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二度目の7月
閑話98.若瀬透
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唐突に誰かが連絡を断つ。そんなことはこの世の中じゃ別に珍しいことではないのかもしれない。そうは思うけど珍しくなければ納得できると言うわけではないと、透はキーボードを叩きながら考える。
もし、去年智美から話しかけられなかったら。
切っ掛けを作ったのは智美で、生まれて初めて親友と呼んでもいい友人。片寄った知識で隔離されて育ったという、恐らくなにか特殊な事情で暮らしている天才。今なら素直に認められるが香坂智美は一種の天才で、何でもかんでも一目で吸収して身に付けてしまう。隔離されて育ったからそうなのか、それとも隔離されなければもっととんでもない天才に育ったかは透にも判断できない。でも智美が友達になってくれなかったら、今の自分はいないと思う。
※※※
「……透は妹がいるのか。」
街中で母と出くわした後に智美はそう珍しく小さな声で呟いたから、姉もいるというと羨ましいと彼は言う。母の過保護のせいで姉妹達とは隔絶されているようなもので、仲も良くないし何もいいことはないと透が言うと智美は少し不思議そうに透を眺めた。
「一緒に住んでて透だけ過保護にするのか?男女差?」
「男女……差…………かなぁ?」
「そうなのか……。ってことは、父親は娘達の方を過保護にするのか?」
そんなことはない。父親はクリニックが忙しくて朝から晩まで仕事で休日だって呼び出されるから、家の事は殆どが母親だけが管理しているんだと話すと智美は驚いたようだ。そうして感心したように透が努力家なのは、母親似なんだなと言う。そんなこと考えたこともなければ言われたこともないし、何しろ自分は兎も角母親が努力してるなんて考えたこともない。
「そうかな……?」
「そうだろ?二人でやることを一人でやってるんだろ?」
そうとも言えるのかと考えると、今までと違う見方もあるんだと気がつく。家の事を母一人で必死になってやって来て、子供を三人育てて、夫の跡継ぎまで何とかしようと母は努力しているのだ。
「……そういう考え方もあるか……。」
「別な考え方は?」
そう当然みたいに問いかけてくる智美に、透は何だか可笑しくなって笑いだしてしまう。今までの同級生は過保護な教育ママとしか言わなかったのに、自分の親友って奴は本当に不思議な見方をする上に新しいことに気づかせてくれる。
※※※
《どう思う?》
その問いかけにモニターの中の友人は当然のように文字で答える。音声にもできなくはないのだけれど、透にはこっちの方が馴染みが強いから別段気にもしない。智美を別にすれば、仁とこのモニターの中の友人が透にとっての親友。考えてみるとどいつもちょっとマトモな人間とは違うかも、自分ってもしかしてこういう一風変わった奴じゃないと気が合わないのかななんて考えてしまう。
《普通じゃないよね、たくさんでしょ?あと一家族、音信不通なんてさ。警察には?誰か通報したの?》
警察官の父親を持つ志賀早紀に聞いたら、少なくとも土志田と真見塚家、それと無敵師範なんて呼ばれてる鳥飼という人に関しては何も届け出は出ていないと言う。警察にも守秘義務があるから身近なところしか教えてもらえないというが、それだけでも十分他の何人かも同じなんじゃないかとは想像できる。
《瑠璃の母さんの方も掴めないって。》
《万智もお手上げ?》
透と八幡瑠璃は幼稚園からの知り合いだ。塾の上の階のマンションに住んでいる瑠璃は、母親が経営する探偵社から土志田の交通事故の詳細を調べているが、それに関しては今のところ何も新しいことが見つからない。
『おかしすぎ。だってさぁ?保険屋も警察も全く動きなしで、大体にしてトッシーが車動かしてないわけ。それで従弟と巻き込まれるってタクシー?とか思ったけど、それもなし。』
