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第三十九章 君臨する支配者は決定事項に咽ぶ
遊園地
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水上コースターとジェットコースターの一番の違いは水飛沫。清涼感や爽快感を求めて夏場は特に人気らしい。
『透過……解除、よし乾いた。アルもやる?』
ぶるぶると全身を震わせているアルに声をかける。
『頼む』
『よし、自由意志の加護……からの透過、解除……はい乾いた』
乾いたという言葉は正しくないと思うけれど、僕の頭ではそれ以外の言葉が思い付かない。
水気が消えてふわふわの銀毛を撫でながら歩いていると人集りを見つけた。テーマパークの看板キャラの着ぐるみでも居るのかと近付いてみれば、中心に居た者に手首を掴まれた。
『ヘル! 仕事が溜まってるんだ、こんなところで遊んでる場合じゃないよ。今すぐ帰ろう』
『兄さん……ごめん、無理』
ライアーの手をすり抜け、小走りで離れる。
『ヘル! 待っ……ちょっとキミ達! 離して!』
「写真撮ってください!」
「握手! 握手も……!」
『ボク一般人なんだけど!』
あの人集りはライアー目当てに集まった者達のようだ。まぁ、ライアーは人間でないと一目で察するような美青年だ、無理もない。
『ヘル……兄君に説明した方が良いのではないか?』
『しようとは思ってるよ。兄さんには霊体の状態見えるはずだし。でも、一旦落ち着いてもらわないと。会談とかに空間転移で連れてかれるとまずいし、捕獲じゃなくて会話にしに来るまでは逃げようと思って』
『逃げるから捕獲になるのではないか……?』
銀の鍵で今の時間に戻ってからすぐ説明しようとしたのだが、空間転移の魔法陣を構築しながら近寄ってきたので思わず逃げてしまったのだ。それからタイミングが掴めず、話すのも話して気を遣われるようになるのも嫌というのもあって逃げ回っている。
『あ、お化け屋敷だってさ、次ここ入る?』
『……ヘル、私の姿をよく見てみろ』
『ん? わ、美女だ。結婚してください……っと、なーんだ僕の愛する妻じゃないか』
『…………馬鹿』
おふざけ混じりではあったが全て本音だ。アルもそれを察しているのか太腿に頭突きをしてくる。
『えーっと、人体実験を繰り返していると噂の危険な研究施設に潜入し、証拠の書類を取ってくる……っていう設定らしいよ』
『成程、科学の国で実際にあった事件をモチーフにしているのか』
『…………え?』
以前から何となく漂ってはいた科学の国の怪しさの輪郭が浮かび上がってきた。
『わー……暗い。視界共有してるけど……クラール見えてる?』
お化け屋敷の中を順路通りに進むのだが、薄暗くてそれだけで恐怖を煽られる。明滅する蛍光灯がまた恐ろしい。一瞬の暗闇の後の一瞬の光の下に何かが居たら……と考え続けてしまう。
『……内装も仕掛けもハッキリ見えてしまうな。人間の目は演出を楽しむだけなら有用だ』
『見えないの怖いけど見えてもつまんないだろうね……アルも僕の目使う?』
『いや、貴方の視界で上手く歩ける気がしない』
何気ない会話を楽しんでいると曲がり角が見えてくる。カラカラという音と共にストレッチャーがこれから進む道からやって来るが、押している者は居なかった。
『……引き返さない?』
『…………ヘル、仕掛けは全て人間がやっている』
『分かってても怖いものは怖いんだよぉ!』
尾を腰に巻かれて先導される。ドッペル達は楽しそうに歌っているし、クラールも機嫌が良さそうだ。どうして誰も怖がらないのだろう。
『……アル? 何か聞こえない?』
『唸り声だな、録音だ』
『…………冷めたこと言うなぁ』
僕はアルからすれば滑稽なほど怖がっているのだろうが、怖いのは怖いので楽しいのだ。
だが──
「……ぅおおぉおっ」
『出たー!? アルっ、アルアルアルぅっ! 何か来たぁっ!』
──突然物陰から出てくるのはやめて欲しい。そういう怖がらせ方は反則だと思う。
『追っかけてくる、追っかけてくる! 乗せて乗せてアル乗せてぇっ!』
『……追い付かれてどうなる』
『えっ? えっと……つ、次の実験体』
『という設定だな』
