563 / 591
Bonus track
おまけ8.初体験part2!
しおりを挟む
それは念願の。
しかし、なんでこの流れになったのかと聞かれると実は謎な部分が多々あるのだが、本日の集合場所は同級生の新巻かえの両親の経営する居酒屋『じょい』である。そして恒例の参加面子は相変わらず、香坂智美・宇野衛・五十嵐海翔・近藤雄二・真見塚孝・木村勇、女子は志賀早紀・宮井麻希子・八幡瑠璃・須藤香苗・松尾むつきに勿論場所提供の新巻かえ、後は自分・若瀬透だ。
瑠璃と透がリサーチして近郊でそれが出来る場所がないか調べていたのだが、何しろそれほどやっている店舗がなくて都内ではたった二ヶ所程度しかない。しかも現地とは違って割高なのは当然で、現地旅行でもしてやった方が早いんじゃないかとなったくらいだ。
ところがひょんなところから、現地方面出身の人物に繋がって。早紀に愚痴を溢したら、知り合いに出身者がいるわよと志賀の叔母・松理が口を挟んだのだ。
※※※
「なぁに?楽しそうだこと。」
「楽しくないの、予算がかかるから出来ないっていう愚痴なのよ、松理ちゃん。」
姉妹かと思う程よく似た早紀の叔母・松理は、『茶樹』で愚痴を溢している瑠璃に付き合う早紀や麻希子を眺めていたが楽しそうだと話に割り込んできたのだった。松理は妊娠していてカフェインレスの生活になったから、最近は『茶樹』のメニューにはノンカフェインの紅茶や珈琲が一気に増え以前より妊婦向けメニューが充実して増えている。早紀曰くマスターの久保田が恐ろしいほど松理を溺愛しているというが、麻希子にしてみると奥さんを大事にするいい旦那様なんだねの一言。
「近辺でやると、一人四千円から五千円とかなんですよ?!そこまでの交通費もあるしっ!」
「なんでやりたいの?瑠璃りん。」
瑠璃の不満声に、キョトンと返した松理。
実は志賀松理と瑠璃の母親・八幡万智は先輩後輩の関係なのだそうで、瑠璃のことも松理は知っているという。なんでやりたい?それを聞かれると説明が難しいが、一度やってみたいから!!というかやらせてみたいから!!としか言えない。と思っていたら松理が背後を振り替えって久保田惣一に良二は?と問いかけている。厨房から顔を出した鈴徳良二は、一旦手を離してもいい状況なのか何ですかと松理達に歩み寄ってきて何をやりたいのか聞くと目を丸くした。
「はぁ?なして、ワザワザ?関東で?」
少しお国訛りがでたが、なんと鈴徳良二はその現地周辺の出身者だという。しかも料理人の良二には調理関係の知り合いも多いし、格安で出来ないかというのだ。
「県人会とか、あんでしょ?」
「入ってないですよ、入ってても現地の人間は、逆にやらないし。」
は?なんで?なんで?現地の人はやらないの???高校生達の疑問の視線に良二は苦笑いしている。
※※※
そんな奇妙な流れから、それでも近くに同じ県出身のご夫婦が居酒屋をやってますからと鈴徳が連絡をとってくれたのが、なんと同級生の新巻かえの両親だったわけだ。そして大分ひっぱったが、やりたいことというかやらせたいことは、噂の『わんこそば』である!!
