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3月
325.イチゴ
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3月31日 金曜日
尊重と愛情って凄く難しいよね。
昨日の衛と雪ちゃんの大喧嘩というか何というかは家のママに諌められたんだけど、その後も衛が私にベッタリなのでちょっと雪ちゃんがピリピリモードです。しかも、こんな状態なのにお仕事の電話で呼び出されてしまった雪ちゃんに、衛が満足気にニコニコしてるのが更に不機嫌にさせてしまったみたい。それにしても少し雪ちゃん疲れているんじゃないかなって、私も感じてるんだよね。考え事してる時が多いし、話しかければいつもの雪ちゃんなんだけど。何だろうな、ハッキリは言い切れないんだけど、いつもの雪ちゃんじゃない感じなんだよ。そりゃ衛の反抗期で幸福な家庭とはいかないのは分かってるんだけど、いつもの雪ちゃんだったらおっとり流すような事にもピリピリしてる気がする。お隣の部屋にいても、前みたいに寛いでいる感じがなくて、何となく私も不安になってしまう。ノックしてドアを開けるともう普段の雪ちゃんなんだけど、何だか少し様子が変なんだよね。今日になって戻ってきた雪ちゃんは話しも早々に、ちょっと仕事してきますとお部屋に籠ってしまったんだ。
「雪ちゃん、珈琲いかがですか?」
「麻希子。」
パタンと音をたててパソコンを閉じた雪ちゃんが、以前と同じ取り繕ったのほほん笑顔を浮かべたのに私だって気がついた。最近この笑顔あんまり見なくなってたから、凄い久々の作り笑顔。なんか隠し事してるぅ……そう思うのは仕方がない。
「お仕事忙しいの?」
「うん、年度末だしね。」
うん、これも嘘だな。全く顔が変わんないもん。お盆から珈琲を受け取った雪ちゃんの顔を眺めている私に、雪ちゃんは少し緊張したみたいに表情を変える。
「雪ちゃん、何か私に隠し事してる?」
「え?!し、してないよ?」
「…………智雪さん、隠し事してる?」
「し、して、ません。」
「智雪?」
和やかに微笑みながら繰り返す私に、雪ちゃんの顔がひきつっているのか分かる。これでも隠し事ないって言われると流石に少し悲しいと思うんだけどなぁって思いながら、もう一度ニッコリと笑いかけた。
「智雪、隠し事してるよね?」
「し、して、」
「るよね?」
雪ちゃんが言葉に詰まる。雪ちゃんは気がついてないのかもしれないけど、どうみてもおかしいからね?態度とか様子とか。何かやらかしてそうな気がするのは、気のせいではないと思うんだよ?しかも、何かって凄く表立っては出来ないような、そんなブラック雪ちゃんな感じがする。
「……話してください。」
「は、話せません。」
「………危ないことしてますか?」
何でかな、多分私のあの事件の事に関してのような気がするんだよね。凄くそんな気がするのはどうしてかな。
「私の事件に関係して、何かやってるの?」
一瞬雪ちゃんの顔が昔見たことのある表情を掠めさせて、私は溜め息をつきたくなる。それは警察の遠坂さんとかのお仕事で、雪ちゃんは関係しなくていいことだよね?それをしたからって雪ちゃんは私を喜ばせる事にはならないって分かってるよね?そう言うと雪ちゃんは少し表情を変えた。
「でも、まーちゃん。まーちゃんをあんな目に遭わせたんだよ?そんな奴がただ捕まるだけじゃ……。」
「………私が智雪が危ないことする方が、もっとずっと嫌だって思うとは思わないの?」
正直なところあの人に雪ちゃんは関わって欲しくない。あの人は人を怪我させるのに何も戸惑わないし、そんな人と関わって雪ちゃんが怪我でもしたらどうするの?雪ちゃんには衛もいるし、私だっているんだよ。家のママだってパパだっているし、鳥飼さんとかセンセとか雪ちゃんが関わっている人が沢山いるんだよ。了さんともお友達なんでしょ?雪ちゃんは普段は凄く頭がよくて先見の明があって。なのに、時々凄く無謀って言うか危険なことをする時がある。子供の時に何処か行っちゃおうとした時と、全く同じ事を雪ちゃんは今しようとしているんだ。
私は雪ちゃんの目の前に仁王立ちすると、その栗色の頭をベチンって力一杯思いっきり叩いた。
「痛い!!」
「前はずっと子供だったから泣くしか出来なかったけど、今度は怒るんだからね?!智雪は衛のお父さんでしょ?!それに、私の事お嫁さんにしてくれるんじゃないの?!」
私の怒った言葉に、雪ちゃんは呆気にとられたみたいにポカンとしている。だって、もし怪我して大変なことになったら雪ちゃんは良くても、衛や私はどうなるの?ママやパパは?鳥飼さんとかセンセは?お友達だってどうするの?今更だけどそういうのちゃんと考えてるの?って私が捲し立てたら、雪ちゃんはそんなこと初めて知ったみたいに黙りこんだ。
「麻希子……。」
「何?!」
「……お嫁さんに………してもいいの?」
そこか!!?気にするとこはそこじゃないでしょって、ベチンってもう一回雪ちゃんの頭を叩いく。そこは先ずおいておいてもいいから、そういうこともちゃんと考えて行動しなさいって言ったら、雪ちゃんは初めて素直にはいって頷いたのだった。
