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おまけ15.if 10 years later

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私の名前は久保田碧希。

今年の春に小学五年生になってクラス替えがあって新しいクラスに変わったんだけど、新しいクラスには幼稚園からの幼馴染みの鳥飼澪ちゃんや村瀬真緒ちゃんがいる。そうそう、澪ちゃんには同じ学年に双子の弟の仁君がいるけど、双子だと同じクラスにはならないから仁君は隣の二組だ。

「はぁーぁ。」
「どうしたの?タマちゃん。」

家のパパは喫茶店とか色々なお店を経営していて割りと忙しいんどけど、何時もは『茶樹』で仕事をしていることが多い。その『茶樹』には子供の頃から碧希もいることが多くて、常連のお客さんとかコックさんの良二君とかと仲良しだ。
その常連の一人でパパのお友だちで時々パパのお店でよく会う了君が、碧希の盛大な溜め息にどうしたの?と首を傾げて覗き込んでくる。そうだ、了君はパパの弟?みたいな外崎宏太君って人の息子さんなんだけど、本当は血が繋がってなくて、本当はオクサンなんだっていう。うちのママは了君と宏太君みたいな関係の人は世の中に沢山いるし、大事なのは性別よりお互いを大事にする気持ちなのって言ってる。了君は真緒ちゃんのパパと同級生だって前に話してたけど、真緒パパより凄く綺麗で優しい人なんだ。勿論真緒パパだって皆に優しいけど、真緒パパはヤッパリ綺麗とは違う。了君の綺麗はそうだなぁ………教会とかにある天使様みたいな感じで女の人の綺麗とはちょっと違うの。それに碧希の話しをちゃんと何時も聞いてくれて、碧希のソウダンアイテになってくれる。

「だってぇ了君聞いてよー。皆がねぇ!」

って言うのも同級生の男の子達が澪ちゃんや真緒ちゃんは可愛いで、碧希は可愛いじゃないなんて言うんだよ?!それは幼馴染みの澪ちゃんは艶々の黒い髪で日本人形みたいな和風美少女で、真緒ちゃんはクリクリの栗毛のビスクドールみたいな可愛い洋風美少女。それに引き換え碧希は髪の毛の色はママに似てて澪ちゃんみたいな黒なのに天然パーマってやつでうねってて、澪ちゃんや真緒ちゃんみたいな可愛い髪型が似合わない。だから碧希は髪の毛は短めにしてるけど、これだってママはボーイッシュで凄く可愛いって言ってくれる。

パパの子供の頃にそっくりだよ、碧希は。

でもニマニマしながらそんなことを言うパパに、何でソコだけパパ似なのって碧希はとても不満でしかたがない。ママに似たら澪ちゃんみたいな純和風美少女になれたのに、だってママのおねぇちゃんの子供……つまり碧希の叔母ちゃんの早紀ちゃんだって澪ちゃんやママみたいな艶々の髪の美女なんだよ。
しかも澪ちゃんパパや真緒パパは凄く若くて格好いいのに、碧希のパパは皆のパパより少し年を取って見えるのも碧希としては最近気がついた大きな不満なの。パパは今もだけどもっと昔は超イケメンだったわよなんてママが当たり前みたいに言うけど、つまりそれって今はおじさんって事でしょ?っていうと了君は苦笑いしている。

「惣一さんは年齢不詳なんだけどなぁ。」
「ねんれいふしょーって何?」
「んー、年が見た目では分からないってことかな。」
「コータ君みたいに?」

碧希は知らなかったけど了君の旦那さんの宏太君は、ずっと宮君や良二君とかと同じ年くらいだと思ってたんだ。あ、宮君は駅の反対側でカラオケのお店とカフェをやってるお兄さんで、パパのオトウトブンなんだ。パパのオトウトブンは他にも真治君とかオミ君とか沢山いるんだけど、皆して碧希のお友達。宮君はオトウトブンの中では一番年下で、ここのコックさんの良二君とも同じ年くらい。けど、宏太君は実は宮君より十歳以上も年上なんだってこの間初めて聞いたの。大人の男の人の年って分かんないなぁって思ったのは、学校のセンセより宏太君の方がずっと年上なんだって知ったから。