『……冷めてるなぁ』
お化け屋敷の最奥に辿り着き、証拠の書類という設定の紙束を入手。後は別の道から出口を目指すのみ。
『飛び出してくる前に欠伸をしているのまで見える私にどうやって怖さを楽しめと言うんだ?』
『うーん……まぁ、それはそうかもしれないけど』
『おとーた、おとーたっ』
『ご機嫌だねクラール、何?』
『おとーた、こぁありー』
『…………その通りだよ』
怖がりだと人を小馬鹿にすることを誰に教わったのだろう。いやクラールが僕を馬鹿にしているのかどうかはよく分からないけれど。
『クラール、お父さんを揶揄うな』
馬鹿にしていたようだ。一歳に満たない娘に馬鹿にされるなんてショックだな。
決して軽くはないショックを受けつつも歩いて行くと、突然アルが僕の腰から尾を離した。
『……アル?』
『これから走るだろうからな』
走る理由が思い付かず首を傾げていると背後から大勢の足音と唸り声が聞こえてきた。非道な実験の犠牲者達が仲間を求めているのだ……! という設定だ。
僕は実験体というていの職員達に負けず劣らずの大声を上げて出口まで走った。
『ぴりりっ! ぱぱ、ぱぱ、ぴぴっ!』
『わぅー……ん! おとーた、はやぃー!』
子供達の楽しそうな声を支えにアルを置いて逃げ、出口から外へ飛び出した。出口は入口の真横にあり、僕が走って出てきたのを並んでいる客達が恐怖半分期待半分の目で眺めている。見られていることに羞恥を覚え、走って乱れた服を整えて平静を装う。
『……ヘル』
出口の真横でライアーが待機していた。
『ぁ……に、兄さん……』
『…………どうして逃げるの? そんなに仕事したくないの?』
ライアーは悲しそうな目を僕に向けている。今なら話を聞いてもらえそうだ。
『……この子達の霊体、見てみて』
『霊体……? 霊体が何…………!? え……? 嘘、もう……』
怪訝な顔が驚愕に塗り変わる。
『…………思い出作り?』
見開いていた黒い瞳を細め、僕の肩に手を置いた。頷くと抱き締められ、頭を撫でられた。
『そっか……そっ、か…………辛いね。よしよし……』
これだ、これが嫌だったんだ。気遣われるのが、慰められるのが、子供達の死が間近に迫っていると他者に自覚させられるのが嫌だったんだ。
泣きたくない、笑っていたい、子供達に不安を伝染させたくない。
『……僕は何も辛くないよ。離して、分かったなら邪魔しないで』
『…………ヘル』
『………………ごめん。でも、僕は大丈夫だからさ、慰めたりしないでよ。本当に、大丈夫だから、帰ってよ』
気遣ってくれているライアーに当たってしまう、そんな自分が嫌いだ。
『……あ、アルちゃん。アルちゃんも知ってるんだよね? そう……そう、だよね。うん……分かった、じゃあしばらくは家族水入らずで…………ぁ、でも、一回くらいみんなでご飯食べよう? 大勢で騒ぐのもきっと楽しいよ……ね、クラールちゃん、ドッペルちゃん、ハルプちゃん……みんなと遊ぼう?』
『そうだな。ヘル、どうする? ここの後は決めていないだろう』
『ん……分かった。今日の夜は帰る』
『ホント!? うん、ご馳走用意しておくよ! みんなに帰ってくるよう言っておく! じゃあ、ヘル、また夜ね!』
ライアーの姿が空間転移の魔法陣の光と共に消える。俯いた僕を鞄の中の子供達が見つめていた、きっと僕の精神状態の変化を感じ取っているのだろう。
『…………おとーた?』
『ぱぱー? ぱぱぁ?』
三つの首が傾げられる。クラールの額に涙がポタっと落ちた。
『おとーた? こぁかっちゃ? ぁいよぉーぶよぉ、くぁーう、おとーたん、まもぅかや!』
『……ぱぱー? ぱぱぁ、いちゃい? ぱぱぁ、らいよぉーぶぅ?』
鞄の上から子供達を抱き締める。ずっと腕の中に、ずっと傍に、天になんて昇らせない、そんな叶わない決意じみた願望を噛み殺す。
『…………ヘル、行こう? 次は観覧車だろう?』
『ん……ごめん、ごめんね。アル……泣かないって、笑ってるって……』
『あんな未来を知って泣かない親が居るものか』
『…………僕の、親なら……喜んでるよ』
鞄から腕を離し、心臓の位置をシャツの上から掻き毟る。触れなくても痛みを覚えるくらいになったら歩き出した。
