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75.外崎宏太
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上原杏奈の手であの最後の日に入れられたと思われる荷物を、再び取りに行って貰うのに俺が呼び出したのは槙山忠志。胡散臭いと敬遠しそうなものだが、こいつも案外人がよくて呼び出すと律儀にやって来るのだ。今回はなんなんだよと言う槙山に、またコインロッカーの荷物を引き取ってきてほしいというと即座に中身はと問い返す。今回は中身が分からんと俺が正直にいうと、槙山は苦い顔で答える。
「何でそんな胡散臭い荷物、ワザワザ金払ってとってくんだよ?」
「今回のは特別だ。」
「今までのだって十分特別だろ?三度目のなんとかじゃねぇだろうな?」
初回がヤクザの事務所に届け物だったのと、前回の荷物の中身が二千万を越す札束だったのを未だに根に持っているようだ。それでもバイト代総額三万円で荷物宅配ならボロ儲けな筈だ。槙山がすばしっこいお陰で、実働時間にしたって全部で二時間にもならない、ほぼ時給三万円のバイト。大体にして荷物を運んだのが一回、引き取ってくるのが一回で、コンビニバイトの六日分を一度に稼げたんだから良いじゃないかというと、そういう問題じゃねぇしと不貞腐れる。兎も角今回のは今までとは理由が違うからと口にする俺に、槙山は眉を潜めた。
「頼まれて預かってやるって約束したんだよ。それだけだ。」
「誰のだよ?」
「上原秋奈。」
何だよ、あのねぇちゃんのか?と槙山が、思ったよりも不審そうに呟く。
この槙山忠志は嘘がつけない程単純明快な思考の人間だが、その思考から思っているより遥かに勘が鋭い。強いていうなら相手の心の機微を感じとるのには元々優れているのだが、自分の対応が大雑把で上手く出来ないタイプというやつだ。こういうやつは大概見た目に反して人がよく人懐っこかったりして、付き合ううちに大勢から好かれる質のことが多い。その勘の鋭さで上原に何か起きてるのは既に察知したのだろう、僅かに声が低くなる。この勘の鋭さを三浦の時に発揮していたらと考えたが、思えばあの時は丁度自分の家族の事件の後で疎遠になっていたんだった。こいつだって人間なのだから、自分のことで手一杯ということだったんだろう。
「あのねぇちゃん、どっか行ってんのか?」
「ああ、暫くな。」
まだ世間のニュースでは上原の事件ことは表に出ていない。
世の中に殺人事件がでない筈がないって?年間殺人事件認知件数は千二百から千四百件、実際に殺された人として認知されているのは千三百から千五百件。事件として認知されていないであろう殺人もある筈だから、当然本来だとこれ以上あることになる。ざっと見て一日当たり大体四人の計算。当然、多い日も少ない日もある筈だ。こう言うと捜査の都合上まだ発表されてなくても、別に驚くことじゃないだろう。何しろ犯人が三浦の可能性がまだあるから、表にまだ出さないというのが正直な話でもある。依然として上層部が三浦が絡むと動かないのをどうにかしないとと、密かに動きが出ているというのは風間から聞き出したところだ。
ただ上原杏奈を真名かおると勘違いしたとしても、もし本当に三浦がやったことなら三浦が初めて殺した女性ということになる。だが正直なところ今の三浦の精神構造がどうなっているかは兎も角、三浦が上原杏奈を刺したのなら直ぐ傍にいないのはおかしい。もし三浦なら一緒にいる筈だと俺は思う。
「和希の関係?」
やはり勘のいい奴だ。何も俺は言っていないのに、俺の無言から槙山はそれを導きだしてしまった。それを俺が否定も肯定もしないうちに、槙山は溜め息一つだけついてさっさと鍵を取り上げると荷物を取りに出ていってしまったのだった。
