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二度目の6月
410.セントポーリア
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6月22日 木曜日
部活動後に今日は智美君と香苗と『茶樹』へ。
気がついたけど週に二回とか三回は来てるんだよね……これって完璧に常連客だよなぁって今更だけど思う。しかもマスターさんにチョコチョコおまけとかして貰ってたり、サービスってして貰ったり…………。販売期限時間が近いからとか試作品だからとかって結構ご馳走になってるんだよね、実は。智美君なんか最近では鈴徳さんと新作の相談とかしてるのは何で?いつの間に?!色合いとかデコレーションは兎も角、ケーキの味まで記憶してるの?!って思ってしまう。あ、勿論ちゃんと他のお客さんの目を考えてしてくれてるよ?やっぱり他のお客さんのいるところで依怙贔屓って思うと、同じお客さんなのにいい気分はしないよね。っていうか、地味にマスターさんって他のお客さんにも同じようにチョコチョコと何かサービスしてる気がしなくもないんだけど……。だって常連さんって、やっぱり同じ顔ぶれなわけで薄々お互いに気がつき始めてて、段々と顔見知りになって会釈しちゃったりしてる訳なんだよね。勿論時間によって客層は違うとは思うけど、私がよく来る時間には大概同じ顔ぶれかも。それに割合私達って、あんまりお客さんがいない時に来てる気がしてるしなぁ。
うーん、それでも経営が成り立ってるってことは、ちゃんと利益があって、その利益ってどこから来てるんだろう……?
一応何時もご馳走では流石に申し訳ないから、少し前には一年生の如月君とも一緒に来て新規顧客を何て思ったんだけど結局鈴徳さんの新作御披露にかち合ってドリンク代金しか払わなくて良いよーって。うーん、経営大丈夫なのかなって思うけど、スタッフはもう新作で試作品出しても飽きちゃってて反応がないから頼むよーって言われるとね!これはいただくしかないでしょ!ね?!
それにお店のお客さんにも何だか仲良く出来る人が増えてるんだよね。外崎さん達でしょ?鳥飼さんもここで出会ってるし、あと松理さんもだし、マスターさんと何時も話している人とも会釈するようになっちゃったし。この間如月君と来た時、ちょうど了さんと鈴徳さんと話したら、後から如月君に真ん丸な目でこのお店でお客さんとお友達になったんですかって驚かれてしまった。えーと、マスターさんとか松尾さんとかとも仲良くさせてもらってますって言ったら、如月君に唖然とされたのは何で?
それはさておき『茶樹』で皆とお茶をしている内に来る筈だった雪ちゃんが来なくて、皆と別れた後少しだけ駅前の方に向かって歩き出した。そうしたら駅前から通りに入るところで、雪ちゃんと源川先輩が話してるのに出くわしたんだ。
「……そうでしたか、良かった。聞いてはいたんですけど……。」
「ああ、恭平が見舞いには来てくれてたし。」
あ、入院中の話かな?そっか、源川先輩の彼氏さん、知らない間に雪ちゃんのお見舞いに来てくれてたんだ。あれ?でもなんで知ってたのかな?とかって思ってたら、突然背後から肩を叩かれてひゃっ!!って声をあげてしまった。勿論雪ちゃん達も私に気がついたし、私も驚いて振り返るとそこには何でか五十嵐君。
いや、なんでこのタイミング?!
「よく会うね、宮井さん。お家まで送るよ?」
「えええと、あの。」
「モモ。」
うわぁ、何かこの状況って何ともし難い。既に雪ちゃんがブラック雪ちゃんのオーラを放ってるし、源川先輩までここに加わっちゃったら収集がつかない気がするぅ!小さな愛情で出会わなかったことにして、雪ちゃんと帰りたいだけなんだけど。
「宮井さんは、俺の事嫌ではないよね。ちゃんと、話してくれるし。」
「あ、えと、うん。クラスメイトだしね。」
「じゃ、俺は友達で良いよね?」
「うん、そうだね。」
「じゃ、友達と帰るのに、大人げなく牽制する彼氏ってのはどうかな?それって男として心が狭くない?」
「ええええ……と、」
こ、答えらんない!雪ちゃんが真面目に怒ってるけど、広い範囲で考えたら確かにお友達と帰るのダメって言われるのは……
「You are just splitting hairs.Stop splitting hairs!」
唐突に冷ややかな声でそう言ったのは源川先輩で、split hairs は確か字面通りにいえば「毛髪を裂く」。これは、ごく些細などうでもいい部分に、妙にこだわって論点を持っていくような様子を指す言い回しの事なんだよね。つまり「重箱の隅をつつく」ような有り様ってこと。論そのものは正しいとしても、それが「木を見て森を見ず」的な splitting hairs だったなら、屁理屈と呼ぶべき。ってのは何時だか智美君が言っていた。五十嵐君はその言葉にポカーンとして源川先輩を見つめているけど、源川先輩は呆れたように口を開いた。
「モモと仲良くしたいのは分かるけど、モモが困るようなやり方すんなよ。そういうやり方で割り込むなんて、お前の方が大人げない。」
「ウ……ウィル…………?」
「ウィリアムはミドルネームだし、バイトの時だけ。普段は源川仁聖。」
あーあ、先輩ばらしちゃって良いのかなぁ?って思うけど、先輩はそのまま五十嵐君を確保して、雪ちゃんにニッコリ笑うとじゃこれは俺が引き取るんでモモと帰ってくださいって天使みたいな笑顔で言う。雪ちゃんも暫く呆気にとられてたけど、何でかありがとうなんて言って賑やかに帰ろっかって。
…………雪ちゃん、いつの間に源川先輩と仲良くなったの?!