「鈴木センセより年上なんでしょ?コータ君。」
「鈴木先生の年が分かんないなぁ。俺も。」
「センセはね、28歳だって。えっとね、まも君のママの同級生だったって。」

そう言ったら了君がブハッと吹き出して笑いだしたのに、碧希は目を丸くして何で笑うのって問いかける。まも君は今高校生のお兄さんで、ママが駅の北側で家と同じように『Tea plant』っていう喫茶店をしてて。ガーデニングが好きなパパとママと双子の弟妹がいる、凄く背が高くて格好いいお兄さんだ。まも君のパパは家のパパと古くからのお友達で澪ちゃんパパの幼馴染みでもあるし、まも君のママは真緒ちゃんみたいなフワフワの栗毛で凄く可愛い人。そんなまも君のママと担任の鈴木貴寛先生は、高校の同級生なんだって聞いた。

「はは、ハムちゃんと同じ年って……くくくっ……宏太が聞いたら……、タマちゃん。」
「えー?そんなに違うの?了君だって、真緒パパとか澪ちゃんパパと同じくらいでしょ?」

小学五年生にしてみれば実際のところ両親世代以上の年齢層は、判別どころか大概同じ位にしか見えないのかもしれない。それに了は確かに澪の父・鳥飼信哉や真緒の父・村瀬篠とは同年代だが、外崎宏太は顔や身体に傷痕があるからなおのこと年齢の判断が聞かないのだろう。それにしても了よりも8歳も年下の世代と一緒にされたら、教師の方が可哀想になってしまうと言うもの。

「まぁねぇ。学校の先生ってのは年上に見えるもんなぁ。」
「でもさぁ、パパはもっと年上でしょ?コータ君より、年上なんだよね?」

確かにそれは事実だけどと了が認めると、碧希は不満そうにパパがあと十歳若かったらなぁなんてカウンターに頬杖をついて不満そうにいうのだった。



※※※



「って夢を見ちゃって…………。」

露骨に馬鹿かといいたそうにしているのは言う迄もなく久保田惣一の古くからの友人の外崎宏太で、そんな話を聞かせているのは碧希と名付けた娘をあやしながらの惣一なのは言うまでもない。ここは久保田家のリビングで、何でここに呼び出されたかと言えば訳の分からない惣一の夢の話しを聞いてくれという、誠にもって訳の分からない電話で呼び出されたからで。宏太は大怪我を以前におって視力を失い歩行にも障害を持っているのだが、近郊でなれた場所で暮らす分には問題なく活動できる。とはいえ普段は歩きなれた場所しか歩き回らないし用件は自分の方に来て貰うことが多い面もあるのに、惣一のお願いとなれば無下にも出来ないのは惣一が彼にとっては身内のように近しいからで。

「馬鹿か、惣一。」
「馬鹿って酷いな!碧希に年寄りって思われたらショックだろ!?」
「年寄りだろうが、高齢夫婦。」

そう言った瞬間に背後から妻である松理に、宏太がボフンッとクッションで頭を叩かれたのは言うまでもない。勿論惣一と長い付き合いと言うことは松理の方も長い付き合いをしていて、軽口をたたきあえる仲でもあるのだ。
とは言え今から十年後の夢を見たくらいで呼び出されている宏太にして見たら、なんだそんなことでワザワザよびだしたのか?の世界。大体にして惣一は現在47歳の外崎宏太より五つも年上で、松理だって自分とは大して年が違わない。現在二十代の鳥飼信哉なんかと比較しても無駄と言うもの。大体にして今十代の人間達と既に四十半ば過ぎの自分が同じ年代に見られるわけがない。そこを無視して押し通してしまうのが、夢の夢たる内容なのだが。

「そんなの分かってるけどさぁ!でも娘にさぁ!?」

その今まで聞いたことのない惣一の嘆きの言葉に、親バカって凄いなと心底飽きれるしかない宏太なのだった。
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