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Bonus track
おまけ2.初体験!
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やってみたい事がある一言で、何でか夏の夕暮れに再び集合したのは真見塚家の広大な日本庭園。
参加は真見塚孝、香坂智美、近藤雄二に木村勇、若瀬透。女子は宮井麻希子、志賀早紀、須藤香苗、八幡瑠璃だ。そして智美に絶対に連れてこいと言われた宇野衛。因みに五十嵐海翔はモデルの仕事でどうしても来れなくて、鈴木貴寛と久保絢はどうやらデートらしい。小林夏帆は父子帰省中、松尾むつきも姉さつきと旅行中。LINEで連絡したら、むつきと海翔は行きたい!!参加したい!と必死になっていたとかなんとか。広大な日本庭園で何が起こるのかと思いきや、何でか真見塚家の縁側から半割りにした竹がメートルでセットアップされてまして…………これってまさかとは思うけどと麻希子が見上げると、手を繋いでここまでやって来ていた横の衛が大興奮でピョンピョン飛び上がる。
「えーっとえーっと!!な、な、流し素麺!!?」
「当たり~!」
衛がピョンピョンしながらかけよっていったんだけど、キチンと真見塚のおじさん達にはこんにちわと礼儀正しく頭を下げてご挨拶をしている。うん大人だなぁ、ほんといいこに育ってる、と皆で暖かく見守ってしまう。
「衛、また大きくなったんじゃね?成長期半端ねぇ!」
「ユージ君、僕ね、後少しでまーちゃんと同じなんだよー!」
そんなことをいいながら近藤雄二に抱き上げられた衛は、すっかり仲良くなったみたいで流し素麺ってユージ君発案?なんて大喜びだ。北陸旅行で一気に皆とも仲良くなったんだけど、あれからそんなに経ってない。でも確かにおっきくなってるといわれるとそんな気がしなくもないし、本当に地味に日々成長していて本気で後少しで並ばれてしまう。うう、高三なのに小学二年生に身長で負けるなんて、そんな馬鹿なと麻希子は一人苦悩しているが、苦悩したからといって伸びるわけでもない。
それにしても一階の縁側から竹が繋がってるけど、竹の長さは全部で十メートルもあるし個人宅で流し素麺なんて簡単にできるもの?と唖然としていると、縁側から端から早紀が呑気に竹を眺めている。
「すごいねぇ、早紀ちゃん。」
「今年は規模縮小なのよ。」
長閑なその言葉にええ?!と驚くけど、早紀曰く毎年試行錯誤しているというのだ。
「去年はお二階からだったんだけど、速度がねぇ。」
「速度?」
「傾斜がつきすぎちゃって、」
実は真見塚家の流し素麺は随分昔から定番行事。というのも、三人親子だけでは年単位でも消費しきれない程の素麺類がお中元として届くのだという。その量と来たら、桐箱が山のようにと言えば想像できるだろうか、分けても減らないし備蓄しておいても黴が生えたりするし。周辺の子供会にも提供して、自分達でも毎日食べても消費しきれないが贈り物を突き返すわけにもいかないから、どうせ食べずに貯めるくらいなら毎年恒例で一挙に消費してしまえということだそうだ。
そういうわけで夏場恒例の流し素麺大会が開催されていて既に第一段は終了して(第一段は道場の門下生達でやるそうで盛況のうちに終わったそうだ。)、ここからは今年は孝が同級生の友人を呼んでやりたいといったのだと言う。勿論真見塚のおじさん達は拒否なんてするわけもなく、両手をあげての大歓迎で流し素麺大会第二部が始まったのである。
因みに去年の流し素麺は二階から竹を繋いだら傾斜がありすぎて、とんでもなく流れが早く誰も途中で素麺をキャッチしきれない恐るべき高速素麺だったそうだ。素麺の勢いがよすぎて、最後の受け皿の笊から飛ぶ始末。それを何故かキャッチして食べるのが、何故か去年の流し素麺大会の流行りだったらしい。それはそれでやったら楽しそうだけど、流石に麻希子達には空中キャッチは無理だし素麺は普通に食べたいと思う。それより何より
「流し素麺が恒例行事の家ってのが、既に珍しいと思うけど。」
「そう?いつものことだから。」
「香苗ちゃん、そういいながらヤル気満々。」
既に箸と出汁入りの器を持ってヤル気満々の香苗に、早紀はそんな様子だし瑠璃が腹を抱えて笑い出している。そうだよねぇ、流し素麺が個人宅での定番行事ってすごくない?と思う。勿論玩具の流し素麺大会の機械はあるけど、完全に竹で流すんだもん中々ない。ただ振る舞うんじゃ飽きるから、流しちゃえ!ってことでしょ?そしてそれができちゃう当たりが凄いよ。因みに実家の大きな海翔も流石に流し素麺は経験がないらしくて、やりたかったらしい。
