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4月
344.ラークスパー
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4月19日 水曜日
軽快な足取りで学校に向かう私が、朝一番で顔を会わせるのは最近は香苗か仁君のどちらかか、どっちも一緒か。家から公園迄は大体一人なんだけど、公園辺りで待ち合わせたように顔を会わせてる。時間通りの私の通過のせいなのか、そこで会わせなくても学校に向かっているうちに追い付かれるのが最近のパターン。もう少し先までいくと松尾ちゃんとかにも会うし、あんまり登校の時間帯で一人っきりってことはない状況なんだ。それに帰りは帰りで、雪ちゃんのお家方面に行く時は早紀ちゃんか孝君も加えて三人になるし、駅前方面に行く時は智美君や香苗とか必ず誰かと一緒。早紀ちゃん達が微妙に気を付けてくれてる気がしなくもないけど、今のところあの人にもトレンチコートの人にも全く出会わないんだよ。それに、智美君も最近は全く見てないって話してる。まあ、雪ちゃんに聞いたんだけど、私が勘違いしたトレンチコートの人は、実は私には全く関係ない人だったのは事実だけど、空き巣さんだったから警察に捕まっちゃったんだって。そうかぁ、だからウロウロしてたんだって納得したけど、何でスーツって聞いたら、スーツの方が彷徨いてもいわかんないんだって!そうなんだ!ジャージとか着てるのかと思ってたけど、確かにスーツの人の方が昼間歩いててもセールスマンかなーって思うんだもんね。よく考えてるなぁ、空き巣さんも。因みにあの空き巣さん、やまだたかおさんなんだって。呑気そうな名前なのに空き巣するなんて、って勝手なイメージで思ってしまう。まあ、そんなことは兎も角、衛の身の回りにウロウロしてたトレンチコートの人も最近はいないらしいから安心してきてるってわけ。あの人の方は会ってたとしても、男の人の格好だったら分かんないかもなぁ。
そんな今朝は仁君と先に顔を会わせた。そうそう、仁君は四月からバスケットボール部に入ったんだけど、破格の運動神経であっという間にエース扱いだ。でも、一緒に登校しててわかると思うけど、朝練には出ないことにしてるんだって。何でって聞いたら、朝だけで全力出しすぎるからだって自分で言ってて、凄く納得。段々自分のペース配分が出来てきたみたいだねって私が言ったら、仁君は少し悲しそうに笑う。
「普通はこんなの考えなくてもできるもんなんだけどな。」
「でも、できない訳じゃないから、いいんだよ。」
「麻希子は、優しい。」
そんなことを言ってる仁君の記憶喪失は、今だ何も変わらない。あんまり長い時間たったら思い出せなくなったりしないのかなって私も心配だけど、仁君はそこについてはあんまり思ってることを他人には言わないんだ。でも、いつの間にか仲のいい若瀬君とか孝君とか、香苗や早紀ちゃんも仁君の記憶喪失の件を知ってるらしい。
「親のことも昔のことも何も話せないから、バレた。」
確かに。両親は今何処にいるのとか昔何処に住んでたのとか、聞かれても仁君は何も答えられないんだもんね。
仁君はバレた奴等なら信頼してるから大丈夫だと思うって。うん、確かに仁君がそう感じられるのと、知ってる面子を聞いて私も大丈夫な気もするなぁ。そうそう実は鳥飼さんのお家とセンセのお家にお世話になっているのも気にしている仁君なんだけど、せめて生活費をいれようって三年生になったのを期にバイトをしようとしたんだって。でも勝手に動こうとしたら、それぞれからとっても怒られたらしい。
「何で?」
「記憶喪失で一般常識が少し足りないから、駄目だって。」
「そっか、心配してもらってるってことだね。」
そうだけど随分と子供扱いだよなと少し不満そうな仁君に、思わず私は笑ってしまう。仁君は少し天然なのか浮き世場馴れしているのか、一般常識の範疇の一部が理解出来ないことがあるらしい。最近は智美君達とファーストフードなんかは行ってるから大分なれてきたけど、一番困るのはお金の関係何だって。前もやって覚えてるはずなのに金額が理解できなくなったり、バスや電車に乗るのにどうしたらいいか分からなくなることがあるんだって。隣で一言かけてもらうと、あ・そうだって理解するらしいんだけど、一人でそうなると助け船がないから確かに困るみたい。記憶喪失って難しいんだなぁって、そういうの聞くと思っちゃうよね。でも、そんな状態でも鳥飼さんとかセンセとか槙山さんや宇佐川さんがちゃんと面倒見てくれるから、仁君は安心して暮らせてるって面もあるんだろうなぁ。だって、私がもし同じように記憶喪失で何もかも忘れていて、知らない人のお世話になるってなったらこんな風に笑っていられる自信なんかちっともない。
「おはよー!」
背後から香苗の声がして二人で振り返る。元気に手を振りながら走ってくる香苗は何時もと何もかわりない朝。このままもう暫く何も変わらないで穏やかに過ごせたらいいなぁ、なんて心の中で思ったりする。別にそれくらいの願い事は叶ってくれてもいいよね。