そえして三十分もしないうちに、槙山は荷物を一つ抱えて戻ってくる。
「そういえばお前、オートロック開けないでどうやってはいるんだ?」
槙山が出ていったから鍵を閉めていなかったのは事実だが、当然のように前触れもなくドアが開いたのに少し驚きもする。考えてみると他のやつの時は大概表のオートロックを開けろとインターホンが鳴って開けるのだが、こいつに関しては呼んでも一度も開けたことがないのに気がつく。いちいちめんどくせぇんだもん平然と槙山はというが、聞きたいのはそこではない。鳴らなさないではいれる侵入口が簡単にあるというのは俺としては問題だし、正直なところ知っておきたいところだ。
「聞いても無駄だって、俺か俺のダチくらいしか出来ない。」
「お前のダチに和希もはいんだろうが。」
あ、そっかなどと暢気に答えるが槙山は荷物をテーブルに置きながら、非常階段の鉄柵あるだろと何気なく言う。確かに記憶の中にはマンションの非常階段の入り口に鉄柵があるが、あれは高さは優に三メートルの鉄柵の格子ゲートだ。
「あれを掴んで体を持ち上げてクルッと。」
「乗り越えんのか?あれを?」
確かにゲートの上部は開口されている筈だが、そんなピョンと越えましたで済むようなものではない。それに例え乗り越えられるとして、普通そんなところを乗り越えてるのを見られたら確実に通報ものだ。つまり、槙山は文字通りピョンと越える程度の容易さで、時間もかけずにそれを越えられる身体能力ということになる。
そうと俺の問いかけに簡単に言うが、そういえばこいつは体操の都大会優勝者だった。なるほどそれで身軽に鉄策を乗り越えるし、ビルの窓から逃げて隣のビルの屋上から逃走なんて離れ業をしてみせたんだった。
「だから俺と、まあダチに同じような事が出来る奴がいるだけ。」
確かに自分にしか出来ないが、他にも同じことを出来る奴がいるというのも驚きだ。そんなやつそうそういられても困るというと、槙山は呆れたように笑う。
「和希にはできないから大丈夫だって。」
とは言え秋奈の話では、三浦和希は二メートル程の塀を飛び越えていると思われている。しかし二メートル三メートルと口では簡単にいうが、最近の若い奴等の身体能力や体力には驚いてしまう。
そんなわけで今の俺の手元には、コインロッカーから引き取ってきた上原杏奈の最後の荷物がある。
「見た限りは男の私物って感じだけどなぁ。」
槙山がテーブルに置いたのは女物とは余り言いがたい、確りした旅行用鞄だという。長く使い込まれている様子の鞄は思ったより重い。手触りは皮のようで確かに長く使い込んでいるのは、もしかしたら上原の死んだ父親のものなのかもしれないとうっすら感じる。
「開けてくれ。」
「あ?預かるだけだろ?」
「あいつ、が何を調べててこうなってるか、この中に理由があるんだ。」
女の荷物の中を漁るのは余り褒められたことではないが、槙山に正直に上原が何を調べていたか知らないとならないと説明した。三浦が関わっているかもと言われると断れないのか溜め息混じりに下着とかだったらどうすんだよといいながら鞄のファスナーを開けた槙山が、一瞬中身に訝しげな気配を浮かばせるのに気がつく。
「何が入ってる?」
「一番上に手帳とスマホと、なんだこれプレーヤー?」
鞄から取り上げた物を俺の手に落とす。大きさとすれば煙草の箱を細くした感じだという槙山から受け取って、手触りでそれがなにか気がつく。
ボイスレコーダーだ。
しかも一緒に入っていたスマホの方はバッテリー切れで既に消えているが、俺が上原秋奈にバイト用として与えたやつ。もしかして上原秋奈のやつ、真名かおるを名乗って犯人に会いに行くときこれを仕込んでいたのか?と気がつく。
