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二度目の5月
357.スズラン
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5月2日 火曜日
明日からやっと学生の私達も纏まった連休に入るわけなんだけど、純粋って言うか何て言うか五十嵐君から唐突に明日一緒に出掛けないかと誘われた現在の私。五十嵐君ってば皆の前で誘う所が、他意がないのか悪気がないのかって言うところ。
「少しでいいからさ、何処か行こうよ。」
「ごめんなさい、予定が入ってるんです。」
謙遜とかでなく本気でやや食い気味に私がスパッと返答したものだから、五十嵐君が思い切り撃沈している。いやお断りするの申し訳ないと思うけど雪ちゃんと予定があるのはほんとだし、先に昨日雪ちゃんからお誘いされてるんだもん。それに五十嵐君と二人で出掛けるって、五十嵐君も何処行きたい訳でもないってことでしょ。それは押しが弱いよね、うん。
「あはは、五十嵐君、即撃沈!」
瑠璃ちゃんが速攻で笑いにしてくれてるけど、こうなるとこの会話ってもうコントみたいなもんだよね。と言うわけで、本気でこの話はごめんなさい。明日から雪ちゃんと予定が入ってるし、雪ちゃんが実はゴールデンウィーク後半のために必死でお仕事していたのを衛から密かに聞いてるんで!大人の人が自分の仕事を調整までして、時間を作ってくれているのを知ったら私的にはなんたって雪ちゃん最優先なんだもん!そんな矢先何だか廊下の方がざわめいているのに気がついた。
「モモー。」
え?何?久々のこの呼び方って思わず振り返ったら、何でか廊下に源川先輩が呑気に手を振ってた。唐突な源川仁聖先輩出現に、周囲が一気に色めき立っている。久保ちゃんなんか久々の源川先輩が髪を切って男前度がアップしてるし見たことのない私服姿だしで、頭がオーバーヒートしてるくらいだ。
「先輩、どうしたんですか?」
「あー、書類書いてもらいにね、ついでにモモ達の顔を眺めに来た。」
私が相変わらず呑気ですねって言うと、先輩が久々の塩対応かよって苦笑いしている。私と香苗と早紀ちゃんと三人で近寄って先輩と話をしてると、先輩が教室の中に何かふと気がついた様に眉を潜めた。
「………あ。」
「どうしたんですか?先輩。」
「あー、いや何でも。」
苦笑いの先輩は言葉を濁してるけど、何か思うことがあったみたいな気配だ。それにしても先輩の人気相変わらずで、あっという間に二年生と三年生の女子が集まってる。
「大学生活どうですか?源川先輩。」
「勉強はやりたいことだから楽しいけど、課題の山が減らないんだよな。パソコン今までやってなかったから、今必死。」
「先輩、そういうの得意そうなのに。」
「いやスマホ程度だから、必死に勉強中だよ。」
穏やかな口調で話す先輩は、やっぱり高校生の時よりはるかに大人びている気がする。って言うか私服が半端なくお洒落なのは源川先輩だよね、うん。スモーキーブルーのシャツチェスターコートにネイビーのパーカーと裾から見えるロングティーシャツ、黒のスキニー。雑誌にでも載ってそうだけど、服に着られてる感がないのは流石源川先輩。地味に周囲で写メ撮ってる子達がいるんですけど、秘密のバイト・バレバレなのでは………。先輩って黄色い声かけられて賑やかに手を振ってる場合なんだろうか。
「先輩ー、モデルやってるんですか?」
「あ、あれ?あれね、俺の従兄。」
あ、そうきた?そうやって誤魔化すか。でも、ポスターの瞳が青ってのは皆も知ってるし、源川先輩が英語は得意でも話せることまではあんまり知らない子達は至極真っ当に納得してる。先輩の瞳の色は、日の光の中でマジマジと見ないと青味がかっているとは気がつかないもんね。あのポスターはどう見ても、スカイブルーの瞳にしか見えないし。そっかー従兄なんですねーって皆で言ってるのに、そうそうなんてさらっと流してる源川先輩はやっぱり前とはちょっと変わったんだなぁ。
「先輩の従兄さん、外人さんなんですか?」
「向こうは生粋の外人さんね。俺は半分日本人だけど。」
「えー、先輩ってハーフなんですか?」
「いやいや、ハーフって言っても日本語オンリーだしな、俺。」
大半を適当に言い繕って返してるって知らないと、以前の先輩を知ってる子達は先輩が本気で答えてると思うよね。だって本当は先輩って英語ペラペラだし、従兄さん自体が嘘だし。そう目の前の私の顔に出たのか,先輩がニッと笑って秘密にしといてと私の頭を撫でる。先輩ってば、地味に話をそらすの上手くなってる気がするけど、これって大人になったと言うことなんだろうか。まあ先輩としては純潔を誓っている人がいるわけだし、これくらいかわせないと困るんだよね、きっと。
久々の源川先輩騒動に久保ちゃんが薔薇色になっているのを眺めながら、相変わらず先輩人気だなぁなんて考える。先輩また来てくれるかなぁ・再び幸せが訪れるかなぁって溜め息をつく久保ちゃんの橫で、五十嵐君が戸惑い顔で私に声をかけてきた。
「宮井さん、今のが噂の源川先輩?」
「うん、まあ噂のと言えばそうだね、源川仁聖先輩だよ?」
五十嵐君が凄く不思議そうな顔をしていて、あの人って英語喋れないの?と問いかけてくる。ん?なんか引っ掛かる。そう言えば源川先輩が教室の中見てしまったって顔した気がするのは、もしかして五十嵐君のせい?そう言えば、この間バイト先で生意気な芸能人に会ったとか聞いた気が。あ、もしかしてそれってまさかの五十嵐君のこと?
