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第四章 対抗試合! 茶道部に勝て
4-3 GEBOのルールを確認します
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ここは琴流女学院天文部の部室。夏休みはもう間近。ミーティングが続いている。
部室には姫川さん、折笠さん、村雨さん、そしてわたしこと鳴海千尋がいる。
「一年生のみんなに天文部のルールを教えておくわ。
ひとつ、対戦相手に敬意を払い、勝っても負けても潔く!
ふたつ、格闘ゲーマーは仲間を信じぬく!
みっつ、格闘ゲーマーは健康を犠牲にしない!
よっつ、勝率一〇〇パーセントのゲーマーは存在しないことを肝に銘じるべし!
いつつ、格闘ゲーマーは最後の一フレームまで試合を投げだすべからず!
これを肝に銘じておいて。それができればすでに一〇〇点満点よ」
姫川さんはホワイトボードの前で力説した。
わたしと村雨さんはメモに取った。
「天文部じゃなくて完全に格闘ゲーマーのおきてですね」わたしは汗をかく。
「一フレームってなんですか?」村雨さんが質問する。
「格闘ゲームにおける時間の最小単位ね。一フレームは六〇分の一秒と思ってくれればいい」折笠さんの解説が入る。
「GEBOのルールはどうなっているんですか? 確認しておきたいです」
わたしは挙手して質問した。
「良い質問ね。さすが鳴海さん」
「えへへ」
おだてに弱いわたしは頭をかいた。
「GEBOが国内最大のゲーム大会ということは以前に話したわね。大会で使用される格闘ゲームは毎年選ばれるの。大手格闘ゲームメーカーの有名タイトルは常連。
なんと! 今年はあたしが一番好きな格闘ゲーム『メディウム・オブ・ダークネス』(MOD)がタイトルのひとつに選ばれた。
レギュレーションとしては個人戦。決勝出場枠は三二人。一試合二ラウンド先取制。使用キャラの変更禁止。ただし隠しキャラも含め使用キャラの制限なし。
ちなみに無線コントローラーは禁止。有線のアーケードコントローラーはOK。オンラインで予選が行われる。有名タイトルは一〇〇〇人以上参加者がいることもあるけどMODの参加者はその半分もいないだだろうね」
「なんで有名タイトルで参加しないのですか? 実績をつくるならばそのほうが良いと思われますが」
「村雨さんも良い質問をするわね。村雨さんが好きな動物は?」
「ウサギさんです。見た目が可愛いわりに性欲が強いところが好きです」
「それはどうなの? 動物を飼うならなにがいい?」
「ウサギさんです」
「それと同じ理由。一番好きなゲームだからやりこむ価値がある」
姫川さんの話は説得力があった。
「あたしが一番好きな格ゲーはMOD一択」
MODとはメディウム・オブ・ダークネスの略。ライトノベル『セカイが壊れるオトがする-Medium of Darkness-』が原作の格闘ゲームだ。
一〇〇〇年後の未来世界が舞台のダークファンタジー小説で、書籍化、アニメ化された。
その登場キャラクターたちを格闘ゲームにしたのがこのメディウム・オブ・ダークネス。
「わたくし、まだレバー一回転コマンドが入らないのですけど、大丈夫でしょうか」
村雨さんがか細い声をだす。わたしも村雨さんも格闘ゲームのレクチャーを部長たちから受けているけれど、必殺技をだしたいときにだすこともままならない状態だ。大いに不安である。
「女子高生の会話じゃないわね」
折笠さんは苦笑した。
レバー一回転コマンドとは投げの必殺技のコマンドに多いもので初心者には難易度が高いのだ。
「あれってジャンプ前提の技なのですか。レバーを上に入れたら飛んじゃうじゃないですか」
村雨さんの疑問は格闘ゲームの初心者あるあるだった。
「手が早くなれば飛ばなくても大丈夫。手が早い女になりなさい!」
姫川さんが紛らわしい表現をする。
「了解です」
村雨さんは右手で敬礼した。
「言い方ね。村雨さんは入部して日が浅いから対戦の空気に慣れることを目的にしましょうね」
折笠さんがフォローする。
「わたしは?」わたしは自分を指さした。
「鳴海さんはそのままでいい」
姫川さんの抽象的な表現に首をかしげる。わたしは目をしばたたかせた。
「どういうことですか」
「鳴海さんは好きなキャラで、自由に対戦して」
「はい。わかりました」
「鳴海さんはわたしたちのなかで一番潜在能力が高い。あたしは鳴海さんを一〇年にひとりの逸材だと思っている。それが目覚めてくれれば良いと思っているわ」
姫川さんはいままでで一番シリアスなお顔をする。わたしって、格闘ゲームの才能があったのだろうか。
「ヒメ。一〇年にひとりの逸材って、言いたかっただけじゃないよね?」
折笠さんの鋭い突っ込みに姫川さんは窓の外を見た。初夏の陽光が彼女の髪を輝かせている。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず……」
姫川さんは唐突に方丈記の冒頭の一節を詠唱した。
「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。ごまかすな!」
折笠さんがあとを継ぐ。このふたり、本当に息が合ってるな。
なんだ。一〇年にひとりの逸材っていうのはうそだったのか。
「村雨さんも鳴海さんも試合に慣れてくれればそれでいい。いつも部員としか対戦していないからいい体験になると思う」
部室には姫川さん、折笠さん、村雨さん、そしてわたしこと鳴海千尋がいる。
「一年生のみんなに天文部のルールを教えておくわ。
ひとつ、対戦相手に敬意を払い、勝っても負けても潔く!
