エデンの花園

モナカ(サブ)

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第2章 パンデミック

第1話 絶望の夕焼け

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夏だ・・・。

歪んだ太陽が私達の街を強く、強く狂気的に照らし続ける。いつもそばにいるはずなのに、私達を常に照らしてくれる大切な存在の筈なのに、その存在は私の心を蝕んでいく。

この蒼い空に穏やかな月が浮かぶまで。歪んだ太陽が黄金の衛星と顔を入れ替えるまで、この長い長い永遠とも感じる様な時を耐え続けなければならないのだ。暗い夜が来たとしてもそれは熱帯夜、歪んだ太陽の歪んだ残り香が私を暑さで狂わせる。

夏は・・・嫌いだ・・・。

クロミん「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!暑いううううういいいあいいいいいい!!暑い!!熱い!!篤い!!厚い!!アツい!!あづいよおおおおおおおお!!あまちゃぁぁぁぁぁぁん!!」

返事などあるはずがない。この小さな部屋に私は一人ぼっち、もう何十日も引きこもりっぱなしだからだ。無期限謹慎になりエアコンの壊れた部屋でただ無様にのたうち回りながらかつての親友の名前を叫ぶ。

いつもお見舞いには来てくれるが、それでもなんだかんだ愛おしくなってしまう。

クロミん「・・・・・・はぁ。みんなどうしてるのかな。あまちゃん大丈夫かな?」

そうブツブツと呟きながら、私はカッターナイフを取り出し、手首にまた傷をつける。

ふと、なんの予兆も無くあの不良四人組の顔が浮かんでくる。彼女達と一緒にいたら、とても楽しい夏になってたのだろうか。不良は夏に遊びまくるってよく言うし・・・。

クロミん「ガオちゃん達は、何してるのかな・・・。」

虚ろな目で手首から溢れる血を眺めながら、そんな事を考えていた・・・。

ピンポーンと、不意に玄関のインターホンが鳴る、どーせだろうと思いインターホンの画面も見ずに玄関に行きドアを開ける。

クロミん「・・・・・・おはようございます、ほんとうに毎日飽きずにきてくれるんですね」


















クロミん「・・・・・・みじゅさん」





ドアを開けた玄関の前にはハチマキを巻き勉強道具をバックからはみ出るくらい背負ったみじゅさんの姿がそこにはあった。

みじゅ「ふん、当然だ。無期限謹慎をくらった生徒の面倒を毎日見るのはこの風紀委員の務めだからな。黒蜜クロミ、貴様はこの我の担当生徒なのだ。毎日来るのは当たり前のことであろう。」

クロミん「こんなつまらない私みたいな人間の所に毎日きてくれるんですね・・・それなのに期待に答えられなくて・・・バカみたいで・・・暗くて・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・産まれてきてごさめんなさい・・・」

みじゅ「何を言ってるのだ!!産まれてきた意味のない人間など居ないのだ!!黒蜜クロミ、貴様にだって産まれてきた意味がきっと存在するはずなのだ!!」

クロミん「・・・・・・はい」

みじゅ「そうと分かれば今日もみっちり5教科勉強だ!!そのあと体力作りの軽い筋トレとピアノの練習、美術のお絵描き、それと技術のPCでホームページを作る練習だ!!大丈夫だ心配ない、全科目オール5の我が分かりやすく教えてやろう!!」

みじゅ「それが終わったら最後に家庭科の実習も含めて我とお料理を作るぞ!!今日のメニューは金目鯛の塩焼きだ!!食材は我の自費で買ってきたから心配するな!!」

みじゅ「む!?よく見たら部屋がすごぶる汚いではないか!!昨日あれほど掃除したというのに!!」

みじゅ「お部屋の掃除も追加だ!!」

クロミん「はぃぃぃ・・・」

こんな日が毎日続いている、無期限謹慎中でも勉学を怠らないのがみじゅさんのモットーらしく、来る日も来る日も家を尋ねてきては勉強祭りに付き合ってくれてる、最早スペックが行き過ぎた家庭教師だ。

クロミん「あの・・・・・・みじゅさん」

みじゅ「む?なんだ?」

クロミん「なんで?私の面倒なんてそこまで見てくれるんですか・・・?学校のルール違反をして、退学騒動にまでなって、みじゅさんにみんなで寄ってたかって酷い事しちゃったこの私を・・・」


みじゅ「・・・・・・風紀委員だ、元からそれくらいの罵詈雑言承知の上だ。それに・・・」









みじゅ「本当に嫌いならこんな風に来てるはずないであろう」









みじゅ「貴様が生徒として本当に大切だからこうして来ているのだ。」








クロミん「・・・・・・」

クロミん「私、今日友達に、酷い事言っちゃったんです」

クロミん「どーせ私の事バカにしてるんでしょって、もう1人にしてよって、ほっといてよって、いつも毎日お見舞い来るだけで学校では私抜きでみんなと楽しくしてるんでしょって、うざいからもう来ないでよって・・・・・・玄関でさけんじゃったんです」