「よーし、第一陣ながすぞー。」
香苗だけじゃなくて衛も既にヤル気満々で竹にへばりついてるし。恒例にしている早紀と孝は兎も角、私も食べたいと麻希子も竹の横に並んだが、ちょっと待って今なんか第一陣とか何とか言わなかった?もしかしてここから恐ろしいことが?なんて考えた麻希子は大層甘かった。第一陣が下流に全く流れてこないのだ。
「流れてこないっ!」
「もー!智美!!とりすぎ!」
「わんこそばかお前と衛!!」
一番の上流に衛と智美が陣取る配置は完全に愚作だった。智美と違って口の容量に差があるから、素麺を頬張ってリスみたいになってる衛は可愛いから和む。けど方や智美の方はまるでケロッとして顔色も変えずに、苦もなくペロペロと素麺を飲み込んでいく。ちゃんと噛んでる?と聞いたら麺類は啜るものと笑うし、しかも流している方の真見塚のおじさんが面白がって素麺を流す速度を早めても当然のように智美はもまるで変化がないのだ。
「とーもーみーっ!!」
「容赦ないな、智美っ!」
これってどこまでこの勢いで智美が食べ続けられるのか気にならないわけではないが、素麺は大概五十グラム一把で二把一人前だ。だが、どうみても智美だけで五人分は既に胃に納めている気がする。
「だーっ!拉致があかん!!智美の限界待ってたら食えん!」
「これ、一回本気でわんこそばやりにいこう!」
「えー、近くであるかなぁ?」
「こら!智美下流に動け!!」
「衛は?」
「衛は口の容量がお前より小さい!」
「差別だ!」
それにしても流し素麺の量がとんでもない上に、時々プチトマトとか想定外のものが流れてくるのは何故?!流し素麺だけじゃなくて時々素麺だと思ったら、千切り大根とか。梅干しとか薬味系も流れてくるのに、あっ!プチトマト!ってとって口に入れた衛が梅干しだったのにうにゅうーってなっている。流し素麺な筈なのに、途中色つき素麺になったり、お蕎麦になったり、流石にところてんとか蒟蒻麺は驚いた。流し素麺て侮れないと思いながら楽しんでいたんだけど…………何でか背後で透と瑠璃が顔を付き合わせてこそこそ話してて、あの二人何か企んでそうだなぁと麻希子達は呑気に素麺を啜りながら眺めていたのだ。
結局その日消費された素麺の量は参加十人で、何故か五十人分にも達していたのはここだけの話だ。
参加は真見塚孝、香坂智美、近藤雄二に木村勇、若瀬透。女子は宮井麻希子、志賀早紀、須藤香苗、八幡瑠璃だ。そして智美に絶対に連れてこいと言われた宇野衛。因みに五十嵐海翔はモデルの仕事でどうしても来れなくて、鈴木貴寛と久保絢はどうやらデートらしい。小林夏帆は父子帰省中、松尾むつきも姉さつきと旅行中。LINEで連絡したら、むつきと海翔は行きたい!!参加したい!と必死になっていたとかなんとか。広大な日本庭園で何が起こるのかと思いきや、何でか真見塚家の縁側から半割りにした竹がメートルでセットアップされてまして…………これってまさかとは思うけどと麻希子が見上げると、手を繋いでここまでやって来ていた横の衛が大興奮でピョンピョン飛び上がる。
「えーっとえーっと!!な、な、流し素麺!!?」
「当たり~!」
衛がピョンピョンしながらかけよっていったんだけど、キチンと真見塚のおじさん達にはこんにちわと礼儀正しく頭を下げてご挨拶をしている。うん大人だなぁ、ほんといいこに育ってる、と皆で暖かく見守ってしまう。
「衛、また大きくなったんじゃね?成長期半端ねぇ!」
「ユージ君、僕ね、後少しでまーちゃんと同じなんだよー!」
そんなことをいいながら近藤雄二に抱き上げられた衛は、すっかり仲良くなったみたいで流し素麺ってユージ君発案?なんて大喜びだ。北陸旅行で一気に皆とも仲良くなったんだけど、あれからそんなに経ってない。でも確かにおっきくなってるといわれるとそんな気がしなくもないし、本当に地味に日々成長していて本気で後少しで並ばれてしまう。うう、高三なのに小学二年生に身長で負けるなんて、そんな馬鹿なと麻希子は一人苦悩しているが、苦悩したからといって伸びるわけでもない。
それにしても一階の縁側から竹が繋がってるけど、竹の長さは全部で十メートルもあるし個人宅で流し素麺なんて簡単にできるもの?と唖然としていると、縁側から端から早紀が呑気に竹を眺めている。
「すごいねぇ、早紀ちゃん。」
「今年は規模縮小なのよ。」
長閑なその言葉にええ?!と驚くけど、早紀曰く毎年試行錯誤しているというのだ。
