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第二章 バスケ部からの逃亡者
2-3 爆弾発言! 姫川さんどうして⁉
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【村雨初音 視点】
姫川さんが体育館に現れてわたくし、村雨初音を勧誘した翌日。
彼女は予告通り現れた。ちょうどバスケ部の顧問が不在のタイミングで。わたくしは震える手でバスケ部の退部届を握りしめていた。
「あー、コホン。村雨さんいる?」
「またおまえか、姫川。村雨!」
バスケ部の先輩に名前を呼ばれたわたくしの心臓は破れそうなほど鼓動を速めた。
立ち上がって姫川さんのもとへ近づいた。彼女の足元を見ると体育館シューズを履いていた。用意周到な人だ。彼女が救世主に思えた。この練習地獄のバスケ部から逃げだせるのかしら。
「覚悟は決めてくれたかい?」
「はい。でも本当にバスケ部を辞められるんですか?」
わたくしは先輩たちに聞こえないよう小声で話す。
「うん。こうすればいいんだよ」
姫川さんは声量を高めた。
「部長の高波さんいる? 話があるんだけど」
姫川さんは天文部の部長としてバスケ部部長の高波さんと面識があったらしい。
高波さんは練習に水をさした姫川さんを睨みながらコートの外にいるわたくしたちに近づいてきた。
「おまえ姫川だな。なんだよ」
「村雨さんは今日付けでバスケ部を退部して天文部に入部する」
姫川さんは大胆不敵に申告した。わたくしには信じられない言葉選びだった。
「はあ⁉ そんなこと認められるわけないだろ。村雨、どういうことだ」
部長に睨まれたわたくしの心拍数は一八○を超えていたと思う。
「わたくしは、練習がきつくて、もうついていけません」
か細い声しかだせなかった。恐る恐る顔をあげるとそこには姫川さんの太陽の微笑みがあった。それだけでわたくしは安心した。彼女の存在が百万の戦車より頼もしく思えた。
「最低二週間退部は認められない。罰ゲームをやってもらう」
高波部長はすごんだ。退部する際は罰ゲームとして反省文の執筆と先輩たち一人ひとりに謝罪することになっている。顧問も黙認するバスケ部独自のルールだった。それが怖くて誰もやめられないのである。
「それって学校で認められてんの?」
「関係ねえよ」
部長の声も大きくなってほかの部員も注目しだした。
そして姫川さんは決定的なことを発言した。
「練習すればうまくなるんだったらあなたたちは世界一だよね」
彼女の美しく、ダイヤモンドの意志を宿した声はアウェーである体育館運動場フロアに響き渡る。
その発言は、運動部に所属する人間にとっては禁句だった。青春を練習に捧げている若者に対する冒とくに等しかった。部員たちの練習が止まった。
全員が殺気立って姫川さんを凝視してる。
「入り口閉めろ」
わたくしは鳥肌が立っていた。私刑されるかもしれない。
姫川さんが体育館に現れてわたくし、村雨初音を勧誘した翌日。
彼女は予告通り現れた。ちょうどバスケ部の顧問が不在のタイミングで。わたくしは震える手でバスケ部の退部届を握りしめていた。
「あー、コホン。村雨さんいる?」
「またおまえか、姫川。村雨!」
バスケ部の先輩に名前を呼ばれたわたくしの心臓は破れそうなほど鼓動を速めた。
立ち上がって姫川さんのもとへ近づいた。彼女の足元を見ると体育館シューズを履いていた。用意周到な人だ。彼女が救世主に思えた。この練習地獄のバスケ部から逃げだせるのかしら。
「覚悟は決めてくれたかい?」
「はい。でも本当にバスケ部を辞められるんですか?」
わたくしは先輩たちに聞こえないよう小声で話す。
「うん。こうすればいいんだよ」
姫川さんは声量を高めた。
「部長の高波さんいる? 話があるんだけど」
姫川さんは天文部の部長としてバスケ部部長の高波さんと面識があったらしい。
高波さんは練習に水をさした姫川さんを睨みながらコートの外にいるわたくしたちに近づいてきた。
「おまえ姫川だな。なんだよ」
「村雨さんは今日付けでバスケ部を退部して天文部に入部する」
姫川さんは大胆不敵に申告した。わたくしには信じられない言葉選びだった。
「はあ⁉ そんなこと認められるわけないだろ。村雨、どういうことだ」
部長に睨まれたわたくしの心拍数は一八○を超えていたと思う。
「わたくしは、練習がきつくて、もうついていけません」
か細い声しかだせなかった。恐る恐る顔をあげるとそこには姫川さんの太陽の微笑みがあった。それだけでわたくしは安心した。彼女の存在が百万の戦車より頼もしく思えた。
「最低二週間退部は認められない。罰ゲームをやってもらう」
高波部長はすごんだ。退部する際は罰ゲームとして反省文の執筆と先輩たち一人ひとりに謝罪することになっている。顧問も黙認するバスケ部独自のルールだった。それが怖くて誰もやめられないのである。
「それって学校で認められてんの?」
「関係ねえよ」
部長の声も大きくなってほかの部員も注目しだした。
そして姫川さんは決定的なことを発言した。
「練習すればうまくなるんだったらあなたたちは世界一だよね」
彼女の美しく、ダイヤモンドの意志を宿した声はアウェーである体育館運動場フロアに響き渡る。
その発言は、運動部に所属する人間にとっては禁句だった。青春を練習に捧げている若者に対する冒とくに等しかった。部員たちの練習が止まった。
全員が殺気立って姫川さんを凝視してる。
「入り口閉めろ」
わたくしは鳥肌が立っていた。私刑されるかもしれない。
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