上原杏奈が最後に俺に電話を掛けてきたスマホは、あいつ自身のものだった。履歴に残っていたのは上原自身がスマホ自体をリセットしていて、俺の電話番号しか残っていなかったという。データの復元はされたというが俺への電話以外にはメールが一つと発信が一つ。発信先のスマホは誰の契約したものかは分からず、所在も電源が暫く入っていないから分からない。勿論こいつは俺の仕事用のスマホだから、契約者の身元は分からないよう工夫してある特別製。
つまりその不明発信先はこいつか……。こうなると下手に充電して電源を入れられない。
実は普段から俺に連絡をとるのは、バイト用に俺が渡したスマホをあいつは使っていた。何せ何とか金を貯めたい上原杏奈は、そういう面ではかなりキッチリしていたし案外図々しくもあったんだ。
「手帳はなんだ?」
「えーと、男もんだな。」
男物の手帳?一体誰のものだ?パラパラとページを捲る音が聞こえ、結構ビッチリ書き込んでるなと槙山が呟く。内容はなんだ?分かるか?と問いかけると、槙山は改めて最初のページを捲り内容に目落とす。
「24時、石倉」
「あ?」
「そんなんばっかり書き込んでる。暫く石倉一人。」
時間と苗字?何かの待ち合わせにしては随分と遅い時間だし、しかも一人。もしかして記入者だから記載なしか。しかし態々手帳に残すこと、と考える。
「23時、石倉・植村・相馬・松下」
「23時、石倉・植村・松下」
「24時、石倉・相馬」
「23時、石倉・植村・松下」
なんだこりゃと呟く槙山の目にはスケジュールに同じように定期的に、名前が書き込まれいるのだという。四日から六日に一度のペースで、月にすれば五回から七回ほど。安物の紙製の手帳は別段珍しくもない何処の文房具屋でも手に入るもので、それで何か分かりる訳ではない。少なくとも石倉という人間が主体なのだけは理解できるのは、全てに石倉の名前があるという槙山の言葉だ。
「大概おんなじ名前だなぁ、多くて五人って感じ?」
「五人?」
「23時、石倉・相馬・松下……っとこれなんて読むのかな。」
「何だ?」
再び繰り返される名前。だが最後の一人が特殊な漢字らしく、槙山には読めないらしい。確かに世の中には難読とか言う苗字があるのは事実だ。
「漢字が一字なんだけど……。」
「分かるよう説明しろ、部首でもいい。」
「左側が県に、右側が系」
珍しいが苗字として使われることのある『縣』。知らなければ読めないだろうが、俺には調べなくても直ぐ分かる。
「アガタ………だ。」
「縣って言うんだ?知らなきゃ読めねぇな、俺。あんた、よくしってんね。」
その名前を聞いた瞬間、一気に嫌な気分になった。これをこれ以上確認してはいけないような、このままにしておきたいような不快感。それでも上原杏奈が何を知らせようとしたか、それがあの女が命をかけるほどのことだったのか知りたいとも思う。
「槙山、悪いがもう一度全員の苗字を言ってくれるか?」
「あ?うん。石倉・植村・相馬・松下・縣。」
何度かその内の何人かの名前を聞いたことがある。一番馴染みがあったのは恐らく松下で、こいつに関しては他の奴等より一足先にあそこに来た。
《random face》
実は松下が一番最初に他の人間に連れられて来て、あの店の奥に異世界があるのを知った人間だ。松下はあの店で目眩く快楽というやつを知った訳で、他の仲間を同じ快楽という地獄に引きずり込んだ。
次に杉浦陽太郎と相馬が連れられてきて、やがて縣と植村を引き込んできた。松下は元々苗字は知っていたし、杉浦と相馬は度々あの奥の部屋を予約するようになったから記憶がある。それに縣と植村の名前は、俺自身が事件の後から調べた。
そして奴等は女を連れ込み楽しむことを知って羽目を外し、やがて杉浦が三浦和希を連れてくる。そこからはもう知っての通りだ。