「しかしまぁ、わんこそばねぇ。」
「じゃ、土地のもンはやらねぇしなぁ。良二はやっだこどあんの?」
「ね。ありゃほがさんのやっこどだ。」
「んだ、わぁもねぇものやぁ。」
大人の県人三人がイントネーションの分からないコミュニケーションをしているが、何故か新巻の家でやらせてくれるとなったのだ。しかも材料費半分は松理持ち(因みに真見塚家の御中元の乾蕎麦が残り半分の材料費を賄っており・残り半分の材料費はわんこそば特有の箸休め&味変的様々)。お陰で何でかここには鈴徳良二と新巻夫妻・志賀松理と、何故か鳥飼信哉と槙山忠志がいる。
「何でこの人数であの蕎麦の量なんだ……?信哉。」
「俺に聞くな。」
偶々真見塚家に合気道の鍛練に来ていたらしく、真見塚家から軽い筈の乾麺移送班に使われたらしい。因みに大人が多いと思ったが、何故かそのまま信哉と忠志は厨房の良二と新巻の夫に手伝いに命じられている有り様だ。というのも、わんこそばというものは定義があるそうで
「わんこ(お椀)」で食べる
「給仕」がつく
「温かいそば」である
という定義がある。因みに発祥は諸説あるようだが、岩手県の花巻市・盛岡市にあるわんこそば店では、わんこそば本来の「おもてなしの心」を重視し、客の食べるペースに合わせてゆっくりと最後までおいしく食べられるように工夫している店と、観光客向けのパフォーマンスを重視し、お椀を客の前に重ねたり、給仕がそばを入れる際に掛け声を発したりと工夫する店のどちらかであることが多い。
料金は一杯いくらではなく、基本的には食べ放題の定額制である場合が多いのだが、店によっては最初から何杯かがセットになったもの・杯数制限のある場合もある。一部の店舗では店に入ると大部屋に案内され、そこで他の客が集まるまでしばらく待たされることもあるのが、これは昔ながらの大勢で食べるスタイルを重視しているタイプの店舗である。
薬味なども用意されており、ネギや海苔、鰹節などの他にも、店によってとろろやイカの塩辛や天ぷら・刺身(鮪やイクラの場合が多いようだが)多彩である。これは蕎麦だけでは飽きてしまうため、沢山食べられるように味や食感に変化をつけるためで、食べなくてもいいものではある。
さて話は戻るが何故こんなに人数が必要かと言えば、わんこそばは茹で方と給仕が必要で、その間を繋ぐのに信哉と忠志は巻き込まれているのだ。それにしても飲食店とは言え凄い数の食器があるなぁと感心するのは、既に準備されたお椀がお盆にのってスタンバイされているのが見えるわけで。
最初に言ったがわんこそばは給仕がつくことからも分かるように、お客様をもてなすための料理で基本的には余り土地の人間はしない。もう一つ理由もあるが、大概土地の人間は他県の客を連れていき客にやらせて自分は単品で普通の蕎麦を食っている。
「じゃ、最初は女の子チームね?」
女の子で参加するのは早紀と麻希子、香苗とむつきで、男子の方が少し人数が多いので衛がこちらで参加だ。給仕は新巻母娘で、瑠璃と透は撮影班だからと笑っている。
「お蕎麦のお汁は飲まなくていいからね、溜まったら前の桶に開けちゃっていいよー。」
「お蕎麦は一本も残したら駄目だからねー?お腹一杯になったら、お椀の蓋を閉じてねー。」
そうして恐怖のわんこそば大会が開始されたのだった。
現地の人間はわんこそばがどんなものか知っているので、基本的にはやらない。杯数制限があったりわりこ蕎麦といわれる既に杯数が決まっているものは割合食べるが、わんこそばは三大麺と呼んでも大概盛岡冷麺かじゃじゃ麺を食べることの方が多い。何しろ、わんこそばは小分けで一口分量ではあるが、大概十杯前後でかけ蕎麦一杯分。大食いしたくて行く場合は止めないが、何が恐ろしいかというと最後は自分で椀に蓋をするということなのだ。
お腹一杯ですという言葉じゃ給仕さんは止まらない、綺麗に椀を空けて蓋をする迄がルール。
「ひぃ!なんでいれるのーっ?!!かえちゃーん!!」
「蓋がされてませーん!」
「はい、じゃんじゃーん!」
新巻母娘は沿岸部の血筋だが、勿論ルールはルールなので容赦しない。そしてお国柄・客には腹が膨れるまで食わせて帰すが、その土地の人間の気質らしく、まだ空けてない椀を狙いすまして次の蕎麦を構えている母娘の目がハンターのようだ。この給仕をする人間が、わんこそばに詳しいと尚更質が悪い。
「よ、よし!蓋したっ!」
「あらぁ!香苗ちゃん!お蕎麦一本のこってたっけよ?」
「え?嘘?」
新巻母の言葉につられ思わず蓋をまた開いてしまった香苗のお椀に、容赦のないおかわりが注ぎ込まれ思わず香苗が突っ伏している。ベタだがルールなので椀に蕎麦が入ったら、椀を空けないと終われない。しかも給仕は意地になってこれを続けるのが、恐怖のわんこそばなのだ。
