に拾わせたギターを軽く鳴らす。
『……さ、俺は逃げたクソッタレ共殺すか。あの蜘蛛にゃ恨みがあるが……んなもん優先してらんねぇ』
「ま、待てっ……! クソっ……待て! 待てよ! 逃げるな!」
ヘルメスはラミエルを怒らせて足止めしようとあえて「逃げるな」と叫んだが、ラミエルは誘いに乗らずさっさと行ってしまう。ウェナトリアの目に止まらないよう早歩きで。
「……王様! 王様、天使が逃げる!」
大声で叫んだ直後、多量の血を吐いて地面に横たわる。それでも盾は離さず、効力も生きたままだ。
「…………待て!」
いくら興奮状態にあったとはいえ、ヘルメスの声も届かない彼ではないし、一度捕らえた獲物が逃げることほど腹立たしいことはない。
ウェナトリアは陶器製の天使達を踏みつけに空中戦を行っていたが、足場の天使を蹴り壊して地上に降りると十本の剣を構えてラミエルに突進した。
ラミエルの反撃は全て盾に吸い込まれる。そう考えていからこその無謀な突進だった。
『……へへっ、バーカ』
ラミエルは剣に触れる寸前で頭を抱えて小さく丸まった。突然屈んだラミエルに対応が間に合わず、ウェナトリアは彼に躓いてバランスを崩し、彼の横に立っていた陶器製の天使が持っていた槍に胸を庇った腕を刺してしまった。
『これは攻撃じゃねぇ、てめぇがマヌケに転んで危ねぇモンに当たっちまっただけ、だよなぁ? へへへっ! バーカでぇー』
ラミエルは盾を軽く蹴りつつウェナトリアの腕に刺さった槍を陶器製の天使から奪い、ゆっくりと動かす。先端を地面に突き刺して標本のようにし、動きを止めてゆっくりと殺す気だったのだ。しかしウェナトリアは躊躇なく腕を切断し、もう片方の腕でラミエルの肩を掴み、うなじに生えた触肢で首を掴み、首に噛み付いた。
『いってぇっ!? てめっ……この、離せ! 離しやがれっ!』
怒鳴りつつもラミエルにはウェナトリアに攻撃を加えて引き剥がすという手段が取れない。
ウェナトリアの狙いはこれだった。血肉を感じて本能を満たしつつ、破壊と再生を繰り返すことなく足止めする、彼が自画自賛するほどのアイディアだったのだ。
腕を切断しなければならない事態に陥らなければ、ヘルメスが盾の力を使っていられる間はラミエルを足止めできた。しかし腕を切断したウェナトリアの失血は酷く、彼の意識喪失というタイムリミットができてしまった。
『クソ……根性比べかよ。おい、てめぇらはとっとと竜だの何だの殺してきな』
ウェナトリアやヘルメスに槍を向けても盾に防がれてしまう。それをよく知らない陶器製の天使達はラミエルの判断に戸惑ったが、逆らうことはできずに竜の里の各所へ四散した。
一方その頃、竜の里に移した酒色の国の街中に一人の獣人が走っていた。
獣寄りの獣人の彼には全身に灰色の毛が生えており、首から上は完全に狼のもので、時折に地面に這いつくばったり壁に張り付いて匂いを嗅いだりするものだから、道行く吸鬼達に避けられていた。
「……いい女の匂い…………こっちか」
ボソッと呟かれたその言葉を吸鬼達は聞き逃さなかった。
『ねぇねぇ狼のお兄さん溜まってるの~?』
『そこのお店来てくれたらサービスするよ~?』
「触るな、気が散る」
狼の獣人──正義の国の労働所では11895と番号を振られていた彼は腕に絡みついた少女達を振り払う。
『何よ~失礼しちゃ~う』
『今度来たら倍額取ってやるからね~!』
少女達を無視して歩を進めた彼はヴェーン邸に辿り着いた。『いい女』の匂いが濃くなってきたことにほくそ笑みつつ、柵を乗り越えて庭に入る。
「ん……? 美味そうな匂い……」
発情期ではない彼の意識はついつい食欲の方に傾いてしまう。彼の視線は庭の隅で日向ぼっこを楽しむ羊の方へ向いた。
『あ~っ! 狼! 何! 何見てるの! 羊に手出したら怒るよ~!』
全く怒気の感じられない緩みきった声の方に視線を向けると黄色いローブを着て白い仮面を着けた少年がブラシを持っていた。
「……手を出す気はない。なんだアンタは……」
『ハスターだよ~、信仰して~?』
