1 / 16
1
しおりを挟む
アイが目にした初めての風景は、眼の前いっぱいの星々。
白、赤、橙、そして青。ぜんぶ合わさってきらきらと輝き、あちこちに光芒を投げかけながら、自分の涙でにじんで見えなくなる。背景には広々とした漆黒の夜空。どこか遥か彼方からのほのかな光に照らされて、星々は、ちりちり破ぜる線香花火のひげの先のように、しずくを撒きながら滝を零れ落ちる水のように、アイの視界から次々と消えてゆく。
さまざまに煌めき、なにごとかを囁きながら名残惜しげに去ってゆく。そしてしばらくすると、アイは虚空の闇の中に、ひとり、ひっそりと取り残されているのだ。
アイには記憶に残るその風景が、夢なのか現なのかわからない。おそらくそれは、幼きみぎりにアイが見た夢の中の光景に過ぎないのであろう。しかし、なぜアイがそんな夢を見たのかは謎だ。彼女は幼かったし、夜空に輝く星々を見たことなんて、それまで無かったであろうから。
もしかしたらそれは父祖伝来の、遺伝子レベルで刻み込まれた原初の記憶だったのかもしれない。夢ではなく現実に、アイの祖先が遠い昔どこかで見た光景だったのかもしれない。
ともかくそれは、彼女の持つ、人生で最初の記憶だ。
白、赤、橙、そして青。ぜんぶ合わさってきらきらと輝き、あちこちに光芒を投げかけながら、自分の涙でにじんで見えなくなる。背景には広々とした漆黒の夜空。どこか遥か彼方からのほのかな光に照らされて、星々は、ちりちり破ぜる線香花火のひげの先のように、しずくを撒きながら滝を零れ落ちる水のように、アイの視界から次々と消えてゆく。
さまざまに煌めき、なにごとかを囁きながら名残惜しげに去ってゆく。そしてしばらくすると、アイは虚空の闇の中に、ひとり、ひっそりと取り残されているのだ。
アイには記憶に残るその風景が、夢なのか現なのかわからない。おそらくそれは、幼きみぎりにアイが見た夢の中の光景に過ぎないのであろう。しかし、なぜアイがそんな夢を見たのかは謎だ。彼女は幼かったし、夜空に輝く星々を見たことなんて、それまで無かったであろうから。
もしかしたらそれは父祖伝来の、遺伝子レベルで刻み込まれた原初の記憶だったのかもしれない。夢ではなく現実に、アイの祖先が遠い昔どこかで見た光景だったのかもしれない。
ともかくそれは、彼女の持つ、人生で最初の記憶だ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
未明の駅
ゆずさくら
ホラー
Webサイトに記事をアップしている俺は、趣味の小説ばかり書いて仕事が進んでいなかった。サイト主催者から炊きつけられ、ネットで見つけたネタを記事する為、夜中の地下鉄の取材を始めるのだが、そこで思わぬトラブルが発生して、地下の闇を彷徨うことになってしまう。俺は闇の中、先に見えてきた謎のホームへと向かうのだが……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
扉の向こうは黒い影
小野 夜
ホラー
古い校舎の3階、突き当たりの隅にある扉。それは「開かずの扉」と呼ばれ、生徒たちの間で恐れられていた。扉の向こう側には、かつて理科室として使われていた部屋があるはずだったが、今は誰も足を踏み入れない禁断の場所となっていた。
夏休みのある日、ユキは友達のケンジとタケシを誘って、学校に忍び込む。目的は、開かずの扉を開けること。好奇心と恐怖心が入り混じる中、3人はついに扉を開ける。
The Last Night
泉 沙羅
ホラー
モントリオールの夜に生きる孤独な少女と、美しい吸血鬼の物語。
15歳の少女・サマンサは、家庭にも学校にも居場所を持てず、ただひとり孤独を抱えて生きていた。
そんな彼女が出会ったのは、金髪碧眼の美少年・ネル。
彼はどこか時代錯誤な振る舞いをしながらも、サマンサに優しく接し、二人は次第に心を通わせていく。
交換日記を交わしながら、ネルはサマンサの苦しみを知り、サマンサはネルの秘密に気づいていく。
しかし、ネルには決して覆せない宿命があった。
吸血鬼は、恋をすると、その者の血でしか生きられなくなる――。
この恋は、救いか、それとも破滅か。
美しくも切ない、吸血鬼と少女のラブストーリー。
※以前"Let Me In"として公開した作品を大幅リニューアルしたものです。
※「吸血鬼は恋をするとその者の血液でしか生きられなくなる」という設定はX(旧Twitter)アカウント、「創作のネタ提供(雑学多め)さん@sousakubott」からお借りしました。
※AI(chatgpt)アシストあり
鬼手紙一現代編一
ぶるまど
ホラー
《当たり前の日常》は一つの手紙を受け取ったことから崩壊した
あらすじ
五十嵐 秋人はどこにでもいる高校1年生の少年だ。
幼馴染みの双葉 いのりに告白するため、屋上へと呼び出した。しかし、そこでとある事件が起き、二人は離れ離れになってしまった。
それから一年…高校二年生になった秋人は赤い手紙を受け取ったことにより…日常の崩壊が、始まったのである。
***
20180427一完結。
次回【鬼手紙一過去編一】へと続きます。
***
牛の首チャンネル
猫じゃらし
ホラー
どうもー。『牛の首チャンネル』のモーと、相棒のワンさんです。ご覧いただきありがとうございます。
このチャンネルは僕と犬のぬいぐるみに取り憑かせた幽霊、ワンさんが心霊スポットに突撃していく動画を投稿しています。
怖い現象、たくさん起きてますので、ぜひ見てみてくださいね。
心霊写真特集もやりたいと思っていますので、心霊写真をお持ちの方はコメント欄かDMにメッセージをお願いします。
よろしくお願いしまーす。
それでは本編へ、どうぞー。
※小説家になろうには「牛の首」というタイトル、エブリスタには「牛の首チャンネル」というタイトルで投稿しています。
不労の家
千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。
世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。
それは「一生働かないこと」。
世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。
初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。
経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。
望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。
彼の最後の選択を見て欲しい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる