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2月
288.フリージア赤
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2月22日 水曜日
あっという間に明日から学期末テスト。気が重いのは事実だけど、勉強は一応まずまず進んでいるし、親愛の情なのか智美君が親身になって教えてくれたから苦手の理数系も何とかなりそうな気分。何でか智美君と仁君と若瀬君が1番争いをする気になっているみたいで、勝ったら何か奢りとかって盛り上がっている。地味に私と帰ってない日に若瀬君とか仁君と歩いているのではないだろうかと、薄々思う今日この頃。絶対に智美君って、買い食い目的の下校で歩こうなんだと確信した。まあ、それでも交流が広まるのはいいことだよね!っていうか、私今追い込みでテスト勉強中だから!勿論3年1組になりたいのは大学受験とかの目的もあるんだけど、早紀ちゃんとか智美君とか孝君とか仁君は確実に1組なんだろうって予想できるわけで。出来たら同じクラスになりたいんだよ!本当は。新しいクラスで新しい友達はいいんだろうけど、出来るなら一緒のクラスになりたいじゃん!!
と言うわけで黙々と勉強する私と香苗に、早紀ちゃんとか仁君迄つられてテスト勉強な訳です。
帰途に付きながら黙々と単語帳とにらめっこはあんまりよくないと分かりつつ。必死に記憶しながら歩いていた矢先、ヤッパリというか予想通りというか人にぶつかってしまった。完全に背中に体当たりしてしまって、相手の人が驚いたように振り返る。
「ごめんなさい!前方不注意でした!!」
慌てて私がペコリと謝ると驚いた様子の相手の人は、私の顔を見下ろしてマジマジと不思議そうに眺める。見たことのない男の人だと思うんだけど、どうしてそんなに私の顔をじっと眺めるんだろうって私は思わず相手の顔を見上げた。
歳は多分パパと同じ年頃位かな?今一つハッキリしないけど少し草臥れた疲れた感じのする人だ。一応身なりはそれほど草臥れてワルいってわけではない普通のスーツ姿。でも、夕方のこの時間帯にここら辺を歩いているってことは、普通のサラリーマンとかではなさそうだけど。とは言え知らない男の人ではあるから、頭を下げてもう一度謝って隣をすり抜けようとしたら腕を引き留めるように掴まれた。
「あ………。」
掴んだ方の男の人が上げた戸惑うようなその低い声に、私は掴まえられた腕を見下ろしてからもう一度その顔を見上げる。掴まえたって事は会ったことがあるって言うこと?私にはどっかで会ったって記憶はないんだけど、17年のうちのどれくらい出会った人を覚えていられるかって聞かれると智美君とは違うから正直言えば自信がない。相手の人から何か聞いてくれれば答えられるかもしれないけど、男の人はまた私の顔をマジマジと見つめるだけで一向に何も言おうとしないんだ。何でこんなに見てるんだろうって不思議なんだけど、この人が最近智美君が言っていた人なんだろうか。もしそうだとしたら、流石にモデルのスカウトにはちょっと見えない気がする。智美君と一緒だった子だって腕を掴んだんだとしたら、余計何かいってくれないと返答もできない。それでも次第に何も言わない男の人の手に掴まえられているのが、不安になり始めている。だって、何も言わないで腕を掴んだまま、顔を見られているのって正直いい気分ではない。
「………あの、なんですか?………私。」
私が痺れを切らして不安そうに問いかけるのに、その人はハッと思い出したように私の腕から手を離した。そうしてふいっと視線をそらして私に背を向けると何もなかったみたいに、歩き出し遠ざかっていく。
一体何だったんだろうって私はその後ろ姿を眺める。結局何がそんなに私の顔を見つめさせたのかもわからないし、何で引き留めたのかも分からない。でも、顔は初めて見たと思うんだけど遠ざかって行く後ろ姿は、何処かで見たことがあったような気がする。
何だろう、なんか引っ掛かるけど……
こういうとき智美君だったら、直ぐ答えが出せるんだろうけど私にはそんな記憶力はないし判断にもちょっと不安。でも、あんな感じの服装の人は駅前には沢山いるし、同じ人なのかも答えられない。そう考えると智美君だって、気のせいだったのかなという位なんだよね。
あの人だって突然女子高生が背中に体当たりしてきたら、そりゃビックリするか。そう思ってあれ?単語帳、何処にやったっけって改めて我に帰る。手に持っていた筈の単語帳がなくなってた。辺りを見渡してみると歩道の片隅に単語帳がまるで扇みたいに広がって落ちていて、純潔みたいな白い紙が目に映る。ぶつかってしまった時に落としたんだと気がついたけど、歩み寄って拾おうと手を伸ばし取り上げると、何枚かが歩道の土で薄く汚れてしまっていて微かな不快感が沸き上がった。
何でか凄く嫌な感じなのは何でだろう。
視線を上げた時にはもうあの後ろ姿は見えなくて、どんな顔だったかも今一つハッキリしない。それでも何でかあの姿を何処かで見たような気がしてならないのはどうしてなんだろう。
あっという間に明日から学期末テスト。気が重いのは事実だけど、勉強は一応まずまず進んでいるし、親愛の情なのか智美君が親身になって教えてくれたから苦手の理数系も何とかなりそうな気分。何でか智美君と仁君と若瀬君が1番争いをする気になっているみたいで、勝ったら何か奢りとかって盛り上がっている。地味に私と帰ってない日に若瀬君とか仁君と歩いているのではないだろうかと、薄々思う今日この頃。絶対に智美君って、買い食い目的の下校で歩こうなんだと確信した。まあ、それでも交流が広まるのはいいことだよね!っていうか、私今追い込みでテスト勉強中だから!勿論3年1組になりたいのは大学受験とかの目的もあるんだけど、早紀ちゃんとか智美君とか孝君とか仁君は確実に1組なんだろうって予想できるわけで。出来たら同じクラスになりたいんだよ!本当は。新しいクラスで新しい友達はいいんだろうけど、出来るなら一緒のクラスになりたいじゃん!!