「信仰……? よく分からないが、人間じゃなさそうだな、魔王様の家はここで合ってるか? まずいことになった、天使が攻めてきたんだ」
魔王を……ヘルを呼びに走った者は何人も居たが、誰も彼の詳しい居場所を知らず、また狼の獣人である彼より足が遅く、一番にここに辿り着いたのは彼だった。王城に行ってしまった者は何人も居るだろう。
『魔王? あ~ター君? ここで合ってるよ~』
「ありがとう!」
『あ、部屋は~……ん? 順番だよ~、並んで~』
どの部屋に居るかは聞かなくていいのかと疑問を抱いたが、ブラッシングをねだる羊の声にその疑問を忘れた。
邸内に入った狼の獣人の彼は嗅ごうと意識するまでもなく鼻に届いた匂いに頭がクラっとするのを感じた。
「なんて強烈な雌の匂いだ…………やばい、たちそう……」
獣人には普通の獣と同じように発情期が存在する、獣寄りの彼には特に顕著に。しかし完全な獣という訳でもないため、そうそうそんな気にならないというだけで全く反応しない訳でもない。
「魔王様、いらっしゃいますか」
匂いの元である部屋の扉を開けると、一瞬の静寂の後枕が飛んできた。
『急に入ってこないでよ! 何、誰! ちょっと外出て!』
枕を投げたのは純白の髪を振り乱した少年──ヘルは狼の獣人が部屋を出たのを確認してベッドから出ると慌ててバスローブを羽織り、部屋を出た。
『ごめんこんなカッコで。ぁ、えっと……君、11895? さん、だっけ。何か用?』
「ぁ、あぁ……天使が攻めてきたんだ」
『は!? なんで!?』
「分からない」
『すぐ行く、どこ? 誰か戦ってる?』
ヘルの横にはいつの間にか半透明の犬が控えていた。
「えぇと……大樹と亜種人類のナハトファルター族族長の家を線で繋いで、その線を底辺として二等辺三角形を作って、新たにできた点を中心に底辺に触れる円を描いて、円周上で大樹から一番遠い地点だ」
建設の労働をしていて、竜の里に来てからも設計などを担当していた彼はヘルには理解できない方法でラミエルの居場所を正確に伝えた。これでも彼は分かりやすく丁寧に教えたつもりだ。
『…………カ、カヤ?』
『理解……シ汰』
『え、すごい……じゃあそこ行って。11895さん、知らせてくれてありがと!』
ヘルとカヤの姿が消えたことに面食らいつつも、彼の意識はすぐに部屋の中に向いた。そっと扉を開けて中に入ると再び彼にとって最高の女の匂いが鼻腔を突いた。
「……っ、ア、アンタは……誰だ?」
シーツに包まって不貞寝しようとしていた彼女が顔だけをシーツから出すと彼は生唾を飲んだ。
全身の毛が逆立つような寒気を覚える美貌があった。
『…………出て行け』
心臓を鷲掴みにするようなときめきを与える美しい声が響いた。その声は扉を開ける寸前まで途切れ途切れに聞こえてきていた声と同じで、更に彼の心臓に早鐘を打たせた。
「……アンタ、魔王様の……奥方、か?」
『だったら何だ』
「い、いや、何という訳でもないが……」
『なら早く出て行け』
美顔が再びシーツの中に引っ込む。
「…………も、もう少し話をしないか? もう少し近付く許可を──」
『出て行けと言ってるのが分からんか! 出て行け!』
怒鳴られた彼はクゥンと声を漏らして耳を寝かせ、慌てて部屋を出た。彼にとって彼女は存在を疑うほどの美女であると同時に、一吠えで死を覚悟するような圧倒的な力の差がある獣だったのだ。
ウェナトリアは今ラミエルに触れてはいけないと理解していた。触れないようにぎゅっと剣を握り、起き上がってくるのを待つ──つもりだ。
「……えっと、王様? 大丈夫? 居るよね?」
弾けるような静電気の音でウェナトリアの呼吸音が聞こえないヘルメスは彼の返事を求めている、しかしそれは応えられない。ウェナトリアは唾液を拭う自らの手首に噛み付いていたからだ。
久々に十本の真剣を振るって強敵を倒した。血が吹き出る肉の切れ目を見た。戦闘特化の肉食の蜘蛛としての本能と人間としての理性が彼の中でせめぎ合っていた。
「……っ!? な、なんだ……?」
「王様? やっぱ居た、よかった。どったの?」