何でそこまで調べられるんだと透も思うけど、何しろあっちは本職だから方法があるのかもしれない。ただ八幡万智の調べられる範疇は、実際には関東圏だけに絞られる。でも一番の情報は土志田は車を動かしてないし、車にのって出掛けた事もないってことなんだ。しかも音信不通になる数時間前……音信不通になった時間は宮井姫が何故か宮井の王子様が電話をかけたのを知っていて、最後の所在確認は須藤女王が知っていた。ここら辺に関しては余り追求するなよと瑠璃の目が言っているから透もやめておいた。……二十一時頃まで土志田もその従弟も槙山という青年も普通に過ごしていて、その後は車を出したわけでもないが、夜半には連絡がとれなくなっている。
つまり土志田の事故はたったの三時間なのだ。
《三時間ねぇ。新幹線なら新大阪、新潟、仙台位なら行けるけど?》
《鉄道事故なら大事になってるだろ?》
《Good point.今のところ該当事故の話はないなぁ。二十代男性の二人から五人程度だろ?残念ながらそう言う案件はないねぇ。》
ネットワーク全体に条件検索をかけている友人の言葉に、透は暫し考える。智美と土志田の音信不通はどこまで関係するだろうか。仁は何処にいったのだろうか?それに孝はなんで翌日の夕方迄に姿を消すことになったのか。でも一番は親友のことだ。
《連絡してたのは、こっちも金曜日までなんだ。》
《おやおや、テスト前だから?》
《皮肉はいいよ、調べられる?》
《당연하지》
せめて分かる言葉で返答して欲しいと思うが、恐らくは韓国語で勿論と言っているに違いない。この友人はネットワーク全体を見ているから多言語を理解していて、ある意味では透にとっての語学の辞書だ。この友人の事?そこは一言では説明が出来ないが、大事な友人とだけ話しておく。
《少なくともトールの探してるトモダチの通信端末は、全部切れてる。》
《最終地点は?》
《un instant.》
《せめて英語にしてよ。》
《好的》
言ってる傍から中国語だ。絶対わざとなんだけど指摘しても相手は悪戯の範疇でやってるから、透の反応の方を楽しむに違いない。少なくとも相手は作業も平行してやってくれてるから、透は我慢しておく事にする。
《マップで出すね。》
パッとモニターに新しいウインドウが開いて、近郊の地図が表示されて二つの円が二色で表示される。どれも大きさは同じでその範疇は数十メートルだ。
《緑がJIN-SAWAE、青がTAKASHI-MAMIDUKA。》
《……智美のは?》
《その子の端末、完全に履歴が追えない。プロ?》
《智美だから》
思わずそう答えてしまう。仁と真見塚は自宅と思われる範疇から最後の発信をしていて、仁は日曜日になった辺りまで暫し通信をしていた様子で移動もしている。真見塚の方は自宅を中心の円だから恐らく自宅にいて、最終は日曜の昼だ。ところが智美の使用履歴は綺麗サッパリで、金曜の夜に透と月曜に持っていく本の話をしたのすら残っていない。それを消したのが智美なのか、他の人間なのかは全く想像も出来ないでいる。
《友達の住所調べたいんだ、……悪いけど潜り込めるかな?》
《学校の?》
《うん。教師は口が固くて。》
《流石、聖職。》
皮肉なのか楽しんでいるのか、恐らくそのどちらもだろうけど友人は迷いもなく告げる。
《簡単。少し待ってて?》
モニターの中の友達。この表現は本当なら適当ではないけど、秘密の相手で実際には違法だとも分かっている。でも透には一つも納得は出来ないし、こんな終わり方なんて許さないと思う。そうして数分もしないで友人は住所録を取り出してファイルとしてプリンターに送りつけてくる。
《その子、変な住所。》
《変?》
そう返しながら香坂智美の住所を眺める。確かに自分達の住所とは違う、何が違うって当然のようにある筈の地番なんかの番号が存在しない。こんなんで済むなんておかしくないか?皇居ですら千代田区千代田一番なのに枝番も番地もないというとは、明治以前から登記されてない国有地とか軍用地位なものだ。国鉄時代の土地ってこともあり得るが、ここら辺周辺でそんな場所はない。
《家の周辺で国有地ってあるかな?》
《あるよ、西側の一角だね。少し距離はあるかな。》
西側。智美は学校まで車で通っているけど、帰りは駅前まで歩いている。電車には乗らないし、駅前から車で帰っている様子だからそれほど遠いとは考えられないし、西側のその区画だとすれば住所も強ち間違いではない。でも、そこに住居なんてあるだろうか?