残りの一つの苗字・石倉が、通り魔的に殺された会社員の男の名前だというのも実は知っている。何でかラブホテルに拾った三浦和希を連れ込み、ワンナイトラブの果てに朝に浴槽に沈む惨殺死体で見つかった運の悪い男。
「大丈夫か?顔色悪いぞ。これなんだかわかんの?」
「ああ、気分は悪いが大丈夫だ。それでそれの最初の日付は何年前だ?」
「んー、丁度一年半くらいか?」
最悪だ。聞けば聞くほど想定出来る事が限定されて行く気がする。大体にして一番先が石倉一人だという時点で、スケジュールの示すことはかなり特定されてはいる。いるのだが……
「その縣はその中で何回出てくる?」
「んー。十回くらい、だな。他のに比べると凄い少ない。」
回数が問題なのではないし、他の名前の回数はその縣に比べたら十倍も名前が書き込まれているというのは事実だろう。だが内容が問題なのだ。その回数、何が真夜中に行われたのか。しかも、そんな以前から密かにだ。
他に何か書いてあるかと問いかけるとメモ欄に、幾つか書き込みかしてあってそのうち一つが電話番号とメールアドレスらしい。
「縣の番号は?」
「聞いてわかんの?知り合い?……090の………。」
試しに槙山に縣の番号を読み上げさせたが、勿論俺が知らない番号だ。それはそうだろう、俺が知ってる番号で連絡を取り合う程の間抜けじゃないのは分かっている。それにしてもこれを残したのは一体誰なんだ。
「石倉って奴のだとおもう。」
「何で?」
「だって電話番号ねぇもん。」
成る程、メモ欄の名前と電話番号に石倉のものがないという。確かにスケジュールに自分の名前を書くのは兎も角、自分の電話番号はメモしない。
それにしても何故こんなものを残したのか、と考えると内容を目にしている槙山が苦い声で呟く。
「石倉って人、ちょっと変になってんじゃないかな?」
その言葉の意味を問うと、石倉は残りのメモ欄に仲間それぞれの参加を正の字で集計しているのだという。自分だけが三桁で他の人間が二桁、縣だけが一桁、それをまとめているだけでなく、仲間内のやる気に関してページにピッチリ豆のような字で書き込まれている。その内容は細かすぎて読みにくいが、正直
「アダルト小説。」
うんざりしたような槙山が、ここら辺は音読したくないと溜め息混じりに言う。ワザワザこんなことを書いたものを残しておく、石倉の精神状態を疑うと、槙山は言いたいのだ。
恐らく上原杏奈が相手の呼び出しに使った番号は手帳の中のではないだろうか、この電話番号で呼び出され、しかも上原杏奈が持っている手帳の中身が分かってるなら出向くしかなくなる。そう考えた途端不意に朦朧としながら上原杏奈が口にした言葉が甦り、頭が痛くなりそうな気がした。
そういうことか、あれは。
風間のことじゃない。あの言葉は風間祥太と上原杏奈のことではなく、俺と俺の幼馴染みという意味だ。つまり俺と遠坂喜一ということなのだ。
『幼馴染み、悪いことしててもさぁ、……友達でいてよって。』
悪いこと。
上原杏奈にとって一番悪いことは、暴力で性的に虐げられることだったに違いない。それを喜一がしていると上原杏奈は俺に伝え、それでも友達ではいろと言いたかった。誰にしているかはこれで見れば当然、病室に隔離されていた三浦和希なのだろう。あの男は子供に退行した状態で五人もの男にいいように暴行を受け続けた。殺された人間の苗字で態々集まると言うことは、全員がそれぞれの家族や親戚の可能性が高い。
殺された者の復讐。
聞こえはいいが多人数での暴行には変わりない。
どうする?
いや、既にどうにか出来ることではないのは事実だ。問題はその先上原杏奈が喜一を呼び出したとして、喜一が上原を刺すか?自分がしたことをバラされるから?だけどあいつは刑事だ、何がどうなるかなんて嫌というほど知っている。そんな喜一があんな行動に出るか?