ラミエルの体から細い雷撃が放たれた。それは攻撃ではなく連絡だ。開きっぱなしの竜の里への門から攻め入ってこいと部下に連絡したのだ。
空の穴から降り注ぐようにやってくる陶器製の天使達──ウェナトリアは天使の群れに向かって跳躍した。
『…………へへっ、やっぱり……な』
陶器が砕け散る音が響く中、ラミエルがゆっくりと起き上がる。ヘルメスは盾を構えたがラミエルは攻撃をする様子はない。
『アシダカグモには……食事中だろうと、目の前を走る獲物を追いかけちまう習性があんのよ。人間混じって知的に振る舞おうが、所詮、虫だな……』
傍に降りてきた陶器製の天使に支えられて立ち上がり、陶器製の天使に拾わせたギターを軽く鳴らす。
『……さ、俺は逃げたクソッタレ共殺すか。あの蜘蛛にゃ恨みがあるが……んなもん優先してらんねぇ』
「ま、待てっ……! クソっ……待て! 待てよ! 逃げるな!」
ヘルメスはラミエルを怒らせて足止めしようとあえて「逃げるな」と叫んだが、ラミエルは誘いに乗らずさっさと行ってしまう。ウェナトリアの目に止まらないよう早歩きで。
「……王様! 王様、天使が逃げる!」
大声で叫んだ直後、多量の血を吐いて地面に横たわる。それでも盾は離さず、効力も生きたままだ。
「…………待て!」
いくら興奮状態にあったとはいえ、ヘルメスの声も届かない彼ではないし、一度捕らえた獲物が逃げることほど腹立たしいことはない。
ウェナトリアは陶器製の天使達を踏みつけに空中戦を行っていたが、足場の天使を蹴り壊して地上に降りると十本の剣を構えてラミエルに突進した。
ラミエルの反撃は全て盾に吸い込まれる。そう考えていからこその無謀な突進だった。
『……へへっ、バーカ』
ラミエルは剣に触れる寸前で頭を抱えて小さく丸まった。突然屈んだラミエルに対応が間に合わず、ウェナトリアは彼に躓いてバランスを崩し、彼の横に立っていた陶器製の天使が持っていた槍に胸を庇った腕を刺してしまった。
『これは攻撃じゃねぇ、てめぇがマヌケに転んで危ねぇモンに当たっちまっただけ、だよなぁ? へへへっ! バーカでぇー』
ラミエルは盾を軽く蹴りつつウェナトリアの腕に刺さった槍を陶器製の天使から奪い、ゆっくりと動かす。先端を地面に突き刺して標本のようにし、動きを止めてゆっくりと殺す気だったのだ。しかしウェナトリアは躊躇なく腕を切断し、もう片方の腕でラミエルの肩を掴み、うなじに生えた触肢で首を掴み、首に噛み付いた。
『いってぇっ!? てめっ……この、離せ! 離しやがれっ!』
怒鳴りつつもラミエルにはウェナトリアに攻撃を加えて引き剥がすという手段が取れない。
ウェナトリアの狙いはこれだった。血肉を感じて本能を満たしつつ、破壊と再生を繰り返すことなく足止めする、彼が自画自賛するほどのアイディアだったのだ。
腕を切断しなければならない事態に陥らなければ、ヘルメスが盾の力を使っていられる間はラミエルを足止めできた。しかし腕を切断したウェナトリアの失血は酷く、彼の意識喪失というタイムリミットができてしまった。
『クソ……根性比べかよ。おい、てめぇらはとっとと竜だの何だの殺してきな』
ウェナトリアやヘルメスに槍を向けても盾に防がれてしまう。それをよく知らない陶器製の天使達はラミエルの判断に戸惑ったが、逆らうことはできずに竜の里の各所へ四散した。
一方その頃、竜の里に移した酒色の国の街中に一人の獣人が走っていた。
獣寄りの獣人の彼には全身に灰色の毛が生えており、首から上は完全に狼のもので、時折に地面に這いつくばったり壁に張り付いて匂いを嗅いだりするものだから、道行く吸鬼達に避けられていた。
「……いい女の匂い…………こっちか」
ボソッと呟かれたその言葉を吸鬼達は聞き逃さなかった。
『ねぇねぇ狼のお兄さん溜まってるの~?』
『そこのお店来てくれたらサービスするよ~?』
「触るな、気が散る」
狼の獣人──正義の国の労働所では11895と番号を振られていた彼は腕に絡みついた少女達を振り払う。
『何よ~失礼しちゃ~う』
『今度来たら倍額取ってやるからね~!』