《航空図とかある?西側の区画。》
《禁止区域だなぁ。結構広範囲だね、山林まですっぽり。軍用地の時期もあったみたいだしね、その流れかな?》
《通信ラインは?》
《んー、ちょっと難しいかも。結構網が張ってあるし、トラップでギラギラしてるね。》
《ロキでも無理なの?》
《これは直ぐには厳しいなぁ……。》
ロキにも無理な程厳重な警備のある通信ライン。つまりは個人なんてものじゃなく、もっと大きな何かがガッチリと守りを固めている区域。そんなところに住んでいる可能性、それと一般人を何人も行方不明にして音信不通にしている。それじゃまるで瑠璃の大好きな犯罪小説みたいだ。
兎も角住所は入手したから皆とこの先を検討しようとしていたのに、翌日その話をする前に透は頭を抱えてしまった。
ロキの奴……
言い忘れていたけどロキは極度の悪戯好きだ。しかも結構悪いことを平気でするので時々ぎょっとさせられるんだけど、学校のハードディスクに忍び込んでと頼んだのは自分だって知っている。知っているけどおまけを残せとは言わなかったのに、ロキは内川のパソコンにプレゼントをしかけてしまったらしい。
「ウッチーがエロサイト覗いて感染したらしいよ~。最悪ぅ。」
瑠璃が早速情報を仕入れてきているが、ネットに繋げているなら確実にウィルス対策位してる筈。校内のラインは平行で繋がっている筈で、あっという間に他の教師のパソコンにもウィルスが広がったらしい。そして復旧してみたら、テスト問題が全てデリートか文字化けしてしまったのだというのだ。
「朝早くからネットに繋いで仕事中に何やってたって、貧乏神に説教されてたよ~。」
恐らくロキがネットを見た瞬間に起爆する何かを仕掛けていたのだとは思うけど、貧乏神の話ももっともかと思う。それにしても来週頭の期末テストはどうなるのか?週末は感染の経路やら始末で手一杯になるだろうから、テストは数日遅れるかもしれないなぁ……。そのうちに智美達の事件も決着してくれればいいんだけどと、透が密かに考えてしまったのはここだけの話だ。
もし、去年智美から話しかけられなかったら。
切っ掛けを作ったのは智美で、生まれて初めて親友と呼んでもいい友人。片寄った知識で隔離されて育ったという、恐らくなにか特殊な事情で暮らしている天才。今なら素直に認められるが香坂智美は一種の天才で、何でもかんでも一目で吸収して身に付けてしまう。隔離されて育ったからそうなのか、それとも隔離されなければもっととんでもない天才に育ったかは透にも判断できない。でも智美が友達になってくれなかったら、今の自分はいないと思う。
※※※
「……透は妹がいるのか。」
街中で母と出くわした後に智美はそう珍しく小さな声で呟いたから、姉もいるというと羨ましいと彼は言う。母の過保護のせいで姉妹達とは隔絶されているようなもので、仲も良くないし何もいいことはないと透が言うと智美は少し不思議そうに透を眺めた。
「一緒に住んでて透だけ過保護にするのか?男女差?」
「男女……差…………かなぁ?」
「そうなのか……。ってことは、父親は娘達の方を過保護にするのか?」
そんなことはない。父親はクリニックが忙しくて朝から晩まで仕事で休日だって呼び出されるから、家の事は殆どが母親だけが管理しているんだと話すと智美は驚いたようだ。そうして感心したように透が努力家なのは、母親似なんだなと言う。そんなこと考えたこともなければ言われたこともないし、何しろ自分は兎も角母親が努力してるなんて考えたこともない。
「そうかな……?」
「そうだろ?二人でやることを一人でやってるんだろ?」
そうとも言えるのかと考えると、今までと違う見方もあるんだと気がつく。家の事を母一人で必死になってやって来て、子供を三人育てて、夫の跡継ぎまで何とかしようと母は努力しているのだ。
「……そういう考え方もあるか……。」
「別な考え方は?」
そう当然みたいに問いかけてくる智美に、透は何だか可笑しくなって笑いだしてしまう。今までの同級生は過保護な教育ママとしか言わなかったのに、自分の親友って奴は本当に不思議な見方をする上に新しいことに気づかせてくれる。
