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第四章 対抗試合! 茶道部に勝て

4-10 恋ちゃんの実力にガクブルです!

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 村雨さんVS七瀬さんの試合は七瀬さん操るヴェスミランの勝利に終わった。

「悔しいです……」
 意気消沈する村雨さん。

「気にすることないよ。あそこで超必殺技だせるなんてすごい。いつ超必のコマンドだせるようになったの」姫川さんは励まし上手。

「えへへ、練習していたのです」

「さてと、つぎはわたしの番ね」

 折笠さんが胸元に垂らした髪の房を指でもてあそぶ。

「ねえ、詩乃。いまのセリフ、昭和のバトル漫画っぽくない?」姫川さんの目が輝いた。

「令和にそんな漫画知ってる女子高生あんただけよ」

 わたしこと鳴海千尋と村雨さんはふたりのやり取りを理解できなかった。いや、鳳女子一年組も意味不明だったらしい。

「あたくしは知ってますわ。その漫画。昭和は良い時代でしたね」
 九条さんが手持ちの扇を拡げる。

「あなた昭和に生まれてないでしょ。タイムトラベラーか!」
 姫川さんが突っ込みをするところをはじめて見た。鳳女子茶道部部長、恐るべし。

 つぎの試合は二ノ宮れんVS折笠詩乃しのだった。
 本来、格闘ゲームの試合は勝ち抜き戦形式のほうが多い。今回は全員が試合できるように変則的ルールだ。

「よろしくね。二ノ宮さん」
 折笠さんは恋ちゃんを下の名前で呼ばなかった。


「よろしく。ボク、手加減しないから」
 恋ちゃんは年上の相手にビッグマウスだ。


 折笠さんは髪の房をもてあそびながら恋ちゃんを冷視した。眼が笑ってない。

 試合開始。
 恋ちゃんの持ちキャラはMODの主人公格アストリア。女性のような名前だがれっきとした男だ。ドミニオン戦争で大陸を震撼させた暗黒傭兵部隊不死鬼ふしきメンバーのひとりだったという壮絶な過去を持つ。

 折笠さんの持ちキャラは巫女の譲羽ゆずりは紫乃しの。原作小説では第四巻に登場する。式神や霊符を操る異能力者である。奇しくも折笠さんと同じ名前のキャラクターだ。じつはアストリアと譲羽紫乃のふたりは原作では仲が良かったりする。

 アストリアはスタンダードな性能を持つキャラクターだが、ゲージが溜まると二刀流モードになる強キャラ。

 譲羽紫乃は霊符を使い、結界を操るMOD屈指のテクニカルキャラクター。

 アストリアは必殺技を空振りしてゲージを溜めていく。譲羽紫乃は霊符を飛ばし牽制した。
 アストリアが霊符をジャンプで回避すると紫乃は一気に距離を詰める。

 折笠さんは接近戦に持ち込もうとしていた。その判断は正しいように思えた。アストリアにゲージを溜められると不利なのだ。

 ところがアストリアは大ジャンプで譲羽紫乃を飛び越した。反対側に着地したアストリアに対して紫乃が結界を張る。結界の中では必殺技が発動不能になる。極まれば彼女が有利になるはずだった。

 恋ちゃんはそれも読んでいた。前転で結界をすり抜けると紫乃に対して通常技を複数回連打。そして強パンチをキャンセルして必殺技『ソード・テンペスト』が炸裂。
 
 ダメージとともに宙に体が浮いた紫乃に追い打ちをかける。突進技の『ラッシング・エッジ』をキャンセルして超必殺技が発動。画面が暗転する。

「いまのは……?」わたしが解説を求めた。

EXエクスキャンセルよ。ゲージを二本消費して必殺技を超必殺技でキャンセルできるの」
 わたしの問いかけに姫川さんが説明してくれた。

 『ラッシング・エッジ』をキャンセルしてアストリアの超必殺技『二刀流乱舞の太刀』が紫乃に極まる。

 かろうじて紫乃は生き残ったが気絶値が限界を超えて操作不能になった。

 そこから先は一方的な蹂躙だった。

 コンボが極まりKO。アストリアのライフは一ドットも減っていなかった。

「このわたしがパーフェクト負け……!」
 恋ちゃんは上級生の折笠さんに完勝した。折笠さんは屈辱を噛みしめた。

 第二ラウンドも精神的なショックからか折笠さんは精彩を欠き、相手のライフは削ったものの敗北してしまった。

 折笠さんは目を強く閉じたが泣き言をいわなかった。
 恋ちゃんの実力にガクブルです!

つづく
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