因みに本来おもてなし料理なので、大食い・早食いの料理ではない、けして。
何度もいうがおもてなし料理なのだ。ただ、もてなす=『たんまり食わせる』の土地なだけなので、こんな風に給仕が賢いと終われない。しかも客が蓋をしたい頃には満腹で大概ペース自体が落ちているので、虎視眈々と椀に狙いを定めることが出来るのだ。
そう蓋をしないと終われないと知っているし蕎麦を残すのも許されないから、ルールを破らない県民性なので地元の人間は早々やらない。やるくらいなら普通に蕎麦を食うのである。
「うう、お蕎麦……が、喉まで詰まってる…………。」
「ファイト~、麻希ちゃーん!」
「ず、狡いよ、早紀ちゃーん!!」
と、いうのも早紀は早々に三十三杯で、かえが麻希子に丁度給仕している隙をついて戦線離脱したからである。蓋をしたい麻希子が給仕と駆け引きを始めて、既に五杯目が椀に捩じ込まれていた。
「はい、どんどーん!」
「無理~っ!!!」
「衛凄いな!?まだ食ってるし。」
何度もいうが十杯でかけ蕎麦一杯である。目下苦悩している麻希子の横でモックモクと衛は杯を重ねていて、そろそろ五十に至りかけていて…………かけ蕎麦五杯を小学二年生が食いきるのに、呆れ顔なのは蕎麦運びをしている信哉と忠志だ。
「まもちゃん、美味しい?」
「うん!かえちゃーん!!ちょうだーい!」
そんなわけで黙々と食べる衛が、再度麻希子に給仕するかえの隙をついて椀に蓋をしたのは五十五杯目。半べそで香苗と麻希子が二人揃って四十二杯でダウンして、むつきは地味に蓋が出来ない地獄から抜けられずなんと六十杯迄食べ続けたのだった。
後半に続く(笑)
しかし、なんでこの流れになったのかと聞かれると実は謎な部分が多々あるのだが、本日の集合場所は同級生の新巻かえの両親の経営する居酒屋『じょい』である。そして恒例の参加面子は相変わらず、香坂智美・宇野衛・五十嵐海翔・近藤雄二・真見塚孝・木村勇、女子は志賀早紀・宮井麻希子・八幡瑠璃・須藤香苗・松尾むつきに勿論場所提供の新巻かえ、後は自分・若瀬透だ。
瑠璃と透がリサーチして近郊でそれが出来る場所がないか調べていたのだが、何しろそれほどやっている店舗がなくて都内ではたった二ヶ所程度しかない。しかも現地とは違って割高なのは当然で、現地旅行でもしてやった方が早いんじゃないかとなったくらいだ。
ところがひょんなところから、現地方面出身の人物に繋がって。早紀に愚痴を溢したら、知り合いに出身者がいるわよと志賀の叔母・松理が口を挟んだのだ。
※※※
「なぁに?楽しそうだこと。」
「楽しくないの、予算がかかるから出来ないっていう愚痴なのよ、松理ちゃん。」
姉妹かと思う程よく似た早紀の叔母・松理は、『茶樹』で愚痴を溢している瑠璃に付き合う早紀や麻希子を眺めていたが楽しそうだと話に割り込んできたのだった。松理は妊娠していてカフェインレスの生活になったから、最近は『茶樹』のメニューにはノンカフェインの紅茶や珈琲が一気に増え以前より妊婦向けメニューが充実して増えている。早紀曰くマスターの久保田が恐ろしいほど松理を溺愛しているというが、麻希子にしてみると奥さんを大事にするいい旦那様なんだねの一言。
「近辺でやると、一人四千円から五千円とかなんですよ?!そこまでの交通費もあるしっ!」
「なんでやりたいの?瑠璃りん。」
瑠璃の不満声に、キョトンと返した松理。
実は志賀松理と瑠璃の母親・八幡万智は先輩後輩の関係なのだそうで、瑠璃のことも松理は知っているという。なんでやりたい?それを聞かれると説明が難しいが、一度やってみたいから!!というかやらせてみたいから!!としか言えない。と思っていたら松理が背後を振り替えって久保田惣一に良二は?と問いかけている。厨房から顔を出した鈴徳良二は、一旦手を離してもいい状況なのか何ですかと松理達に歩み寄ってきて何をやりたいのか聞くと目を丸くした。
「はぁ?なして、ワザワザ?関東で?」
少しお国訛りがでたが、なんと鈴徳良二はその現地周辺の出身者だという。しかも料理人の良二には調理関係の知り合いも多いし、格安で出来ないかというのだ。
「県人会とか、あんでしょ?」
「入ってないですよ、入ってても現地の人間は、逆にやらないし。」
は?なんで?なんで?現地の人はやらないの???高校生達の疑問の視線に良二は苦笑いしている。
※※※
そんな奇妙な流れから、それでも近くに同じ県出身のご夫婦が居酒屋をやってますからと鈴徳が連絡をとってくれたのが、なんと同級生の新巻かえの両親だったわけだ。そして大分ひっぱったが、やりたいことというかやらせたいことは、噂の『わんこそば』である!!