黙り込んでいた俺に、心配したのか槙山が声をかける。
「なぁ、ボイスレコーダー、どうする?」
ハッと俺は我にかえってその存在を思い出す。上原杏奈は呼び出した相手と会う前にボイスレコーダーを準備していた筈だ。やり方は何度か俺の手伝いをこなしているから、上原杏奈は方法を理解していた。一瞬槙山がいることに躊躇いを感じはしたが、もしぶっ倒れても困るしここまで来たら隠してても仕方がない。黒光りするボイスレコーダーの再生を押した俺は流れ出した声に、言葉もなく耳を済ましていた。
『………和希がまだ覚えているか、それを知りたいのよね?』
『………お前は、答えを知ってるのか?上原。』
微かに聞こえる上原杏奈が演じた真名かおるの笑い。正直なところ声は違うが、まるで俺の知っている真名かおる当人みたいに笑う声に聞こえる。
不思議なもんだな、別人なのに。
だが俺とは違う印象を真名かおるに持っている槙山には、少なからず不快感があるようだ。だが二人の会話はまだ低く続き、黙ったまま耳をすます。
『知ってどうするの?土下座でもする?』
『………どうするか……分からないんだ。俺にも。』
録音の中で俺の幼馴染みである遠坂喜一は戸惑うように呟き、更に言葉を続けていた。
「何でそんな胡散臭い荷物、ワザワザ金払ってとってくんだよ?」
「今回のは特別だ。」
「今までのだって十分特別だろ?三度目のなんとかじゃねぇだろうな?」
初回がヤクザの事務所に届け物だったのと、前回の荷物の中身が二千万を越す札束だったのを未だに根に持っているようだ。それでもバイト代総額三万円で荷物宅配ならボロ儲けな筈だ。槙山がすばしっこいお陰で、実働時間にしたって全部で二時間にもならない、ほぼ時給三万円のバイト。大体にして荷物を運んだのが一回、引き取ってくるのが一回で、コンビニバイトの六日分を一度に稼げたんだから良いじゃないかというと、そういう問題じゃねぇしと不貞腐れる。兎も角今回のは今までとは理由が違うからと口にする俺に、槙山は眉を潜めた。
「頼まれて預かってやるって約束したんだよ。それだけだ。」
「誰のだよ?」
「上原秋奈。」
何だよ、あのねぇちゃんのか?と槙山が、思ったよりも不審そうに呟く。
この槙山忠志は嘘がつけない程単純明快な思考の人間だが、その思考から思っているより遥かに勘が鋭い。強いていうなら相手の心の機微を感じとるのには元々優れているのだが、自分の対応が大雑把で上手く出来ないタイプというやつだ。こういうやつは大概見た目に反して人がよく人懐っこかったりして、付き合ううちに大勢から好かれる質のことが多い。その勘の鋭さで上原に何か起きてるのは既に察知したのだろう、僅かに声が低くなる。この勘の鋭さを三浦の時に発揮していたらと考えたが、思えばあの時は丁度自分の家族の事件の後で疎遠になっていたんだった。こいつだって人間なのだから、自分のことで手一杯ということだったんだろう。
「あのねぇちゃん、どっか行ってんのか?」
「ああ、暫くな。」
まだ世間のニュースでは上原の事件ことは表に出ていない。
世の中に殺人事件がでない筈がないって?年間殺人事件認知件数は千二百から千四百件、実際に殺された人として認知されているのは千三百から千五百件。事件として認知されていないであろう殺人もある筈だから、当然本来だとこれ以上あることになる。ざっと見て一日当たり大体四人の計算。当然、多い日も少ない日もある筈だ。こう言うと捜査の都合上まだ発表されてなくても、別に驚くことじゃないだろう。何しろ犯人が三浦の可能性がまだあるから、表にまだ出さないというのが正直な話でもある。依然として上層部が三浦が絡むと動かないのをどうにかしないとと、密かに動きが出ているというのは風間から聞き出したところだ。
ただ上原杏奈を真名かおると勘違いしたとしても、もし本当に三浦がやったことなら三浦が初めて殺した女性ということになる。だが正直なところ今の三浦の精神構造がどうなっているかは兎も角、三浦が上原杏奈を刺したのなら直ぐ傍にいないのはおかしい。もし三浦なら一緒にいる筈だと俺は思う。
「和希の関係?」
やはり勘のいい奴だ。何も俺は言っていないのに、俺の無言から槙山はそれを導きだしてしまった。それを俺が否定も肯定もしないうちに、槙山は溜め息一つだけついてさっさと鍵を取り上げると荷物を取りに出ていってしまったのだった。
