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第四章 対抗試合! 茶道部に勝て

4-16 星空のプリズム

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【鳴海千尋 視点】
 気絶から目覚めたわたしこと鳴海千尋は部長である姫川さんの指示で屋上へあがった。

「ちょうどいい時間だよ。校庭のライト消してもらうから。完全にまっくらになるからね。足元注意して」

 鳳女子天文部部長の南里さんがわたしたちを屋上で待っていた。

 折笠さんが4Kビデオカメラのセッティングをする。さらにカメラの配信機能を使ってNyanTuelでライブ配信を試みるのだ。

 ペルセウス座流星群は三大流星群のひとつ。一月のしぶんぎ座流星群、一二月のふたご座流星群とともに毎年数多くの流れ星が安定して観測されるそうだ。流れ星というものは実際には宇宙のちりが大気圏との摩擦で燃え尽きるときの一瞬の輝きだ。ペルセウス座流星群はスイフト・タットル彗星が母天体といわれている。

「スマホとかもできる限り電源入れないで」

「すごい! こんな星空見たことない!」

 わたしは満天の星を雑誌でしか観たことがなかった。息を呑むようなミルキーウェイ。ベガ、デネブ、アルタイルを結ぶ夏の大三角。さそり座のアンタレス。春の星座であるうしかい座のアルクトゥルスもまだ見える……

 わたしはくるくる回りながら星空を眺めた。

「田舎舐めんな」
 南里さんはジョークをいってわたしたちを笑わせた。

「蒸し暑いですわね」
 九条さんたち茶道部メンバーも屋上に来ていた。
 鳳女子天文部が設置した天体望遠鏡をのぞき見する。

 そのとき、最初の流星を発見した。ペルセウス座流星群だ。

「ああっ、願いごと!」
 わたしの指先が星宙に届くまえに星は流れた。

「ふふ、慌てることないよ。星は今日いっぱい流れる!」
 姫川さんは天空を指さした。


 きみは隣にいるのに
 その距離は三億光年
 天体観測 星空のプリズム
 夜空が飛び込んだきみの瞳のなかの
 星にわたしはなれるかな
 想いを秘めて
 夜空に消えてく
 きみの吐息を見守った
 あなたはひび割れたわたしの孤独を癒やしてくれたね
 どろどろなわたしの虚無を消しゴムのように消してくれた
 守護天使
 わたしに勇気をください
 どんな未来が訪れようとも
 きみの隣に立っているのはわたしでありたい
 あなたに出会うために三億光年の旅をしてきました

『星空のプリズム』作詞・作曲 二ノ宮 恋

 恋ちゃんが星空をバックにアカペラで歌いだした。流星群が彼女を演出する。

「恋ちゃんなに歌ってるの?」
 わたしが思わず口にだす。

「恋ちゃんのオリジナルソングです。恋ちゃんの将来の夢はシンガーソングライターなの」
 九条さんが答えを教えてくれた。

 歌詞は洗練されてないけどプリミティブな魅力がある。恋ちゃんの歌唱力は抜群だった。

 折笠さんがビデオカメラの焦点を恋ちゃんに合わせる。
 即興のアドリブだ。

 そのときかんむり座の方角で爆発的な輝きが起こった。

「あれはなんですか?」

「かんむり座T星の超新星爆発だわ! いつ起こってもおかしくないと言われていたの。まさかこのタイミングで起こるなんて……」

 地球からおよそ三〇〇〇光年離れた、肉眼では観測することそら難しいかんむり座T星が、超新星爆発によってひときわ輝いている。

 のちの話になるが女子高生が流星群をバックに歌唱する映像はバズった。かんむり座T星の超新星爆発とともに検索されて、三日間で二〇万回再生された。そのことがきっかけで恋ちゃんは芸能事務所からスカウトを受けて、彼女の夢であるシンガーソングライターへの道を踏みだしたのだ。



※プロット段階では既存のヒットソングを歌う予定でした。ですが既存の歌の歌詞を使用すると日本音楽著作権協会に使用料を払わなければいけません。……いやだ。だから歌詞は自作です。作中では恋ちゃんが作詞したことになっています。

 かんむり座T星が超新星爆発を起こしたのはフィクションですが、実際に超新星爆発が間近に迫っていると言われています。
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