「しかしまぁ、わんこそばねぇ。」
「じゃ、土地のもンはやらねぇしなぁ。良二はやっだこどあんの?」
「ね。ありゃほがさんのやっこどだ。」
「んだ、わぁもねぇものやぁ。」
大人の県人三人がイントネーションの分からないコミュニケーションをしているが、何故か新巻の家でやらせてくれるとなったのだ。しかも材料費半分は松理持ち(因みに真見塚家の御中元の乾蕎麦が残り半分の材料費を賄っており・残り半分の材料費はわんこそば特有の箸休め&味変的様々)。お陰で何でかここには鈴徳良二と新巻夫妻・志賀松理と、何故か鳥飼信哉と槙山忠志がいる。
「何でこの人数であの蕎麦の量なんだ……?信哉。」
「俺に聞くな。」
偶々真見塚家に合気道の鍛練に来ていたらしく、真見塚家から軽い筈の乾麺移送班に使われたらしい。因みに大人が多いと思ったが、何故かそのまま信哉と忠志は厨房の良二と新巻の夫に手伝いに命じられている有り様だ。というのも、わんこそばというものは定義があるそうで
「わんこ(お椀)」で食べる
「給仕」がつく
「温かいそば」である
という定義がある。因みに発祥は諸説あるようだが、岩手県の花巻市・盛岡市にあるわんこそば店では、わんこそば本来の「おもてなしの心」を重視し、客の食べるペースに合わせてゆっくりと最後までおいしく食べられるように工夫している店と、観光客向けのパフォーマンスを重視し、お椀を客の前に重ねたり、給仕がそばを入れる際に掛け声を発したりと工夫する店のどちらかであることが多い。
料金は一杯いくらではなく、基本的には食べ放題の定額制である場合が多いのだが、店によっては最初から何杯かがセットになったもの・杯数制限のある場合もある。一部の店舗では店に入ると大部屋に案内され、そこで他の客が集まるまでしばらく待たされることもあるのが、これは昔ながらの大勢で食べるスタイルを重視しているタイプの店舗である。
薬味なども用意されており、ネギや海苔、鰹節などの他にも、店によってとろろやイカの塩辛や天ぷら・刺身(鮪やイクラの場合が多いようだが)多彩である。これは蕎麦だけでは飽きてしまうため、沢山食べられるように味や食感に変化をつけるためで、食べなくてもいいものではある。
さて話は戻るが何故こんなに人数が必要かと言えば、わんこそばは茹で方と給仕が必要で、その間を繋ぐのに信哉と忠志は巻き込まれているのだ。それにしても飲食店とは言え凄い数の食器があるなぁと感心するのは、既に準備されたお椀がお盆にのってスタンバイされているのが見えるわけで。
最初に言ったがわんこそばは給仕がつくことからも分かるように、お客様をもてなすための料理で基本的には余り土地の人間はしない。もう一つ理由もあるが、大概土地の人間は他県の客を連れていき客にやらせて自分は単品で普通の蕎麦を食っている。
「じゃ、最初は女の子チームね?」
女の子で参加するのは早紀と麻希子、香苗とむつきで、男子の方が少し人数が多いので衛がこちらで参加だ。給仕は新巻母娘で、瑠璃と透は撮影班だからと笑っている。
「お蕎麦のお汁は飲まなくていいからね、溜まったら前の桶に開けちゃっていいよー。」
「お蕎麦は一本も残したら駄目だからねー?お腹一杯になったら、お椀の蓋を閉じてねー。」
そうして恐怖のわんこそば大会が開始されたのだった。