部活動後に今日は智美君と香苗と『茶樹』へ。
気がついたけど週に二回とか三回は来てるんだよね……これって完璧に常連客だよなぁって今更だけど思う。しかもマスターさんにチョコチョコおまけとかして貰ってたり、サービスってして貰ったり…………。販売期限時間が近いからとか試作品だからとかって結構ご馳走になってるんだよね、実は。智美君なんか最近では鈴徳さんと新作の相談とかしてるのは何で?いつの間に?!色合いとかデコレーションは兎も角、ケーキの味まで記憶してるの?!って思ってしまう。あ、勿論ちゃんと他のお客さんの目を考えてしてくれてるよ?やっぱり他のお客さんのいるところで依怙贔屓って思うと、同じお客さんなのにいい気分はしないよね。っていうか、地味にマスターさんって他のお客さんにも同じようにチョコチョコと何かサービスしてる気がしなくもないんだけど……。だって常連さんって、やっぱり同じ顔ぶれなわけで薄々お互いに気がつき始めてて、段々と顔見知りになって会釈しちゃったりしてる訳なんだよね。勿論時間によって客層は違うとは思うけど、私がよく来る時間には大概同じ顔ぶれかも。それに割合私達って、あんまりお客さんがいない時に来てる気がしてるしなぁ。
うーん、それでも経営が成り立ってるってことは、ちゃんと利益があって、その利益ってどこから来てるんだろう……?
一応何時もご馳走では流石に申し訳ないから、少し前には一年生の如月君とも一緒に来て新規顧客を何て思ったんだけど結局鈴徳さんの新作御披露にかち合ってドリンク代金しか払わなくて良いよーって。うーん、経営大丈夫なのかなって思うけど、スタッフはもう新作で試作品出しても飽きちゃってて反応がないから頼むよーって言われるとね!これはいただくしかないでしょ!ね?!
それにお店のお客さんにも何だか仲良く出来る人が増えてるんだよね。外崎さん達でしょ?鳥飼さんもここで出会ってるし、あと松理さんもだし、マスターさんと何時も話している人とも会釈するようになっちゃったし。この間如月君と来た時、ちょうど了さんと鈴徳さんと話したら、後から如月君に真ん丸な目でこのお店でお客さんとお友達になったんですかって驚かれてしまった。えーと、マスターさんとか松尾さんとかとも仲良くさせてもらってますって言ったら、如月君に唖然とされたのは何で?
それはさておき『茶樹』で皆とお茶をしている内に来る筈だった雪ちゃんが来なくて、皆と別れた後少しだけ駅前の方に向かって歩き出した。そうしたら駅前から通りに入るところで、雪ちゃんと源川先輩が話してるのに出くわしたんだ。
「……そうでしたか、良かった。聞いてはいたんですけど……。」
「ああ、恭平が見舞いには来てくれてたし。」
あ、入院中の話かな?そっか、源川先輩の彼氏さん、知らない間に雪ちゃんのお見舞いに来てくれてたんだ。あれ?でもなんで知ってたのかな?とかって思ってたら、突然背後から肩を叩かれてひゃっ!!って声をあげてしまった。勿論雪ちゃん達も私に気がついたし、私も驚いて振り返るとそこには何でか五十嵐君。
いや、なんでこのタイミング?!
「よく会うね、宮井さん。お家まで送るよ?」
「えええと、あの。」
「モモ。」
うわぁ、何かこの状況って何ともし難い。既に雪ちゃんがブラック雪ちゃんのオーラを放ってるし、源川先輩までここに加わっちゃったら収集がつかない気がするぅ!小さな愛情で出会わなかったことにして、雪ちゃんと帰りたいだけなんだけど。
「宮井さんは、俺の事嫌ではないよね。ちゃんと、話してくれるし。」
「あ、えと、うん。クラスメイトだしね。」
「じゃ、俺は友達で良いよね?」
「うん、そうだね。」
「じゃ、友達と帰るのに、大人げなく牽制する彼氏ってのはどうかな?それって男として心が狭くない?」
「ええええ……と、」
こ、答えらんない!雪ちゃんが真面目に怒ってるけど、広い範囲で考えたら確かにお友達と帰るのダメって言われるのは……
「You are just splitting hairs.Stop splitting hairs!」
唐突に冷ややかな声でそう言ったのは源川先輩で、split hairs は確か字面通りにいえば「毛髪を裂く」。これは、ごく些細などうでもいい部分に、妙にこだわって論点を持っていくような様子を指す言い回しの事なんだよね。つまり「重箱の隅をつつく」ような有り様ってこと。論そのものは正しいとしても、それが「木を見て森を見ず」的な splitting hairs だったなら、屁理屈と呼ぶべき。ってのは何時だか智美君が言っていた。五十嵐君はその言葉にポカーンとして源川先輩を見つめているけど、源川先輩は呆れたように口を開いた。
「モモと仲良くしたいのは分かるけど、モモが困るようなやり方すんなよ。そういうやり方で割り込むなんて、お前の方が大人げない。」
「ウ……ウィル…………?」
「ウィリアムはミドルネームだし、バイトの時だけ。普段は源川仁聖。」
あーあ、先輩ばらしちゃって良いのかなぁ?って思うけど、先輩はそのまま五十嵐君を確保して、雪ちゃんにニッコリ笑うとじゃこれは俺が引き取るんでモモと帰ってくださいって天使みたいな笑顔で言う。雪ちゃんも暫く呆気にとられてたけど、何でかありがとうなんて言って賑やかに帰ろっかって。
…………雪ちゃん、いつの間に源川先輩と仲良くなったの?!
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