そえして三十分もしないうちに、槙山は荷物を一つ抱えて戻ってくる。
「そういえばお前、オートロック開けないでどうやってはいるんだ?」
槙山が出ていったから鍵を閉めていなかったのは事実だが、当然のように前触れもなくドアが開いたのに少し驚きもする。考えてみると他のやつの時は大概表のオートロックを開けろとインターホンが鳴って開けるのだが、こいつに関しては呼んでも一度も開けたことがないのに気がつく。いちいちめんどくせぇんだもん平然と槙山はというが、聞きたいのはそこではない。鳴らなさないではいれる侵入口が簡単にあるというのは俺としては問題だし、正直なところ知っておきたいところだ。
「聞いても無駄だって、俺か俺のダチくらいしか出来ない。」
「お前のダチに和希もはいんだろうが。」
あ、そっかなどと暢気に答えるが槙山は荷物をテーブルに置きながら、非常階段の鉄柵あるだろと何気なく言う。確かに記憶の中にはマンションの非常階段の入り口に鉄柵があるが、あれは高さは優に三メートルの鉄柵の格子ゲートだ。
「あれを掴んで体を持ち上げてクルッと。」
「乗り越えんのか?あれを?」
確かにゲートの上部は開口されている筈だが、そんなピョンと越えましたで済むようなものではない。それに例え乗り越えられるとして、普通そんなところを乗り越えてるのを見られたら確実に通報ものだ。つまり、槙山は文字通りピョンと越える程度の容易さで、時間もかけずにそれを越えられる身体能力ということになる。
そうと俺の問いかけに簡単に言うが、そういえばこいつは体操の都大会優勝者だった。なるほどそれで身軽に鉄策を乗り越えるし、ビルの窓から逃げて隣のビルの屋上から逃走なんて離れ業をしてみせたんだった。
「だから俺と、まあダチに同じような事が出来る奴がいるだけ。」
確かに自分にしか出来ないが、他にも同じことを出来る奴がいるというのも驚きだ。そんなやつそうそういられても困るというと、槙山は呆れたように笑う。
「和希にはできないから大丈夫だって。」
とは言え秋奈の話では、三浦和希は二メートル程の塀を飛び越えていると思われている。しかし二メートル三メートルと口では簡単にいうが、最近の若い奴等の身体能力や体力には驚いてしまう。
そんなわけで今の俺の手元には、コインロッカーから引き取ってきた上原杏奈の最後の荷物がある。
「見た限りは男の私物って感じだけどなぁ。」
槙山がテーブルに置いたのは女物とは余り言いがたい、確りした旅行用鞄だという。長く使い込まれている様子の鞄は思ったより重い。手触りは皮のようで確かに長く使い込んでいるのは、もしかしたら上原の死んだ父親のものなのかもしれないとうっすら感じる。
「開けてくれ。」
「あ?預かるだけだろ?」
「あいつ、が何を調べててこうなってるか、この中に理由があるんだ。」
女の荷物の中を漁るのは余り褒められたことではないが、槙山に正直に上原が何を調べていたか知らないとならないと説明した。三浦が関わっているかもと言われると断れないのか溜め息混じりに下着とかだったらどうすんだよといいながら鞄のファスナーを開けた槙山が、一瞬中身に訝しげな気配を浮かばせるのに気がつく。
「何が入ってる?」
「一番上に手帳とスマホと、なんだこれプレーヤー?」
鞄から取り上げた物を俺の手に落とす。大きさとすれば煙草の箱を細くした感じだという槙山から受け取って、手触りでそれがなにか気がつく。
ボイスレコーダーだ。
しかも一緒に入っていたスマホの方はバッテリー切れで既に消えているが、俺が上原秋奈にバイト用として与えたやつ。もしかして上原秋奈のやつ、真名かおるを名乗って犯人に会いに行くときこれを仕込んでいたのか?と気がつく。
上原杏奈が最後に俺に電話を掛けてきたスマホは、あいつ自身のものだった。履歴に残っていたのは上原自身がスマホ自体をリセットしていて、俺の電話番号しか残っていなかったという。データの復元はされたというが俺への電話以外にはメールが一つと発信が一つ。発信先のスマホは誰の契約したものかは分からず、所在も電源が暫く入っていないから分からない。勿論こいつは俺の仕事用のスマホだから、契約者の身元は分からないよう工夫してある特別製。