※※※
《どう思う?》
その問いかけにモニターの中の友人は当然のように文字で答える。音声にもできなくはないのだけれど、透にはこっちの方が馴染みが強いから別段気にもしない。智美を別にすれば、仁とこのモニターの中の友人が透にとっての親友。考えてみるとどいつもちょっとマトモな人間とは違うかも、自分ってもしかしてこういう一風変わった奴じゃないと気が合わないのかななんて考えてしまう。
《普通じゃないよね、たくさんでしょ?あと一家族、音信不通なんてさ。警察には?誰か通報したの?》
警察官の父親を持つ志賀早紀に聞いたら、少なくとも土志田と真見塚家、それと無敵師範なんて呼ばれてる鳥飼という人に関しては何も届け出は出ていないと言う。警察にも守秘義務があるから身近なところしか教えてもらえないというが、それだけでも十分他の何人かも同じなんじゃないかとは想像できる。
《瑠璃の母さんの方も掴めないって。》
《万智もお手上げ?》
透と八幡瑠璃は幼稚園からの知り合いだ。塾の上の階のマンションに住んでいる瑠璃は、母親が経営する探偵社から土志田の交通事故の詳細を調べているが、それに関しては今のところ何も新しいことが見つからない。
『おかしすぎ。だってさぁ?保険屋も警察も全く動きなしで、大体にしてトッシーが車動かしてないわけ。それで従弟と巻き込まれるってタクシー?とか思ったけど、それもなし。』
何でそこまで調べられるんだと透も思うけど、何しろあっちは本職だから方法があるのかもしれない。ただ八幡万智の調べられる範疇は、実際には関東圏だけに絞られる。でも一番の情報は土志田は車を動かしてないし、車にのって出掛けた事もないってことなんだ。しかも音信不通になる数時間前……音信不通になった時間は宮井姫が何故か宮井の王子様が電話をかけたのを知っていて、最後の所在確認は須藤女王が知っていた。ここら辺に関しては余り追求するなよと瑠璃の目が言っているから透もやめておいた。……二十一時頃まで土志田もその従弟も槙山という青年も普通に過ごしていて、その後は車を出したわけでもないが、夜半には連絡がとれなくなっている。
つまり土志田の事故はたったの三時間なのだ。
《三時間ねぇ。新幹線なら新大阪、新潟、仙台位なら行けるけど?》
《鉄道事故なら大事になってるだろ?》
《Good point.今のところ該当事故の話はないなぁ。二十代男性の二人から五人程度だろ?残念ながらそう言う案件はないねぇ。》
ネットワーク全体に条件検索をかけている友人の言葉に、透は暫し考える。智美と土志田の音信不通はどこまで関係するだろうか。仁は何処にいったのだろうか?それに孝はなんで翌日の夕方迄に姿を消すことになったのか。でも一番は親友のことだ。
《連絡してたのは、こっちも金曜日までなんだ。》
《おやおや、テスト前だから?》
《皮肉はいいよ、調べられる?》
《당연하지》
せめて分かる言葉で返答して欲しいと思うが、恐らくは韓国語で勿論と言っているに違いない。この友人はネットワーク全体を見ているから多言語を理解していて、ある意味では透にとっての語学の辞書だ。この友人の事?そこは一言では説明が出来ないが、大事な友人とだけ話しておく。
《少なくともトールの探してるトモダチの通信端末は、全部切れてる。》
《最終地点は?》
《un instant.》
《せめて英語にしてよ。》
《好的》
言ってる傍から中国語だ。絶対わざとなんだけど指摘しても相手は悪戯の範疇でやってるから、透の反応の方を楽しむに違いない。少なくとも相手は作業も平行してやってくれてるから、透は我慢しておく事にする。
《マップで出すね。》
パッとモニターに新しいウインドウが開いて、近郊の地図が表示されて二つの円が二色で表示される。どれも大きさは同じでその範疇は数十メートルだ。
《緑がJIN-SAWAE、青がTAKASHI-MAMIDUKA。》
《……智美のは?》
《その子の端末、完全に履歴が追えない。プロ?》
《智美だから》