みじゅ「・・・・・・・・・」

クロミん「バカみたいですよね・・・ほんとは誰よりも辛いのはあまちゃんとホソカだってわかってるはずなのに・・・」

クロミん「自分への嫌悪感と苛立ちで友達に八つ当たりなんかして、あまちゃんなんて泣き出しちゃって、ホソカなんて怒って帰っていっちゃって・・・・・・」

クロミん「・・・・・・ただ優しくしてくれてただけなのに、期待に答えられないのが、元気な姿を見せなきゃ行けないって期待に押しつぶされるのが怖くて、期待に答えられないのが怖くて、ただ嫌われるのが怖くて」














クロミん「結局何もかもダメにした」














みじゅ「・・・・・・そうか」

みじゅ「・・・・・・辛かったな」

みじゅ「・・・・・・貴様はそれで何を思った?」

クロミん「死にたくなった」

みじゅ「そうじゃない、相手に対してどう思ったかだ」

クロミん「ごめんねって」

みじゅ「・・・・・・なぜそれを真正面から言えないのだ?」

クロミん「・・・・・・」

みじゅ「・・・・・・そうだな、今更、言えるわけないか」

みじゅ「・・・・・・それほど大切だったんだもんな」

クロミん「・・・ぅん・・・ぅん」

床いっぱいに瞳から出た雫がしたっていた。鏡を見た自分の顔はぐしゃぐしゃで、頭の中は真っ白だった。

みじゅ「・・・・・・・・・大丈夫だ、我がついてる」

みじゅ「たとえ世界中が貴様を見捨てても我は絶対に見捨てないぞ」

みじゅさんが、優しく抱きしめてくれた。その優しさはなんだかとても言い表せないほど私の心を安らかにしてくれた。

みじゅ「そうだ、今日はあたの奴が貴様の定期検診に来る日でもあったな、時間もないし勉強は明日でよいぞ」

クロミん「ぁりがとぅ・・・ござぃます・・・」

みじゅ「それにしても流石に来るのが遅い気がするな、もう約束の時間から3時間も過ぎている・・・」

クロミん「連絡してみたらどうですか?」

みじゅ「いや、それが」















みじゅ「さっきから連絡が取れないのだ」

クロミん「なら、他の生徒さんにも」

みじゅ「いや、全校生徒全員にかけまくったが誰一人として出なかった」

クロミん「???」

みじゅ「なんだか今日はおかしな日だな、ここに来る途中外で暴れてる輩が何人もやたらといたしな、成敗しようかと悩んだが不気味だからやめておいたのだ」

みじゅ「みんな貴様のようにチューリップを頭から生やして居たぞ、貴様とは色は違っていたがな」

みじゅ「流行っているのか?」















クロミん「・・・・・・は?」














胸騒ぎがする。
















ピンポーン















ピンポーンピンポーン














みじゅ「お、あたが来たみたいだな」

















ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン


















クロミん「みじゅさん!!絶対に出ちゃダメ!!」

みじゅ「何故だ?こんなにインターホンを連打しているのに、さすがに可哀想だろう」

クロミん「違うの!!嫌な予感がするの!!」

クロミんがインターホンの画面を見るとそこには
















頭に黒のチューリップの生えた男子生徒が焦点の合っていない瞳でインターホンを連打し続けていた。




みじゅ「なんだ・・・これは・・・イタズラか?直ちに辞めさせるべきだ!!」

クロミん「みじゅさん!!ダメだよ!!こんなの絶対おかしいよ!!」

みじゅ「たしかに・・・異常だな・・・」

クロミん「と、とにかく裏口から逃げよ・・・」










ドンッドンッ















ドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッドンッ












クロミん「ひいっ!?」

裏口に赤いチューリップの生えた女子生徒のが異様に溜まっていた。

みじゅ「こ、これでは出られないではないか!!」

クロミん「玄関から・・・脱出するしかないの・・・?」

みじゅ「護身用の竹刀を持ってきておいて正解だった・・・我に任せて貴様だけでも逃げろ」

クロミん「そんな・・・」

みじゅ「約束だ、絶対にまた会おう」

クロミん「・・・・・・」

みじゅ「さあ、ドアを開けるのだ!!」

みじゅ「早く!!」

クロミん「う、うわああああああああああああああ!!」

ドアを勢いよく乱暴に開ける、チューリップの生えた男子生徒がまるでゾンビの様に襲いかかってきた。

クロミん「ひ、ひぃ!?」

みじゅ「貴様の相手は私だ!!」

男子生徒とみじゅさんが鍔迫り合いになる。

みじゅ「早く!!逃げろ!!」

クロミん「・・・・・・ごめんなさいっ!!絶対助けを呼んできますから!!」









夕焼けが照らす街を私は青い海で止まれない鮪のように真っ直ぐと駆け抜けた、オレンジ色の鮮やかな絶望の海をだ。周りにはもう目もくれなかったがちらほらチューリップが頭に生えた人間が暴れ回って人を襲ってるのが見えた。

クロミん「学校に!!先生達に伝えないと!!お母さんにも!!」

クロミん「あれ?そういえば?」















クロミん「お母さんは?」
















母「クロミ・・・クロミ・・・」














後ろから、母の呼ぶ声がした
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