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二度目の6月
404.ナツツバキ
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6月16日 金曜日
昨日のあの騒動のせいなのか今朝は花泉ちゃんは出没しなかったらしく、香苗はノンビリ朝練のセンセを堪能したらしい。そんなことをランチタイムに話していた矢先、中庭にオズオズと姿を見せたお嬢様花泉ちゃん。あれ?ここにいるの気がついたんだと、私達が見上げると彼女は緊張顔でラッピングされた包みを差し出した。
あ!もしかして噂の壊滅的な味わいのお菓子?!
いやぁ失礼な話だけど、ちょっと興味あるよね。一年間調理部で作ってるのでしょ?それでいて壊滅的ってどういうことか興味ある。花泉ちゃんはは失礼なことをしたお詫びって思ったみたいで作ってきたみたいだけど、一先ず私達の横に座らせて。まあこうしてみると愛らしい後輩って感じといえなくもない。開けてみたラッピングの中身はちょっと焼きすぎに見えなくもない、でもちゃんとクッキーだよね?しかし、智美君が迷わず口に入れた後、見事に無言になってしまった。
「花泉だっけ?」
「はい。」
キョトンとしている花泉ちゃんに、智美君は自分でこれ食べたことあるか?と率直に聞く。それってどういうこと?と思って私も一つ頂いたんだけど…………。
えーと。
小麦粉臭いし、
ベタッとしてるし、
粉っぽいし、
モソモソしてるし、
甘過ぎる
ごめん、こんなことをいうとなんだけど、衝撃的に美味しくない……凄い。
儚い美しさって訳じゃないけど、キョトンしている花泉ちゃんは衝撃の一言を。
「いいえ。」
あ、味見したことないのか?!そうかーっ!味見してないかぁ!思わず脱力した私。横にいる智美君が食べてみろと憮然としているけど、皆と一緒になって食べた花泉ちゃん本人が微妙な顔をしている。
「上手いか?自分で作ったの。」
「美味しくありません。」
素直だなぁ、でもごめん、確かに美味しくないんだよね。あまりそう言うこと口にしない仁君ですら、粉っぽくて変という始末だ。一年間調理部で味見してないの?って私が聞いたら、言われた通り作るだけでしたからって。ううう、佐藤さーん!味見することも教えてー!!
「今日は私のお菓子もクッキーだから、食べてみて?こっちは紅茶のクッキーで、こっちはレモンクッキーね。」
私が差し出したクッキーを食べた花泉ちゃんがホニャとするのに、ちゃんと味わうのは出来てるんだよねぇとしみじみ思ってしまう。つまり自分の作ったものの出来映えに関して一度も確認したことないから、全然改善しなかったってことなんだなぁ。
「これは先輩がお作りになったんですか?」
「うん。昨日のマカロンはどうだった?」
「とても美味しかったです、どこのお店のものですか?」
あー、やっぱりと香苗が言う。確かにお店の物と思ってたね、ううん。あれも作ったんだよというと、花泉ちゃんは目を丸くした。
「先輩は、お家にパティシエがいらっしゃるんですか?」
「まさかぁ!自分で作ってるよ?って、花泉ちゃんのお家はお料理作る人がいるんだ?」
「料亭をやっておりますので、料理は調理場の者がしております。」
料亭!!それは衝撃!そおかぁ、お嬢様って、そう言うことなんだ?お家で経営してても調理場は専門の料理人さん達がいるってことかぁ。それじゃ確かに調理場に入らないっていうのも納得だ。
「味見はできるなら、自分が作ったものの味も知らないとな。」
「……仰る通りです。何故、こんなに美味しくないんでしょう……。」
うーん、たぶん小麦粉の臭いを消すものを全く使ってないのと、焼く時に打ち粉をしてると思うんだよね。あとはバターを分量以上に入れすぎてるのと白砂糖で作ってるでしょ?と問いかけると彼女は目を丸くした。
「どうしてお分かりになるんですか?ご覧になってるみたい。」
手作りのクッキーを美味しく作りたいなら、小麦粉にココナツパウダーを混ぜるといいんだよ。そうすると小麦粉臭さが消えるからね。あとはクッキングシートがあれば打ち粉はいらないからね、打ち粉をすると焼き上がってからも粉っぽくなっちゃうから。あとバターに卵を混ぜてから粉をって教えられてると思うけど、溶かしたバターに粉をふるって混ぜてから卵の方が実は分離しないんだよね。製菓としては邪道だと思うけど。
あとはバターを分量以上に入れると焼く時に生地が溶けるから、分量通りにしてね。後は白砂糖じゃなくてグラニュー糖を使うと甘ったるくならないから。後食感をサクサクにしたかったらコーンスターチをいれるといいんだよ?と私が教えると、調理部ではそんなことはなにも教えられなかったって。
「うーん、お菓子作りは好みとかもあるし、使う器具の癖もあるからね。調理室ではそれで美味しいのかもしれないけど……。」
「美味しくないだろ。これは。」
「これはなぁ……。」
こらっ!智美君も香苗もそう言うこと言わない!少なくとも作る意欲が大事なんだよッ!私だって最初から作れた訳じゃないんだからねっ。何回も作ってるから手慣れただけのことなんだから。それに花泉ちゃんのお家のオーブンってきっと業務用?自分達で使うオーブンレンジ?って聞いても花泉ちゃんには分からなかった。むう、ハードル高いなぁ。兎も角好かなくとも教えたので粉っぽいとか甘ったるいは改善できると思うんだけど、直接作ってるのを見ないとハッキリは言えないなぁ。
昨日のあの騒動のせいなのか今朝は花泉ちゃんは出没しなかったらしく、香苗はノンビリ朝練のセンセを堪能したらしい。そんなことをランチタイムに話していた矢先、中庭にオズオズと姿を見せたお嬢様花泉ちゃん。あれ?ここにいるの気がついたんだと、私達が見上げると彼女は緊張顔でラッピングされた包みを差し出した。
あ!もしかして噂の壊滅的な味わいのお菓子?!