と言うわけで黙々と勉強する私と香苗に、早紀ちゃんとか仁君迄つられてテスト勉強な訳です。
帰途に付きながら黙々と単語帳とにらめっこはあんまりよくないと分かりつつ。必死に記憶しながら歩いていた矢先、ヤッパリというか予想通りというか人にぶつかってしまった。完全に背中に体当たりしてしまって、相手の人が驚いたように振り返る。
「ごめんなさい!前方不注意でした!!」
慌てて私がペコリと謝ると驚いた様子の相手の人は、私の顔を見下ろしてマジマジと不思議そうに眺める。見たことのない男の人だと思うんだけど、どうしてそんなに私の顔をじっと眺めるんだろうって私は思わず相手の顔を見上げた。
歳は多分パパと同じ年頃位かな?今一つハッキリしないけど少し草臥れた疲れた感じのする人だ。一応身なりはそれほど草臥れてワルいってわけではない普通のスーツ姿。でも、夕方のこの時間帯にここら辺を歩いているってことは、普通のサラリーマンとかではなさそうだけど。とは言え知らない男の人ではあるから、頭を下げてもう一度謝って隣をすり抜けようとしたら腕を引き留めるように掴まれた。
「あ………。」
掴んだ方の男の人が上げた戸惑うようなその低い声に、私は掴まえられた腕を見下ろしてからもう一度その顔を見上げる。掴まえたって事は会ったことがあるって言うこと?私にはどっかで会ったって記憶はないんだけど、17年のうちのどれくらい出会った人を覚えていられるかって聞かれると智美君とは違うから正直言えば自信がない。相手の人から何か聞いてくれれば答えられるかもしれないけど、男の人はまた私の顔をマジマジと見つめるだけで一向に何も言おうとしないんだ。何でこんなに見てるんだろうって不思議なんだけど、この人が最近智美君が言っていた人なんだろうか。もしそうだとしたら、流石にモデルのスカウトにはちょっと見えない気がする。智美君と一緒だった子だって腕を掴んだんだとしたら、余計何かいってくれないと返答もできない。それでも次第に何も言わない男の人の手に掴まえられているのが、不安になり始めている。だって、何も言わないで腕を掴んだまま、顔を見られているのって正直いい気分ではない。
「………あの、なんですか?………私。」
私が痺れを切らして不安そうに問いかけるのに、その人はハッと思い出したように私の腕から手を離した。そうしてふいっと視線をそらして私に背を向けると何もなかったみたいに、歩き出し遠ざかっていく。
一体何だったんだろうって私はその後ろ姿を眺める。結局何がそんなに私の顔を見つめさせたのかもわからないし、何で引き留めたのかも分からない。でも、顔は初めて見たと思うんだけど遠ざかって行く後ろ姿は、何処かで見たことがあったような気がする。
何だろう、なんか引っ掛かるけど……
こういうとき智美君だったら、直ぐ答えが出せるんだろうけど私にはそんな記憶力はないし判断にもちょっと不安。でも、あんな感じの服装の人は駅前には沢山いるし、同じ人なのかも答えられない。そう考えると智美君だって、気のせいだったのかなという位なんだよね。
あの人だって突然女子高生が背中に体当たりしてきたら、そりゃビックリするか。そう思ってあれ?単語帳、何処にやったっけって改めて我に帰る。手に持っていた筈の単語帳がなくなってた。辺りを見渡してみると歩道の片隅に単語帳がまるで扇みたいに広がって落ちていて、純潔みたいな白い紙が目に映る。ぶつかってしまった時に落としたんだと気がついたけど、歩み寄って拾おうと手を伸ばし取り上げると、何枚かが歩道の土で薄く汚れてしまっていて微かな不快感が沸き上がった。
何でか凄く嫌な感じなのは何でだろう。
視線を上げた時にはもうあの後ろ姿は見えなくて、どんな顔だったかも今一つハッキリしない。それでも何でかあの姿を何処かで見たような気がしてならないのはどうしてなんだろう。
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