つまりその不明発信先はこいつか……。こうなると下手に充電して電源を入れられない。
実は普段から俺に連絡をとるのは、バイト用に俺が渡したスマホをあいつは使っていた。何せ何とか金を貯めたい上原杏奈は、そういう面ではかなりキッチリしていたし案外図々しくもあったんだ。
「手帳はなんだ?」
「えーと、男もんだな。」
男物の手帳?一体誰のものだ?パラパラとページを捲る音が聞こえ、結構ビッチリ書き込んでるなと槙山が呟く。内容はなんだ?分かるか?と問いかけると、槙山は改めて最初のページを捲り内容に目落とす。
「24時、石倉」
「あ?」
「そんなんばっかり書き込んでる。暫く石倉一人。」
時間と苗字?何かの待ち合わせにしては随分と遅い時間だし、しかも一人。もしかして記入者だから記載なしか。しかし態々手帳に残すこと、と考える。
「23時、石倉・植村・相馬・松下」
「23時、石倉・植村・松下」
「24時、石倉・相馬」
「23時、石倉・植村・松下」
なんだこりゃと呟く槙山の目にはスケジュールに同じように定期的に、名前が書き込まれいるのだという。四日から六日に一度のペースで、月にすれば五回から七回ほど。安物の紙製の手帳は別段珍しくもない何処の文房具屋でも手に入るもので、それで何か分かりる訳ではない。少なくとも石倉という人間が主体なのだけは理解できるのは、全てに石倉の名前があるという槙山の言葉だ。
「大概おんなじ名前だなぁ、多くて五人って感じ?」
「五人?」
「23時、石倉・相馬・松下……っとこれなんて読むのかな。」
「何だ?」
再び繰り返される名前。だが最後の一人が特殊な漢字らしく、槙山には読めないらしい。確かに世の中には難読とか言う苗字があるのは事実だ。
「漢字が一字なんだけど……。」
「分かるよう説明しろ、部首でもいい。」
「左側が県に、右側が系」
珍しいが苗字として使われることのある『縣』。知らなければ読めないだろうが、俺には調べなくても直ぐ分かる。
「アガタ………だ。」
「縣って言うんだ?知らなきゃ読めねぇな、俺。あんた、よくしってんね。」
その名前を聞いた瞬間、一気に嫌な気分になった。これをこれ以上確認してはいけないような、このままにしておきたいような不快感。それでも上原杏奈が何を知らせようとしたか、それがあの女が命をかけるほどのことだったのか知りたいとも思う。
「槙山、悪いがもう一度全員の苗字を言ってくれるか?」
「あ?うん。石倉・植村・相馬・松下・縣。」
何度かその内の何人かの名前を聞いたことがある。一番馴染みがあったのは恐らく松下で、こいつに関しては他の奴等より一足先にあそこに来た。
《random face》
実は松下が一番最初に他の人間に連れられて来て、あの店の奥に異世界があるのを知った人間だ。松下はあの店で目眩く快楽というやつを知った訳で、他の仲間を同じ快楽という地獄に引きずり込んだ。
次に杉浦陽太郎と相馬が連れられてきて、やがて縣と植村を引き込んできた。松下は元々苗字は知っていたし、杉浦と相馬は度々あの奥の部屋を予約するようになったから記憶がある。それに縣と植村の名前は、俺自身が事件の後から調べた。
そして奴等は女を連れ込み楽しむことを知って羽目を外し、やがて杉浦が三浦和希を連れてくる。そこからはもう知っての通りだ。
残りの一つの苗字・石倉が、通り魔的に殺された会社員の男の名前だというのも実は知っている。何でかラブホテルに拾った三浦和希を連れ込み、ワンナイトラブの果てに朝に浴槽に沈む惨殺死体で見つかった運の悪い男。
「大丈夫か?顔色悪いぞ。これなんだかわかんの?」
「ああ、気分は悪いが大丈夫だ。それでそれの最初の日付は何年前だ?」
「んー、丁度一年半くらいか?」
最悪だ。聞けば聞くほど想定出来る事が限定されて行く気がする。大体にして一番先が石倉一人だという時点で、スケジュールの示すことはかなり特定されてはいる。いるのだが……
「その縣はその中で何回出てくる?」
「んー。十回くらい、だな。他のに比べると凄い少ない。」
回数が問題なのではないし、他の名前の回数はその縣に比べたら十倍も名前が書き込まれているというのは事実だろう。だが内容が問題なのだ。その回数、何が真夜中に行われたのか。しかも、そんな以前から密かにだ。
