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2月

272.ナノハナ

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2月6日 月曜日
最近の雪ちゃんは結構、ブラック雪ちゃんがチラホラしていると思う。って言うか、その方が雪ちゃんが快活で明るく感じるのは何故だろう。もしかして、あのブラック雪ちゃんの方が素なんだろうか?

「なんだ、今更か?」

今更かって?!聞いてみた私も私だけど、今更かってなんですかセンセ!何処かセンセも疲れた風なのは多分坂本先輩の一騒動のせいだろうけど、クラスでは坂本先輩の噂は下火になっている。何でかって?坂本先輩がヒソヒソ噂話してる女の子達を一グループ取っ捕まえて、「グタグダ噂してんじゃないわよ!こっちは当に結納も済ませて晴れて婚約者がいんのよ!式の準備も始めてんだからね!マリッジブルーで胎教にも良くないんだから、言いたいことあるなら直接向かってこい!」と公衆の面前で一喝したらしい。

流石坂本先輩、漢らしい……。

踏ん切りがいいというか、強いというか。坂本先輩がそんな啖呵をきったものだから、女の子達は結納?!結婚式?!ってなって、ねぇねぇ結納ってなにするの?結婚式はウエディングなの?って切り替わったらしい。確かにキチンと手順を踏んだってのは凄い効果だったみたい。それに乙女としてはやっぱり結婚式と聞くと落ち着いてはいられないようだ。ウエディングドレスだと聞いたら、試着したの?どんなの?って違う意味で盛り上がっているという。
話は脱線したけど、ブラック雪ちゃんが素なのと聞いたら今更かと笑われているいまの私。いや、なんか過去の私の知らない面を聞いてると、そんな予感は地味にあったのは事実なんだけど。だって、私の前では何時もニコニコしてて、悪いことってなんのことみたいな顔してたんだもん。

「まあ、素が出てきたんなら良いことじゃないか?」
「そう、なの、かなぁ?」

苦笑いのセンセは隠してて良いことでもないからなという。センセ曰く雪ちゃんは昔から大概の人には、取り繕っていい人仮面になるから素が出るのは数えるくらいしかいないんだって。

「センセと鳥飼さんだけ?」
「俺らは隠しようがないからそうだな。後はいまじゃ同級生の奴等とも案外疎遠だしな。友達に少しいるかな。」
「そうなんだ。あんまり雪ちゃんのお友達って聞いたことないかも。」
「あいつの交遊関係は、俺にもちょっと不思議な人間もいるからなぁ。」

ふうんっていいながら、センセ達以外にも親しい人がいるのかって考える。あんまり聞いたことないんだけど、職場の人の話は何回か聞いたことがあるからその人なのかな。まあ衛も素で接している一人ってことだろうけど、私やママやパパはそれに入んないのかなぁ。しょんぼりした感じそれを聞くと、それは違うとセンセは笑いながら頭を撫でてくる。

「お前の両親と、お前は特別緊張して隠したんだよ。他の人間とは違う意味だ。」
「違うって何が?」
「ふふ、3人だけには、いい子でいい人で格好つけたいんだよ。最近はそうできなくて時々凹んでるぞ?もう隠しきれなくなってんだな。」

面白そうにセンセが雪ちゃんの幼馴染みの顔でいう。センセが言いたいのは、私と私の両親の前では雪ちゃんは格好つけてるんだってことみたい。大人でいい人で何も心配のない完璧な人間だとみてもらいたいから、必死で格好つけている。他の人へのいい人仮面は、ただの無関心を誤魔化すだけだから嫌われようが別に何とも感じてない。でも私達3人には嫌われたくないし、怒られたくないし、褒められたいし。
私が驚いたように目を丸くする。つまり雪ちゃんは3段階で好き嫌いがハッキリしてて、特別な好きには必死で格好つけてて、次の好きには諸に素が出て、後は無関心ってこと?なんか分からなくもないけど、何で最近の私に素?

「そりゃ本能的なとこは、素になるだろ。」

本能ですか?!本能って……あの、間違えてませんよね?キスとかそう言う方面の話ですよね。私が唖然としていると、何故かセンセは青筋が見えそうな怖い笑顔でポンと肩に手を乗せる。

「いいか、いっとくけどな、卒業するまでは教師として絶対に許さないと言ってあるからな?何かしそうに雪がなったら、俺が殴りに来るといえよ?宮井。」

あ、これ絶対坂本先輩の件をセンセは根に持ってる。どうみても絶対根に持ってるよね?坂本先輩の未来の旦那様、センセの知り合いじゃなくて本当に好かったかも。センセに本気で殴られたら入院しそうだよ?しかも、センセ……いま言ってるのも目が本気に見えるんですけど、それ本気で言ってますよね?

「キス位まではイエローカードだとは雪には教えてあるからな?」

はいって言うか!!そんな話をセンセ達と何処でしているの、雪ちゃんは。段々不安になってくるなぁ、雪ちゃんの素って。今夜何処で何を話してるんですかって、注意しなきゃダメだね。どう考えてもキスしたってばらしてるようにしか聞こえないんだもん、いまの言い方。
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