「去年はお二階からだったんだけど、速度がねぇ。」
「速度?」
「傾斜がつきすぎちゃって、」
実は真見塚家の流し素麺は随分昔から定番行事。というのも、三人親子だけでは年単位でも消費しきれない程の素麺類がお中元として届くのだという。その量と来たら、桐箱が山のようにと言えば想像できるだろうか、分けても減らないし備蓄しておいても黴が生えたりするし。周辺の子供会にも提供して、自分達でも毎日食べても消費しきれないが贈り物を突き返すわけにもいかないから、どうせ食べずに貯めるくらいなら毎年恒例で一挙に消費してしまえということだそうだ。
そういうわけで夏場恒例の流し素麺大会が開催されていて既に第一段は終了して(第一段は道場の門下生達でやるそうで盛況のうちに終わったそうだ。)、ここからは今年は孝が同級生の友人を呼んでやりたいといったのだと言う。勿論真見塚のおじさん達は拒否なんてするわけもなく、両手をあげての大歓迎で流し素麺大会第二部が始まったのである。
因みに去年の流し素麺は二階から竹を繋いだら傾斜がありすぎて、とんでもなく流れが早く誰も途中で素麺をキャッチしきれない恐るべき高速素麺だったそうだ。素麺の勢いがよすぎて、最後の受け皿の笊から飛ぶ始末。それを何故かキャッチして食べるのが、何故か去年の流し素麺大会の流行りだったらしい。それはそれでやったら楽しそうだけど、流石に麻希子達には空中キャッチは無理だし素麺は普通に食べたいと思う。それより何より
「流し素麺が恒例行事の家ってのが、既に珍しいと思うけど。」
「そう?いつものことだから。」
「香苗ちゃん、そういいながらヤル気満々。」
既に箸と出汁入りの器を持ってヤル気満々の香苗に、早紀はそんな様子だし瑠璃が腹を抱えて笑い出している。そうだよねぇ、流し素麺が個人宅での定番行事ってすごくない?と思う。勿論玩具の流し素麺大会の機械はあるけど、完全に竹で流すんだもん中々ない。ただ振る舞うんじゃ飽きるから、流しちゃえ!ってことでしょ?そしてそれができちゃう当たりが凄いよ。因みに実家の大きな海翔も流石に流し素麺は経験がないらしくて、やりたかったらしい。
「よーし、第一陣ながすぞー。」
香苗だけじゃなくて衛も既にヤル気満々で竹にへばりついてるし。恒例にしている早紀と孝は兎も角、私も食べたいと麻希子も竹の横に並んだが、ちょっと待って今なんか第一陣とか何とか言わなかった?もしかしてここから恐ろしいことが?なんて考えた麻希子は大層甘かった。第一陣が下流に全く流れてこないのだ。
「流れてこないっ!」
「もー!智美!!とりすぎ!」
「わんこそばかお前と衛!!」
一番の上流に衛と智美が陣取る配置は完全に愚作だった。智美と違って口の容量に差があるから、素麺を頬張ってリスみたいになってる衛は可愛いから和む。けど方や智美の方はまるでケロッとして顔色も変えずに、苦もなくペロペロと素麺を飲み込んでいく。ちゃんと噛んでる?と聞いたら麺類は啜るものと笑うし、しかも流している方の真見塚のおじさんが面白がって素麺を流す速度を早めても当然のように智美はもまるで変化がないのだ。
「とーもーみーっ!!」
「容赦ないな、智美っ!」
これってどこまでこの勢いで智美が食べ続けられるのか気にならないわけではないが、素麺は大概五十グラム一把で二把一人前だ。だが、どうみても智美だけで五人分は既に胃に納めている気がする。
「だーっ!拉致があかん!!智美の限界待ってたら食えん!」
「これ、一回本気でわんこそばやりにいこう!」
「えー、近くであるかなぁ?」
「こら!智美下流に動け!!」
「衛は?」
「衛は口の容量がお前より小さい!」
「差別だ!」
それにしても流し素麺の量がとんでもない上に、時々プチトマトとか想定外のものが流れてくるのは何故?!流し素麺だけじゃなくて時々素麺だと思ったら、千切り大根とか。梅干しとか薬味系も流れてくるのに、あっ!プチトマト!ってとって口に入れた衛が梅干しだったのにうにゅうーってなっている。流し素麺な筈なのに、途中色つき素麺になったり、お蕎麦になったり、流石にところてんとか蒟蒻麺は驚いた。流し素麺て侮れないと思いながら楽しんでいたんだけど…………何でか背後で透と瑠璃が顔を付き合わせてこそこそ話してて、あの二人何か企んでそうだなぁと麻希子達は呑気に素麺を啜りながら眺めていたのだ。
結局その日消費された素麺の量は参加十人で、何故か五十人分にも達していたのはここだけの話だ。
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