『観覧車かぁ……おっきいね。ね、クラール、ドッペル、ハルプ、今からあれ乗るんだよ。このパークぜーんぶ見えちゃうね』
観覧車を見上げて呟いた声は、酷く醜く震えていた。
『透過……解除、よし乾いた。アルもやる?』
ぶるぶると全身を震わせているアルに声をかける。
『頼む』
『よし、自由意志の加護……からの透過、解除……はい乾いた』
乾いたという言葉は正しくないと思うけれど、僕の頭ではそれ以外の言葉が思い付かない。
水気が消えてふわふわの銀毛を撫でながら歩いていると人集りを見つけた。テーマパークの看板キャラの着ぐるみでも居るのかと近付いてみれば、中心に居た者に手首を掴まれた。
『ヘル! 仕事が溜まってるんだ、こんなところで遊んでる場合じゃないよ。今すぐ帰ろう』
『兄さん……ごめん、無理』
ライアーの手をすり抜け、小走りで離れる。
『ヘル! 待っ……ちょっとキミ達! 離して!』
「写真撮ってください!」
「握手! 握手も……!」
『ボク一般人なんだけど!』
あの人集りはライアー目当てに集まった者達のようだ。まぁ、ライアーは人間でないと一目で察するような美青年だ、無理もない。
『ヘル……兄君に説明した方が良いのではないか?』
『しようとは思ってるよ。兄さんには霊体の状態見えるはずだし。でも、一旦落ち着いてもらわないと。会談とかに空間転移で連れてかれるとまずいし、捕獲じゃなくて会話にしに来るまでは逃げようと思って』
『逃げるから捕獲になるのではないか……?』
銀の鍵で今の時間に戻ってからすぐ説明しようとしたのだが、空間転移の魔法陣を構築しながら近寄ってきたので思わず逃げてしまったのだ。それからタイミングが掴めず、話すのも話して気を遣われるようになるのも嫌というのもあって逃げ回っている。
『あ、お化け屋敷だってさ、次ここ入る?』
『……ヘル、私の姿をよく見てみろ』
『ん? わ、美女だ。結婚してください……っと、なーんだ僕の愛する妻じゃないか』
『…………馬鹿』
おふざけ混じりではあったが全て本音だ。アルもそれを察しているのか太腿に頭突きをしてくる。
『えーっと、人体実験を繰り返していると噂の危険な研究施設に潜入し、証拠の書類を取ってくる……っていう設定らしいよ』
『成程、科学の国で実際にあった事件をモチーフにしているのか』
『…………え?』
以前から何となく漂ってはいた科学の国の怪しさの輪郭が浮かび上がってきた。
『わー……暗い。視界共有してるけど……クラール見えてる?』
お化け屋敷の中を順路通りに進むのだが、薄暗くてそれだけで恐怖を煽られる。明滅する蛍光灯がまた恐ろしい。一瞬の暗闇の後の一瞬の光の下に何かが居たら……と考え続けてしまう。
『……内装も仕掛けもハッキリ見えてしまうな。人間の目は演出を楽しむだけなら有用だ』
『見えないの怖いけど見えてもつまんないだろうね……アルも僕の目使う?』
『いや、貴方の視界で上手く歩ける気がしない』
何気ない会話を楽しんでいると曲がり角が見えてくる。カラカラという音と共にストレッチャーがこれから進む道からやって来るが、押している者は居なかった。
『……引き返さない?』
『…………ヘル、仕掛けは全て人間がやっている』
『分かってても怖いものは怖いんだよぉ!』
尾を腰に巻かれて先導される。ドッペル達は楽しそうに歌っているし、クラールも機嫌が良さそうだ。どうして誰も怖がらないのだろう。
『……アル? 何か聞こえない?』
『唸り声だな、録音だ』
『…………冷めたこと言うなぁ』
僕はアルからすれば滑稽なほど怖がっているのだろうが、怖いのは怖いので楽しいのだ。
だが──
「……ぅおおぉおっ」
『出たー!? アルっ、アルアルアルぅっ! 何か来たぁっ!』
──突然物陰から出てくるのはやめて欲しい。そういう怖がらせ方は反則だと思う。
『追っかけてくる、追っかけてくる! 乗せて乗せてアル乗せてぇっ!』
『……追い付かれてどうなる』
『えっ? えっと……つ、次の実験体』
『という設定だな』
『……冷めてるなぁ』
お化け屋敷の最奥に辿り着き、証拠の書類という設定の紙束を入手。後は別の道から出口を目指すのみ。
『飛び出してくる前に欠伸をしているのまで見える私にどうやって怖さを楽しめと言うんだ?』
