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二度目の5月

361.シラン

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5月6日 土曜日
そんなわけで本気の雪ちゃんとの二泊三日間の旅行から帰ってきた訳ですが。目下雪ちゃんのお家にいるのは勿論衛や両親がまだ戻って来ていないのもあるけど、実は雪ちゃんの突然のお強請りの結果とも言う。自分が華やかな恋ではなくて素朴な恋っていうか、恋愛音痴呼ばわりされるくらい経験値が低いっていうか。

「麻希子、明日までここで一緒にいて。」

なんてカッコいいイケメン彼氏に後ろから抱き締めて耳元でそう囁かれて、それは嫌ですって誰か言えますか?言えないと思うよ、普通。っていうか好きな人からそんなこと言われたら、嫌なんて絶対言えない。大体にしてまだ三月の件で一人だけで家にいるのは、まだダメだって両親だっていってる現状なんだからーっ!それでも雪ちゃんが改めてそんな風に言ったのは、絶対わざとだと思うんだよね、私は。だって、一緒に居るだけなら、私の家でもおんなじだもん。雪ちゃんは雪ちゃんのお家で一緒にいたいって、そうお強請りしたんだよ。もー雪ちゃんてば狡い!そんな風に言われたら、断れないし私の方が変に意識するに決まってるもん。しかも雪ちゃんてば夕ご飯を食べ終わってリビングでノンビリ寛いでる最中、何か気がついた様子でソファーに腰かけて何時ものおいでおいでが始まって

「一緒に、お風呂はいる?」

あうっ!わざわざお膝に座らせておいて、突然なんてこと言ってるんですかっ!私が思わず真っ赤になってると、だってもう麻希子と俺何回か一緒にお風呂に入ったでしょって……雪ちゃんてば、改めて言葉で言うの止めてーっ!それは確かに一緒に入ってますけど、個室露天だったし、色々と……の後の話ですからって真っ赤な顔で私が釈明してるのに。

「なら、色々と……しようか?そしたら一緒に入れるよね。」

なんてこと平然と口にするんだもん、どうかしちゃったの?ここのところの雪ちゃんてば!ううう、雪ちゃんが今までと違って全然容赦ないよ、私の考えられる逃げ道がどんどん塞がれてるし。いや全面的に嫌って言う訳じゃあないと言えば嫌じゃないんだけど、でもこんな風に一緒にお風呂入ろうなんて改めて言われると躊躇うよ?躊躇わない?いや、絶対躊躇うってば!!

「でもですね、私。」
「………俺と仲良くするの、や?」

やっぱりそう来たか!だからね?

「やじゃない、やじゃないけど、」

仲良くするのは嫌じゃないと口にした途端、雪ちゃんてばニッコリ微笑んで私の事を抱き上げる。ええ?!何?これでこの会話終了なの?!今の会話で何か最終的な答えが出てたんだっけ?!いや、出てない!まだ討論の結果は出てないよ?!というか討論自体が断ち切られてるんだけども。私が抱えられアワアワしてるのに、雪ちゃんはニコニコしながらなら選んでもいいよって唐突に言い出した。

「え。選ぶ?」
「お風呂か、ベット。」

ひ、ひえええ!その選択肢なんなのーっ!!お風呂が先がベットが先がってことですか?!け、結果としてはどちらも同じような気がするのは何で

「ゆ、雪ちゃん。」
「あ、レッドカードの話は俺不機嫌になるから、その場合は即座にベット決定ね。」

うっ、なんでそれを言おうとしてたの分かったの?せめてそれで止まるかなって思ったんだけど、しかも何で不機嫌?って思ったら、腕の中で別な男の話は禁句だからと微笑まれる。別な男って私の担任のセンセですが!しかも雪ちゃんの幼馴染みですが!!っていうか、雪ちゃんが智美君とかバリに私の顔で心を読んでいるのは、何故?!

「他の男の名前を考えるのもアウトだよ、麻希子。」

えええっ?!何で気がつくの?!結局選択出来ないでいる上にアウトねと言われて、あっという間にベットに運ばれてしまった私。あやすみたいにキスされてベットに下ろされたかと思うと、目の前で雪ちゃんが躊躇いもなく上半身を曝す。

「ゆ、雪ちゃん、明るい!!電気!」

電気もそのままなのに慌てて言うと、雪ちゃんは上半身を隠すでもなく思い出したみたいに立ち上がる。均整の取れた背中とか綺麗な腰の辺りを思わず眺めてしまうのは、仕方ないよね!仕方ない!だって、綺麗だなぁって思うよ?去年の夏にプールで見た他の同級生とは、質が違う感じなのは……

「俺の体眺めて、楽しい?」

電気を消して戻って来た雪ちゃんが少し意地悪な感じでそんなことを言うのに、そんなに私ってばマジマジと眺めてたのかってまたもや顔が赤くなってしまう。

「見たかったら全部見せてあげるけど、見る?」
「い、意地悪ですか…?」
「意地悪じゃないよ?そのかわり俺も麻希子の見せて貰うだけ。」

あうっ!何でなにもしてないのに、ブラック智雪さん降臨なんでしょうか。って言うかもしかして、もしかしなくても雪ちゃんって本当はこっちが素なの?飾らない心でいると、本当はこういう人?

「麻希子。」

額にキスされてナデナデと頭を撫でられ笑い出した雪ちゃんに、やっと私はからかわれてるんだと気がつく。ムウッてなる私の様子を眺めて、怒らないでよって雪ちゃんは楽しげに笑いながら覆い被さる。あれ?からかってるんだよね?

「あれ?雪ちゃん……?」
「なぁに?」

高貴な美人でも見ているような雪ちゃんの視線に、私はちょっと戸惑う。私が困るの分かっててからかってたんだよね?そう思ったけど、次の瞬間本気のキスが唇を奪って来ていた。
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