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第二十七章 壊されかけた者共と契りを結べ
フェルトを作ろう
しおりを挟む 外出禁止はとりあえず解除になった。屋敷に戻れるとのことなので、早く家に帰ってマーサのお茶を飲んでゆっくりしたい。元は庶民なのだ。やはりお城なんて緊張するものである。
「リィ、もう帰るのか」
殿下が寂しそうに呟く。そりゃ、帰りますよ。ここは自宅ではないですし。でもそう言うと、いずれは自宅になるのだからとか言い出すので黙っておく。
「明日また来たらいいから。明日は1日休みにしてゲームをして遊ぼう」
そんなに遊んでばっかりでいいのか?魔物が出て大変だったんだから、もう少し働かないと国民から不満が出るぞ。と、微笑みながらも心の中で文句を言う。結婚して大丈夫なのだろうかと、不安にもなってきた。
「なりません、今は国民のために事態の終息を目指す時です」
思わず言ってしまった。真理子時代、忙しい時に呑気にお茶を飲んでいた上司を思い出してしまったのだ。
「リィ・・・」
殿下がやや涙目になったのを見て、やってしまったと後悔した。だが言ってしまったものはしょうがない。
「で、殿下・・・」
「リィ、なんて・・・なんて・・・」
婚約破棄か、初の大げんかに発展するか。だが間違っていないぞ。私は殿下の前に立ち、殿下の目を見た。小動物のように可愛らしく見えてきた。
「なんて、素晴らしいんだ!」
殿下が興奮したように叫ぶ。
「すでに国民のためを思い、殿下に意見できる。最高の伴侶だ!」
横で聞いていたドミニク様は胸に手を当てプルプル震えている。
「さすがマリアンヌちゅあん。今すぐにでも婚姻を成立させようか」
陛下、戯れも過ぎますぞ。と、私は時代劇で見た家老の気分になった。
「聞いたか、アレン。妃とはこんなに素晴らしい意見を出せるものなのだ」
「はい、この耳でしかと拝聴しました。マリアンヌ様は国の宝です」
たかだか働けと言っただけでこの反応。どうなっているんだか。とにかくこの馬鹿騒ぎが早く終わって、無事に家でお茶を飲みたいわ。
「妃教育も始まるのだから、マリアンヌちゃんのお部屋も早く用意しないと」
「やはり、部屋は我々の隣にしようか。夜中に目が覚めてパパとママがいないって泣くかもしれないからな」
「南の庭園が見渡せる部屋にしましょう、あそこなら私の私室と近いもの」
「母上、リィは私の妻となるんですよ。母上の私室の近くに住まわせたら、私が遠くなるではないですか」
「壁紙はピンクで金をあしらおうか。ピンクだけで200色はあるからな。マリアンヌちゅあんのピンクを見つけ出さないと」
全員無駄に張り切りだした。仕事が忙しすぎると、おかしなことを言って現実逃避をするものなのだ。と、思うようにした。これはもうキリがない。一国の国王陛下を相手にして不敬かとは思うが、仕方がない。いずれは舅となる人なのだ。今から慣れよう。
王族の一員になるのも不安があるが、それよりも心配なことがある。お妃教育である。勉強など10年以上やっていない。ついていけるのか不安でしかない。だが不安を口にすると、寄ってたかって大丈夫だよと慰められるだろう。慰められるだけならいいが、やらなくてもいいと言い出しかねない。そうなると将来的に困るのは自分自身だ。何も知らない妃など国民からすれば不要な存在。国家に不審をもたらすきっかけにだってなる。
とにかくやるしかない。私は不安を心の奥に隠し、部屋をどうするかなどと揉めている王族に笑顔を見せた。笑ってたらどうにかなる。そう思うしかない。それで・・・。
顔の筋肉が死んだように固くなるくらいに笑顔を見せて立っていた。心はとっくにどこかへ行ってしまった。ようやく自宅のお屋敷に戻ってきた時は、すでに自分は放心状態を通り越して宇宙の彼方に飛んでいっていたと思った。お城に1泊しただけなのだが。
「お嬢様!」
「よくぞご無事で・・・」
「お帰りなさいませ」
セバスチャン、マーサ、メアリが迎えてくれる。マーサが涙ぐんでいる。よくぞご無事って、魔物が出たからだよね。王族と会っていたからじゃないよね。
「怖いご経験をされたと伺っております。すぐお休みになってください」
気づくとセバスチャンの手が震えている。どんな報告を聞いたかわからないけど、魔物が出現して知らない令嬢に怪我させられたわけだから驚くのは仕方がない。
私はセバスチャンの手を握った。
「ありがとう、でも私は大丈夫。それよりマーサのお茶を飲みたいわ」
にっこり笑うと
「お・・・お嬢様」
「私のお茶なら・・・すぐにご準備いたします」
「さぁ、こちらへどうぞ」