思わずそう答えてしまう。仁と真見塚は自宅と思われる範疇から最後の発信をしていて、仁は日曜日になった辺りまで暫し通信をしていた様子で移動もしている。真見塚の方は自宅を中心の円だから恐らく自宅にいて、最終は日曜の昼だ。ところが智美の使用履歴は綺麗サッパリで、金曜の夜に透と月曜に持っていく本の話をしたのすら残っていない。それを消したのが智美なのか、他の人間なのかは全く想像も出来ないでいる。
《友達の住所調べたいんだ、……悪いけど潜り込めるかな?》
《学校の?》
《うん。教師は口が固くて。》
《流石、聖職。》
皮肉なのか楽しんでいるのか、恐らくそのどちらもだろうけど友人は迷いもなく告げる。
《簡単。少し待ってて?》
モニターの中の友達。この表現は本当なら適当ではないけど、秘密の相手で実際には違法だとも分かっている。でも透には一つも納得は出来ないし、こんな終わり方なんて許さないと思う。そうして数分もしないで友人は住所録を取り出してファイルとしてプリンターに送りつけてくる。
《その子、変な住所。》
《変?》
そう返しながら香坂智美の住所を眺める。確かに自分達の住所とは違う、何が違うって当然のようにある筈の地番なんかの番号が存在しない。こんなんで済むなんておかしくないか?皇居ですら千代田区千代田一番なのに枝番も番地もないというとは、明治以前から登記されてない国有地とか軍用地位なものだ。国鉄時代の土地ってこともあり得るが、ここら辺周辺でそんな場所はない。
《家の周辺で国有地ってあるかな?》
《あるよ、西側の一角だね。少し距離はあるかな。》
西側。智美は学校まで車で通っているけど、帰りは駅前まで歩いている。電車には乗らないし、駅前から車で帰っている様子だからそれほど遠いとは考えられないし、西側のその区画だとすれば住所も強ち間違いではない。でも、そこに住居なんてあるだろうか?
《航空図とかある?西側の区画。》
《禁止区域だなぁ。結構広範囲だね、山林まですっぽり。軍用地の時期もあったみたいだしね、その流れかな?》
《通信ラインは?》
《んー、ちょっと難しいかも。結構網が張ってあるし、トラップでギラギラしてるね。》
《ロキでも無理なの?》
《これは直ぐには厳しいなぁ……。》
ロキにも無理な程厳重な警備のある通信ライン。つまりは個人なんてものじゃなく、もっと大きな何かがガッチリと守りを固めている区域。そんなところに住んでいる可能性、それと一般人を何人も行方不明にして音信不通にしている。それじゃまるで瑠璃の大好きな犯罪小説みたいだ。
兎も角住所は入手したから皆とこの先を検討しようとしていたのに、翌日その話をする前に透は頭を抱えてしまった。
ロキの奴……
言い忘れていたけどロキは極度の悪戯好きだ。しかも結構悪いことを平気でするので時々ぎょっとさせられるんだけど、学校のハードディスクに忍び込んでと頼んだのは自分だって知っている。知っているけどおまけを残せとは言わなかったのに、ロキは内川のパソコンにプレゼントをしかけてしまったらしい。
「ウッチーがエロサイト覗いて感染したらしいよ~。最悪ぅ。」
瑠璃が早速情報を仕入れてきているが、ネットに繋げているなら確実にウィルス対策位してる筈。校内のラインは平行で繋がっている筈で、あっという間に他の教師のパソコンにもウィルスが広がったらしい。そして復旧してみたら、テスト問題が全てデリートか文字化けしてしまったのだというのだ。
「朝早くからネットに繋いで仕事中に何やってたって、貧乏神に説教されてたよ~。」
恐らくロキがネットを見た瞬間に起爆する何かを仕掛けていたのだとは思うけど、貧乏神の話ももっともかと思う。それにしても来週頭の期末テストはどうなるのか?週末は感染の経路やら始末で手一杯になるだろうから、テストは数日遅れるかもしれないなぁ……。そのうちに智美達の事件も決着してくれればいいんだけどと、透が密かに考えてしまったのはここだけの話だ。
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