ふたつ、格闘ゲーマーは仲間を信じぬく!
みっつ、格闘ゲーマーは健康を犠牲にしない!
よっつ、勝率一〇〇パーセントのゲーマーは存在しないことを肝に銘じるべし!
いつつ、格闘ゲーマーは最後の一フレームまで試合を投げだすべからず!
これを肝に銘じておいて。それができればすでに一〇〇点満点よ」
姫川さんはホワイトボードの前で力説した。
わたしと村雨さんはメモに取った。
「天文部じゃなくて完全に格闘ゲーマーのおきてですね」わたしは汗をかく。
「一フレームってなんですか?」村雨さんが質問する。
「格闘ゲームにおける時間の最小単位ね。一フレームは六〇分の一秒と思ってくれればいい」折笠さんの解説が入る。
「GEBOのルールはどうなっているんですか? 確認しておきたいです」
わたしは挙手して質問した。
「良い質問ね。さすが鳴海さん」
「えへへ」
おだてに弱いわたしは頭をかいた。
「GEBOが国内最大のゲーム大会ということは以前に話したわね。大会で使用される格闘ゲームは毎年選ばれるの。大手格闘ゲームメーカーの有名タイトルは常連。
なんと! 今年はあたしが一番好きな格闘ゲーム『メディウム・オブ・ダークネス』(MOD)がタイトルのひとつに選ばれた。
レギュレーションとしては個人戦。決勝出場枠は三二人。一試合二ラウンド先取制。使用キャラの変更禁止。ただし隠しキャラも含め使用キャラの制限なし。
ちなみに無線コントローラーは禁止。有線のアーケードコントローラーはOK。オンラインで予選が行われる。有名タイトルは一〇〇〇人以上参加者がいることもあるけどMODの参加者はその半分もいないだだろうね」
「なんで有名タイトルで参加しないのですか? 実績をつくるならばそのほうが良いと思われますが」
「村雨さんも良い質問をするわね。村雨さんが好きな動物は?」
「ウサギさんです。見た目が可愛いわりに性欲が強いところが好きです」
「それはどうなの? 動物を飼うならなにがいい?」
「ウサギさんです」
「それと同じ理由。一番好きなゲームだからやりこむ価値がある」
姫川さんの話は説得力があった。
「あたしが一番好きな格ゲーはMOD一択」
MODとはメディウム・オブ・ダークネスの略。ライトノベル『セカイが壊れるオトがする-Medium of Darkness-』が原作の格闘ゲームだ。
一〇〇〇年後の未来世界が舞台のダークファンタジー小説で、書籍化、アニメ化された。
その登場キャラクターたちを格闘ゲームにしたのがこのメディウム・オブ・ダークネス。
「わたくし、まだレバー一回転コマンドが入らないのですけど、大丈夫でしょうか」
村雨さんがか細い声をだす。わたしも村雨さんも格闘ゲームのレクチャーを部長たちから受けているけれど、必殺技をだしたいときにだすこともままならない状態だ。大いに不安である。
「女子高生の会話じゃないわね」
折笠さんは苦笑した。
レバー一回転コマンドとは投げの必殺技のコマンドに多いもので初心者には難易度が高いのだ。
「あれってジャンプ前提の技なのですか。レバーを上に入れたら飛んじゃうじゃないですか」
村雨さんの疑問は格闘ゲームの初心者あるあるだった。
「手が早くなれば飛ばなくても大丈夫。手が早い女になりなさい!」
姫川さんが紛らわしい表現をする。
「了解です」
村雨さんは右手で敬礼した。
「言い方ね。村雨さんは入部して日が浅いから対戦の空気に慣れることを目的にしましょうね」
折笠さんがフォローする。
「わたしは?」わたしは自分を指さした。
「鳴海さんはそのままでいい」
姫川さんの抽象的な表現に首をかしげる。わたしは目をしばたたかせた。
「どういうことですか」
「鳴海さんは好きなキャラで、自由に対戦して」
「はい。わかりました」
「鳴海さんはわたしたちのなかで一番潜在能力が高い。あたしは鳴海さんを一〇年にひとりの逸材だと思っている。それが目覚めてくれれば良いと思っているわ」
姫川さんはいままでで一番シリアスなお顔をする。わたしって、格闘ゲームの才能があったのだろうか。
「ヒメ。一〇年にひとりの逸材って、言いたかっただけじゃないよね?」
折笠さんの鋭い突っ込みに姫川さんは窓の外を見た。初夏の陽光が彼女の髪を輝かせている。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず……」
姫川さんは唐突に方丈記の冒頭の一節を詠唱した。
「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。ごまかすな!」
折笠さんがあとを継ぐ。このふたり、本当に息が合ってるな。
なんだ。一〇年にひとりの逸材っていうのはうそだったのか。
「村雨さんも鳴海さんも試合に慣れてくれればそれでいい。いつも部員としか対戦していないからいい体験になると思う」
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