明日からやっと学生の私達も纏まった連休に入るわけなんだけど、純粋って言うか何て言うか五十嵐君から唐突に明日一緒に出掛けないかと誘われた現在の私。五十嵐君ってば皆の前で誘う所が、他意がないのか悪気がないのかって言うところ。
「少しでいいからさ、何処か行こうよ。」
「ごめんなさい、予定が入ってるんです。」
謙遜とかでなく本気でやや食い気味に私がスパッと返答したものだから、五十嵐君が思い切り撃沈している。いやお断りするの申し訳ないと思うけど雪ちゃんと予定があるのはほんとだし、先に昨日雪ちゃんからお誘いされてるんだもん。それに五十嵐君と二人で出掛けるって、五十嵐君も何処行きたい訳でもないってことでしょ。それは押しが弱いよね、うん。
「あはは、五十嵐君、即撃沈!」
瑠璃ちゃんが速攻で笑いにしてくれてるけど、こうなるとこの会話ってもうコントみたいなもんだよね。と言うわけで、本気でこの話はごめんなさい。明日から雪ちゃんと予定が入ってるし、雪ちゃんが実はゴールデンウィーク後半のために必死でお仕事していたのを衛から密かに聞いてるんで!大人の人が自分の仕事を調整までして、時間を作ってくれているのを知ったら私的にはなんたって雪ちゃん最優先なんだもん!そんな矢先何だか廊下の方がざわめいているのに気がついた。
「モモー。」
え?何?久々のこの呼び方って思わず振り返ったら、何でか廊下に源川先輩が呑気に手を振ってた。唐突な源川仁聖先輩出現に、周囲が一気に色めき立っている。久保ちゃんなんか久々の源川先輩が髪を切って男前度がアップしてるし見たことのない私服姿だしで、頭がオーバーヒートしてるくらいだ。
「先輩、どうしたんですか?」
「あー、書類書いてもらいにね、ついでにモモ達の顔を眺めに来た。」
私が相変わらず呑気ですねって言うと、先輩が久々の塩対応かよって苦笑いしている。私と香苗と早紀ちゃんと三人で近寄って先輩と話をしてると、先輩が教室の中に何かふと気がついた様に眉を潜めた。
「………あ。」
「どうしたんですか?先輩。」
「あー、いや何でも。」
苦笑いの先輩は言葉を濁してるけど、何か思うことがあったみたいな気配だ。それにしても先輩の人気相変わらずで、あっという間に二年生と三年生の女子が集まってる。
「大学生活どうですか?源川先輩。」
「勉強はやりたいことだから楽しいけど、課題の山が減らないんだよな。パソコン今までやってなかったから、今必死。」
「先輩、そういうの得意そうなのに。」
「いやスマホ程度だから、必死に勉強中だよ。」
穏やかな口調で話す先輩は、やっぱり高校生の時よりはるかに大人びている気がする。って言うか私服が半端なくお洒落なのは源川先輩だよね、うん。スモーキーブルーのシャツチェスターコートにネイビーのパーカーと裾から見えるロングティーシャツ、黒のスキニー。雑誌にでも載ってそうだけど、服に着られてる感がないのは流石源川先輩。地味に周囲で写メ撮ってる子達がいるんですけど、秘密のバイト・バレバレなのでは………。先輩って黄色い声かけられて賑やかに手を振ってる場合なんだろうか。
「先輩ー、モデルやってるんですか?」
「あ、あれ?あれね、俺の従兄。」
あ、そうきた?そうやって誤魔化すか。でも、ポスターの瞳が青ってのは皆も知ってるし、源川先輩が英語は得意でも話せることまではあんまり知らない子達は至極真っ当に納得してる。先輩の瞳の色は、日の光の中でマジマジと見ないと青味がかっているとは気がつかないもんね。あのポスターはどう見ても、スカイブルーの瞳にしか見えないし。そっかー従兄なんですねーって皆で言ってるのに、そうそうなんてさらっと流してる源川先輩はやっぱり前とはちょっと変わったんだなぁ。
「先輩の従兄さん、外人さんなんですか?」
「向こうは生粋の外人さんね。俺は半分日本人だけど。」
「えー、先輩ってハーフなんですか?」
「いやいや、ハーフって言っても日本語オンリーだしな、俺。」
大半を適当に言い繕って返してるって知らないと、以前の先輩を知ってる子達は先輩が本気で答えてると思うよね。だって本当は先輩って英語ペラペラだし、従兄さん自体が嘘だし。そう目の前の私の顔に出たのか,先輩がニッと笑って秘密にしといてと私の頭を撫でる。先輩ってば、地味に話をそらすの上手くなってる気がするけど、これって大人になったと言うことなんだろうか。まあ先輩としては純潔を誓っている人がいるわけだし、これくらいかわせないと困るんだよね、きっと。
久々の源川先輩騒動に久保ちゃんが薔薇色になっているのを眺めながら、相変わらず先輩人気だなぁなんて考える。先輩また来てくれるかなぁ・再び幸せが訪れるかなぁって溜め息をつく久保ちゃんの橫で、五十嵐君が戸惑い顔で私に声をかけてきた。
「宮井さん、今のが噂の源川先輩?」
「うん、まあ噂のと言えばそうだね、源川仁聖先輩だよ?」
五十嵐君が凄く不思議そうな顔をしていて、あの人って英語喋れないの?と問いかけてくる。ん?なんか引っ掛かる。そう言えば源川先輩が教室の中見てしまったって顔した気がするのは、もしかして五十嵐君のせい?そう言えば、この間バイト先で生意気な芸能人に会ったとか聞いた気が。あ、もしかしてそれってまさかの五十嵐君のこと?
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