いやぁ失礼な話だけど、ちょっと興味あるよね。一年間調理部で作ってるのでしょ?それでいて壊滅的ってどういうことか興味ある。花泉ちゃんはは失礼なことをしたお詫びって思ったみたいで作ってきたみたいだけど、一先ず私達の横に座らせて。まあこうしてみると愛らしい後輩って感じといえなくもない。開けてみたラッピングの中身はちょっと焼きすぎに見えなくもない、でもちゃんとクッキーだよね?しかし、智美君が迷わず口に入れた後、見事に無言になってしまった。
「花泉だっけ?」
「はい。」
キョトンとしている花泉ちゃんに、智美君は自分でこれ食べたことあるか?と率直に聞く。それってどういうこと?と思って私も一つ頂いたんだけど…………。
えーと。
小麦粉臭いし、
ベタッとしてるし、
粉っぽいし、
モソモソしてるし、
甘過ぎる
ごめん、こんなことをいうとなんだけど、衝撃的に美味しくない……凄い。
儚い美しさって訳じゃないけど、キョトンしている花泉ちゃんは衝撃の一言を。
「いいえ。」
あ、味見したことないのか?!そうかーっ!味見してないかぁ!思わず脱力した私。横にいる智美君が食べてみろと憮然としているけど、皆と一緒になって食べた花泉ちゃん本人が微妙な顔をしている。
「上手いか?自分で作ったの。」
「美味しくありません。」
素直だなぁ、でもごめん、確かに美味しくないんだよね。あまりそう言うこと口にしない仁君ですら、粉っぽくて変という始末だ。一年間調理部で味見してないの?って私が聞いたら、言われた通り作るだけでしたからって。ううう、佐藤さーん!味見することも教えてー!!
「今日は私のお菓子もクッキーだから、食べてみて?こっちは紅茶のクッキーで、こっちはレモンクッキーね。」
私が差し出したクッキーを食べた花泉ちゃんがホニャとするのに、ちゃんと味わうのは出来てるんだよねぇとしみじみ思ってしまう。つまり自分の作ったものの出来映えに関して一度も確認したことないから、全然改善しなかったってことなんだなぁ。
「これは先輩がお作りになったんですか?」
「うん。昨日のマカロンはどうだった?」
「とても美味しかったです、どこのお店のものですか?」
あー、やっぱりと香苗が言う。確かにお店の物と思ってたね、ううん。あれも作ったんだよというと、花泉ちゃんは目を丸くした。
「先輩は、お家にパティシエがいらっしゃるんですか?」
「まさかぁ!自分で作ってるよ?って、花泉ちゃんのお家はお料理作る人がいるんだ?」
「料亭をやっておりますので、料理は調理場の者がしております。」
料亭!!それは衝撃!そおかぁ、お嬢様って、そう言うことなんだ?お家で経営してても調理場は専門の料理人さん達がいるってことかぁ。それじゃ確かに調理場に入らないっていうのも納得だ。
「味見はできるなら、自分が作ったものの味も知らないとな。」
「……仰る通りです。何故、こんなに美味しくないんでしょう……。」
うーん、たぶん小麦粉の臭いを消すものを全く使ってないのと、焼く時に打ち粉をしてると思うんだよね。あとはバターを分量以上に入れすぎてるのと白砂糖で作ってるでしょ?と問いかけると彼女は目を丸くした。
「どうしてお分かりになるんですか?ご覧になってるみたい。」
手作りのクッキーを美味しく作りたいなら、小麦粉にココナツパウダーを混ぜるといいんだよ。そうすると小麦粉臭さが消えるからね。あとはクッキングシートがあれば打ち粉はいらないからね、打ち粉をすると焼き上がってからも粉っぽくなっちゃうから。あとバターに卵を混ぜてから粉をって教えられてると思うけど、溶かしたバターに粉をふるって混ぜてから卵の方が実は分離しないんだよね。製菓としては邪道だと思うけど。
あとはバターを分量以上に入れると焼く時に生地が溶けるから、分量通りにしてね。後は白砂糖じゃなくてグラニュー糖を使うと甘ったるくならないから。後食感をサクサクにしたかったらコーンスターチをいれるといいんだよ?と私が教えると、調理部ではそんなことはなにも教えられなかったって。
「うーん、お菓子作りは好みとかもあるし、使う器具の癖もあるからね。調理室ではそれで美味しいのかもしれないけど……。」
「美味しくないだろ。これは。」
「これはなぁ……。」
こらっ!智美君も香苗もそう言うこと言わない!少なくとも作る意欲が大事なんだよッ!私だって最初から作れた訳じゃないんだからねっ。何回も作ってるから手慣れただけのことなんだから。それに花泉ちゃんのお家のオーブンってきっと業務用?自分達で使うオーブンレンジ?って聞いても花泉ちゃんには分からなかった。むう、ハードル高いなぁ。兎も角好かなくとも教えたので粉っぽいとか甘ったるいは改善できると思うんだけど、直接作ってるのを見ないとハッキリは言えないなぁ。
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