『うーん……まぁ、それはそうかもしれないけど』
『おとーた、おとーたっ』
『ご機嫌だねクラール、何?』
『おとーた、こぁありー』
『…………その通りだよ』
怖がりだと人を小馬鹿にすることを誰に教わったのだろう。いやクラールが僕を馬鹿にしているのかどうかはよく分からないけれど。
『クラール、お父さんを揶揄うな』
馬鹿にしていたようだ。一歳に満たない娘に馬鹿にされるなんてショックだな。
決して軽くはないショックを受けつつも歩いて行くと、突然アルが僕の腰から尾を離した。
『……アル?』
『これから走るだろうからな』
走る理由が思い付かず首を傾げていると背後から大勢の足音と唸り声が聞こえてきた。非道な実験の犠牲者達が仲間を求めているのだ……! という設定だ。
僕は実験体というていの職員達に負けず劣らずの大声を上げて出口まで走った。
『ぴりりっ! ぱぱ、ぱぱ、ぴぴっ!』
『わぅー……ん! おとーた、はやぃー!』
子供達の楽しそうな声を支えにアルを置いて逃げ、出口から外へ飛び出した。出口は入口の真横にあり、僕が走って出てきたのを並んでいる客達が恐怖半分期待半分の目で眺めている。見られていることに羞恥を覚え、走って乱れた服を整えて平静を装う。
『……ヘル』
出口の真横でライアーが待機していた。
『ぁ……に、兄さん……』
『…………どうして逃げるの? そんなに仕事したくないの?』
ライアーは悲しそうな目を僕に向けている。今なら話を聞いてもらえそうだ。
『……この子達の霊体、見てみて』
『霊体……? 霊体が何…………!? え……? 嘘、もう……』
怪訝な顔が驚愕に塗り変わる。
『…………思い出作り?』
見開いていた黒い瞳を細め、僕の肩に手を置いた。頷くと抱き締められ、頭を撫でられた。
『そっか……そっ、か…………辛いね。よしよし……』
これだ、これが嫌だったんだ。気遣われるのが、慰められるのが、子供達の死が間近に迫っていると他者に自覚させられるのが嫌だったんだ。
泣きたくない、笑っていたい、子供達に不安を伝染させたくない。
『……僕は何も辛くないよ。離して、分かったなら邪魔しないで』
『…………ヘル』
『………………ごめん。でも、僕は大丈夫だからさ、慰めたりしないでよ。本当に、大丈夫だから、帰ってよ』
気遣ってくれているライアーに当たってしまう、そんな自分が嫌いだ。
『……あ、アルちゃん。アルちゃんも知ってるんだよね? そう……そう、だよね。うん……分かった、じゃあしばらくは家族水入らずで…………ぁ、でも、一回くらいみんなでご飯食べよう? 大勢で騒ぐのもきっと楽しいよ……ね、クラールちゃん、ドッペルちゃん、ハルプちゃん……みんなと遊ぼう?』
『そうだな。ヘル、どうする? ここの後は決めていないだろう』
『ん……分かった。今日の夜は帰る』
『ホント!? うん、ご馳走用意しておくよ! みんなに帰ってくるよう言っておく! じゃあ、ヘル、また夜ね!』
ライアーの姿が空間転移の魔法陣の光と共に消える。俯いた僕を鞄の中の子供達が見つめていた、きっと僕の精神状態の変化を感じ取っているのだろう。
『…………おとーた?』
『ぱぱー? ぱぱぁ?』
三つの首が傾げられる。クラールの額に涙がポタっと落ちた。
『おとーた? こぁかっちゃ? ぁいよぉーぶよぉ、くぁーう、おとーたん、まもぅかや!』
『……ぱぱー? ぱぱぁ、いちゃい? ぱぱぁ、らいよぉーぶぅ?』
鞄の上から子供達を抱き締める。ずっと腕の中に、ずっと傍に、天になんて昇らせない、そんな叶わない決意じみた願望を噛み殺す。
『…………ヘル、行こう? 次は観覧車だろう?』
『ん……ごめん、ごめんね。アル……泣かないって、笑ってるって……』
『あんな未来を知って泣かない親が居るものか』
『…………僕の、親なら……喜んでるよ』
鞄から腕を離し、心臓の位置をシャツの上から掻き毟る。触れなくても痛みを覚えるくらいになったら歩き出した。
『観覧車かぁ……おっきいね。ね、クラール、ドッペル、ハルプ、今からあれ乗るんだよ。このパークぜーんぶ見えちゃうね』
観覧車を見上げて呟いた声は、酷く醜く震えていた。
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