3人が動き出した。お城の人たちもいい人たちだったけど、うちの使用人もすごいよね。できる使用人は違う。私はソファに座った。大きなため息が出てしまう。やっぱりうちはいいなぁ。
「リィ、もう帰るのか」
殿下が寂しそうに呟く。そりゃ、帰りますよ。ここは自宅ではないですし。でもそう言うと、いずれは自宅になるのだからとか言い出すので黙っておく。
「明日また来たらいいから。明日は1日休みにしてゲームをして遊ぼう」
そんなに遊んでばっかりでいいのか?魔物が出て大変だったんだから、もう少し働かないと国民から不満が出るぞ。と、微笑みながらも心の中で文句を言う。結婚して大丈夫なのだろうかと、不安にもなってきた。
「なりません、今は国民のために事態の終息を目指す時です」
思わず言ってしまった。真理子時代、忙しい時に呑気にお茶を飲んでいた上司を思い出してしまったのだ。
「リィ・・・」
殿下がやや涙目になったのを見て、やってしまったと後悔した。だが言ってしまったものはしょうがない。
「で、殿下・・・」
「リィ、なんて・・・なんて・・・」
婚約破棄か、初の大げんかに発展するか。だが間違っていないぞ。私は殿下の前に立ち、殿下の目を見た。小動物のように可愛らしく見えてきた。
「なんて、素晴らしいんだ!」
殿下が興奮したように叫ぶ。
「すでに国民のためを思い、殿下に意見できる。最高の伴侶だ!」
横で聞いていたドミニク様は胸に手を当てプルプル震えている。
「さすがマリアンヌちゅあん。今すぐにでも婚姻を成立させようか」
陛下、戯れも過ぎますぞ。と、私は時代劇で見た家老の気分になった。
「聞いたか、アレン。妃とはこんなに素晴らしい意見を出せるものなのだ」
「はい、この耳でしかと拝聴しました。マリアンヌ様は国の宝です」
たかだか働けと言っただけでこの反応。どうなっているんだか。とにかくこの馬鹿騒ぎが早く終わって、無事に家でお茶を飲みたいわ。
「妃教育も始まるのだから、マリアンヌちゃんのお部屋も早く用意しないと」
「やはり、部屋は我々の隣にしようか。夜中に目が覚めてパパとママがいないって泣くかもしれないからな」
「南の庭園が見渡せる部屋にしましょう、あそこなら私の私室と近いもの」
「母上、リィは私の妻となるんですよ。母上の私室の近くに住まわせたら、私が遠くなるではないですか」
「壁紙はピンクで金をあしらおうか。ピンクだけで200色はあるからな。マリアンヌちゅあんのピンクを見つけ出さないと」
全員無駄に張り切りだした。仕事が忙しすぎると、おかしなことを言って現実逃避をするものなのだ。と、思うようにした。これはもうキリがない。一国の国王陛下を相手にして不敬かとは思うが、仕方がない。いずれは舅となる人なのだ。今から慣れよう。
王族の一員になるのも不安があるが、それよりも心配なことがある。お妃教育である。勉強など10年以上やっていない。ついていけるのか不安でしかない。だが不安を口にすると、寄ってたかって大丈夫だよと慰められるだろう。慰められるだけならいいが、やらなくてもいいと言い出しかねない。そうなると将来的に困るのは自分自身だ。何も知らない妃など国民からすれば不要な存在。国家に不審をもたらすきっかけにだってなる。
とにかくやるしかない。私は不安を心の奥に隠し、部屋をどうするかなどと揉めている王族に笑顔を見せた。笑ってたらどうにかなる。そう思うしかない。それで・・・。
顔の筋肉が死んだように固くなるくらいに笑顔を見せて立っていた。心はとっくにどこかへ行ってしまった。ようやく自宅のお屋敷に戻ってきた時は、すでに自分は放心状態を通り越して宇宙の彼方に飛んでいっていたと思った。お城に1泊しただけなのだが。
「お嬢様!」
「よくぞご無事で・・・」
「お帰りなさいませ」
セバスチャン、マーサ、メアリが迎えてくれる。マーサが涙ぐんでいる。よくぞご無事って、魔物が出たからだよね。王族と会っていたからじゃないよね。
「怖いご経験をされたと伺っております。すぐお休みになってください」
気づくとセバスチャンの手が震えている。どんな報告を聞いたかわからないけど、魔物が出現して知らない令嬢に怪我させられたわけだから驚くのは仕方がない。
私はセバスチャンの手を握った。
「ありがとう、でも私は大丈夫。それよりマーサのお茶を飲みたいわ」
にっこり笑うと
「お・・・お嬢様」
「私のお茶なら・・・すぐにご準備いたします」
「さぁ、こちらへどうぞ」
3人が動き出した。お城の人たちもいい人たちだったけど、うちの使用人もすごいよね。できる使用人は違う。私はソファに座った。大きなため息が出てしまう。やっぱりうちはいいなぁ。
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