軽快な足取りで学校に向かう私が、朝一番で顔を会わせるのは最近は香苗か仁君のどちらかか、どっちも一緒か。家から公園迄は大体一人なんだけど、公園辺りで待ち合わせたように顔を会わせてる。時間通りの私の通過のせいなのか、そこで会わせなくても学校に向かっているうちに追い付かれるのが最近のパターン。もう少し先までいくと松尾ちゃんとかにも会うし、あんまり登校の時間帯で一人っきりってことはない状況なんだ。それに帰りは帰りで、雪ちゃんのお家方面に行く時は早紀ちゃんか孝君も加えて三人になるし、駅前方面に行く時は智美君や香苗とか必ず誰かと一緒。早紀ちゃん達が微妙に気を付けてくれてる気がしなくもないけど、今のところあの人にもトレンチコートの人にも全く出会わないんだよ。それに、智美君も最近は全く見てないって話してる。まあ、雪ちゃんに聞いたんだけど、私が勘違いしたトレンチコートの人は、実は私には全く関係ない人だったのは事実だけど、空き巣さんだったから警察に捕まっちゃったんだって。そうかぁ、だからウロウロしてたんだって納得したけど、何でスーツって聞いたら、スーツの方が彷徨いてもいわかんないんだって!そうなんだ!ジャージとか着てるのかと思ってたけど、確かにスーツの人の方が昼間歩いててもセールスマンかなーって思うんだもんね。よく考えてるなぁ、空き巣さんも。因みにあの空き巣さん、やまだたかおさんなんだって。呑気そうな名前なのに空き巣するなんて、って勝手なイメージで思ってしまう。まあ、そんなことは兎も角、衛の身の回りにウロウロしてたトレンチコートの人も最近はいないらしいから安心してきてるってわけ。あの人の方は会ってたとしても、男の人の格好だったら分かんないかもなぁ。
そんな今朝は仁君と先に顔を会わせた。そうそう、仁君は四月からバスケットボール部に入ったんだけど、破格の運動神経であっという間にエース扱いだ。でも、一緒に登校しててわかると思うけど、朝練には出ないことにしてるんだって。何でって聞いたら、朝だけで全力出しすぎるからだって自分で言ってて、凄く納得。段々自分のペース配分が出来てきたみたいだねって私が言ったら、仁君は少し悲しそうに笑う。
「普通はこんなの考えなくてもできるもんなんだけどな。」
「でも、できない訳じゃないから、いいんだよ。」
「麻希子は、優しい。」
そんなことを言ってる仁君の記憶喪失は、今だ何も変わらない。あんまり長い時間たったら思い出せなくなったりしないのかなって私も心配だけど、仁君はそこについてはあんまり思ってることを他人には言わないんだ。でも、いつの間にか仲のいい若瀬君とか孝君とか、香苗や早紀ちゃんも仁君の記憶喪失の件を知ってるらしい。
「親のことも昔のことも何も話せないから、バレた。」
確かに。両親は今何処にいるのとか昔何処に住んでたのとか、聞かれても仁君は何も答えられないんだもんね。
仁君はバレた奴等なら信頼してるから大丈夫だと思うって。うん、確かに仁君がそう感じられるのと、知ってる面子を聞いて私も大丈夫な気もするなぁ。そうそう実は鳥飼さんのお家とセンセのお家にお世話になっているのも気にしている仁君なんだけど、せめて生活費をいれようって三年生になったのを期にバイトをしようとしたんだって。でも勝手に動こうとしたら、それぞれからとっても怒られたらしい。
「何で?」
「記憶喪失で一般常識が少し足りないから、駄目だって。」
「そっか、心配してもらってるってことだね。」
そうだけど随分と子供扱いだよなと少し不満そうな仁君に、思わず私は笑ってしまう。仁君は少し天然なのか浮き世場馴れしているのか、一般常識の範疇の一部が理解出来ないことがあるらしい。最近は智美君達とファーストフードなんかは行ってるから大分なれてきたけど、一番困るのはお金の関係何だって。前もやって覚えてるはずなのに金額が理解できなくなったり、バスや電車に乗るのにどうしたらいいか分からなくなることがあるんだって。隣で一言かけてもらうと、あ・そうだって理解するらしいんだけど、一人でそうなると助け船がないから確かに困るみたい。記憶喪失って難しいんだなぁって、そういうの聞くと思っちゃうよね。でも、そんな状態でも鳥飼さんとかセンセとか槙山さんや宇佐川さんがちゃんと面倒見てくれるから、仁君は安心して暮らせてるって面もあるんだろうなぁ。だって、私がもし同じように記憶喪失で何もかも忘れていて、知らない人のお世話になるってなったらこんな風に笑っていられる自信なんかちっともない。
「おはよー!」
背後から香苗の声がして二人で振り返る。元気に手を振りながら走ってくる香苗は何時もと何もかわりない朝。このままもう暫く何も変わらないで穏やかに過ごせたらいいなぁ、なんて心の中で思ったりする。別にそれくらいの願い事は叶ってくれてもいいよね。
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