他に何か書いてあるかと問いかけるとメモ欄に、幾つか書き込みかしてあってそのうち一つが電話番号とメールアドレスらしい。
「縣の番号は?」
「聞いてわかんの?知り合い?……090の………。」
試しに槙山に縣の番号を読み上げさせたが、勿論俺が知らない番号だ。それはそうだろう、俺が知ってる番号で連絡を取り合う程の間抜けじゃないのは分かっている。それにしてもこれを残したのは一体誰なんだ。
「石倉って奴のだとおもう。」
「何で?」
「だって電話番号ねぇもん。」
成る程、メモ欄の名前と電話番号に石倉のものがないという。確かにスケジュールに自分の名前を書くのは兎も角、自分の電話番号はメモしない。
それにしても何故こんなものを残したのか、と考えると内容を目にしている槙山が苦い声で呟く。
「石倉って人、ちょっと変になってんじゃないかな?」
その言葉の意味を問うと、石倉は残りのメモ欄に仲間それぞれの参加を正の字で集計しているのだという。自分だけが三桁で他の人間が二桁、縣だけが一桁、それをまとめているだけでなく、仲間内のやる気に関してページにピッチリ豆のような字で書き込まれている。その内容は細かすぎて読みにくいが、正直
「アダルト小説。」
うんざりしたような槙山が、ここら辺は音読したくないと溜め息混じりに言う。ワザワザこんなことを書いたものを残しておく、石倉の精神状態を疑うと、槙山は言いたいのだ。
恐らく上原杏奈が相手の呼び出しに使った番号は手帳の中のではないだろうか、この電話番号で呼び出され、しかも上原杏奈が持っている手帳の中身が分かってるなら出向くしかなくなる。そう考えた途端不意に朦朧としながら上原杏奈が口にした言葉が甦り、頭が痛くなりそうな気がした。
そういうことか、あれは。
風間のことじゃない。あの言葉は風間祥太と上原杏奈のことではなく、俺と俺の幼馴染みという意味だ。つまり俺と遠坂喜一ということなのだ。
『幼馴染み、悪いことしててもさぁ、……友達でいてよって。』
悪いこと。
上原杏奈にとって一番悪いことは、暴力で性的に虐げられることだったに違いない。それを喜一がしていると上原杏奈は俺に伝え、それでも友達ではいろと言いたかった。誰にしているかはこれで見れば当然、病室に隔離されていた三浦和希なのだろう。あの男は子供に退行した状態で五人もの男にいいように暴行を受け続けた。殺された人間の苗字で態々集まると言うことは、全員がそれぞれの家族や親戚の可能性が高い。
殺された者の復讐。
聞こえはいいが多人数での暴行には変わりない。
どうする?
いや、既にどうにか出来ることではないのは事実だ。問題はその先上原杏奈が喜一を呼び出したとして、喜一が上原を刺すか?自分がしたことをバラされるから?だけどあいつは刑事だ、何がどうなるかなんて嫌というほど知っている。そんな喜一があんな行動に出るか?
黙り込んでいた俺に、心配したのか槙山が声をかける。
「なぁ、ボイスレコーダー、どうする?」
ハッと俺は我にかえってその存在を思い出す。上原杏奈は呼び出した相手と会う前にボイスレコーダーを準備していた筈だ。やり方は何度か俺の手伝いをこなしているから、上原杏奈は方法を理解していた。一瞬槙山がいることに躊躇いを感じはしたが、もしぶっ倒れても困るしここまで来たら隠してても仕方がない。黒光りするボイスレコーダーの再生を押した俺は流れ出した声に、言葉もなく耳を済ましていた。
『………和希がまだ覚えているか、それを知りたいのよね?』
『………お前は、答えを知ってるのか?上原。』
微かに聞こえる上原杏奈が演じた真名かおるの笑い。正直なところ声は違うが、まるで俺の知っている真名かおる当人みたいに笑う声に聞こえる。
不思議なもんだな、別人なのに。
だが俺とは違う印象を真名かおるに持っている槙山には、少なからず不快感があるようだ。だが二人の会話はまだ低く続き、黙ったまま耳をすます。
『知ってどうするの?土下座でもする?』
『………どうするか……分からないんだ。俺にも。』
録音の中で俺の幼馴染みである遠坂喜一は戸惑うように呟き、更に言葉を続けていた。
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