少女達を無視して歩を進めた彼はヴェーン邸に辿り着いた。『いい女』の匂いが濃くなってきたことにほくそ笑みつつ、柵を乗り越えて庭に入る。
「ん……? 美味そうな匂い……」
発情期ではない彼の意識はついつい食欲の方に傾いてしまう。彼の視線は庭の隅で日向ぼっこを楽しむ羊の方へ向いた。
『あ~っ! 狼! 何! 何見てるの! 羊に手出したら怒るよ~!』
全く怒気の感じられない緩みきった声の方に視線を向けると黄色いローブを着て白い仮面を着けた少年がブラシを持っていた。
「……手を出す気はない。なんだアンタは……」
『ハスターだよ~、信仰して~?』
「信仰……? よく分からないが、人間じゃなさそうだな、魔王様の家はここで合ってるか? まずいことになった、天使が攻めてきたんだ」
魔王を……ヘルを呼びに走った者は何人も居たが、誰も彼の詳しい居場所を知らず、また狼の獣人である彼より足が遅く、一番にここに辿り着いたのは彼だった。王城に行ってしまった者は何人も居るだろう。
『魔王? あ~ター君? ここで合ってるよ~』
「ありがとう!」
『あ、部屋は~……ん? 順番だよ~、並んで~』
どの部屋に居るかは聞かなくていいのかと疑問を抱いたが、ブラッシングをねだる羊の声にその疑問を忘れた。
邸内に入った狼の獣人の彼は嗅ごうと意識するまでもなく鼻に届いた匂いに頭がクラっとするのを感じた。
「なんて強烈な雌の匂いだ…………やばい、たちそう……」
獣人には普通の獣と同じように発情期が存在する、獣寄りの彼には特に顕著に。しかし完全な獣という訳でもないため、そうそうそんな気にならないというだけで全く反応しない訳でもない。
「魔王様、いらっしゃいますか」
匂いの元である部屋の扉を開けると、一瞬の静寂の後枕が飛んできた。
『急に入ってこないでよ! 何、誰! ちょっと外出て!』
枕を投げたのは純白の髪を振り乱した少年──ヘルは狼の獣人が部屋を出たのを確認してベッドから出ると慌ててバスローブを羽織り、部屋を出た。
『ごめんこんなカッコで。ぁ、えっと……君、11895? さん、だっけ。何か用?』
「ぁ、あぁ……天使が攻めてきたんだ」
『は!? なんで!?』
「分からない」
『すぐ行く、どこ? 誰か戦ってる?』
ヘルの横にはいつの間にか半透明の犬が控えていた。
「えぇと……大樹と亜種人類のナハトファルター族族長の家を線で繋いで、その線を底辺として二等辺三角形を作って、新たにできた点を中心に底辺に触れる円を描いて、円周上で大樹から一番遠い地点だ」
建設の労働をしていて、竜の里に来てからも設計などを担当していた彼はヘルには理解できない方法でラミエルの居場所を正確に伝えた。これでも彼は分かりやすく丁寧に教えたつもりだ。
『…………カ、カヤ?』
『理解……シ汰』
『え、すごい……じゃあそこ行って。11895さん、知らせてくれてありがと!』
ヘルとカヤの姿が消えたことに面食らいつつも、彼の意識はすぐに部屋の中に向いた。そっと扉を開けて中に入ると再び彼にとって最高の女の匂いが鼻腔を突いた。
「……っ、ア、アンタは……誰だ?」
シーツに包まって不貞寝しようとしていた彼女が顔だけをシーツから出すと彼は生唾を飲んだ。
全身の毛が逆立つような寒気を覚える美貌があった。
『…………出て行け』
心臓を鷲掴みにするようなときめきを与える美しい声が響いた。その声は扉を開ける寸前まで途切れ途切れに聞こえてきていた声と同じで、更に彼の心臓に早鐘を打たせた。
「……アンタ、魔王様の……奥方、か?」
『だったら何だ』
「い、いや、何という訳でもないが……」
『なら早く出て行け』
美顔が再びシーツの中に引っ込む。
「…………も、もう少し話をしないか? もう少し近付く許可を──」
『出て行けと言ってるのが分からんか! 出て行け!』
怒鳴られた彼はクゥンと声を漏らして耳を寝かせ、慌てて部屋を出た。彼にとって彼女は存在を疑うほどの美女であると同時に、一吠えで死を覚悟するような圧倒的な力の差がある獣だったのだ。
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