現地の人間はわんこそばがどんなものか知っているので、基本的にはやらない。杯数制限があったりわりこ蕎麦といわれる既に杯数が決まっているものは割合食べるが、わんこそばは三大麺と呼んでも大概盛岡冷麺かじゃじゃ麺を食べることの方が多い。何しろ、わんこそばは小分けで一口分量ではあるが、大概十杯前後でかけ蕎麦一杯分。大食いしたくて行く場合は止めないが、何が恐ろしいかというと最後は自分で椀に蓋をするということなのだ。
お腹一杯ですという言葉じゃ給仕さんは止まらない、綺麗に椀を空けて蓋をする迄がルール。
「ひぃ!なんでいれるのーっ?!!かえちゃーん!!」
「蓋がされてませーん!」
「はい、じゃんじゃーん!」
新巻母娘は沿岸部の血筋だが、勿論ルールはルールなので容赦しない。そしてお国柄・客には腹が膨れるまで食わせて帰すが、その土地の人間の気質らしく、まだ空けてない椀を狙いすまして次の蕎麦を構えている母娘の目がハンターのようだ。この給仕をする人間が、わんこそばに詳しいと尚更質が悪い。
「よ、よし!蓋したっ!」
「あらぁ!香苗ちゃん!お蕎麦一本のこってたっけよ?」
「え?嘘?」
新巻母の言葉につられ思わず蓋をまた開いてしまった香苗のお椀に、容赦のないおかわりが注ぎ込まれ思わず香苗が突っ伏している。ベタだがルールなので椀に蕎麦が入ったら、椀を空けないと終われない。しかも給仕は意地になってこれを続けるのが、恐怖のわんこそばなのだ。
因みに本来おもてなし料理なので、大食い・早食いの料理ではない、けして。
何度もいうがおもてなし料理なのだ。ただ、もてなす=『たんまり食わせる』の土地なだけなので、こんな風に給仕が賢いと終われない。しかも客が蓋をしたい頃には満腹で大概ペース自体が落ちているので、虎視眈々と椀に狙いを定めることが出来るのだ。
そう蓋をしないと終われないと知っているし蕎麦を残すのも許されないから、ルールを破らない県民性なので地元の人間は早々やらない。やるくらいなら普通に蕎麦を食うのである。
「うう、お蕎麦……が、喉まで詰まってる…………。」
「ファイト~、麻希ちゃーん!」
「ず、狡いよ、早紀ちゃーん!!」
と、いうのも早紀は早々に三十三杯で、かえが麻希子に丁度給仕している隙をついて戦線離脱したからである。蓋をしたい麻希子が給仕と駆け引きを始めて、既に五杯目が椀に捩じ込まれていた。
「はい、どんどーん!」
「無理~っ!!!」
「衛凄いな!?まだ食ってるし。」
何度もいうが十杯でかけ蕎麦一杯である。目下苦悩している麻希子の横でモックモクと衛は杯を重ねていて、そろそろ五十に至りかけていて…………かけ蕎麦五杯を小学二年生が食いきるのに、呆れ顔なのは蕎麦運びをしている信哉と忠志だ。
「まもちゃん、美味しい?」
「うん!かえちゃーん!!ちょうだーい!」
そんなわけで黙々と食べる衛が、再度麻希子に給仕するかえの隙をついて椀に蓋をしたのは五十五杯目。半べそで香苗と麻希子が二人揃って四十二杯でダウンして、むつきは地味に蓋が出来ない地獄から抜けられずなんと六十杯迄食べ続けたのだった。
後半に続く(笑)
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
年下の彼氏には同い年の女性の方がお似合いなので、別れ話をしようと思います!
ほったげな
恋愛
私には年下の彼氏がいる。その彼氏が同い年くらいの女性と街を歩いていた。同じくらいの年の女性の方が彼には似合う。だから、私は彼に別れ話をしようと思う。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる