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第二章 バスケ部からの逃亡者
2ー2 姫川さんは聖少女?
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わたしこと鳴海千尋は天文部の先輩たちに教室であったことを話した。
「同じクラスの村雨さん、バスケ部続けるのつらそうでした」
「そうなんだ」
姫川さんの反応は興味なさそうである。彼女の造形美に溢れる瞳から怜悧な印象を受けた。
「そうなんだって、冷たいですね」
「悪い縁を切れないのは自分の責任だと思うわ」姫川さんが髪先をもてあそぶ。
わたしはそれ以上なにもいわなかった。折笠さんもなにもコメントしない。突き飛ばされたような感覚を覚えた。
「わたし、今日は帰ります」
「お疲れ様~」
わたしは立腹気味に席を立った。姫川さんも折笠さんもこんな人たちとは……ちょっと思ってたけど、残念だ。軽く失望した。
この一件でわたしは姫川さんの『聖少女暴君』としての一面を垣間見るのであった。
ここからはあとになってから村雨さんに聞いた話を記述する。
【村雨初音 視点】
バスケ部が練習中の体育館にその人はふらっと現れた。パーカーの上に制服を着こんだ格好で、遠目に見てもわかるほどの美少女だった。あとになって、学校一の美少女と噂される姫川天音さんだと知った。
いまの時間帯は顧問がいない自主練中である。
「村雨ってコいる? 話があるんだけど」
「姫川じゃん。あんたなんでバスケ部入らなかったの」
バスケ部の先輩が姫川さんを睨んだ。
「いや~、この歳で運動はきついっすよ。ちょっとだけですから」
姫川さんは冗談が好きらしい。彼女は花も恥じらう乙女の年齢である。
「村雨―! あんたにお客さん」
バスケ部の先輩に名前を呼ばれたわたくしは立ちあがってコートの外にいる姫川さんに近づいた。姫川さんを間近で見ると『聖少女』という言葉が連想される。
「わたくしが村雨ですが……」
「あたしは姫川天音。天文部部長。ううん……」
姫川さんはわたくしの顔をジロジロと観察した。
「あの、なんでしょう? 練習があるのですが……」
「きみ、顔色が悪いね」
「え……?」
わたくしは視線を泳がせた。
「後輩の鳴海さんからきみのことは聞いている。心配になってね。無理して練習しているんじゃない? 鳴海さんの友人はあたしにとっても大切だから」
姫川さんの大粒の瞳で直視されると言葉を失ってしまう。近くで会話するのが申し訳ないほどの美少女だ。
「バスケ部はなんで入ったの?」
「中学では文化部だったのですが、高校では運動やろうと思って。でもこんなに練習がきついとは思いませんでした。罰ゲームがあるから、やめたくてもやめられないんです」
「きみがバスケ部を自分の居場所だと思っているならそれでいい。あたしももう二度ときみに声をかけない。でも違うなら、あたしの天文部に来ないかい? 一緒に星を視よう」
白い歯を見せて微笑んだ彼女はまるで王子様だった。
心が動いた。
「でもバスケ部を抜けるには罰ゲームが……」
「あたしがきみを守ってあげるよ。こう見えて生徒会に友人もいるし教師とも仲が良いんだ」
それでもわたくしは視線を逸らせた。
「明日きみを迎えに来る。選ぶのはきみだよ」
姫川さんはわたくしのあごを撫でた。
「じゃあね。仔猫ちゃん」
姫川さんは颯爽と去っていった。わたくしの心に希望と大嵐を残して。
「同じクラスの村雨さん、バスケ部続けるのつらそうでした」
「そうなんだ」
姫川さんの反応は興味なさそうである。彼女の造形美に溢れる瞳から怜悧な印象を受けた。
「そうなんだって、冷たいですね」
「悪い縁を切れないのは自分の責任だと思うわ」姫川さんが髪先をもてあそぶ。
わたしはそれ以上なにもいわなかった。折笠さんもなにもコメントしない。突き飛ばされたような感覚を覚えた。
「わたし、今日は帰ります」
「お疲れ様~」
わたしは立腹気味に席を立った。姫川さんも折笠さんもこんな人たちとは……ちょっと思ってたけど、残念だ。軽く失望した。
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ここからはあとになってから村雨さんに聞いた話を記述する。
【村雨初音 視点】
バスケ部が練習中の体育館にその人はふらっと現れた。パーカーの上に制服を着こんだ格好で、遠目に見てもわかるほどの美少女だった。あとになって、学校一の美少女と噂される姫川天音さんだと知った。
いまの時間帯は顧問がいない自主練中である。
「村雨ってコいる? 話があるんだけど」
「姫川じゃん。あんたなんでバスケ部入らなかったの」
バスケ部の先輩が姫川さんを睨んだ。
「いや~、この歳で運動はきついっすよ。ちょっとだけですから」
姫川さんは冗談が好きらしい。彼女は花も恥じらう乙女の年齢である。
「村雨―! あんたにお客さん」
バスケ部の先輩に名前を呼ばれたわたくしは立ちあがってコートの外にいる姫川さんに近づいた。姫川さんを間近で見ると『聖少女』という言葉が連想される。
「わたくしが村雨ですが……」
「あたしは姫川天音。天文部部長。ううん……」
姫川さんはわたくしの顔をジロジロと観察した。
「あの、なんでしょう? 練習があるのですが……」
「きみ、顔色が悪いね」
「え……?」
わたくしは視線を泳がせた。
「後輩の鳴海さんからきみのことは聞いている。心配になってね。無理して練習しているんじゃない? 鳴海さんの友人はあたしにとっても大切だから」
姫川さんの大粒の瞳で直視されると言葉を失ってしまう。近くで会話するのが申し訳ないほどの美少女だ。
「バスケ部はなんで入ったの?」
「中学では文化部だったのですが、高校では運動やろうと思って。でもこんなに練習がきついとは思いませんでした。罰ゲームがあるから、やめたくてもやめられないんです」
「きみがバスケ部を自分の居場所だと思っているならそれでいい。あたしももう二度ときみに声をかけない。でも違うなら、あたしの天文部に来ないかい? 一緒に星を視よう」
白い歯を見せて微笑んだ彼女はまるで王子様だった。
心が動いた。
「でもバスケ部を抜けるには罰ゲームが……」
「あたしがきみを守ってあげるよ。こう見えて生徒会に友人もいるし教師とも仲が良いんだ」
それでもわたくしは視線を逸らせた。
「明日きみを迎えに来る。選ぶのはきみだよ」
姫川さんはわたくしのあごを撫でた。
「じゃあね。仔猫ちゃん」
姫川さんは颯爽と去っていった。わたくしの心に希望と大嵐を残して。
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