尊重と愛情って凄く難しいよね。
昨日の衛と雪ちゃんの大喧嘩というか何というかは家のママに諌められたんだけど、その後も衛が私にベッタリなのでちょっと雪ちゃんがピリピリモードです。しかも、こんな状態なのにお仕事の電話で呼び出されてしまった雪ちゃんに、衛が満足気にニコニコしてるのが更に不機嫌にさせてしまったみたい。それにしても少し雪ちゃん疲れているんじゃないかなって、私も感じてるんだよね。考え事してる時が多いし、話しかければいつもの雪ちゃんなんだけど。何だろうな、ハッキリは言い切れないんだけど、いつもの雪ちゃんじゃない感じなんだよ。そりゃ衛の反抗期で幸福な家庭とはいかないのは分かってるんだけど、いつもの雪ちゃんだったらおっとり流すような事にもピリピリしてる気がする。お隣の部屋にいても、前みたいに寛いでいる感じがなくて、何となく私も不安になってしまう。ノックしてドアを開けるともう普段の雪ちゃんなんだけど、何だか少し様子が変なんだよね。今日になって戻ってきた雪ちゃんは話しも早々に、ちょっと仕事してきますとお部屋に籠ってしまったんだ。
「雪ちゃん、珈琲いかがですか?」
「麻希子。」
パタンと音をたててパソコンを閉じた雪ちゃんが、以前と同じ取り繕ったのほほん笑顔を浮かべたのに私だって気がついた。最近この笑顔あんまり見なくなってたから、凄い久々の作り笑顔。なんか隠し事してるぅ……そう思うのは仕方がない。
「お仕事忙しいの?」
「うん、年度末だしね。」
うん、これも嘘だな。全く顔が変わんないもん。お盆から珈琲を受け取った雪ちゃんの顔を眺めている私に、雪ちゃんは少し緊張したみたいに表情を変える。
「雪ちゃん、何か私に隠し事してる?」
「え?!し、してないよ?」
「…………智雪さん、隠し事してる?」
「し、して、ません。」
「智雪?」
和やかに微笑みながら繰り返す私に、雪ちゃんの顔がひきつっているのか分かる。これでも隠し事ないって言われると流石に少し悲しいと思うんだけどなぁって思いながら、もう一度ニッコリと笑いかけた。
「智雪、隠し事してるよね?」
「し、して、」
「るよね?」
雪ちゃんが言葉に詰まる。雪ちゃんは気がついてないのかもしれないけど、どうみてもおかしいからね?態度とか様子とか。何かやらかしてそうな気がするのは、気のせいではないと思うんだよ?しかも、何かって凄く表立っては出来ないような、そんなブラック雪ちゃんな感じがする。
「……話してください。」
「は、話せません。」
「………危ないことしてますか?」
何でかな、多分私のあの事件の事に関してのような気がするんだよね。凄くそんな気がするのはどうしてかな。
「私の事件に関係して、何かやってるの?」
一瞬雪ちゃんの顔が昔見たことのある表情を掠めさせて、私は溜め息をつきたくなる。それは警察の遠坂さんとかのお仕事で、雪ちゃんは関係しなくていいことだよね?それをしたからって雪ちゃんは私を喜ばせる事にはならないって分かってるよね?そう言うと雪ちゃんは少し表情を変えた。
「でも、まーちゃん。まーちゃんをあんな目に遭わせたんだよ?そんな奴がただ捕まるだけじゃ……。」
「………私が智雪が危ないことする方が、もっとずっと嫌だって思うとは思わないの?」
正直なところあの人に雪ちゃんは関わって欲しくない。あの人は人を怪我させるのに何も戸惑わないし、そんな人と関わって雪ちゃんが怪我でもしたらどうするの?雪ちゃんには衛もいるし、私だっているんだよ。家のママだってパパだっているし、鳥飼さんとかセンセとか雪ちゃんが関わっている人が沢山いるんだよ。了さんともお友達なんでしょ?雪ちゃんは普段は凄く頭がよくて先見の明があって。なのに、時々凄く無謀って言うか危険なことをする時がある。子供の時に何処か行っちゃおうとした時と、全く同じ事を雪ちゃんは今しようとしているんだ。
私は雪ちゃんの目の前に仁王立ちすると、その栗色の頭をベチンって力一杯思いっきり叩いた。
「痛い!!」
「前はずっと子供だったから泣くしか出来なかったけど、今度は怒るんだからね?!智雪は衛のお父さんでしょ?!それに、私の事お嫁さんにしてくれるんじゃないの?!」
私の怒った言葉に、雪ちゃんは呆気にとられたみたいにポカンとしている。だって、もし怪我して大変なことになったら雪ちゃんは良くても、衛や私はどうなるの?ママやパパは?鳥飼さんとかセンセは?お友達だってどうするの?今更だけどそういうのちゃんと考えてるの?って私が捲し立てたら、雪ちゃんはそんなこと初めて知ったみたいに黙りこんだ。
「麻希子……。」
「何?!」
「……お嫁さんに………してもいいの?」
そこか!!?気にするとこはそこじゃないでしょって、ベチンってもう一回雪ちゃんの頭を叩いく。そこは先ずおいておいてもいいから、そういうこともちゃんと考えて行動しなさいって言ったら、雪ちゃんは初めて素直にはいって頷いたのだった。
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